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『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第25話

◆ドン25話「ヒーローしごとにん」◆ (監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹
 「無理だな。ヒーローとは本来、無償の行為。いわば、ボランティアでするべきものだ」
 井上陽水はかつて「傘がない」と歌ったが、雉野つよしは今「金がない」と呟いて、ドン! ドン! ドンゾコ! に落とされていた。
 事の起こりは数日前――コンサルティングを担当した会社の業績が大幅に悪化し、その責任を取らされる形で受けた解雇通知。その事をみほには言えずに出社したフリをする、一昔前のリストラ定番エピソードのような生活を送る雉野は、ドンブラザーズの給料が欲しい! とマスターに掛け合うアクロバット宙返りを見せるもあえなく撃墜され、工事現場で慣れない肉体労働に励む事に。
 平均以下のサラリーマンとして描かれてきた末、とうとう解雇宣告の憂き目にあった雉野つよしですが、マスターと囚人への直談判が失敗に終わると「楽して稼ごうと思ってはいけない」と仕事を見つけ、タロウに対しても「自分の問題」とするのは、キャラクターとしての成長を感じさせる(或いは、ドンブラザーズになり得る芯の強さを改めて感じさせる)描写。
 雉野が懸命に月給の補填をしている頃、雉野の失態から自身も解雇の瀬戸際に立たされた雉野上司は「有能な部下が欲しい……!」と執着に囚われ、今作の弱点、というか割り切ってオミットしている部分として鬼となる人物像の弱さがありますが、何度か登場しているキャラを利用する事でそれをカバーし……それにしてもまさか、この人が鬼になるとは(笑)
 雉野上司は、新体操の道具を操る大(だい)鬼と成ると、部下を求めて子供達を標的とし、「ボーイズ&ガールズ」にこだわるのは原典のコンピューターボーイズ&ガールズからと思われ、額のマークもわかりやすいですが……神殿が記憶に無い(『ゴーグルV』の古代文明モチーフからではないか、との事)。
 「俺たちも踊るぞお供たち!」
 召喚されたドンモモはいきなりテンション最高潮で、両手にクラブを持って踊り出すが、疲労困憊のキジが足をもつれさせて転んでいる間に鬼は逃走してしまい、タロウ、戦闘後の個別面談(笑)
 うなだれる雉野から事情を聞き出すも、「懐の具合」と「お袋の具合」を聞き間違えたタロウは、雉野母が首の病気で重症だと独り合点。カンパの為に休日にアルバイトを入れて走り回っているところをはるかに目撃され……「盗作」のあだ名が、言う方も言われる方もにこやかに受け止めるものと化していて、はるかのメンタルが怖い。
 はるかの学校生活は、リアルに嫌な感じになりすぎて気になっていたのですが、どうやら一定の交友関係は回復している一方、「盗作」という言葉がもはや悪意を離れたところでカジュアルに使用されるものになっているのは、なにやら現代社会への皮肉めいたものも感じます。
 タロウの説明を聞いたはるかも、そういう事なら、とバイトを始め、ここに繋がる勘違いと善意の輪。
 「ほぅ……知り合いの母親が……そんなに具合が悪いのか」
 「うん。たぶん、凄く難しい手術なんじゃないかな。それで莫大な費用がかかるらしくて」
 さっそく公園でポップコーン売りのバイトを始めるも、華麗にコケ芸を発動したはるかを目撃した猿原にも事情が伝わって、定番の伝言ゲームから、善意の協力を申し出る猿原だが、戦う前から戦力外通告
 「…………なぜか……屈辱感」
 毎度毎度、物事を達観するにはプライドが邪魔をする猿原、ここの呻きが大変面白かったです(笑)
 笑顔の女子高生から生産能力皆無な社会不適格者の烙印を押された猿原は、知性の光を見せてやる、と塾講師の面接を受けるも立て続けに不採用とされ、路上で俳句を売る事に。
 どうにかこうにか年端もいかない少女に一句買ってもらうも10円を受け取ると火傷する猿原、不浄のものとみなす金銭に触れる事で物理ダメージを受けるのは、恐らく“想像の力”による自爆みたいなものかと思われますが、やはり使い方次第で容易に完全犯罪を達成できそうであり、適職は暗殺者なのではないか猿原。
 一方、更に追い詰められていく雉野の話を聞いたタロウは誤解を加速させ……ある日、目の下に大きなクマを作りながら、屋台のラーメン屋で出会う、タロウ・はるか・雉野。
 慌てて顔を隠した店主の雉野は、二人の会話から、二人が「知り合いの母親」の為にお金を集めているのだと勘違い。
 「…………大変だぁぁ! 命に関わる事じゃないかぁっ。それに比べれば僕なんか……全然平和だぁ! ……よぉし、こうなったら僕ももっともっと働いて協力しよう!」
 この辺りから、屋台の店主に収まっている雉野など、理屈の無視度が一段階上がってくるのですが、伝言ゲームが巡り巡って無自覚のスタート地点さえも巻き込んでしまう、のは面白い仕掛け。
 また、それぞれのプライベートには踏み込まない一方で、仲間が困っているのなら、押しつけにならない範囲で躊躇なく助けるよ、というドンブラメンバーの基本的な善良さと線引きの姿勢が示されると共に、なんだかんだ既に「仲間」である事が改めて打ち出されており、先代サル回において、お供未満で契約解除された候補者がごまんといる事をタロウが知ったのは、タロウのお供-仲間評価にとって、かなり大きかったのかもしれません。
 かくして善意と誤解のドミノ倒しはループに入り、それを、ジロウが見ていた。
 今回も、ここまで蚊帳の外に置かれ――なにしろドンブラメンバーの線引きと相性が悪すぎる――ラストのバトルにだけ顔を出すのではと思われたジロウがひょっこり姿を見せると、タロウ達の動向に疑問と興味を抱き、こどらロボとなって、でばがめジロウ。
 労働に励む4人をこっそり観察し、ゴザの上にねじねじを並べる猿原が廃人と化しているのは、俳人とかけた駄洒落……?
 「どうやら……タロウさん達は、病気の誰かの為に…………というより、お互いに仲間の力になる為に、働いてるらしい」
 第三者視点から身も蓋もなく誤解の連鎖を紐解いたジロウは、これすなわち「みんながみんなの為に」と良い方向に解釈するが、呼ばれず飛び出る酒ジロウ。
 「よせ。奴らに取りこまれるな。タロウを超える邪魔になる」
 果たして、タロウを超える為に必要なのは、「仲間」の一人になる事なのか、孤高のソロヒーローを貫く事なのか――ジロウの背に、ふめつのぼうけんばかの姿が浮かび上がります。
 「いいか。冒険は命令されてするもんじゃない。抜け駆けしてするもんなんだ!」
 このおとこに、はんせいのにもじはありません。
 真のヒーローになるとは何か、答を求めるジロウの彷徨が続く一方、仕事場を探す必殺バイト人たちはレストランで指名手配犯とばったり遭遇。
 「俺も入ったばっかりだが」
 の割に、なぜか既に背の高いシェフ帽を被っている犬塚は、
 「この店はもうすぐ潰れるらしい」
 と告げ、そこが事の発端となった担当店舗だと気付いた雉野(店側になにか悪意があるのかとばかり思っていたら、純粋に雉野の落ち度だったのはちょっとビックリ)が、皆に頭を下げて協力を頼んだところで「懐」と「お袋」の誤解が解け、これも何かの縁と再建プロジェクトがドンブラ始動。
 「いいだろう。料理の腕には覚えがある」
 やたら自信満々で歯を光らせる犬塚翼、実際タロウに「美味い!」と言わせるスキルを見せ、これは一種の役者あるある的メタネタなのでしょうか(笑)
 ここから更に理屈の無視度が一段階上がってドンブラ一同大活躍で集客に励むと、天女に神輿も大盤振る舞いで、作りとしてはこの、段階的な理屈の無視のエスカレートによるお祭り騒ぎへの着地を意図したのかと思われますが、個人的には伝言ゲーム的な仕掛けの方を丁寧に進めてくれた方が、好みではありました。
 ところでここで、黙々と厨房で調理に励む犬塚のシーンが数秒入るのが、特に意味が感じられずに少々困惑し…………感想を書く過程で情報を整理して今ようやく気付いたのですが、料理に忙しすぎて、店内でドンブラが大騒ぎしている事に気付いていない(タロウ達とドンブラを紐付けられない)、という事を示していたのか?
 皆様のお手を拝借、歌え笑えわっはっは、老いも若きも千客万来! とレストランの経営が劇場版における某Mさん株のように急速に回復する一方、有能な部下を求める大鬼が再び出現。
 「タロウさん達は今忙しい。今日は、僕が一人で相手をする!」
 ドラドラドラゴーン! が立ちはだかったところに3人揃ってソノーズが乱入し、本来の仕事を思い出すのが凄く久々なのでは。
 「ヒトツ鬼は本来、我々脳人が倒すべきもの」
 ちょっと最近、おでんとか愛の詩の批評とかマンガとかに夢中でした!! 
 「――違う。ヒトツ鬼はドンブラザーズが倒すべきものだ!」
 大鬼にバロム仮面の刃が振り下ろされる寸前に赤が食い止め、この真っ当なマッチアップもなんだか久々のような。
 赤金コンビとソノーズとの戦端が開くと、あちこちで武器が光る激戦の末に、ソノーズは撤収。
 残った大鬼は、初タッグを組んだ第15話以来となる気がする赤金ダブル必殺技で成敗し、随分と久々要素の多かった気がするバトルは巨大戦に突入。
 その勢いで久々に赤がソロで巨大戦……に挑もうとしたところで、段々と脱臼癖みたいな扱いになってきた銀トラ分離から金銀合体。挿入歌をバックに、今回も武器を使っての立ち回りに凝ったバトルとなり、大鬼のリボン攻撃を賽の目切りで打ち破ったトラドラジンが必殺技を決めて、STOP THE BATTLE!!
 レストランの業績回復によって雉野の解雇が取り消されると、情念が祓われてスッキリした上司とガッチリ握手からスクラムを交わし、愛する会社を守る為に振りかざせコンサルティング魂。
 ナレーション視点はるか「この二人はヒトツ鬼になったことがある。実はキが合う、のかもしれない」
 雉野「ちょっとやめてくださいよ。みんな忘れてるんですから!」
 はるか「いや、忘れていないと思う」
 と、その光景にメタなツッコミが入り、これはつまり、ロン毛の事は忘れていないという宣告でありましょうか(笑)
 次回――『リバイス』に合わせて最終回祭、などと申しておりますが……総集編?