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うつくしいつき/うそ

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第27話

◆ドン27話「けっとうマジマジ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
(ドン・モモタロウ、遂に来た。この時が。私はこの時の為に生きてきた。そんな気がする)
(ソノイ……おまえが脳人で無かったら、俺たちはきっと――)
(……今日で決着が付く。私か、ドン・モモタロウか。何故、こうなったかといえば……)
 冒頭の状況からモノローグで時間を遡るのはよくある手法ですが、敵キャラの内心でやるのはちょっと珍しい気がする、事の発端は、プールではしゃぐドンブラ一同(除く犬)の元へ姿を見せたソノイが、タロウと決闘の約束をかわした事にあった。
 約束の日取りは三日後――その間、ソノイはソノニとソノザと特訓に励み、タロウは、普通に仕事をしていた。
 「負けるときは負ける。勝つときは勝つ。そういうもんだ。それに……特訓して強くなるなら楽なもんだが、俺には無意味。俺の強さは……辛い強さだ」
 肩を並べて立てるかもしれなかった男との決闘を前に、ずば抜けた力を持つがゆえのタロウの孤独に改めて触れられ、心配していたお供たちは、その態度に困惑と呆れが相半ば。
 一方ソノイは同僚との特訓を繰り返し、「もっと岩をーーー!」じゃなかった、曼珠沙華を用いて、サイド:タロウとサイド:ソノイを繋げつつ時間経過を示す洒落た演出なのですが、撮影時期にはまだ咲いていなかったのか、CGの出来がやや微妙なのが惜しい。
 明確に「変身」という言葉を用いるのは劇中初なような気がするソノーズは、コンドール仮面とスター仮面を前に敢えて能力の劣る生身のままで戦うソノイが、タロウの攻撃速度に対応する必殺の剣に開眼。
 「おまえ……まさか」
 「いいのか、これで」
 「……これは私の戦いだ。戦い方は、私が決める」
 そう、「ビリヤード――これぞまさにハードボイルドな男に似合う、大人の競技だ」。
 ……東映特撮でビリヤードが出てくると、脳内で自動的に左翔太郎が格好つける被害への訴訟は、どこに持ち込めばいいですか?
 「……帰ってこいよ! ソノイ」
 ビリヤード球の行方が示唆する、相討ち覚悟の必殺剣を修得したソノイの背に声をかけるソノザがおいしく、ドンブラと対立してはいるものの、必ずしも“悪”とは言いがたいソノーズのありようも積み重ねが効いています。
 では、今作における“悪”とは何か? は少々ふわふわしている部分はあるのですが――現状、いえるとすれば“過剰な欲望”と“過剰な制裁”というところでしょうか――ここからの後半戦で、それをどう組み立てていくのかに期待したいところ。
 運命の決闘当日、約束の時間に約束の場でタロウを待つソノイだが……タロウはいつまで経っても姿を見せず、とうとうシロクマ宅急便に殴り込むと、そのタロウは黙々と車に荷物を積み込んでいた。
 「貴様、何をしている」
 「見ての通り。仕事だ。同僚が病欠でな。急な仕事が入ってしまった」
 「忘れたのか? 今日は私との約束の日だぞ」
 「あんたとの対決は個人的なこと。仕事を優先せざるえない。多くの人々が荷物を待ってるからな」
 そう言われると、それは確かにその通りかもしれない、と手伝ってしまうソノイーーー!
 かくして、ヒーローと宿命のライバルが、決闘当日に手を取り合って宅配の仕事に励む前代未聞の展開となり、スタッフはどこまでソノイを面白くすれば気が済むのでしょうか(笑)
 前作は、複雑な家庭の事情と決して恵まれない立場を背負いながら生真面目に戦うステイシーが、感情移入をさせながら物語の軸となって視聴者の人気を博しましたが、それとは全く違うアプローチで、面白いライバルポジションを作ってきたのは、実にお見事。
 ソノイは、宅配先で元獣電気鬼のかみつきおばさんに絡まれているタロウを救うべく、どこかのマスターと同じスキルを披露。
 「あんた、やっぱただもんじゃないな。礼を言う」
 おでんの件も振り返って持ち出され、そして、ドンペリが、あった(笑)
 だがすでに約束の日は遠く、おでんとはなにか、を目にしたソノイは、いよいよタロウとの決闘に臨む――。
 (ドン・モモタロウ、遂に来た。この時が。私はこの時の為に生きてきた。そんな気がする)
 (ソノイ……おまえが脳人で無かったら、俺たちはきっと――)
 互いに変身して向き合うと機先を制して打ちかかるドンモモであったが、剣を振り下ろす直前、微動だにせぬバロム仮面の構えから必殺の気配に気付くと咄嗟に足を止め、回避。
 (奴め……そうか、相討ち狙いか)
 (おまえほどの男を倒せるなら、この命、惜しくはない)
 (悪いが俺の命は俺だけのものではない。くれてやるわけにはいかない。だが……)
 捨て身のバロム仮面を前に、さしものドンモモも勝利への太刀筋を見いだせず、膠着状態の末に互いに剣を振り上げたその時――
 「ちょっと待ったーー!! おまえがドン・モモタロウと戦うなんて10年早いんです!」
 全く以てお呼びでない男・桃谷ジロウ(そういえば、冒頭のプールにも呼ばれていませんでした!)が乱入すると金ドラに変身し、カシラのタマ取るんはワシじゃーーーとソノイを襲撃。
 (なんて野暮な奴なんだ!)
 「よせジロウ!」
 ジロウ、ジロウなりにこつこつと貯めてきた好感度を、一瞬でドブに放り棄てるムーヴには、ちょっとした感動さえ覚えます。
 更に6話ぶりのムラサメが充電を終えて姿を現すと、マザー命令により“脳人の敵”としてドンモモを攻撃。
 更に更に、ドンモモを宿敵とみなす元手裏剣鬼の忍者中年が三角帽子と黒マントを身につけて現れると、貴様を倒すために力を得た! と魔法鬼へと変貌して「俺は魔法使いでもニンジャでもない。魔法ニンジャだ!」を実践するのは、モチーフとモチーフの巧い接続でした(笑)
 この忍者中年だけ急に出して敵になるとあまり不自然だと思ったのか、日常生活に戻っているかみつきおばさんを事前に再登場させているのが一工夫でしたが、同時に、一度は鬼に成るほどの情念を祓われたとはいえ、かみつきおばさんは相変わらずだし、忍者中年は別の形で異界にアクセスしているしで、いずれ鬼に成る人間の性根はそう簡単に変わらない事が描かれている――ならばドンブラザーズの“戦い”にはどんな意味があるのか?――は、狙った布石だとしたら、なかなかに不穏。
 魔法鬼はザンネンクーーールな呪文で雷のエレメントによる盛大な範囲攻撃を放ち、そういえば手裏剣鬼の時もドンモモを相手に善戦を見せた結構な強者でありました。
 やはり、忍者こそが最強の戦闘生物なのです。
 ヒトツ鬼の出現によってオニサルキジイヌもまとめて召喚されて状況に戸惑っていると、更に更に更にバスツアーの乗客たちと思われる獣人が集団参戦!
 いったい何が目的なのか、獣人はその場の全員に襲いかかり、大乱戦の中で、見た目ただの人間を、力強く斬ったり殴ったりするドンブラザーズ(笑)
 ドタバタの勢いを削がない方が面白いという判断だったのでしょうが、ここはさすがにもうちょっと、躊躇が欲しかったところです。
 また、決闘の筈が何故か大乱闘に?! という展開そのものは非常に面白いものの、ここまでは全て予告で見せてしまっており、もう少し巧く予告は誤魔化して作って欲しかったかな、と。
 「させるか!」
 「僕が相手です!」
 「どけ!」
 魔法鬼の兄者パワーーーもとい大地のエレメントによる拘束を受けた赤をバロム仮面が助けると、今度はそこに金ドラが斬りかかり、ドンモモ、遂に剣のフルスイングで金ドラをはたく。
 不死身の獣人軍団を前に、混乱の度合いを増していく戦場でこのまま決闘はお流れになってしまうかと思われたその時、コンドール仮面とスター仮面が参戦してソノイの覚悟を助け、お供たちにも決闘を後押しされたドンモモとバロム仮面は、戦場を離脱すると互いの傷を違いに応急処置。
 「どちらが勝っても、相手に想いを残さぬようにしよう。食べ終わった果物の種を捨てるように」
 「……ああ。……あいやだが待て。種を捨てれば、やがて芽が出て、再び果物が実る」
 話の流れとしては、余計なツッコミによるギャグ扱いなのですが、割と含蓄のある発言で、この戦いの先に実る思わぬ果実もあるのだろうか、と思わせてきます。
 「では……履き潰した靴を、捨てるように」
 「わかった」
 (前のたとえのほうが良かった)
 ……スタッフは、どこまでソノイを面白くすれば気が済むのでしょうか(笑)
 「……それより、聞きたい事がある」
 「わかっている。獣人とは、ドン家が作った人工生命体」
 はい、脳人は正義! ドン家は悪!
 とうとう「獣人」とは何かが明かされると同時に、ドン家に対するレッドシグナルが物凄い勢いで点滅を始め、これはもう、デリート許可なのでは、ドン家。
 脳人の世界を保持するのに必要な人間の“波動”をより安定供給する為に、ドン家が人間の代替え物として作り出した獣人だが、結果は失敗。
 「ドン家は獣人を封印した。そしてムラサメは、恐らく――」
 ムラサメの正体については触れられないまま場面は大乱戦へと移り、銀トラが魔法鬼を吹っ飛ばすと、その爆発に紛れるように、ムラサメ、獣人軍団、ソノーズはそれぞれ撤収。
 そこから巨大戦、はどうにもテンポが悪くなりましたがドラゴンジンを出さないわけにはいかなかったようで、勇気はフェニックスな火のエレメントをはじき返すも、エレメント祭に苦戦しているところにオニタイジンも参戦すると、超特急でドンブラパラダイス。
 二大ロボ・初の揃い踏みとは思えないざっくり具合でダブル必殺技も処理され、ロボットが前座ーズ。
 そして今度こそ、タロウとソノイは二人きりで対峙し、ジャズピアノ調の聞き覚えの無いBGMが入ると、どうやら二人のテーマらしい挿入歌。
 うそつきな月が見下ろす中、向き合った二人が変身そして剣を閃かせた瞬間に歌が止まると、バロム仮面の一撃を更に切り返したドン・モモタロウの斬撃が上回り、一桃両断。
 陽炎立ちこめる道路にソノイがばったり倒れ伏すと再び挿入歌が流れ出し……


すれ違いざま 感じてる 相通じる 不確かなもの
手を握るか 反目か その答は 月のみぞ知る

 タロウがその場を歩み去って行くと、どういうわけかムラサメがソノイの体(死体?)を持ち上げて反対方向に去っていき……金管の物悲しい響きが余韻を残す中、果たしてその刃の手応えは履き潰した靴のように捨てられるのか――ただ、月だけが知っていた。
 後半戦開幕に合わせてか田崎監督が帰還し、字幕付き水中会話とか、待ちぼうけとタンブルウィードとかは、好みからするとちょっとやり過ぎ感だったのですが、若干わざとらしかった空の月が歌詞からの逆算だった事が判明する決着シーンは、挿入歌の印象が鮮烈となりました。
 ここで完全退場させるには余りにも惜しいソノイ、多少の台無し感ぐらいなら許せるので再登場を期待したいところではありますが、『ドンブラ』はその辺り、全く読めず(笑) まあ、多分、大丈夫だとは思っているのですけれど……。
 水落ちだったら、自信が持てたのに!!
 もっとおでんをーーー!