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空を飛べねばヒーローじゃない

『ひろがるスカイ! プリキュア』感想・第8話

◆第8話「飛べない鳥と、ふしぎな少年」◆
(脚本:金月龍之介 絵コンテ:西田正義 演出:岩井隆央 作画監督:上野ケン)
 ヒーローセンサーで人の気配を感じ取ったソラは、OPで存在を主張する黄色い鳥に話しかけてみるも返事はなく、スカイランドでは鳥が喋ったり働くのは当たり前ぇ、と甦る第1話冒頭。
 「ぅはぁ~、今更だけど、ソラちゃんって、ファンタジー世界の住人なんだね~」
 「こんなに美味しいものが、ちーーんってやるだけで出来ちゃう、その方がよっぽどファンタジーです!」
 所変われば常識変わる、と異世界ギャップネタを挟み、プリキュア悪のあるところセンサーを全力全開したソラは、警戒を解いたと見せかけて室内に侵入してきた片目隠し渦巻きヘアの少年を引っ捕らえ…………あれ今この子、プリンセス・エルを囮に使った?
 「敵を欺くにはまず味方から。そう思って君に秘密捜査官を依頼したんだが」
 そう、正木本部長も言っていた。
 時には正体を隠して怪人を精神崩壊に追い込んだり、必殺技を急に反転して撃つ事もヒーローには必要な詭道なり、と短パンの不審者を引っ捕らえるソラだが、その正体はなんと、鳥。
 「……僕は、ツバサ」
 如何にもスカイランド関係者ぽかった黄色い鳥が人間体を持っていたのは予想外でしたが、第1話における掴みの良いインパクトだった鳥タクシーからの流れで、頷きやすくはあり。
 「鳥が、喋った?!」
 黄色い鳥――ツバサは、1年とちょっと前、スカイランドからソラシドトピアに落ちてきたところをお祖母様に拾われた、プニバード族の少年。
 「大きな嵐が来ると、世界の繋ぎ目にひび割れが生じる。スカイランドとこちらの世界が、一瞬だけトンネルで繋がるの。そんな時、世界のひび割れに飲み込まれたスカイランドのあれこれは、どうしてか、この街へと流れ着く。ソラシド市はそういう場所なの」
 お祖母様がソラシド市に居を構え、裏山まで所持しているのは、ソラシド市が世界と世界を繋ぐ一種の特異点であるからと補強され、設定としては割と好きですが、お祖母様はますますトゥルーヒーローめいてきます。
 だが、この私のヒーローセンサーをかいくぐってエルの身辺に近づき、あまつさえ乙女の部屋に窓から侵入を繰り返していたとは貴様どこの組のもんじゃ! それとも、カバ野郎と同じテロリストかぁ?! 北アルプスに埋められたいのかぁあん?! と、いつになく敵意を剥き出しにしたソラはツバサに牙を剥き、質問を拷問に変えるまであと3秒。
 「もういい加減にして下さい! 何を隠してるんですか!!」
 スカイランドの住人である事を隠してこっそり活動していたのはなぜか、相手が某ベルトさんだったら半分に叩き割った上でドラム缶に詰めて相模湾に沈めそうな勢いで食ってかかるソラだったが、ツバサが黙って俯いている内にエルが泣き出して、水入り。
 翌日、奴がアサシンだったら、殺られていた……とヒーローとしての不覚にうなだれるソラは、学校を休んでエルの側で体育座りしていたが、またも目を離した隙にエルが部屋を出てしまい、だがそれがきっかけで、ツバサがずっとエルを見守ってくれていた事を知る。
 リアルにやると無理が出るとはいえ、生後1歳ちょいぐらいと思われる赤ん坊を放置しがちの感があったソラとましろですが、お祖母様はツバサの存在を計算に入れており、二人の目の届かないところでは、ツバサがエルを陰で見守っていた、というのは納得。
 「――空を飛びたいんです」
 そしてツバサはソラに、変身能力の代わりに飛ぶ事ができないプニバード族でありながら、幼少期から空を飛びたいと努力を重ねてきた過去を明かし、回想シーンのツバサ父が謎の格好良さ(笑)
 今回、ここに一番力が入っていた気がしてならないのですが、後編の上手いジャンプ台になってほしいところ。
 この1年、ツバサがスカイランドに戻る事なくソラシドトピアで生活していたのは、テロリストの一味だからではなく、飛行の参考に人類の航空力学を学ぶ為であり、笑われるのが嫌で黙っていた事を告白すると、ソラの反応は……
 「かーーっこいい! 一度やると心に決めた事は、絶対に諦めない! それがヒーロー!」
 「笑わないの?」
 「笑いません! だって、私はヒーローになりたい! ツバサくんは空を飛びたい! 道は違うけど、私たちおんなじじゃないですか!」
 どんなに他人に笑われようと、見果てぬ夢に向かってまっしぐらに突き進む者同士、強く共感を覚えたソラはツバサと手を握り…………あれこれ、ましろがあぶれる?
 といった辺りの人間関係の推移は今後に期待したいところ。
 ましろが帰宅する頃にはソラとツバサはすっかり打ち解けていたが、懲りないめげない諦めないカバトンさんが、UFOボーグを生み出して街を攻撃。
 「それでは皆様ご唱和下さい。せーの! 俺TUEEE!」
 これは明らかにゼット先輩のパロディと思われますが、そうなると子供たちから素体となったドローンを奪った際の、
 「順番ねぇ? じゃあ、強いもの順てことで、どうよ?」
 が、
 「プレシャスは早いもん勝ちじゃないもん!」
 「そうよね~、強いもん勝ちだもんねぇ!」
 のパロディに思えてきて困ります(笑) そう、ガイ先輩も言っていた。
 あんなものが飛ぶなんて航空力学的にありえない! と憤る空飛ぶ円盤否定派のツバサにエルを託し、街へと向かうスカイとプリズムだが、魔法の抱っこひもを自力で操ったエルがその後を追いかけてしまい、仰天しているところに街に居たあげはから電話が……と人物の動きが錯綜し始めたところで流れ出すBGMが緊迫感を引き上げて格好いい。
 「エルちゃんが危ない…………(風を読むんだ)」
 スカイとプリズムはカバトラマンZ操る巨大なUFOボーグに立ち向かい、二人の知らないところでエルが街へと飛んでいき、街ではあげはが情報を受け取り、お祖母様が魔法のカメラを起動しに行く中、残された少年は、彼方の敵を見据える。
 ――今こそ少年は飛べるのか?
 は、いい引きでした。
 また、お祖母様の世話になって1年ちょっと、この1ヶ月なり2ヶ月程度、プリンセス・エルを見守っていた、と少年が“飛ぼうとする事”(飛びたい気持ち)にしっかり説得力がもたらされており、次回――サブタイトルも格好良くて、一跳ねを期待。