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かぜをきるむらさき

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第18話

◆ドン18話「ジョーズないっぽん」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
 注目は、さすがのマスターも、腕立て伏せは、外でやってほしかった。
 それはさておき異空間。
 (目覚めなさいムラサメ。時が来ました)
 「ハイ、マザー」
 謎のカプセルに入っていた人型のシルエットは、その形状を剣のように変えるとカプセルを破壊して飛び出していき、ソノイとソノニにちらっと目撃されつつ、マザーの声に導かれながらセキュリティをくぐり抜けて人間界へ…………て、ちょっと、反応が雑すぎるぞソノーズ(笑)
 「マザー、少し、疲れました」
 (よく頑張りましたね。私の可愛い子。……眠りなさい、ムラサメ)
 人間界に辿り着いたムラサメは、剣の状態で路地裏に突き刺さったまま眠りに落ち、さすがに人間体持ちのキャラクターを増やすのではなく(変身が無いとは限りませんが)、人型/剣型に可変するロボット的な存在のようですが…………
 主が、マザー。
 紫色(←重要)の、ロボット的存在。
 予告で見た時は、ここで更にニンジャを投入するのか……ぐらいの軽い気持ちで見ていたのですが、これはもしかしなくても、ロボット刑事+ジライヤ+ジャンパーソンという、凄まじく危険なブツなのでは。
 「これで、全ては片が付いた」
 「汚いぞ親父! 飛び道具まで持ち出して!」
 「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
 人知れず、人間界にジャスティスでえげつない殺意が人質無用で迫っていた頃、夏っぽい服装になった構成員たち(&代理の犬ぐるみ)は、桃井タロウに桃谷ジロウの破門を要求していた。
 「どちらにしても、おまえ達に決定権はない」
 「はぁ?!」「え?」「ちょ……」
 だがさっくりと却下を受け、人情に触れてちょっと当たりが柔らかくなった気がしたタロウの幻影はタイムセールを終え、西日と共に桃源郷の彼方へ消え去りつつあった。
 その晩、今度はジロウから呼び出しを受けたタロウは、同格とは言わないがせめて若頭補佐になりたいというか、お供扱いをされる度に頭の中で(タロウを、倒せ……タロウを倒せ……完全破壊しろ)という声が頭の中で大きく響くんですよォ、しょせん貴様は流れ星ィ! いかに輝こうと、墜ちる運命にあったのだタロォォォ!
 「面白い。ならば俺から一本取ってみろ」
 なんだかんだジロウには甘いタロウ(人間の良し悪しの判断基準は、戦闘レベル)は、古式に則り、いついかなる時でも襲撃を許可し、一本取った暁には同格の存在と認める事を約束。
 かくして物陰からタロウの隙を窺うジロウだが、その光景を何も知らない雉野つよしが通りすがりに目撃し、前回のデビル犬塚ばりの、完っ全な不審者だった。
 上段から振り下ろされる木刀の一撃をクリアファイルで受け止めたタロウは、ジロウの腹に思い切り中段蹴りを叩き込み、容赦が、無い(笑)
 「君から一本取れば、君と同等の身分になれるというわけか。面白い。我々も参加して構わないかな」
 「好きにしろ。何をしてもいい」
 「完っ全に舐めてる……私たちのこと」
 「如何に桃井タロウとはいえ、一日24時間、必ず隙は出来る筈」
 「気持ちいいだろうなぁ……桃井さんから一本取れれば」
 事情を聞いた鬼猿雉は揃って邪悪な笑みを浮かべると、罰ゲームを終えたジロウとも手を取り合い、共通の敵を前にした今、かつてなく高まるドンブラザーズの絆ゲージ。
 その頃、加わりたいかはさておき未だお供の輪に加われずベンチに寝転ぶ犬塚の前にソノニが現れ、前回の賭けは犬塚の勝ちだと、願いを叶えてやると申し出る。
 「勝ったのは俺じゃない。人が人を想う気持ちだ」
 絶好調の犬塚ですが、ちょっとJPイズムを感じます!
 「やせ我慢をするな。夏美だったか……おまえが愛する女に、会わせてやることもできる」
 「断る。おまえの力は借りない。俺が居て夏美が居る。ならば俺と夏美は必ず会える」

 ――If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.

 「そうして会えば、地獄、だぞ?」
 「夏美の居ない今の方がよっぽど地獄だ」
 「……面白い男だ」
 かつてなくハードボイル度を高めながら犬塚が去って行くとおもしれー男認定をいただき、前回、犬塚×夏美の一挙形勢逆転かと思いきや、むしろ雉野×みほがやや優勢の空気になったところで、犬塚-ソノニのラインが強化されていくのが、絶妙に視聴者の心を弄んできます(笑)
 一方、ハードボイルドとは無縁の雉野つよしは、タロウの後をつけてラーメン屋に入るともやしを一本取っちゃいましたこりゃ参ったなぁ作戦を敢行するが、あえなく失敗。
 続けて猿原が、遠距離狙撃で君のハートにワンショットキル作戦を決行するがこれもタロウにあっさり防がれ……ここしばらく、一度死んだりジロウが出てきたりでやや控えめになっていたタロウの超人ぶりがこれでもかと発揮されるのは、良いタイミングとなりました。
 雉と猿の屍を乗り越え、自分の乙女パワーに無駄な自信を持つはるかは手作りクッキーからのびっくり箱大作戦を実行に移すが……
 「初めてだ。こういう物を、女性から貰うのは」
 (そうなの?!)
 「いいものだ……おまえの心がこもっているんだな」
 「う、うん……」
 ……貴様の顔面に、右ストレートを叩き込みたいという気持ちがな!! 
 「きっと苦労して焼いたんだろうな……ありがたくいただこう! 毎日少しずつ、大切に」
 笑顔を浮かべ、いそいそと小箱を手にするタロウの思いがけないピュアな反応にはるかは激しく狼狽し、あれ? これ、一本取った筈の私がSNSで大炎上する流れ?! と、人の心もといクッキーの箱を取り返そうとして、見事に自爆。
 はるかは事務所に潜んでいたジロウともども腹筋100回の罰ゲームを課される事となり、次々と刺客を屠り去るタロウだが、今度はソノイが姿を見せる。
 ソノイは二人の因縁にけりを付ける為に「人助け勝負」を持ちかけ……なんだかちょっと、歯車がズレてきていた。
 あまり歯車がズレると因縁そのものが茶番と化し、茶番と化せば両者の揺れる感情そのものが特に面白くなくなってしまうので、互いの間の緊張感を弛緩させすぎないようにしてほしいところですが(既に今回、ちょっと危うい……)、ソノイはタロウの仕事に同道する事になり、宅配便が来て扉を開けると、玄関口に立つ全身青ずくめの男。
 「……この男の服装なら気にしなくていい」
 「これだけは覚えておけ。脳人の世界で、私は常にファッションリーダーだった」
 「…………わかった」
 この辺りちょっと諸田監督の悪ノリ感もありますが、タロウとソノイの人助け勝負は白熱し、本日も、お供たちよりよほど固く結ばれていく絆ゲージ。
 そろそろ合体技ぐらい放てそうになってきた二人が事務所に戻ると、さるかに合戦よろしく連携して打ちかかってくるお供4人だが、ソノイの介入もあって失敗に終わり、全員、スクワット500回。
 「奴らとも勝負の最中でな」
 「……ほう。ではまた明日」
 「ああ、また」
 自分に匹敵する好敵手としてソノイの存在を(敵とはいえ)嬉しく思っている節のあるタロウですが、同様に、何度叩きのめしても突っかかってくる気概を持つお供たちも(或いは無自覚に)好ましく感じている様子は窺え、さあもっと! 俺に、人間の持つ愛とか勇気とか希望とか絆とか根性とかの力を見せてみろ! わーっはっはっはっはっは!!
 どうもここしばらく、タロウとJPさんにはラスボス繋がりを感じて仕方がないのですが、タロウとお供の関係として、今後のキーになりそうな要素ではありましょうか。
 (起きなさいムラサメ。戦いに行きましょう)
 「ハイ、マザー」
 夜の街にひっそりと舞い上がったムラサメが街の電力をかき集めていた頃、お供たちは揃って独房を訪れており、こんな流れで囚人とジロウがご対面。
 「……君が桃谷ジロウか。いつか会えると思っていた」
 「あ、そういう話はまた、いつか」
 割と重要そうな案件なのにさらっと流されると、打倒タロウの情報を求める4人は囚人から一つのアドバイスを受け、翌日――本日も荷物を配達がてらソノイとの人助け勝負を繰り広げていたタロウが目にしたのは、揃って虫取り網を手に植え込みを探る4人のお供たち。
 「おまえ達なにをしているんだ?」
 「「「「カブトムシのギイちゃんが帰ってきた!」」」」
 声を揃える4人の回答に、タロウの態度は一変……ギイちゃんとは、少年時代にタロウが飼っていたカブトムシにして唯一の友達だったのだが、ある日、餌をやっている最中に開いた窓から逃げ出してしまい、その悲しみは、今もタロウの胸に影を落としていたのだった。
 4人の言葉を鵜呑みにし、必死に茂みを探すタロウの姿がもの悲しい程に、タロウから一本取ろうとは面白い、と養い児の抱えるトラウマを提供する囚人と、脳天がガラ空きだぜタロぉぉぉと背後でほくそ笑む4人の、人としての尊厳が芥子粒のようになっていきますが、振り下ろされた虫取り網は、いずれも空中で静止する。
 同時に攻撃を中止したお供たちは「タロウが負けるところを見たくない」と、傲岸不遜で腹立たしい事は山ほどあるが、そんなタロウがなんかいい、と矛を収め、囚人の手招きを受けて外道に堕ちる寸前に人の心を取り戻した……のとは、ちょっと違いました(笑)
 タロウをだしに鬼猿雉とジロウの心の距離を縮めるのが主眼だったようですが、なんだかすっかり、お供として馴らされてしまっている面々、タロウの強烈なカリスマ性のなせる技と好意的に捉えるべきか、文句を言いつつ強権的なリーダーに指示を受ける楽さに溺れてしまっていると見るべきかちょっと悩ましいのですが(タロウ不在時に舵取りを見失う描写がありましたし)、この先、波乱の種になりうる要素かも、とは。
 「どうやら我々は、戦う前から負けていたようだ」
 猿原が綺麗にまとめて4人はタロウに謝罪するが、勝利の為なら他人の心の傷を平気でえぐろうとする卑怯者は許さない! と磁光真空剣もとい紫の刃が風を切って飛来し、慌ててアバターチェンジ。
 「あれは……まさか!」
 「こいつ……いいパワーだ」
 これが「ムラマサ」だったら、ドン家に禍を為す妖刀とも解釈できるところですが、お供たちの卑怯ゲージの上昇に反応した疑惑もある紫色の剣から、ソード本体を背負う形でギザギザサングラス顔の人型が発生し、その名を――ドン・ムラサメ!
 (さあ戦いなさい、ムラサメ)
 「ハイ、マザー」
 刀の背負い方と体の網目模様がニンジャ風味な紫色のムラサメは、マザーの声に導かれるままにドンブラザーズを強襲。逆手持ちに使う剣を小脇に抱え、ウクレレをかき鳴らすかのような仕草でギアとボタンを操作するのがなかなか格好良く、サメエネミー定番の地中潜行能力を発動すると、お供たちを次々と撃破していく。
 ヒトツ鬼とは一線を画す戦闘力を見せるドンムラは、赤と金の連係攻撃を受けると、竜宮城らしきイメージを背に、こざめロボへとアルターチェンジ。
 成り行きでアルター対決に突入し、水中戦こそジョーズの見せ場! の筈がむしろこどらロボに後れを取ったこざめロボは、こももロボの攻撃も受けるとマザー命令で撤収し、再びソードモードとなって空の刀へと飛び去っていくのであった……。
 「何者だったんでしょう? 奴は」
 「さぁな……だが、今までの敵とは何か違う」
 「……なぜムラサメがここに…………ドン・モモタロウ! 勝負は預けた」
 一連の出来事に外野からサプライズ補正をかけていたソノイは、ドン・ムラサメに心当たりがあるらしく急ぎ足で姿を消し、自由な同僚・問い合わせへの返事が遅すぎる上役・次から次へと起こるトラブル、と、段々、苦労人の現場管理官めいて参りました。
 必要なのは、酒か、胃薬か、それが問題だ。
 最後は、親切を押し売りしたタロウが妙齢の御婦人に一本取られて、ドンブラコドンブラコ。
 Aパート終了しても鬼どころか鬼候補者すら出てこず、これは、一本騒動に巻き込まれて物干し竿を両断された主婦がいきなり鬼になる可能性もあるか、と身構えていたところ、第18話にして初めて、鬼退治無しでつづく。
 一応、今回の怪人ポジションとなるムラサメの動きが挟まれてはいましたが、終わってみると、「開始23分過ぎ(CMなど含む)まで、《スーパー戦隊》としての対怪人要素がほぼゼロだった」という、凄まじい進行(笑)
 さすがに間が持たない&面白さが足りない可能性を考慮してか、ムラサメを目撃する必要もあるソノイがやや強引に絡んできましたが、まがりなりにも「鬼退治」という“型”を組み込む事により《スーパー戦隊》としての姿形を保っていた今作が、イベント回の名目の元にその“型”さえ投げ捨てた上で1エピソードを成立させてしまう、思い切った回でありました。
 さてドン・ムラサメ、玩具CMやOPにも登場しているドントラが影も形も出てこない内に新たなキャラクターが投入されて困惑もありますが、剣(刀)でムラサメ(丸)といえば、『南総里見八犬伝』で、「抜けば玉散る氷の刃」な水属性からシャークになったのか、浦島伝説ありきで「ムラサキ」の言葉遊びが先だったのか、一体なにがドンなのか、何故ウクレレなのか、どこでニンジャが足されたのか……要素てんこ盛りすぎてスタート地点の見当がつきませんが、私としては、“紫色のロボット属性”が大変心に響くので、今後の活躍を期待したいところです(笑)
 なお、水神は雷神に通じるので、ムラサメが電力を集めていたのはその繋がりだろうか……とも飛躍できますが、そこに関連性を見ると水神と竜神の関係から金ドラと重なってますます浮いてしまうジロウの存在はやはりバグなのか、若頭補佐を巡る争いが勃発してしまう可能性も脳裏に浮かびつつ、次回――夏の怪談風ちょっといい話?

 ※投稿30分後に気付いた追記:……あ、ムラサメだから、サメか! ムラサメだからか……!