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ゆうかいとふくしゅう

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第30話

-これまでの『あばたろう』-
 俺の名は五色田介人。
 ヒーローとして生まれ、ヒーローとして戦い――ヒーローであり続けるもの。
 すなわち、ヒーローオブザヒーローオブザヒーロー。
 願いを叶える為にキビ-ポイントを集めるDGP(ドンブラグランプリ)もいよいよ後半戦に突入。
 これまでの過酷な試練によって多くの人間が脱落していき、およそ5000人の参加者の中から、現在残ったドンブラザーズは5人+1人。
 ドン・モモタロウまさかの脱落、運営からの新プレイヤー投入、タロウ敗者復活、とイレギュラーな出来事もあったが、問題は無い。なぜなら俺は、ヒーローオブザヒーローオブザヒーロー。喫茶どんぶらには、無いものはないのだから。
 ドラゴンファイヤーの結成、先代サルブラザーとの出会い、雉野のリストラ、『リバイス』最終回、そして宿敵ソノイの撃破……数々の戦いを乗り越え高まるドンブラザーズの絆は遂に、究極の鬼退治の力、トラドラオニタイジンをも生み出した。
 ……だが、本当にそれでいいのだろうか?
 スーパー戦隊とはもっとこう……任務をさぼってパチンコに繰り出したり、身内を新装備の実験台に使ったり、仲間をさしおいて自分だけのお宝を探しに行ったり、関節技で独裁体制を築き上げたり、挙げ句の果てに惚れた腫れたで殴り合いをするような、もっと殺伐として、ギラついた関係ではなかったのか?
 つまり俺が今やるべき事は、ドンブラザーズに更なる混沌をもたらす事。
 そう、火種なら、あるよ。
 ドン家の作り出した不可殺の存在・獣人に翻弄される男と女、生き方に迷う獣人殺しの妖刀ムラサメ、ジロウを導く内なる声、そしてウサギの被り物……勿論、あの有名なイベントも是非行いたいと考えている。
 「私が、おまえの、父だ!!」
 おや、電話だ。
 はい、喫茶どんぶら……あ、いつもお世話になっています。……はい、え? 写真集第2弾が返品続出で不良在庫を山ほど抱えて、第3弾の話は無しに?! いや、ちょっと待ってくれ、もう、自前の新衣装を大量に用意して、おい、ちょっと待――
 ……
 …………
 「……こんな世界、俺が終わらせる」


-DGPルール-
 桃井タロウに跪いて忠誠を誓え!


 ただし、話を聞いて貰えるとは限らない。


◆ドン30話「ジュートのかりゅうど」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
 「ドンブラザーズの、オニシスターだな」
 はるかのオバ・ゆり子が拉致! 拉致犯はアノーニ! オニシスター名指しの電話!
 と衝撃連発のアバンタイトルから、はるかは仲間たちに事情を説明し、今更ながらアノーニとは、一般人に紛れて脳人に加勢する戦闘員みたいなもの、と認識が説明されて、その要求は……
 「獣人を捕まえて隔離せよ」
 いったいこれはどういう事なのか……一同混乱そして困惑していると、カウンターに座っていたロン毛の男が立ち上がって振り返る。
 「獣人は、我々アノーニの、天敵なのです」
 「アノーニ……! おばさんを! おばさんを返して!!」
 ロン毛アノーニに掴みかかろうとしたはるかは、タロウに足をひっかけられ、更に踏みにじられ、純粋に、ひ・ど・い。
 「獣人は、我々を襲い、食べるのです。とても迷惑しています」
 まあ普段、一般人に混ざって真面目にお仕事していますからね……。
 はるかはタロウに踏まれた状態からもアノーニにむしゃぶりつこうとして猿原に止められ、はるかオバ(スマホの表示からも、「叔母」なのか「伯母」なのか不明)はここまであまり出番が無かったので、大切な家族だと思っている事を示すのに、やや過剰なぐらいで丁度良い描写となりました。
 感情の爆発×2でおばさんへの気持ちを圧縮して表現する為に得物を掴んでも違和感ゼロな上、合間にタロウの傍若無人ギャグを挟んでも、それをバネにしてみせるはるか、キャラが強い。
 ロン毛アノーニは、ドンブラザーズの身辺調査により人質に出来る対象が、はるかオバしか居なかったと弁明。雉野がそれに異議を唱えると言葉を濁して獣人リストをスマホに送信し、なんとそこには、雉野みほの名前が。
 物腰は丁寧だが有無を言わせぬロン毛アノーニは
 「マスター、お会計を。皆さんの分も一緒に。おつりは結構です」
 と紳士的な態度を崩さぬまま札を出して退場。
 「なかなか礼儀正しいな。気持ちがいい」
 タロウからは高評価が下され……やはり餌付けに弱いのではないか疑惑が更に深まります(それもまた、つまり一種のお供えなのか……?)。
 その頃ゆり子おばさんは、厳選された二枚目アノーニから最高級料理でもてなされており、拉致監禁の待遇に順応しつつあった。
 (誘拐に、松竹梅があるなら……これは、松ね!)
 はるかの反応と比べるとだいぶ酷いのですが、『ドンブラ』、“悪の組織”的なものを介していない為に誘拐シーンなどがリアルに寄ってしまう厄介さがあるので、その後の状況をギャグに寄せる事で全体のバランスが取られており、この辺りは諸田監督のセンスが良い形で出た感(諸田監督、この10年ほどの《ライダー》でそういったアプローチを取ると、だいたいやりすぎ感が出てしまっていたので……)。
 リストは何かの間違いに違いない、と雉野が妻のストーキングを始める一方、獣人リストの中に学園のマザコン王子・花村、の母親の名を目にしたはるかは花村家を訪れ、二つの追跡行を重ねて描く事で面白みを出すと、なんとみほちゃんに別の疑惑が……?!
 「え?! えーーーーーっ?! まさかみほちゃんが、ナンパぁ?!」
 みほちゃんみほちゃんみほちゃんあり得ないあり得ないあり得ない許さなぁいそうだあの男がこの世から消えて無くなればみほちゃんが若い男をナンパしたという事実も消え去るからこうつうあんぜんこうつうあんぜんこうつうあんぜぇん!とジェラシッ鬼になりかけた雉野だが、道路に飛び出して車に轢かれそうになった事で我に返り、守ろう交通安全!!
 みほがしていたのはナンパではなくカットモデル探しだと判明して一件落着していた頃、花村母がスーパーで生肉にかぶりつく姿を目撃して疑惑の確証を得てしまったはるかは、花村母に見とがめられて強引に花村家に連れて行かれてしまう事に。
 一方、はるかおばを誘拐していたアノーニ一味のアジトをネコ獣人軍団が強襲し、禁断の身内狙いに手を出したアノーニ部隊は全滅で解決。
 花村家で昼から、肉の無いすき焼きをご馳走されそうになっていたはるかの元に、ネコ元刑事・狭山獣人から電話が入るとはるかは文字通りに這々の体で花村家を逃走し、誘拐の構図がそのまま別の勢力にスライドするのは、誘拐物のツボを押さえた面白い展開。
 「ムラサメを……渡せ」
 アノーニの秘密作戦を乗っ取った獣人たちは、獣人殺しの妖刀封じを目論み、運ばれてきたポークソテーを皿から直接むさぼり平らげる狭山ネコ、まさかこんな存在感のあるキャラクターに成長するとは……(笑)
 「お代は?」
 「……払っとけ」
 「……態度がなってない。感じが悪い」
 狭山ネコは無銭飲食で走り去り、アノーニは決してドンブラザーズに対する“善”ではなく、逆に獣人もまた“悪”とは限らないながら、この仕掛けが、実に上手い(笑)
 その頃、今日も今日とてベンチに寝転がりながら、いちゃいちゃ回想にふけっていた犬塚の元にソノニが現れると対獣人の共闘を持ちかけ、体の前で落ち着かなさげに手を組み合わせながら言いよどんだり、妙に可愛げを出しているのですが、共闘の持ちかけといい、リーダーポジションだったソノイ不在の影響、といったところでしょうか。
 単に照れてる、でもそれはそれでいいのですけど(笑)
 「あ? ……えー…………おい、ちょっとま!」
 言いたい事を一方的に告げるとソノニは姿を消すが、犬塚翼は、獣人の事も、ムラサメの事も、全く把握していなかった。
 「……獣人? ムラサメ? なんの話だ。だいたい、どうやって他の仲間と連絡を取る」
 しょせん俺は孤独な一匹狼なのさ、と無駄にハードボイル度を高めて苦笑いなど浮かべみせる犬塚だが、そこに辛さを求めた末に三角形を組み合わせたような姿になったヒトツ鬼が現れ、プリズム的なイメージかと思われますが、モチーフの不明瞭さは80年代ぽいな……と思ったら、超新星鬼との事。
 エピソードテーマとしては誘拐繋がりと思われますが……辛(から)い…………辛(つら)い…………?
 これによりドンブラ召喚され、イヌは共闘の提案を伝えるが超新星鬼(語呂が悪い)には逃げられてしまい、おばさん救出の為に獣人が取引を指定してきた屋敷へ急ぐ黄を、青桃黒が慌てて追いかけた後、ドンモモの前に現れたは――鶴野みほ。
 「獣人は折り紙を折る。今、ネコを折るものたちが集合している。奴らに手を出すな。そのかわり、ネコの獣人たちは私が止める」
 ガラリと雰囲気の変わった鶴野みほ(化粧も変えているのでしょうか?)はドン家の生き残りに向けて淡々と告げ、髪型や衣装の変化も加えつつ、〔雉野みほ/夏美/鶴野みほ〕と一人三役をこなしているので、みほに関しては狙ったキャスティングでもあったのでしょうが、上述の狭山刑事なども含め、こういったキャラクターが“化ける”のは、井上作品の醍醐味であり。
 「おまえも、獣人なのか?」
 「そうだ。ドン家が作った生命体だ」
 ドン家、色々どうなのか、ドン家……。
 「獣人に罪は無い。そうではないか?」
 「……それは…………そうかもしれないな」
 まあ少なくともネコ獣人はアノーニ喰いをしてはいるわけですが、果たして、“そういう風に生まれてきた事”そのものは罪なのか?
 ここに来てまたややここしいテーゼが浮上してきましたが、そもそも被害者面したアノーニが人間社会における非合法手段に訴えている事に始まり、それぞれに見えているものの違いや喫茶どんぶらでの印象操作などを交えた混線のさせ方が、精妙にして巧妙。
 脳人はヒトを資源とし、ヒトはやがて鬼と成って世界に仇なし、脳人はその鬼を狩り、獣人はその脳人を喰い、ムラサメはその獣人を斬り……では果たして、ドンブラザーズが斬るべき敵とは何なのか?
 獣人しかり、ムラサメしかり、もしかするとタロウやジロウも含め、“そういう風に生まれてきた事”の意味は、ここから後半のコア要素になってきそうでありますが、井上敏樹がそこから好んで繰り出してくる「では“生きる”とは何か?」が個人的に大好物なので、ここからの展開にますます期待したいところです。
 「……大事な事を教えよう。獣人は人間をコピーする。そして、獣人が死ねば、コピーされた本物の人間も死ぬ」
 恐らくタロウの返答に一定の満足をしたのか、鶴野みほは、獣人/人間の秘密を明かし、獣人は精神憑依型ではなく、適合者をコピーした肉体的にも精神的にも別の存在として活動している事が判明。
 呪術的なパスの影響なのか生命がコピー元と繋がっているようですが、裏を返すと獣人が不可殺なのは、“命が別に保管されているから”なのかと推察され、逆にコピー元を殺すと獣人が死ぬ、という可能性もありそう。
 そしてこのシステムを考えるとドン家は、人間と獣人を順次入れ替える事により、静穏で故障の少ないエネルギー供給機関を作り出そうとしていた節が窺えますが、ドン家…………。
 「ネコは気ままに遊ぶ。ツルは物語を紡ぐ。そしてペンギンは……」
 険しい表情になった鶴野みほは言葉を濁してその場を去り、ネコとツルが元の動物となんとなく関連づけられているのに納得できる一方、やはり異彩を放つペンギン。
 姿形をコピーした完全なる別人、とするならば、喫茶どんぶらマスター=ペンギン、という可能性も充分に浮上して(今作なりの筋が通って)きますが、誤誘導の可能性も大いにあるとして今やわざとらしいほどに白黒の姿で……火種ならあるよ、売るほど。
 一方、アノーニ改め獣人のアジトに辿り着いた黄はおばの姿を発見。オニシスターSWATモードで単身突入を図ろうとするが、一足先に裏口に姿を見せた鶴野みほが戦闘開始。
 「解散しろネコども。目立つ真似はするな。それが掟だ!」
 見張りの首をふん掴み、多対一で正面から制圧にかかる、みほちゃん格好いい(笑)
 「指図するなぁ!!」
 なにやら獣人には獣人のルールが存在する事がほのめかされ、人間の中に人間でないものが深く静かに潜んでいる、というのはもう25年ばかり、井上×白倉のお気に入りテーマのようですが、節穴さんの囚人ぶり、じゃなかった、囚人さんの節穴ぶりは目を覆わんばかりであり、最近出てこないのは本部で査問を受けているからかもしれませんが、ペンギン有力候補の一人ではあります。
 ネコの群れと鶴野の戦いが始まる一方、正面玄関からはコンドール仮面とスター仮面がカチコミを仕掛け、初恋の封印を解く姿が、やたら格好いい(笑)
 そこに青桃黒もやってきて混乱が生じるが、赤が獣人には構うなと戦闘中止を命令してソノーズと揉め、ムラサメの力を使いこなすスター仮面が、影から飛び出す初恋シャークでドンブラザーズに一打を与えると、揃って撤収。
 忘れられかけていた超新星鬼は、忘れられていた金ドラと共にこの乱戦に混ざり、各陣営の思惑と情報の錯綜が破綻スレスレのところを走ってギリギリ形になるのが井上敏樹のテクニカルさ全開で面白かったですが、いつも以上に、ヒトツ鬼はおまけ扱い(笑)
 今作の不満点ではあるのですが、これ以上やると破綻ラインを越えそうではあるので、取捨選択としては致し方ないところでしょうか。
 超新星鬼を単独で撃破した金ドラは、全力のアピールにドンモモから65点をいただき、鬼は巨大化。
 「な、なんで?! みほちゃん?」
 「あ? なっ、夏美」
 狭山ネコの不意打ちを受けて床に倒れていた鶴野みほを目にしたキジとイヌだが、鬼退治強制徴収を受けて、大合体! 大合体!
 超新星鬼の繰り出す本当に酷いスーパーノヴァをしのいだWロボは、超絶大合体即ドンブラファンタジアを放って合体バンクの方が長かった疑惑のある秒殺を飾り、誕生日っていうのはあらためて命の大切さを考える為にあるのです!!
 「みほちゃん!」
 戦い終わると雉野は慌ててみほに駆け寄り、犬塚は目を覚ましたみほが雉野と抱擁をかわす姿を目にして屋敷の外に愕然と佇み、ほらあるよ、火種。
 果たしてそれは、管理者の仕掛けた運命の悪戯なのか、コピー元とコピー獣人の共存が可能かどうかは現状不明ながら、「物語を紡ぐ」発言からも雉野夫妻には『鶴女房』をなぞる気配が強まり、次回――けっとうイヌとキジ?!