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せろりはおやつ

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第32話

◆ドン32話「けっとうソノ2」◆ (監督:山口恭平 脚本:井上敏樹
 (ドン・モモタロウ、遂に来た、この時が。私の人生の全てを懸け――おまえを倒す)
 (感じる。物凄い殺気だ。ソノイに勝るとも劣らない)
 (今日で決着が付く。脳人か、ドン・モモタロウか。何故こうなったかといえば……)
 ドン・モモタロウvsコンドール仮面&スター仮面の構図に三者のモノローグが重なって、第25-27-28話と続けた導入パターンが再び持ち込まれるのですが、いったい誰の中で流行っているのでしょうか。
 今回の仕掛けとしては、“第27話と共通”である事に意味があるのですが、それをより効果的にする為には第25話と第28話の存在がノイズになっており、その時点では今回の仕掛けを狙っていた可能性は低そうにしても、繰り返している割には中途半端さをは感じる使い方(昔話的、というわけでもなく)。
 とにもかくにも時は少々遡り……ソノザの読みふけっていた『初恋ヒーロー』(カバーぼろぼろ)を取り上げたソノニは、花火を楽しむドンブラ一同の前にビジョンを送り込んで決闘を申し込み、物凄く邪悪な笑みで承諾するタロウ。
 「今度の戦い。ソノイの弔い合戦ではない。……ソノイの敗因は、相討ちを狙った事だ。愚か者に過ぎん」
 「……ああ、わかっている。俺たちは、脳人として、ドン家の生き残りを倒さねばならない」
 己の美学に絡め取られ、最初から精神的に敗者となっていたソノイに対し、脳人の戦士として二対一でもドンモモに確勝を期すソノニとソノザは、ムラサメを仮想ドンモモと見立てての特訓を開始し、空をゆく雲の心。それが会得できれば、天は自ずから開けてくる!
 これが45年ぐらい前だったら丸太の上で一心に座禅を組むところですが、今は2022年なので戦闘シーンが盛り込まれる一方、仕事に精を出すタロウの前にはジロウが現れて助力を申し出るが……
 「10年……いや100年……いや1000年早い」
 と、ぞんざいに撥ね付けられていた。
 食い下がるジロウに実力の差を思い知らせたタロウは、打ち倒した舎弟を邪悪な表情で見下ろし……なんかちょっと、供物に飽きてきて荒ぶる一面が活性化してきているのでは。
 根本的にタロウ、制御されないヒーローは暴力の権化に等しく、「英雄」と「荒ぶる鬼神」は表裏一体の存在である事を体現しており、


 ところで、酒呑童子に、異類婚姻→鬼というプロセスが認められる一方、酒呑童子を退治する英雄たちの出生を探ると、奇妙なことにそこにも異常児、異類婚姻のモティーフが漂っているのである。
 (中略)
 英雄とその敵である怪物は、同じ根から生まれた異なる枝、相対立する同族といえるであろう。私が、頼光一党は彼らの同族である酒呑童子たちを退治している、と述べたのは、このような意味からである。英雄は、彼の出自、彼の過去、もう一つの彼の否定として、鬼などの怪物を退治する。退治することによって社会に迎えられ、英雄となるのである。
(『神々の精神史』小松和彦

 今作に民俗学の方面から光を当てると、この辺りの話はどんぴしゃだと思うのですが(今作に限らず、石ノ森ヒーローからなる流れのアーキタイプといえますが)、そんなタロウが「縁が出来たな!」を繰り返しているのは、改めてどこかもの悲しさがあり、掴みのキャラ付けとやや過剰なギャグ要素かと思いきや、宅配便業務というのは、実に良く出来た設定だなと。
 一方で、幼い日に地縁の中に取りこまれる事で鬼である自分(本来の出自)と分裂していたジロウは、タロウを沈めて組の跡目を継ぐ手段を求めて服役中のオヤジから情報を得ようとするが、
 「強さの秘密…………それは、タロウがタロウだからだ」
 案の定、なんの役にも立たなかった(予想した言い回しが100%ドンピシャでした!)。
 「だが、君の中には二人の君が居るようだ。その二人が一つになった時、或いは、タロウに迫る事が出来る、かもしれない」
 「……二人が……一つに……」
 つまり、
 「ジローウ」 「クロス!」
 「ドララーーム!!」
 であり、
 ドン・モモタロウを ルロルロロ やっつけるんだ ズババババーン
 という事ですね!
 ジロウが面会を終え、根が真面目なソノーズの二人がムラサメを相手に特訓に打ち込んでいた頃、元手裏剣鬼で魔法鬼の男が実家でポニーの世話をしていたが、馬の模様が手裏剣に見えたり、覆面を被った忍者馬に見えてくる禁断症状を発した末、なんとビックリ三度目の鬼に。
 「母ちゃん、ごめん! 忍者道が、俺を呼んでいるーーーーーー!!」
 だって、忍者だぞ? かーーーっと熱くならないか?
 東映のDNAが囁くまま、命がけの冒険に、今日も旅立つ者がいる――登場シーンで馬の世話をしていたので星獣鬼もあるかと思っていましたが、コンパスを付け特徴的なジャケットを割とそのまま身につけた、モチーフの取り込みがストレートなデザインの轟轟鬼がレディゴー(そういえば原典にも、主要キャラに忍者が居ました)。
 誰にでも、たった一つ、大切な忍法がある。
 果て無きニンジャスピリッツが輝く場所を目指して誕生する中、いよいよ決闘当日。
 「確か、お昼からでしたよね、対決の時間」
 鬼猿雉は喫茶どんぶらに集い、なんかこれ、知っているな……から、第27話の筋をそのままなぞり、決闘を約束した相手に待ちぼうけを食らわせて急な仕事をこなしていたタロウの元に姿を見せる、ソノニとソノザ。
 「しかし、ソノイの時と同じような展開だな…………まさか、この後!」
 どこかの管理人が因果律をちょっといじって、ニヤニヤしているのではないか疑惑も浮かぶ繰り返し、個人的にはいまいちピンと来ない趣向でしたが、やはり根が真面目なソノニとソノザは対決の遂行の為にタロウの仕事を手伝い、ようやく決闘を始めたのも束の間、これまたドン27話のリフレインとして銀ドラが乱入。
 「こいつ、マジでうざいな!」
 「よせジロウ! これは俺の戦いだ!」
 「 プレシャス 戦いは常に早い者勝ちだ!」
 更に、忍者装束にインディジョーンズ風味の扮装を合わせ、ツルハシ握った冒険忍者が現れると(屋内決闘場として雰囲気の出る石切場と、ヒトツ鬼の原典オマージュが噛み合って、これはお見事でした)、轟轟鬼にスタートアップして、アタック!
 これにてお供一同が召喚されると、神聖な決闘の邪魔はさせないぞと鬼と銀トラをもぎ離していき、チームヒーローの一人が決闘をするとなると、心配したり罠を警戒したりでなんだかんだ現場に立ち合いがちなところを、じれながらも信じて待つし決闘を尊重する、のは結構珍しそうながらドンブラらしいスタンスではあり。
 ようやく決闘が仕切り直しで始まると、コンドール仮面とスター仮面はムラサメを相手に特訓したソノーズコンビネーションを発動。弓と槍の時間差攻撃でドンモモを回避不能の死地へと追い詰めるが、ドンモモが咄嗟のアルターチェンジにより点の攻撃を縮んでしのぎ切るのは、久々こももロボの使いどころとしても面白いアイデアで格好良かったです。
 かくなる上はとスター仮面はムラサメを開封し、初恋のパワーでドンモモと切り結びながら外へ飛び出すと、にわかに天がかき曇り、大地に突き刺さる蒼い光の奔流!
 山口監督の趣味っぽい大爆発が起きると、もうもうとたちこめる白煙の向こうに姿を見せたのは、黒い天女、黒い担ぎ手、赤い神輿と、その上で腕組みした男……繰り返しネタを挟んで登場をここまで引っ張るなら、予告では隠しておいて欲しかったところですが、腕組みして扇子を持っているだけで既に面白いので、ソノイ、強い(笑)
 ……そう、神輿の上に足を広げてふんぞり返っていたのは、ドン・モモタロウとの決闘に敗れ、お別れの会まで開いた筈の、脳人の戦士・ソノイ。
 「はーっはっはっは! はーはっはっっは!」
 衣装の襟首と髪に朱色が混ざり、血のように“赤い瞳”を開いたソノイは、紙吹雪の舞い散る中、まるでドン・モモタロウのごとく扇子を広げて高笑いし、ズバッと参上! ズバッと解決!
 だが、脳人の世界じゃあ二番目だ!!
 「ソノイ?!」
 「え?! どういう事? タロウが、倒した筈じゃ」
 「ふふっ……あいつ」
 明らかにノリの狂った百目ソノイもといソノタロウの復活劇に一同状況飲み込めない中、本日ここまで要所で邪悪な表情を浮かべてきたドンモモが思わず笑みをこぼし(ここで仮面に下を向かせるのが素晴らしい)、予告でほとんど見せてしまったエピソードの見所に、赤が超嬉しそうなリアクションを見せる1アクションで面白さ上乗せしてきたのは、実にお見事!
 「待たせたな! お供たち!」
 扇子を振って同僚をお供呼ばわりしたソノタロウは、天高く跳び上がると、アーマー装着そしてフェイスオン、と月をバックに如何にも正統派のヒーローめいた変身を見せると、強化胸装甲を身につけたミラクルバロム仮面として復活し、もうこの際、マスクの中央に雷のモチーフが付け加えられても良かったのではぐらいの勢い(笑)
 「うわっはっはっはっはっは!」
 「何故ソノイが……? ……だが。やめろ、ソノイ。これは、私とソノザの戦いだ」
 「ああ」
 「うるさいぞお供たち! お供のくせに、意見をするな!」
 「な、なんか、様子が変じゃないですか?」
 「うん……なんか、タロウみたい」
 タロウエキスを注ぎ込まれて蘇生したソノイ、人格がタロウと混ざるのでは……? という全国で6千万人ぐらいが思いついたであろう展開予測をストレートにやってきましたが、その内、正気に戻ったり人格のせめぎ合いが発生したりもしそう。
 ソノーズの同僚に剣を突きつけ、やたら高圧的になったバロム仮面は高笑いしながらドンモモに斬りかかると凄まじい威力の斬撃を放ち、追加装甲がシールドになるギミックで、ドンモモの攻撃を鮮やかにガード。桃缶のパワーにより、改造人間というか半神半人の存在としてヒーロー強度の上がったその剣技はドンモモを押し込むが、斬り飛ばされたドンモモもその勢いを利用して反撃を突き入れる、という殺陣の流れは非常に格好良かったです。
 「はーっはっはっはっは!」 「ふふは、わーっはっは!」 「行くぞ!」
 戦いに酔いしれるかのように両者の笑い声は重なり合い、強すぎるが故に孤高の存在であるタロウが、己と並ぶ存在との再会の喜びを、戦場において全力で表現するインパクトは、ここまでのタロウの描写が繋がって良い演出でありました。
 一方でタロウは「同じ存在」を求めているわけでは無さそうなので、ソノイがこのまま完全にタロウと同一化してしまうのは死亡フラグに感じられ、ソノイにはなんとか自分の音楽を取り戻してほしいところ。タロウにお供や今まで繋いできた縁があるように、ソノイにも同僚らとの縁が生まれていると思いたいですが。
 「嬉しいぞ、ソノイ。だが、何故生き返った……おまえは、確かに死んだ筈だ」
 「おまえが生きているからだ! 似ているんだよ……俺とおまえは。海と空のように! 海と空は互いに向き合いながら、決して交わる事は無い! だが、どちらも青い!」
 ここで周囲をCGで表現してしまったのは好みから外れましたが、スムーズに仮面を外して生身の芝居のやり取りに移行させる為には、やむを得ない処置ではあったでしょうか……。
 「俺と勝負しろーーー!!」
 両者拮抗する戦いに轟轟鬼が大冒険してくると、その突撃をカウンターで待ち構えるドンモモだが、それよりも早くバロム仮面の剣がズバッと一閃し、轟轟鬼は大爆発。
 ……まあこの人、たまたま執着がドンモモに向いていたからいいものの、「新たなる力」と称して繰り返し鬼に成った上にある程度まで自由意志でそれを制御していた節がある危険人物なので、若干のやむを得ない感が漂いますが、たぶん生まれてくる時代を間違えたタイプ。
 久々のソノーズ任務達成により、タロウとソノイ、両者の征く道の相容れなさが改めて強調されると、もはや決闘はお開きと判断したコンドール仮面から「ドン家の力を見せてみろ!」とけしかけられたムラサメが、マザーの声に導かれるままブラックオニタイジンへと変身巨大化。
 予告で見せない隠し球はこちらだったとなりましたが、OP映像&ソノタロウの「お供」発言から、
 ロボソノイ! ロボソノニ! ロボソノザ! が大合ッ体して、誕生・モモタイジン!!
 になるものと、全く別方向に期待感を高めてしまっていた為に、ムラサメ単独による唐突なオニタイジンモドキだったのは、ちょっとがっかり(笑)
 白倉P的には《スーパー戦隊》において、フルCGによるロボット同士のバトルを描く事に一定の意義を見出しているようですが(将来の事を考えると必要な蓄積ではあるのでしょうが)、ロボット物だったりTCG物だったり、全部が全部ではないでしょうがキッズ向けホビーアニメのCGバトルも相当クオリティが上がってきている現在、“《スーパー戦隊》ならではの面白さ”をフルCGバトルで出すのはなかなか難しいようには感じられ、このぐらいの出来だと、天装鬼回の着ぐるみオニタイジンバトルの方がむしろ見栄えがする、のは悩ましいところです。
 第2話の烈車鬼戦は面白かったですし、使い方次第で面白い絵を見せられるからこそ、知見と技術を蓄積していく必要はあるのでしょうが、造形物とフルCGだと、見る側が受け止めるリアリティラインのコードが変わってくるので(まあこれは、私個人の“慣れ”の問題も出ますが)……そこの調節は、難しいなと(勿論、様々な特殊効果が多分気付いていないところでも色々使われているとした上で)。
 ノコギリザメソードの乱舞を受け止め、飛び道具を凌ぎ切った超絶オニタイジンは、すかさず繰り出した必殺の弓矢の一撃・ドンブラシャングリラでバトルムラサメロボを撃破し、マザー含めて悲鳴の様子からそれなりにダメージを受けたらしいムラサメは撤収。
 そして――第27話クライマックスで使われたボーカル曲のピアノソロアレンジを背に、互いに口の端に笑みを浮かべたタロウとソノイは剣を構えて対峙すると、両者同時に振り下ろし…………今度地面に倒れたのは、ドン・モモタロウ。
 演出家としては、自分の色を消して他の監督(ここでは田崎監督)の映像をほぼそのままコピーするのはかなり思い切った冒険ではなかったかと思うのですが、ソノイが背を向けて立ち去った後、のっそり出てきた銀トラが、倒れたタロウの上にかがみ込んで、どうしようこれ……みたいに様子を窺った上で拾っていくところまでアレンジで再現された凝り具合に大笑いしてしまったので敗北(笑)
 銀トラ、ちょっと悔しいけど、今までで一番面白い仕事だったよ、銀トラ……。
 快傑ソノイ復活、そしてタロウ劇中2回目の死亡となり、嘘による心停止を含むと、もはや園田真理より死んでいるのではないか、タロウ。いやまあ、今回はまだ、死亡判定とは限りませんが。
 ところで、冒頭の花火シーンでのやりとり、
 「私たちの戦いは続く。ある意味、夏よりも暑い日々だ」
 「でも……いつまで戦えばいいのかな? 私たち」
 は、折り返しの最終回詐欺を実は大胆な布石だったのではと見るとなかなかに興味深く、『五星戦隊ダイレンジャー』(1993)や『超光戦士シャンゼリオン』(1996)を踏まえてみると、1年物のヒーロー作品をどう“終わらせる”のか、について白倉Pが大まじめに何か仕掛けたがっている可能性もありそうかなー……とは。
 次回――誕生・脳ブラザーズ。そして、ゴ、ゴールデンコンドル?!