2022年を振り返る:読書編
去年ぐらいから、これまでなんとなく読んでいなかった著名作家を読んでみようの流れが来ておりまして(ジャンルは偏向していますが)、今年は……
初・連城三紀彦! 初・泡坂妻夫! 初・山田正紀! 初・辻真先! 初・都筑道夫! 初・鮎川哲也! 初・山田風太郎!
と、物凄い高火力高コストデッキが出来上がってしまいました。
後進の作家からの評価の高さが目立つ連城三紀彦は、好んで用いる題材が「情愛」という点が好みからは外れるものの、文章と構成の巧さ、そして総合的な“信じさせる力”が圧巻で、ミステリ作家としては、これだけ、信じさせたい嘘を読者に信じさせて、見事に騙された! と持っていく文章技術は、それは語りがファン目線になるわけだなーと(笑)
泡坂妻夫は長編はちょっとくどく感じ、割と淡々とした短篇の方が面白い印象。
文章のスタイル、という点で一番気に入ったのは都筑道夫で、海外小説の風味も加えた洒落っ気が非常にツボでした。
初読の作家に触れてみる、という事で今年は割と短編集やアンソロジーの量が多かったのですが、特に面白かった短篇は、
「藁の猫」 (泡坂妻夫)
「蝋人」 (山田風太郎)
「親愛なるエス君へ」 (連城三紀彦)
の3作。
長編では、とうとう読んだ山田風太郎の、大作『妖説太閤記』『魔界転生』が、共にパワフルで面白かったです。
連作短篇では、『夜の床屋』(沢村浩輔)。連作としての仕掛けが上手くはまっていて、今年前半の出物でありました。
そして、昭和の本格ミステリへの導線として、有り難いガイドになってくれたのが『本格ミステリ・フラッシュバック 1957-1987』(千街晶之 他)。名前は知っているけれど……という作家から、知らなかった巨匠まで、手にとってみる機会へ繋がる良いガイド本でした。
現在、辻真先の“昭和ミステリ”シリーズを面白く読んでいるので、来年は少し遡って、世評の高い作品を読んでみたいところ。……それにしても、現在90歳にしてこの筆力、つくづく恐るべし……。
小説以外では、
『言霊と他界』(川村湊)
『日本のレトリック』(尼ヶ崎彬)
『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』(ウィンストン・ブラック)
といった辺りが面白かったです。
今年後半は、昭和の巨匠の作品を大量に浴びたので、少しまた、近年の作家に戻りたくもなっておりますが……読者も変われば作者も変わり、長く、好きで居続けられる作家との出会いというのも、なかなか難しいものではあるな、などと思う今日こ頃。
そういう点では、「過去の名作」というのは、数年後に作者と(一方的な)喧嘩別れ、とかしない安心感があるのかもな、とか(笑)
逆に、過去に読んでどうも肌に合わない……と感じた作家の作品を数年ぶりに読むとしっくり来るなんて事もあるかもしれないのが、現在進行形の醍醐味ではありますが。
そんなわけで来年は、最近読んでいなかったあの作家この作家、に舞い戻ってみるのもありなのかもしれない、とかも思っております。