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にんぽうかくしまいく

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第24話

◆ドン24話「むすこ、ににんばおり」◆ (監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹
 「あー! なぜがいっぱーい!!」
 最近、あの紫色が出てこないよね、と劇中人物がセルフで指摘するも、「そんなこと」扱いで切り捨てたタロウは、宅配先で縁が出来た女性・東智子から、息子と間違われて難儀している、と招集したお供たちに悩みを相談。
 「タロウが困っているって、なんか新鮮」
 智子については以前、家出した一人息子について教授が相談を受けた事があり……なんだかとても久々に、教授の日常が活用されたような気がします。
 「ここは一つ、智子さんの力になってあげたらどうだろう」
 これも人助け、と息子のフリをして元気づける事を提案する教授だが、肝心のタロウには、嘘がつけない。
 そこで一同がタロウをリモートコントロールする事になり……タイトル通りの展開なのですが、実に流暢に妄言を語る猿原ー!(笑)
 と、終始その口から出任せと指示に戸惑うタロウとのギャップが面白みに。
 「(……本当に大丈夫なのか。やな予感しかしないが)」
 「安心しろ。私に任せておけばいい」
 セオリー通りのドタバタ喜劇として進行していき、前作、そして遡ると『超光戦士シャンゼリオン』など、キャラクターが確立している事で成立する“ごっこ劇”というのは一つ、白倉P(ないし武部P)の志向するところであるのかな、と。
 前作はそれを更に、1話単位の“ドタバタ騒ぎの面白さ”のみならず、物語全体における“戦隊ごっこ――スーパー戦隊の模倣品――”の要素に繋げていたのですが(順序的には多分逆ですが)、それが終盤まとまりきらずに個人的には大きな肩すかしになってしまったので、今作における「アバターチェンジ」の扱いは、同じ轍を踏まないでほしいところです。
 智子の息子・耕一郎の友人たちからの情報も利用して、どうにかこうにか二人羽織劇場は進み、智子の作った生姜焼きに25点をつけそうになるタロウの姿に過去のトラウマをえぐられ、声に出さずに(ナイスフォロー、教授)とサムズアップを送るはるかは素晴らしかったです(笑)
 嘘と真実のせめぎ合いに、精神力の限界に達したタロウが席を立つもピアノを聞かせる約束をしてしまい……疲労困憊でどんぶらへと戻ったタロウをねぎらう猿原にはまだ、人の心が存在していた。
 「弾けるよ」
 さすがに触った事の無いピアノ演奏は無理、とタロウが明かすと、何故か喫茶どんぶらの奥にはグランドピアノが設置されており、マスターが流暢にピアノを弾く姿を観察したタロウは、
 「……だいたいわかった」
 (は?! いくらなんでもそんなあなた)
 今回のはるかは、無言+仕草でツッコむ路線で、スタッフは何故、はるかのリアクション芸の引き出しを熱心に増やしていきますか。
 はるかが芸人としての研鑽を順調に積み上げていく一方、街には生きがいを求める忍者鬼が出現し、『手裏剣』『忍風』『忍者』は怪人モチーフとしての差別化が悩ましそうだな、と思いましたが、オールドスタイルの青い覆面調に。
 ドンブラ一同、忍者鬼が次々と人々を襲っては消滅させているとは気付かないまま(喫茶どんぶらの奥、電波遮断されてる?)、翌日……お洒落して智子と共に街を歩くタロウだが、教授が思わず一句詠んでしまった事で怪しくなる雲行き。
 「あなたいつからそんな……趣味の悪い!」
 「趣味が、悪い……?!」
 「その通りよ。年寄りじゃないんだから」
 「あなたは何もわかっていない。侘び寂びとは、人々に平和をもたらす、偉大なる思想である美学!」
 「怠け者の思想じゃないの?」
 愛する俳句をけなされた教授、怒りに我を忘れて、降板。
 緊急リリーフに入った雉野がどうにか話を合わせていたが、こちらはこちらで、会話に熱が入りすぎて口が滑り……
 「ご、ごめん、母さん……ボク、昔から本当に、何をしても全然駄目で……」
 「そんなあなた……」
 「でも母さん、こんなボクでも、結婚したんだ」
 酷い(笑) なんかもう、『シャンゼリオン』みたいな酷さ(笑)
 そして、雉野のネガティブ気質の発露から同調により、視聴者に不穏な気配を感じさせてから爆発物を投下する流れが、上手い、実に上手い。
 この、「着火」の見せ方が、井上脚本の技の冴えるところです。
 (……はぁ?!)
 「結婚?!」
 「(おい、いいのか、この流れ……)」
 さすがにだいぶ真顔になるタロウだが、みほちゃんについて熱弁を振るい始めた雉野、僕のみほちゃんを少しでも悪く言う奴は許さない許さない許さなぁぁぁぁぁい! と、マウンドにグラブを叩きつけて降板。
 背後で 面白がっていた 静観していたマスターも思わず天を仰ぎ……今こそ私の出番! と飛び出していったはるかは妻を名乗るが、それに応じて嘘をつけないタロウ、死亡。
 一般人の手によりドンブラザーズ壊滅の危機に陥ったところで、爆発音と人々の悲鳴が聞こえるとタロウはカッと目を見開いて復活し、そこでは人々を次々と切り捨てていく脱衣鬼の姿が。
 「生きがいを……生きがいをくれっ!」
 ……なんだか今回、鬼に襲われた市民が消滅した後に残る服がやたら強調されている気がするのですが、鬼のモチーフとなった『カクレンジャー』に、何か脱衣関連のエピソードがあるのでしょうか。
 個人的に、戦隊×脱衣で印象的なエピソードというと、『科学戦隊ダイナマン』第29話「キメラの呪いの服」(監督:山田稔 脚本:曽田博久)と、『激走戦隊カーレンジャー』第18話「うそつきハート整備中」(監督:渡辺勝也 脚本:曽田博久)の2本ですが……あれ、両方とも、曽田さんだ……(笑)
 後者における、
 「ZZゼリの、怒りのジャケット作戦も、惜しくもしっぱーい。甚だ遺憾でしたので、今週は逆に、服を脱がせる作戦を、ぶちかましたいと思います」
 は未だに忘れがたい破壊力。
 何しろこれ、テコ入れ悪の幹部が登場して3話目の台詞ですからね……。
 悪のコンサルタントに影響を受けたのかもしれない脱衣鬼を退治しようとするタロウとはるかだが、そこに現れた智子が息子を守ろうとハンドバッグを振り回して鬼に立ち向かい、その姿に思わず足を止めるタロウ。
 (凄いものだな……母親の愛とは。あの愛は本物。だが……俺は……)
 智子の打撃を受けた脱衣鬼は、振り上げた刀を何故か途中で止め……その様子になにかを感じ取る智子だが、今度こそタロウとはるかがチェンジして、ドンブラ集合。
 前回の今回でここまで出番の無かったジロウは、飲みジロウとして登場して(駄目だこいつ……)ゲージを順調に伸ばすと銀トラにチェンジ。
 (鬼を、倒せ……鬼を倒せ……完全破壊しろ)
 とドンブラお構いなしの大暴れを見せるが、それに抵抗した内部のジロウがアバターチェンジで金ドラとなって主導権を取り戻すと、流れるような土下座。
 そこに近づいた青はロボムッキーすると、「今日の私は機嫌が悪い!」と怒りに任せて金ドラを折りたたんで放り投げ、逆鱗に触れると暴力に訴える事も辞さない姿が描かれましたが、軽い調子で俳諧や侘び寂びを嘲った相談者の物言わぬ死体が、軽く二桁ぐらい家の地下から出てくるのではないかと不安になって参りました。
 地下室に誘い込んだ相手を空想の力で窒息死させるぐらいの事は出来そうですからね、教授。
 サイコパス的犯罪者も、似合いそうですし。
 「あの刑事に追われているのか……よし犬塚翼、ここはひとまず、我が家の地下室に隠れていたまえ」
 「助かるぜ。…………? なんかここだけ、やけに壁の塗りが新しいな…………(どがっ)……て、メガネがーーー! 手がーーー!!」
 「ふぅ、まさか君に気付かれてしまうとは。残念だ、実に残念だ……ここで一句。彼岸花 犬も鳴かずば 撃たれまい」
 戦わなければ生き残れない!!
 ……ドンブラバトルな与太はさておき、一同ロボチェンジから打ち上げロボタロウが叩き込まれると脱衣鬼は大爆発から巨大化。
 さすがに巨大戦は金銀が担当となり、龍虎合体するも敵の幻術に苦戦するが、ドラゴン奥義虎抜けの術で不意を突くと、必殺奥義ジロウズハリケーンで大勝利。
 情念を祓われた鬼は人――智子の息子、耕一郎――の姿に戻り、智子は敢えてその背を見送って、後日……智子の元を訪れるタロウ。
 「実は……あんたに謝りたい事がある。俺はあんたの息子じゃない。桃井タロウというものだ」
 「……だから? どうでもいいのよそんな事。私あなたと出会ってとっても楽しかった。ありがとう」
 たとえ実の息子ではなくても、思いやってくれた気持ちと、一緒に過ごせた時間が嬉しい、となんだか良い話風にまとめてくるのですが……その人、息子じゃないとわかっている相手に息子である事を強要して付きまといや身勝手な嗜好の押しつけをしてくるだいぶ狂った人だったので、良い話にしていいのでしょうか(笑)
 まあ今回に関しては「縁が出来たな!」によりタロウが自ら招いた種とはいえますし、忍者鬼が人間に戻る場面を見て、息子に対する過剰で少々歪んだ支配欲から解放されるまで、実際に智子にはタロウが耕一郎に見えていた可能性もゼロでは無いかな、とは思いますが。
 (※ところで名前が耕一郎かつ服が黒ずくめだったのは、メガブラック/遠藤耕一郎と何かメタ的に関係があったのか、純然たる偶然だったのか)
 「それから……あんたに頼みがあってな」
 「あら。何かしら?」
 タロウが一人奏でるピアノをBGMに、仮初めの母の肩を揉んで母子の一時に触れるタロウ、脱衣への執着を晴らし家に戻る耕一郎と、それを迎え入れる智子の姿が描かれ、
 (どうか――幸せに)
 本当の親を知らないタロウの抱える一抹の切なさをピアノの調べに散りばめながら、笑顔を浮かべるタロウの姿で幕となり、良い話風のオチ → え……? 良い話……だった……? → 「よし、もう一度だ!」 → ピアノ効果も加えた良い話風のオチ(二回目)、のローリングバルカンもといダブル良い話風エンドにより、いやぁ良い話でしたね! と、ねじ伏せてくる剛腕(笑)
 しかし本当に良い話で済ませていい人だったのかちょっと首をひねりつつ、次回――リストラつよし。