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おうけのきりふだ

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第39話

◆ドン39話「たなからボタンぽち」◆ (監督:山口恭平 脚本:井上敏樹
 蛍光グリーンの服に身を包んだ存在により引き起こされる派手な爆発! 弾き返されるブラスター! 目からビーム! 崩れ落ちるビル! 蹴散らされるドンブラザーズ!
 「セイレキ2022年、3月6日に発足したドンブラザーズは、同年12月4日、壊滅しようとしている。何故そうなったかというと――」
 前回までのあらすじ担当に続いて、どんぶらマスターが淡々と恒例の導入をやるだけで、既に面白くて凄い(笑)
 ……ただ、個人的に今回のピークはここで、「ギャグマンガで、レギュラーの博士ポジションないしセミレギュラーのトラブルメーカーが、トンデモ発明なり発見なりをしてあれよあれよと大騒ぎになった末、ざっくりめに解決する回」みたいなエピソードなのですが、劇中の描写が過熱するほどに、一発ギャグみたいな回だな……というのが先に立ってしまい、いまいちノリきれず。
 事の起こりは喫茶どんぶらの大掃除――日頃の感謝を込めて、店内の清掃に励んでいた鬼猿雉ジロウだが、カウンターの奥に怪しげな手提げ金庫を発見したはるか、満面の笑顔で取り出すと気楽な調子で暗証番号を打ち込み始め、おい、はるか。
 犯罪一歩手前の行為に猿原も冗談半分で乗っかり、雉野も悪事に引きずり込まれると、運命の悪戯で開いてしまった金庫の中から出てきたのは、「押すな」と書かれたボタンが一つ。
 もちろん、押すな押すなと言われたら押してみるのが正しいマナー、と期待に応えてジロウがぽちっとな。
 途端、「出撃」のランプが点るとサイレンが鳴り響き……遂に出てしまうのか、ハイパーゴージャスグレートドンブラZキングオー。
 「押したのか?! ……このスイッチを」
 写真集第3弾の打ち合わせで外出していたマスターが帰ってくると顔色を変え、事前に帰郷の予告をしていたとはいえ、物凄い勢いでとんずらするジロウ。
 隙あらば好感度を下げようとしてくる男ジロウ。
 「来るぞ――ドンキラーが」
 仕事中のタロウの眼前で、大地に緑色の閃光が突き刺さると粉塵を巻き上げ、それが晴れた時立っていたのは、蛍光グリーンの衣装を身につけた、タロウと瓜二つの外見を持つ人造人間……が、挨拶代わりの口からドンブラ光!!
 咄嗟にアバターチェンジしてレーザー攻撃をしのいだドンモモは強烈な振り下ろしの一撃を見舞うが、あっさりと指2本で受け止められると投げ飛ばされてしまい、喫茶どんぶらで「ドンキラー」なる存在について知る事に。
 ドンキラー、それは、ドンブラザーズが本来の使命を忘れて暴走した時の抑止力として、「脳人の王家たるドン家が、科学の粋を集めて作ったアンドロイド」であり、管理人であるマスターがその召喚スイッチを預かっていた、対ドンブラザーズ抹殺兵器なのであった!
 その頃、ソノニに粉をかけていたナンパ男にフラれた女が「私を見て!」と鬼と成り、大変わかりやすいトランプのスートモチーフで、かねてより「ジャッカー鬼」はどう処理するのだろう……と思っていたのですが、字幕によると「邪鬼(じゃっき)」。
 明らかにそれどころではない存在が出撃しているエピソードでもしっかり鬼退治が組み込まれ、前回の流れを受け、ドンブラ粒子反応ありで超電子鬼もありそうかなと思っていたのですが、白い鳥人による主役強奪繋がりでありましょうか(笑)
 ドンブラ招集されて戦闘が始まり、ソノニが参戦しようとしたその時、天より降り立つ、ドンキラー・フォー・デストロイ。
 貴様らの仕事は今日から、毎週毎週十字架に磔にされる役だ! とドンキラーが目からレーザーを放って問答無用でドンブラザーズを襲撃して冒頭に接続され、ターミネーター×スーパーマン、といった感じ。
 桁違いの戦闘力が劇場版風味の長回しで表現されると、さしものタロウも撤収を選択。
 「でも……なんであいつ、タロウそっくりなの? わけわかんない」
 「それだけはハッキリしている。――格好いいからだ」
 タロウの意見は黙殺され、傍若無人な別格の暴威を前に
 「……肚を決めろ。残りの時間を、悔いの無いように生きろ」
 とタロウが勝負を投げ出すのは、“ギャグの真っ最中に「完敗を喫したヒーロー」をシリアスに描くギャグ”になっているのですが、メタな仕掛けの為にあっさりと敗北を認めるヒーロー達、が面白く感じられず(さすがにこの後、その点へのフォローは入りますが)。
 タロウに援護を申し出るも拒絶を受けたソノイが、同僚を連れてドンキラーに奇襲をかけるも、マスターのささやか嫌がらせにより練り辛子パフェを食べて誤作動を起こしたドンキラーの攻撃を受け、
 「判断ミスだ。やはり関わり合うのをやめよう」
 と一目散に逃げ出す姿も、崩し方としては好みから外れてしまいました。
 一方、さすがにこれでドンブラザーズが消毒されると寝覚めが悪い、と独房を訪れたマスターに対し囚人はかしこまり、「トゥルーヒーロー」「フォーエバーヒーロー」といった呼び名からも、マスターはヒーロー概念そのものに近い存在であり、秘密の切り札を預けられた正真正銘ドンブラシステムの管理者である高位存在のようで、マスターの存在が物語の中でどう収まるのかについては、あまり期待しない方がいい気がしてきました(笑)
 ……まあ、そう呼ぶように強制しているだけという可能性もありますが。
 囚人がマスターに「ドンキラーキラー」なる存在の噂について語っていた頃、鶴野みほは平然と雉野みほに収まり、雉野つよしはそれを上書きセーブで受け入れており、みほに向けた遺書をしたためる雉野の前にキラーが降り立つと、
 「やっぱり……死んでたまるかぁ!」
 と盛り上げBGMでアバターチェンジするのは格好良かったですが……瞬殺され、先にリタイアしていた犬塚と同じ病室に、入院。
 続けて、砂浜で辞世の句を詠んでいた猿原もキラーと出会い、リタイアそして入院。
 一方、東京のジェノサイドなど知らぬ顔で帰郷したジロウは、拾い主の駐在・寺崎の誕生日を祝おうと部屋を飾り付けして帰りを待つ内に仏壇に置かれた「押すな」のスイッチを発見し、全く反省なく、ぽちっとな。 
 大人の事情もとい精神を研ぎ澄ます為に山中でマンガを描いていたはるかの前にはタロウが現れ、作品を一読。
 「つまらない。ボツだ」
 「……え?」
 「もっと面白いものを描いてから死ね!」
 と一応、それぞれが土壇場で最後まで諦めない姿を示して「残りの時間を、悔いの無いように生きろ」へのフォローが入るのですが、単発でリセットされそうなギャグマンガ展開と、ヒーローフィクションとしての筋とが上手く噛み合わず、デコボコしてしまった印象。
 この豪華な使い捨て作劇を、腹を抱えて大笑いできれば良かったのですが、個人的にはどうも、笑いとしてすんなり消化する事ができませんでした。
 ドンキラーに果敢に立ち向かう赤と黄だが攻撃は全く通用せず、ドンブラザーズ真の最終回目前の危機に助っ人に現れたのは、クロカイザー。しかし、その全開射撃も全く効果を現さずに口からミサイルによりマスター含めて全滅寸前、大地を穿つ赤い閃光!(山口監督は、たくさん爆発させて、楽しそう)
 それこそ、ドンキラーが暴走した時の為に用意されていた保険、ドンキラーキラー!(何故か顔は猿原)
 「なんで? 教授……そっくり」
 「あれはまさか、ドンキラーキラー」
 ドンブラザーズ抹殺兵器ドンキラーと、対ドンキラー兵器ドンキラーキラーが色々な意味で次元の違う戦いを繰り広げる中、そこにジャッカー鬼が迷い込み、ドンブラ召喚。
 アバターチェンジと共に猿雉犬の傷も治り、みほちゃんパワーを再充填されてテンション高い雉野が「僕たちはまだヒーローです。こんな傷、根性で治せます!!」と口にしているのですが、根性というよりも、爆発した教室が次の回には元通りになっている的なギャグマンガ時空の力な気がします。
 郷里のジロウも召喚されて、先輩アバターチェンジを挟んでW必殺技でジャッカー鬼を撃破すると、巨大戦に突入。核に電気に重力磁力とトランプが舞うが、さっくりファンタジア極で、ドンブラザーズは究極大勝利を収めるのであった。
 鬼ゲストがえらく寒そうな格好しているな、と思っていたのですが、元に戻ったところで、水木カレン(ハートクイーン)オマージュだったと気付きました(笑)
 一方、ドンキラーとドンキラーキラーの戦いは続き、互角の闘争は、やがて宇宙へ――
 「あの二人は……恐らく……未来永劫……果てしなく、戦い続けるだろう」
 と、壮大かつ投げっぱなしにされるのも、表現がギャグマンガっぽい、と思ったところ。
 前回が、予告でバカっぽいお笑いエピソードと思わせて布石あり笑いあり関係性の変化ありと詰めに詰めて『ドンブラ』ベスト級のエピソードだったのに対して、今回は予告で衝撃の展開と思わせて9割方ギャグの趣向でしたが、その物語における“ヒーローの戦い”を茶番にしかねない場外乱闘、みたいなのはあまり好きではなく、ど派手な馬鹿馬鹿しさをただただ面白がるには、アイデアがツボから外れてしまって残念でした。
 こういうエピソードを使って、役者さんに普段と違う芝居をさせる、というのは嫌いでは無かったですが。
 かくしてドンブラザーズが史上最大の危機を脱すると、駐在所で寺崎を待つジロウは部屋一杯に色紙を広げながら「かごめかごめ……」と口ずさみ……最近の『ドンブラ』はすっかり、二段構えのオチの二段目で爆弾を投げ込んでくる路線。
 「あ……帰ってきた!」
 喜び勇んでジロウが寺崎の出迎えに向かうと、ちゃぶ台の上に残されていたのは、折り紙のペンギン――?! で、つづく。
 今作ぶっちぎりの不憫枠といっていい扱いだったジロウに、とんでもない疑惑が浮上しましたが、今回、ドンキラーがジロウを無視していたのは、立派な伏線だったのか……?
 そもそもまだ「ペンギン」の役割さえ不明なので、ジロウ=ペンギンなのか以前に、ジロウ=ペンギンだったとして何か問題が生じるのかさえわかりませんが、現在のフォーマットが固まってから約20年、出てくるのが当たり前でサプライズは特になく、物語に刺激を与えるどころか時によっては存在が形骸化している部分もある「追加戦士」、《スーパー戦隊》シリーズとして、その存在――「追加戦士とは何か?」――について改めて考えようとしているなら一定の納得が出来る話で、面白い解を期待したいです。
 次回――逃亡者と暴走車?