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ねらわれたたまご

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第38話

◆ドン38話「ちんぷんかんクッキング」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
 新しい味を求めるグルメ評論家が鬼と成り、シェフとウェイトレスを吸収し……
 (私は……時々、意識を失う。そして、気がつくと満腹になっている……一体、何を食べているんだろう?)
 という、怖い導入。
 その頃犬塚は、獣人の森に関する情報を警察に提供しており、何者かに助けられたようだがさっぱり記憶に無い、と獣人の森から脱出した経緯について再び触れられたので、今後の展開にしっかりと意味が出てきそう。
 「なんだかかえって……謎が増えたみたいね」
 事態が解決に近づく気配は見えないものの、ひとまず捜査協力の任を果たした犬塚が「鬼頭ゆり子」の名刺を受け取ったのは、これまた今後に意味が出てきそうです。
 (……松)
 そしておばさんは、すっかり年下の二枚目好み路線を固めていた。
 これにてお役御免、晴れて自由の身、とお天道様の下を堂々と闊歩する筈が、染みついた習性で警官の姿に思わず狼狽する犬塚だが、その目前で警官が新たに貼った指名手配書は……犬塚翼(ネコ)。
 今度は最初から懸賞金100万円付きだ! と再び「この顔、ロックオン」の身の上になった犬塚は慌てて逃走し……酷い(笑)
 (……いったい何をしたんだ、獣人の俺)
 なんとか警官から逃げおおせて橋の下でがっくりしていた犬塚を通りすがりの雉野が発見し、前々回、焼きそばで殺されそうになった関係なので恐る恐る近づくと普段通りの様子に安心して、報奨金を使って予約した高級レストランへと犬塚を誘う。
 「いや、遠慮する。それどころじゃなくなったんだ。他の奴らを誘ってくれ」
 「でも! みほちゃんが帰ってきてくれたんですよ! だから、みんなで楽しく一緒に」
 「どういう事だ?!」
 困惑する犬塚へ向けて、貼り付いたような笑みを浮かべる雉野。
 (こいつ……ほんのりと……変だ)
 興味を引かれて雉野家を訪れた犬塚は、頬ずりせんばかりの勢いで西洋人形(多分、犬を売った賞金の一部で買った)に寄り添いながら「みほちゃん」へにこやかに話しかける雉野の姿を目の当たりにし、ほんのり、どころでは、無かった。
 「わかったわかった! わかった……俺も一緒に行く! だから、みほちゃんには留守番を頼もう。な?」
 ぶっ壊れた(自分がぶっ壊してしまった)三十男の姿を目撃し、思わず抱きしめる犬塚の姿が、なんか泣けます。
 一方、ビル風厳しい都会の片隅で落ち葉に埋もれて散ろうとしていたジロウの命を救ったルミちゃんが田舎へと帰っていき、見送りのジロウに背を向けた途端、表情がげっそりするのが、凄く嫌なリアル(笑)
 (あぁ~、疲れた。ジロウくんてば、いっつもハイテンションだから……)
 ライクはあるがラブではないルミちゃん、表情の変化するタイミング(頬の落ち方)も絶妙で、女優さん会心の演技でしたが、“見える景色がちょっとずつ違う”作品テーマに沿った見せ方ともいえ、前々回描かれた夏美の本性(?)と関連づけて夏美の描写の意味を強調する意識も見て取れそう。
 また、無自覚ながらにルミちゃんも、ジロウにとっての「お供え」であるとするならば、タロウとお供の関係同様、神霊に近い存在との交信に相応のエネルギーを消費しているという事でもあるのかも。
 そんなルミちゃん帰郷の一幕を挟み、雉野の招きにより、ドンブラメンバー+ジロウ(……!)は高級レストランでの会食となるが、みほちゃんについて水を向けられた雉野が、「みほちゃん」を連れてこようとしたのをきっかけに、徐々に悪くなっていく雰囲気。
 「なに余裕こいてるんですか?」
 「別にこいてないだろ」
 雉野と犬塚の間の軋轢は消えてなくなったわけではなく……
 「美味いか? あん、大人しいな。緊張しているのか?」
 「話しかけるな。いい料理は黙って食べるものだ」
 アルコールも入っていないのにトラとなったジロウはタロウに喧嘩をふっかけ……
 「しかし驚いたな~。君とソノザが仲良しだったとは」
 「だから違うって。ただマンガを見て貰って」
 猿原は意外とねちねちはるかに絡み……まあ考えてみれば真っ先に互いの変身を知った仲であり、ヒーロー活動について同志ともいえる関係だったので、頼られる私に慢心していたら「妹分の相談に乗る感受性鋭い兄」ポジションを斜め横から奪わそうな現状に、
 (こ……このままでは、最終決戦の際、タロウ×ソノイ、犬塚×ソノニ、はるか×ソノザ、雉野×ツルの獣人、ジロウ×ムラサメ、がそれぞれコンビを組む中、私は一人あぶれて忍者フリークとセットにされ、「あー猿原、キャラは面白かったけど、敵サイドと因縁を上手く作れなかったのが惜しかったな……」とか今季の不憫枠に入れられてしまう!)
 とか、内心相当なダメージと焦りがあるのかもしれません。
 「やはりハッキリ言おう。あれは「みほちゃん」じゃない。人形だ!」
 「侘び寂びね~? やっぱり猿原さんも、美人好きなんだね?」
 (髪をふわーっと広げ、どこかになにかをアピールするはるか)
 「俺と勝負しろ! 今! すぐに!」
 「もう二度とみほちゃんに近づかないでくだっさい」
 「違う! あれは脳人にも侘び寂びを教えようと思って……!」
 「黙れ! 座っていろ」
 豪華で和やかな筈の会食が一転、舌戦がヒートアップした一同は周囲の大迷惑と化すとオーナーシェフからお引き取りを求められ、過度に厭味ったらしい言動と仕草で描かれてはいるものの、言っている事は、あまり間違っていない気がします(笑)
 「ちょっと待て。そこまで言われる筋合いはない」
 「……すじ肉?」
 だが、かちんと来た犬塚が反論すると料理にもケチを付け、今度はシェフと犬塚がヒートアップすると、先手、一六ベーコン。
 「なになになに? なにが始まったの?」
 「脳内将棋と同じだ。頭の中で料理をして、勝負をしている」
 はワイプ演出としては面白く、やにわに料理の手順を並べ立て始めるぶっ飛んだ展開! というばかりではなく、それを平然と受け止めて冷静に解説を入れて笑いを引き出すタロウの存在が際立ちます。
 そこに丁度入ってきたグルメ評論家が引き分けを宣言すると、本物の料理で勝負したらどうかと持ちかけ、そして雉野はお金が、足りなかった。
 場所を犬塚の仮住まいに移し、雉野不在で犬が桃鬼猿と絡む場面は久しく無かった気がするのですが、今後の布石のような気もして戦々恐々……犬と雉の立場(仲間との距離感)が逆転する展開は、あり得るかもな、と。
 だいぶ重要な気がする獣人についてのタロウと犬塚のやり取りは互いに「話せば長い」で終わってしまい、犬塚の側からすると「警察も掴んでいる情報」なので、そこまで突飛でもない、のがミソでありましょうか。この辺り、話の都合といえば都合による展開の綾を、その立場に立ってみるとギリギリ有りかな……と思わせる網を張り巡らせているのが、毎度ながら巧妙です。
 犬塚は無実の罪による逃亡者にして料理人であった父から料理の基礎を学んでいたと肉付けされ、同居型で仲間に振る舞うわけではないのでこれまで見落としていたのですが、犬塚翼はそういえば、最新《スーパー戦隊》「料理の戦士」なのだな、と今更ながら。
 ※参考過去記事:■〔料理の戦士達/ものかきの倉庫〕
 犬塚は「夏美が好きだった料理」、シェフは「最初に覚えた料理」として、くしくも勝負料理にオムレツを選んだ事で最高の卵を巡る争いが勃発し、幟に「最高のたまご」と書いてある卵農家は、あっけらかんとしすぎて面白かったです(笑)
 お使いを買って出た猿原は、首尾良くその日最後の「最高のたまご」を入手するが、何故かソノイ、そして料金の埋め合わせとしてシェフにこき使われる雉野が続けて現れ、卵を巡る争奪戦が勃発。
 3人は変身までして醜い争いを繰り広げ、恐らくは《スーパー戦隊》名物「大事なアイテムのパス合戦」のセルフパロディの末に宙を舞い続けた卵はぐちゃぐちゃに潰れてしまい、総員、農家の方にごめんなさい。
 結果的にはその熱意が認められて、自宅用のものを1パックずつ譲ってもらい、いよいよ勝負の当日――両者の繰り出したオムレツは鬼猿雉を涅槃に導き、タロウの舌さえ唸らせるが、未知の美食を求めるグルメ評論家を満足させるにはいたらず、シェフと犬塚はまとめてグルメ鬼の腹に飲み込まれてしまう!
 「ヒトツ鬼の体内……いわば、異次元の世界か」
 二人は奇妙な色彩(サングラス越しに見た世界に似ている)の深山幽谷で目を覚まし、スキル《異次元慣れ》を獲得した犬塚翼は、宇宙的真理にまた一歩近づいた。
 全てのヒトツ鬼にあてはまるとは限りませんが、冒頭、「鬼と成った人間は、その欲望を満たす為に行動する(一種のストレス発散を行う)が、その間の記憶はない」に続いて、「ヒトツ鬼の体内には特殊な空間が存在し、ヒトツ鬼によって消された人間はその中に閉じ込められる」と、ここに来て鬼関連の情報が追加され、ヒトツ鬼と獣人に関連性が見えてくるのは、気になる部分。
 鬼の体内では、先に閉じ込められた被害者たちが飢えており、なにか食べられるものが無いかと犬塚が目に留めたのは、異次元世界の木の実………………意図的としか思えないぐらいヘルへイム感が凄いのですが(東映名物、プロップ流用……?)、それは……食べていいものなのか?
 「料理を……新しい味を」
 一方、イヌを除くドンブラザーズは街に繰り出したグルメ鬼に立ち向かい、電気回路系のデザインだなと思ったら電子鬼との事で、好きな食べ物はあんぱんだ!
 デザイン的にはやや苦しめですが、これはこの後、トゲトゲ強化された超電子鬼が出てきそうな感もあり、ソノーズが参戦してスター仮面が充電完了したムラサメを解放し、異次元では被害者たちがヒトツキ果実を集めていた。
 「さて、どう料理するか」
 「なんとかしよう! どんな状況でも人々の食の面倒を見る。それが料理人の務めだ」
 高慢さの目立ったシェフは極限状況で料理人の本分を取り戻し、今回このシェフが感じ悪い時も含めて非常に好演で良い味を出しているのですが、それは……食べていいものなのか?
 乱戦の中でムラサメが鬼を追い詰めていくのを見たドンモモは、ファスト御神輿変身すると即ジェノサイドピーチ発動。
 「あ! 巻き込まれる!」
 身内からの衝撃の認識が明らかにされて一同慌てて射線を離れる中、発動直前に飛び込んでいった金ドラが、まとめて断捨離されそうになっていたムラサメを助け、電子鬼はフェスティバルエンドでお腹いっぱい。
 内部の異空間に閉じ込められていた人々も無事に人間界へと帰還するが、電子鬼が巨大化する代わりに、ムラサメが暴走を開始。
 「マザー、僕のパワーが止まりません」
 (力に身を任せない、ムラサメ)
 相変わらず不穏なマザーの命令に従ったムラサメは再びブラックオニタイジンし、握り手が〔サンプル画像〕みたいなのがどうしても気になります(笑)
 料理中だったイヌも召喚されて超絶大合体し、以前よりパワーアップしていると言及のあったブラックオニタイジンですが、ゴールデンフェニックスからの銀河統一ドンブラファンタジア極で瞬殺され、プレミアムバンダイを背後に背負い、ノルマ稼ぎ担当みたいな扱い。
 人間に戻ったグルメ評論家が辿り着いたレストランでは、蛍光ブルーの強い異次元料理が今まさにふるまわれており、それを口にした評論家はDon't Say No! JUST LIVE MORE! 新しい味との出会いに満ち足りて花畑を舞い……だから、それは、食べていいものなの?!
 異次元食物に関する疑念はひとまず脇に置くとして、鬼ゲストは雑に片付けられがちな今作ですが、その情念の解放までがきっちりと物語に組み込まれ(これはこれで、異次元料理を求めて新たな猟奇展開の幕開けになりそうな気もして少々不安ですが……)、また、「いつしか高慢になっていた人物が初心を取り戻す」というステレオタイプながらも、もう一人のゲストキャラであったシェフの「変化」までがそれに絡めて描かれていたのが鮮やか(オムレツのチョイスが導線になっているのも巧い)。
 まあ、関係者後始末のウェイトを上げると戦闘がざっくり気味になってしまうのは悩ましいところですが、今回は後始末に重点を置く事により、最高の卵を巡るドタバタ劇にも尺を採りすぎる事なくバトル要素の補強に留める事で全体がテンポとバランス良くまとまり、「怪人の始末と関係者の変化」というセオリーど真ん中を持ち込みつつ、登場人物の錯綜と乱舞する布石が織り成す『ドンブラ』らしい面白さもしっかりキープした秀逸回で、さらっとまたギアを上げてきたよ井上敏樹……!
 前回の顛末に思う事あるのか、ソノイは「一人になりたい時もある」とおでん屋台に足を運んでおり、まさかの三回目の登場となったおでん屋に預けた最高の卵を口にすると、思わず昇天。
 一方、オムレツ対決の試食の際に首をひねっていたジロウは、ルミちゃんの作ってくれた煮付けをタロウにお裾分けし、一口つまんだタロウも昇天。
 で、なんかファンタジックに終わるのかと思ったら……
 「お帰りなさい、つよしくん」
 自宅に戻るや人形の「みほちゃん」に飛びついて今日の出来事について雉野が話しかけていると、誰も居ない筈の部屋に灯りがつき、当たり前の日常のつづきとして現れる、笑顔の、雉野みほ。
 そこでEDテーマ流されてもーーー?!
 私の中ではこのED曲は、なんか色々あったけど今日もひとまず落着したぞ、のテーマなので、ドンブラコされても気持ちの置き所に困る凄い場面でオチたーーーと思ったら、予告で更に凄いの出てきた!! と、年の終わりに向けて機関銃斉射が止まりません。
 それにしてもみほちゃんは、前々回、鶴野夏美モードでちょっと好感度を落としたところから1話空けて、再び雉野みほモードで登場すると、あ、みほちゃん美人度高いな(スタッフもみほちゃんは意識して美人に撮っていると思われ)……と色々ねじ伏せられるので、今や今作最高の当たりキャストになっている感。
 次回――ドン! ドン! ドンキラー!!