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ふと気がつけばそこは島根

人造人間キカイダー』感想・第32話

◆第32話「アオデンキウナギ魔の腕が光る」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 前回衝撃のラストから、落ちていたキカイダーの左腕を抱え、ジローを必死に探すミツ子たち。
 ナレーション「鳥取砂丘はあくまでも広く、ただ一陣の風が吹き荒れるだけであった」
 からの、
 ナレーション「ジローはどこか、そして光明寺博士は。キカイダーは死んでしまったのであろうか」
 と、いつものフレーズを用いるのが、洒落た導入。
 ナレーション「――その頃、左腕を失ったキカイダーは、アオデンキウナギの追跡を逃れてサイドマシーンを飛ばしていた!」
 ハイ早かった!!
 一話だけでは勿体ない! と前回の砲撃映像が再活用され(深く納得)、山陰道をひた走るキカイダーだが、セスナからの攻撃を受けている内にデンキウナギに追いつかれてしまい、隻腕のキカイダー、史上最大のピンチ!
 セスナは光明寺らの追跡に向かい、さすがにこれで殺すと酷すぎるとはいえ、ゲスト父のサバイバル力が凄い。
 この男性もまた、忍者の末裔なのかもしれません。
 デンキウナギのウナギハンドに絡みつかれたキカイダーは、ウナギハンドをホバーで強引に引きちぎって逃走し、ウナギは修理の為に撤収。
 「どいつもこいつもうつけ者めが!」
 我が身可愛さにアンドロイドマンにSOS信号を送ったデンキウナギの弱腰ぶりに青筋を立てるギルの一人芝居は、今見ると、『特捜ロボ ジャンパーソン』における麗子様の一人芝居に通じるものも感じます。
 独り砂丘を彷徨っていた光明寺は、ダーク製アンドロイドの左腕を握りしめたまま倒れ伏す片腕のジローを発見。行き倒れの人造人間の存在を平然と受け止めると本能の赴くままに修理を始める一方、ジロー・光明寺・ゲスト父、3人の行方不明者をまとめて見つける一挙解決の名案を思いついたと言い出した半平は出雲大社に向かい、神頼み。
 4人はそのまま観光フェーズに突入し、さらっと隣県に入っていますが調べてみたところ、2022年現在〔皆生温泉出雲大社〕は車で1時間20分ほど。〔皆生温泉鳥取砂丘〕も同様で、道路の距離だけでいえば、出雲大社の方がむしろ近いぐらいでした。
 米子空港の場所を全く把握していなかったのですが、島根県との県境に位置しており、鳥取よりもむしろ松江に近く、車で30分ほど北へ向かうと水木しげるゆかりで知られる境港。島根と鳥取が領土紛争を始めたら、絶対激戦地だ、この辺り。
 メーカー違うけどひとまずくっつけておけ、と光明寺がジローを魔改造している頃、ホテルに戻ったミツ子らの前には、ゲスト娘を狙うアオデンキウナギがゲスト父に化けて姿を見せ一悶着。
 「よし! 試してやる!」
 殴って倒れたら人間だ!
 殴って無事だったらアンドロイドだ!
 ジロー仕込みの判別法で、マサルがゲスト父の背後から棒きれを叩きつけるとアオデンキウナギが正体を現し、皆生グランドホテルの庭に血の雨が降ろうとしたその時、タイアップ先の評判を守る為、響き渡るギターの音色。
 光明寺の不正改造による復活ジローがチェンジすると、左腕がウナギの腕になるのは面白い趣向で、今更ながらにダークロボットのやたら高度な変身能力と、ジローのチェンジは同系統のメカニズムなのだな、と。
 宿敵の左腕が切り落とされた自分の左腕になっている、割とちんぷんかんぷんな状況を何故か平然と受け入れたウナギは、キカイダーの左腕をコントロール
 「左手が……」
 「左手がどうしたのよ?!」
 「抑えていないと勝手に動き出そうとするんだ!」
 し、鎮まれ、俺の左腕……!
 文字通りに悪魔の左腕を宿したジローは、ミツ子たちを遠ざけようとするが、近づいてきた半平をぽかり。
 「吾輩だけが、なぜ殴られるの?」
 ……前回の態度が色々と悪かったからでは(笑)
 そこで本物の左腕を取り出したミツ子は、その場で緊急オペを開始すると、主人公の左腕を引っこ抜いて投げ捨て、凄いぜダークの女!
 開始当初は、実の父親である光明寺博士の圧倒的ヒロイン力の前に押される一方のミツ子でしたが、中盤以降、恋慕の情、という言葉一つでは片付けきれない思い切りの良さで独自の存在感を確立。同時に、ジローにとってはどんどん“重い女”となっていくのが運命の皮肉ですが、話が進むほどにミツ子さんは後の三枝かおる(『特捜ロボ ジャンパーソン』最大の狂気)のプロトタイプに見えてきますし、ミツ子さんの存在を下敷きにしたからこそ、かおるはあそこまで狂気のステージを引き上げられたのかもしれない、と思えてきます。
 ようやく父親と再開したゲスト少女だが、観光バスに助けを求めたところで捕まってしまい、伊香保温泉といい皆生温泉といい、『キカイダー』世界の観光バス業界は、色々と大変。
 父娘が執拗に狙われている理由に思い当たったジローは、最初に出会った灯台近くの海中に潜ってダークの秘密基地を発見すると、内部に爆弾を仕掛ける珍しい搦め手を見せ、秘密処刑場に運び込まれそうになった父娘を救出。
 「灯台から海底へ繋がっているおまえ達の秘密実験場は、あと1分で爆発する!」
 「なんだと?!」
 「アオデンキウナギ! 今度こそ許さない!」
 無慈悲なる基地爆破宣言から地上に降り立ち、呪われた左腕を克服したジローはフルパワー。
 だがそこに、前世からの宿業を呼び覚ます悪魔の笛が鳴り響き、やめろ! 俺はもう、黒い翼の天使には戻らない!
 ナレーション「その時、海底秘密実験場にジローがセットした爆破装置が作動した!」
 と、『キカイダー』には珍しい、事前の工作活動が鮮やかに繋がって、おお成る程(普段、偶然や敵のミスに助けられるパターンが多いので、結果的なものとはいえ、主人公自らの行動によるものだったのも良かったところ)。
 スイッチオン! 1・2・3!
 今度こそ、暗黒戦士としての前世を断ち切ったジローはチェンジに成功し、回転アタック、大車輪投げ、そしてトドメのデンジエンドを浴びせ、黄昏が迫りつつある海岸で、アオデンキウナギはネジと歯車に還るのであった。
 父娘の再会は果たされ、ミツ子たち一同は皆生グランドホテルを去っていき、前回予告の「だが、うまくダーク地下室に潜入する! 同時に地下室は大爆発を起こした!」は、クライマックスだった事が判明(笑)
 『キカイダー』次回予告は、次のエピソードを見始める頃にはもう忘れているというぐらい、普段全く頭に入ってこないのですが、入ってきたら入ってきたで、やはりほとんど喋っているのではないか疑惑。
 「それでは、次回の、「凶悪キメンガニレッド呪いの掟」をどうぞお楽しみに」
 そして急にフレンドリーになったのですが、ナレーションさんの身に、いったい何が。