東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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時間が無ければ生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第27-28話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第27話「砕片」◆ (監督:佐藤健光 脚本:小林靖子

  • 「俺としたら……おまえも神崎の犠牲になった一人だ」……それにしても秋山は、20年ぶりに見てもひたすら格好いい。
  • ところがその秋山、子供をサメモンスター(前回が戦車だとしたら今回は軍艦的な感じで、名前を関連づけられているように繋がりを感じるデザイン)から守った際に、変身シーンをばっちり目撃されてしまう。
  • その少年・拓也が「変身!」を繰り返し真似するなどライダーの上辺に憧れて秋山に付きまとい、真司や吾郎ちゃんも巻き込んで騒動を引き起こした末に、蓮は敢えて痛々しく血なまぐさい戦いの現実を見せつける……。
  • 仮面ライダー格好いい! 俺もなる!」という少年に対して「こんなのなったら駄目!」という内容の為にどうしてもメタ的なニュアンスは付きまとい、放映当時のショックやサプライズ、作品に対する世間の受け止め方を含めたリアルタイムの空気の中でこそ、効果が最大限に発揮される、といった感じの作り。
  • そういったメタ的な視点を除くと、小学生男子の「憧れを守る」のではなく「憧れの現実(暗黒面)を突きつける」……例えば、「スポーツ選手になりたい!」と憧れる子供に対して周囲の大人がよってたかって「プロで食っていけるのは一握りだから」と口を揃えるみたいな話なのであまり気持ちよくはない、というのが正直なところ。
  • 少年の「生意気な奴らなんかやっつけてやれる」発言に対してのカウンターにしても、真司の「おまえは、絶対誰とも戦ったりするなよ」が何かと戦う事を否定するばかりで(真司的には「一方的な暴力」を否定しようとしているのはまあわかるとして)、“代わりになる何か”を示すわけでないのも、物足りない部分。
  • そもそも論としては、少年が憧れる「ヒーロー」と、今作における「仮面ライダー」は別物なのを、意図的に混ぜ合わせているのが性格が悪いのですが、どちらかというと、情を捨てきれない悪人が誤解から子供に懐かれ、紆余曲折の末に、「俺みたいになっちゃあいけねぇよ」と去って行く話の亜流かな、と。
  • そういう点でも、普遍的なヒーローテーゼを扱っているというより、原典『仮面ライダー』における「異形」と「孤高」の要素を抽出した上で、「今作では、“仮面ライダー”を敢えてこう書きますよ」と、好むと好まざると、その望みの強さによりアウトサイダーとなった“誰かの力になる気も憧れの存在になる気もない男たち”の姿を強調した、『龍騎』ローカル色の濃いエピソード、とでもいいましょうか。
  • そこにまだ残っている普遍性といえば「一片の情」といえるのですが、ミラーワールドでの戦いを外部から目にしようとする事で、デッキを握る少年に、男二人(真司&吾郎)が自然と寄り添う構図になるのは、面白かったところ。
  • 蓮と恵里の関係を知り、神崎邸に駆け込んだ優衣は、士郎と対面。説得に耳を貸さない士郎を前に、興奮状態で次々と新聞紙を引きちぎると、鏡の向こうには数多のモンスター達が蠢き、「あたしが戦うよ」宣言までして鏡を砕いて回ると、それを押さえ込んだ神崎士郎の体から舞う黄金の羽毛――。
  • 「お兄ちゃんの目的は何なの!?」「――力を手に入れる。最後に残ったライダーを仕留め、俺はその力で、神にも悪魔にもなれるだろう。必要だったのはおまえではない。おまえのミラーワールドを覗ける力だ。だが、ここまで来ればもう用は無い。邪魔をするなら、おまえを消す」
  • 士郎のボスキャラ宣言に「もう、兄妹なんて思わない!」と訣別の言葉を投げつけて優衣は屋敷を去り、その背に向けて「おまえは真実を知る必要は無い」と、どこか悲しげに見送った士郎の手には、カードデッキが……。
  • 復讐手帳、ならぬ借金メモを真司に見せつけ、拓也少年の世話を押しつけようとする秋山、!マークの書き方が、割と可愛いな秋山……。
  • 真司と吾郎ちゃんの間に芽生え始める、餃子の繋ぐ友情。
  • 「なんだこれ……」……ゾルダの乱入に続き、ナイトがサバイブ発動でサメモンスターを撃破したところに通り魔が参上し、一気にR-15に近づく三つ巴の戦いにどん引きした少年は、カードデッキを真司に返却。
  • 龍騎・ナイト・ゾルダ・王蛇がミラーワールドに集い、王蛇が融合ファイナルベントを放とうとしたその時、場に腕組みした光る人が現れ……90年代前半の《メタルヒーロー》シリーズを履修した今見ると、唐突感・デタラメ感・キラキラ感、の諸々がなんとなくゴールドプラチナムっぽい(笑)
  • ……真司……ハイパー真司……
  • ※参考:ゴールドプラチナムとは、『ブルースワット』(1994)に中盤から登場する、光り輝く上様的存在である! 時空間を超越したストーカーもといスーパーヒーローとして主人公たちのお株を強奪しながらパワーレベリングを行い、既にスクラップと化していた作品世界を思い切って溶鉱炉に叩き込んだテコ入れ問題児だ!
  • 「戦いを続けろ。生き残った者は、私と戦い、力を得られるだろう。13人目である、この、私と」……さすがにいきなり、その場の全員に新カードをプレゼントとかはやりませんでしたが、黄金のライダーは、13人目を宣言。
  • 一方、花鶏を訪れた令子が衝撃の情報を優衣にもたらし……神崎士郎は1年前に死んでいる?!

◆第28話「修正」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:小林靖子

  • 「まだ私と戦う時ではない。おまえ達は今のまま戦い合えばいい」……金色のライダーは、腕組みしたまま瞬間移動を繰り返し、直立姿勢から上半身の動きだけでライダーを圧倒するその実力の一端を披露。
  • 「だが、少し修正が必要になった」……謎の力・タイムベントにより、目を覚ました真司は、青緑色のジャンパーを着ていた。
  • 「優衣ちゃん、蓮……」「いきなり馴れ馴れしい奴だな。なぜ俺たちの名前を知ってる?」……そこは何故か、2月の世界。強い違和感を抱く真司だが、その記憶と知識は見る見るうちに失われていき……高速で半年間の戦いをなぞっていく変則的な総集編風味。
  • 途中で我に返った真司は起こった出来事を改変しようとするも、再び記憶が欠落して失敗し、積み重なっていく、死、死、死。そして――「修正は終わった」。
  • 今回冒頭の状況に戻ったその時、金色のライダーが転移する場所を、大量のメモを貼り付ける事で記憶に刻み込んでいた真司のパンチが炸裂し、「おまえを一発殴りたかった」と、“運命”に一撃を入れる龍騎だが……
  • 「おまえ達の戦いは、何も変わらない」「いや……一つだけ変わった」「なに?」「重さが。消えていったライダー達の重さが、二倍になった! これ以上は増やさない。人を守る為にライダーになったんだから、ライダーを守ったっていい!」
  • 総集編にかこつけつつ、黄金のライダーのある目的の為にこの半年間をまるまる繰り返した事になる相当デタラメな展開なのですが、それをただ、悪意の思うがままに終わらせる事なく、主人公の意識のアップデートに繋げたこの台詞は、大変お見事。
  • また、『鎧武』感想の時に何度か触れましたが、たとえ作り手の側がそれを無駄だと認識していたとしても、登場人物が摂理に一撃を入れる事そのものが必要な場合ってやはりあると思うわけです。
  • 「私と戦うのは最後の一人だ。続けろ。戦いをやめるな」……黄金のライダーは姿を消し、そして修正されたのは……優衣が描いた一枚の絵。
  • (おまえは俺が守る)……神崎士郎が、相当深刻なシスコンである事が、より明確になり、次回――男たちよ、Fly high?!