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突き刺さる逆転

イナズマン』感想・第19話

◆第19話「謎の殺人ボクサー ミラーX?」◆ (監督:山田稔 脚本:上原正三
 いきなり雷神号を襲う爆発シーンから始まり、あ、パーツ落ちた。
 続けて派手なバイクスタントに突入し、撥ね飛ばされた五郎に迫る刺客の刃だが、五郎は死んだフリから反撃に移行。
 「貴様は誰だ?!」
 「新人類の刺客、カガミバンバラ。おまえを殺しに来たのだ~」
 ライダースーツの下から正体を現したのは、頭部から上半身までが鏡になっており、立っているだけで太陽光を反射して五郎を苦しめる鏡バンバラ。見ているこちらもちょっとまぶしい!
 後半の展開もあり、上半身に比べて簡素なタイツ姿の下半身と、両手がボクサーグローブ状の為、ミュータンロボというよりは、虎の穴の悪役レスラーぽさがある鏡バンバラの太陽熱反射攻撃を受けた五郎は剛力招来してサナギマンとなると、炎にあぶられる事で急速にMゲージを高め、超力招来!
 対する鏡バンバラは、ミラーオプションを周囲にばらまく事でイナズマンの視覚を眩惑するトリッキーな攻撃を仕掛けてくるが、問答無用のチェストで鏡を破壊されると、一時撤収。
 「イナズマンは確かに無敵の強さです。しかしイナズマンにさせなければこちらの勝ちです」
 連夜のイメトレの結果、胸がワクワクするわいを通り越えて胃がキリキリしてきたのか、尻尾を巻いて逃げ帰ってきた負け犬は処刑だ! と過去に覚えのない対応を取る帝王バンバに対し、あくまで今回は体験版、と万全の勝利を約束する鏡バンバラですが、それが出来ずに半年が経とうとしている全人類周知の事実なので意外性も新鮮みも全くなく、途中参加の上原大先生もこれといって冴えません。
 その頃、渡五郎は幼なじみの元ボクサーから、高額賞金のかかった闇のデスマッチでセコンドに付くように頼み込まれ、弟を世界チャンピオンにする為に命をかけようとしているから仕方ないよね、とどう考えても非合法な集まりに参加する事を承諾(笑)
 話の筋書きとしては幼なじみの敗北が目に見えてはいるわけですが、登場人物としては勝利を目指しているわけで、幼なじみが500万円の為に相手選手を殴り殺すところまでいったら、どうするつもりだったのか五郎。
 ここでは、ヒーローとしてのイナズマンと、友情に応えようとする人間・渡五郎が切り離されてはいるのですが、切り離されているがゆえに、人間・渡五郎の倫理観に疑問が生じてしまう事に。
 そういった司法からの逸脱を面白く消化できるタイプの主人公も居ますが、五郎はあまり、そうは感じませんし……言ってしまえば“類型的な好青年主人公”像である五郎の個性の弱さが浮き彫りになり、脚本の筋道とバッティング。
 これは今作後半における迷走の一因だとも思うのですが、類型的主人公といえる渡五郎に揺さぶりをかける一方で、それが渡五郎の個性の研磨には特に繋がっていない――なぜなら、“類型”を揺さぶる事そのものが目的の為、「渡五郎」という主人公は結局、“類型”の枠組みの中から離れられない――のが、自己矛盾に陥っている部分があるのかな、と。
 五郎友人と、謎の殺人パンチャー・ミラーXとの勝負が始まると、しばらくボクシングシーンが続き、覆面ボクサーのストロボフラッシュを受けて敗北した友人は、意識不明の重体に。
 五郎は同志諸君に、デスマッチの舞台となった秘密クラブの場所を調べさせるが手がかりは無く、物凄く私情で使っているな、「そのメンバー」……。
 一方、デスマッチ主催はボクサー弟に近づいて闇の闘技場へと誘いを仕掛け、弟のポケットに仕込んでいた発信器の電波を追った五郎は、荒野の真ん中にしつらえられたリングで戦う、弟とミラーXの戦いを目撃。割って入った五郎は、弟の代わりにリングに立つ事になり、当時ブームなどがあったのかもですが、繰り返されるボクシングシーンは、あまり面白く感じられず。
 首尾良く五郎をリング上に引きずり出し、デスマッチにかこつけて抹殺を図るミラーX(当然、鏡バンバラ)は、ストロボフラッシュから蹴りまで放って五郎を追い詰めるが、繰り返しフラッシュ攻撃を用いた事が徒となり、ようやくその正体を見破る五郎。
 掟破りのヘッドロックからミラーXの覆面を剥ぎ取った五郎は、正体見たり新人類はチェストすべし! と剛力招来し、鏡バンバラの正しい対応は、覆面を剥がれても人間体を維持し、五郎が「あ、あれ?!」と隙を見せたところを至近距離から拳銃で撃つ! でした。
 ここからは殴り合いではなく殺し合いだ! と、両手にグローブをはめたままの剛力招来はちょっと面白シーンになりましたが、バンクの映像と噛み合わなくて、残念。
 「おまえはサナギマンにはなれてもイナズマンにはなれないのだ!」
 帝国兵も姿を見せて滅多打ちを浴びると、
 (エネルギーが集中できない。打たれすぎたせいだ)
 唐突に新設定を口にするサナギマン…………ええとつまり、生身でパンチを浴びすぎたせいで、、この程度の刺激ではMゲージが満たされないと理解すれば良いのでしょうか。
 (なんとかしてエネルギーを蓄えなければ……よし、やってみよう)
 ナレーション「サナギマンは、カガミバンバラのパンチを、必死の思いで耐えた。カガミバンバラのパンチのエネルギーを、体内に蓄積して、変転しようとしたのである」
 もっと拳をーーー! と、より強い刺激を受ける事で公式にMゲージを高めていくサナギマンは、鏡バンバラ必殺の太陽光線を受けると、超力招来!
 サナギマンからイナズマンへの変転過程で問題が生じる目の付け所は悪くなかったのですが、「イナズマンにはなれない」のも「エネルギーが集中できない」のも、互いに根拠が薄弱なので盛り上がりに繋がらず、アイデア倒れの消化不良。
 ミラーオプションを駆使してイナズマンを幻惑する鏡バンバラであったが、調子に乗っていたところ、鏡の反射を利用されて死角から浴びせられた稲妻スペシウム光線によりド派手に吹き飛び、〔図解! これが逆転チェストだ!〕みたいな映像から呆気なく吹き飛ぶのが、ちょっと面白かったです(笑)