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あいどるばくふ2022

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第12話

◆ドン12話「つきはウソつき」◆ (監督:山口恭平 脚本:井上敏樹
 キビポイントで話を逸らし、なにかのファイナルライブツアーで一週お休みしたぐらいでは全開チェンジに対するはるかの追求を止める事の出来なかったマスターは、こんな事もあろうかと準備していた、後輩アルバイトの吉良きらら(17)を紹介。
 無邪気な後輩を装ってレフリーに見えない位置から栓抜きで脇腹を削り、男性客には甘えた仕草と声音で懐に潜り込むきららの姿に、女の勘が叫んで唸る! こいつは敵だと轟き叫ぶ!
 (て……天敵)
 べきぃ。
 「……はるかちゃん、トレイ」
 「ナニカ文句ガ?」
 「……ない」
 ……なんか、マスターのヒエラルキーが、下がっていた。
 一方、正直者のタロウは「仲間を売った」とシロクマ宅配便での立場が悪くなり、アイデンティティの危機に直面するが、場面が切り替わると何故か、鬼頭家のリビングにふんぞり返っていた。
 喫茶どんぶらのバイトを替わってくれないかとタロウに持ちかけ、無かった事になった運命で得た知識により、スペシャル料理でタロウの餌付けを試みるはるかだが……
 「点をつければ……25点だっ」
 「食わんでよし!!」
 You LOSE.
 それはそれとして休職中(タロウが悪いわけではない事を示そうとするあまり、他人のメロンせんべいをにこやかにポーチに詰めていく同僚も、専用と書いてはあるものの誰でも手の届く場所に貴重なお菓子を置きっ放しにした上で上京した母親に会えないレベルの罰を科す所長も、揃って感じが悪くなりましたが……)のタロウは喫茶どんぶらでバイトをする事になるが、そこは、きららの即席ライブ会場と化しており……えーと……今回の脚本は木下健さん?(※かつて『超光戦士シャンゼリオン』に助っ人として1話入った際の荒川稔久ペンネーム)
 「その胸の詰め物を取ればいいだろ」
 初顔合わせから場を凍らせたタロウが制服に着替えて戻ってくると、店には鬼猿雉が勢揃い。
 妙に生真面目な犬塚が先日の看病の礼を言いたい、と待ち合わせる事になっていたのだが、店に入る寸前、刑事にロックオンされた犬塚は一目散に逃走し、まあ、席について談笑しているところを踏み込まれていたら社会的に大惨事だったので、ある意味セーフ。
 「桃井タロウ……薄々気付いていたが、君は、嘘をつけない性格のようだな」
 刑事に問われるがまま、犬が逃げていった方向を答えたタロウの正直さ加減に、お伴ーズは一同嘆息。
 「俺には嘘の意味がわからない。この世で価値があるのは真実だけじゃないのか?」
 「それは、そうかもしれないですけど……」
 「嘘も方便ってこともあるでしょ。あれ以来、私は、ビーフストロガノフが作れなくなったんだから!」
 「それは良かった!」
 「……うぁぁぁ!!」
 コケ芸に続き、順調にキレ芸も修得しつつある鬼頭はるかさん、次の目標は一人ボケツッコミですね!
 友達なんか居なくたって、大丈夫!!
 「とにかく、嘘の練習をしよう」
 教授に促されるまま、「私は女です」と口にしようとするタロウは、言葉に詰まった末に心停止を起こして床にひっくり返り、嘘をつけない性格どころか、致命的に嘘がつけない体質であると判明し、その間もずーーーーっと背後でライブが続いているという、イかれた演出(笑)
 ところでタロウのこの、特徴的な性質が極端化して、一種の病気のようになっている描写は『仮面ライダーキバ』の紅渡(最初期)を思い出すのですが、『キバ』の時は描写に問題があって貫き通せなかったとか聞くので、多少は雪辱の意識があったりするのかどうなのか。
 ――その夜、ビースト狭山と行き合った(探していた?)ソノイは、すれ違いざまに格好良く一閃を浴びせるも、攻撃を受けた狭山はビルの屋上へ高く跳び上がると獣人の姿を垣間見せ(これも何かモチーフがありそうですが……ぱっと見で何を思い出すかと言われたら、巨獣ハンター・バングレイ)、離脱。
 (確かに、手応えはあった。やはり獣人は……不可殺の者……!)
 ソノイ判定の信用度は「俺に切れないものはない」ぐらいとして、獣人への警戒心を強めるソノイは、夜道でタロウとばったりと出会い、主人公ヒーローが、当座のライバルキャラに対して人生相談を持ちかける、状況設定で既に勝利(笑)
 「では、君は一度も嘘をついた事がない、と?」
 「……ああ。つけないんだ。どうしても。そのせいで、時々、人を傷つけてしまうらしい。……どう思う?」
 鋼のスパイク付き正論で他人の顔面をぶん殴るが、他人を傷つける事そのものは本意ではない(ただしその案配は全く把握できない)タロウ、文字通りに人間離れしたを聖性を持つ一方で、人間の基準における善性を持ち合わせてもいる事が補強され、タロウの好感度コントロールへのしっかりした意識が窺えます。
 「私は好きですよ。そんなあなたが。でも……世の中にはきっと、美しい嘘もある」
 「美しい嘘?」
 「たとえばあの月。月は嘘つきです。実は自分では光ってはいない。太陽の光の反射です。でも、太陽より月の方が信用できる。――見つめる事が出来ますから」
 「……なるほど。……いい事を言う」
 もはや何を喋っても面白い状況設定ではあるのですが、ソノイは大変真っ当に人生相談に乗って大いに株を上げ……同時に、“向き合う”というテーゼが盛り込まれているのが、互いの立場への皮肉もありつつ、ヒーローフィクションにおけるやり取りとして、素敵なところ。
 果たして嘘には、人を幸せにする価値はあるのか……他人に相談するほどには惑いを抱いたタロウが出勤すると、元バイトだった本物アイドルが来店して嘘のバレたきららが、思わず店を飛び出したところで何者かに襲われたと悲鳴をあげるのだが、果たしてそれは、嘘かまことか……。
 再び怪人に襲われた、と松葉杖を突いて出勤したきららは、猿原にあっさりと嘘を看破されると、大好きな祖父を喜ばせる為に、アイドルデビューすると嘘をついたの発端でが嘘に嘘を重ねていた事を告白。
 「だが、嘘はいくらついても嘘だろう。真実にはならない」
 「でも……でも私は、きっと、嘘を本当にしてみせる!」
 またも店を飛び出したきららの悲鳴が響くも冷淡な反応のドンブラザーズだが、ひとりタロウだけが立ち上がって外に駆け出すと、荒川さ……じゃなかったアイドルファンが高じたアイドル鬼がきららを体内に吸収しており、今回の鬼は路傍の三角コーン程度の扱いなのですが、それにしても海賊鬼と被りすぎて、一工夫ほしかったところ。
 「成る程。嘘が本当になったか」
 合流した鬼猿雉と共に4人並んでアバターチェンジし、スーパー戦隊》シリーズとしては異例も異例なのですが、今作だと「まさか?!」「え、もう?!」と思う辺り、すっかり毒されてしまいました(笑)
 祭が始まると黒も参戦してロボタロウから、アイドル鬼はあっさり打ち上げ桃太郎され、六尺玉のように儚く短い鬼生でした小夜子ーーーーー!!(「打ち上げ花火」と「橘さん」が強く紐付けされ、「I Love You「さよこぉぉぉぉぉ!」」に繋がるのは、全て『剣』が悪い)。
 ところが大量の戦闘員が追加されてドンブラを取り囲み……
 「新手か……合体だぁッ!!」
 いきなり叫んだロボモモは剣を放り捨てると、ギアをどんぶらこどんぶらこ。
 「はっははー! いざ大合体ィ!」
 ここからしばらくアクセルベタ踏みで突き進むのですが、その開幕が、ギアが発動した途端に船に乗っているドンブラザーズ一行という画(鬼ヶ島イメージ付き)だったのは、面白くて良かったです。
 「なんだ?!何が始まった?!」
 「どうなっちゃうの私ー?!」
 「お伴ども、足となれぃ!」
 大合体空間が展開すると、折りたたまれたロボオニとロボイヌが、ロボタロウの両足となって、クロス・ドンブラ! 
 「次は私たちなのか」
 「ええーい! ままよーー! いた……くはないのか」
 「お伴ども、腕となれ!」
 ロボサルとロボキジは、それぞれ半分に分かれて両腕と両肩になり、最後に腹筋(大事)がついて、完成・ドンオニタイジン!!
 「「「「なんだこりゃーー!!」」」」
 唐突といえば大変唐突ですが、なにぶんロボブラザーズ誕生が唐突だったので、もう、マヒしてきました(笑)
 「なんで私が足なの?!」
 「文字通り、俺の手足となったな!」
 は、成る程、と膝を打って大変名言(笑)
 「ふざけんな! 俺は降りる!」
 「なんでもあり……だな」
 「でも、結構格好いいとおも……」
 ごつい鎧武者となったドンオニタイジンは、床几に腰掛けたまま群がる雑魚を瞬殺し、ロボ化→パーツ化→合体ドンオニタイジン!(人間大)の流れは、前作で消化不良(というか看板に偽りありというか)となった、「普段からロボ!」への再挑戦となった趣もありますが、「合体して巨大ロボになる」のではなく、あくまでも「そのまま合体形態となる」事で人間大からスタートしたのは、オニタイジンの気合いの入った格好良さもあり、新鮮で面白いアプローチとなりました。
 その前段階として、メンバーが「ロボになる」を挟んでいるのも、(成り行きはともかく仕込み自体は)丁寧。
 アイドル鬼が巨大化してフィールドを展開すると、ドンオニタイジンもギアを使って巨大化し、軍配を構えた総大将のイメージなのでしょうが、再びどかっと腰掛けているのが、お茶目。
 「いざ尋常に、勝負勝負ー!!」
 「ぎゃらくしぃー」
 「いくぞ、キジンソード!」
 「そんな名前なの?!」
 背中の二刀を抜くと戦闘を開始し、事あるごとにあれこれ喋るお伴ども、みんな、割と楽しそう(イヌ以外)。
 アイドル鬼のフィールド特殊攻撃で高所恐怖症の犬が弱体化するなどあったものの、ダーイブからのフライーングで翼を展開して挿入歌に乗せて高笑いしながら襲いかかり、トドメは一騎桃千・ドンブラパラダイスででロボタロ斬!
 今回もギア回収シーンが描かれませんでしたが、アイドル鬼は胸部の意匠などが微妙に土星っぽいし巨大化してからは「ギャラクシー」と繰り返しているので宇宙鬼かな……と思っていたら、オニタイジンの必殺攻撃(パラダイス部分)が聞き取れなくて台詞書き起こしの為に字幕を出したところ、「宇宙鬼ング」と表示され、そうか! 字幕表示にはそんな効果が! と今頃になって知ったのでありました(笑)
 エピソードテーマが幸運絡みではなく「嘘と真実」だったのは、事あるごとにドン・アルマゲが死んだり死ななかったりした辺り……? あと、『キュウレンジャー』にはアイドル回があったといえばありましたねミナティー
 鬼退治が完了するとアイドル達は解放されて、どんぶらこどんぶらこドンドンゆらり揺れてEDパートへ入り、タロウは掟破りのドンモモワープで同僚を母親の元へと連れて行き、お土産のメロンせんべいも渡させて、ドーンとハッピーエンド。
 そして復職なったタロウは、ある日の配達中に巨大な広告ディスプレイを見つめ、そこでは、ちやほやされる為に嘘をついていたのではなく、誰かを喜ばせようとしてついた嘘を真実にする為に努力を続けていたきららの、デビューシングルMVが流れているのであった……。
 「嘘と真実……難しいものだな」
 きららに関しては、もうちょっとふわっと夢に向けて前進、ぐらいのバランスでも良かった気はしますが、これが一番ギャラリーが不要といえば不要の手段ではあったでしょうか。後、アイドル鬼に吸収されている間に、アイドルのパワーがちょっぴり、混ざったのかも、しれませんオッキュー!
 ところで、巨大戦自体が随分久しぶりでは……と思って確認してみたのですが、

第1話 ドン・ゼンカイオー
第2話 ドン・ゼンカイオー
第3話 ソノニによる消去
第4話 ドンモモ必殺
第5話 ドン・ゼンカイオー
第6話 アバター乱舞
第7話 アバター乱舞
第8話 ソノイが消去
第9話 ドン・ロボタロウ
第10話 前人未桃・打ち上げロボタロウ
第11話 ロボタロウ軍団大進撃
第12話 ドン・オニタイジン

 見落としが無ければ第5話の警察鬼以来となり……代わりにこももロボの戦闘が盛り込まれているのですが、改めて並べてみると、ドン・ゼンカイオー、約1ヶ月しか出てない(OPには最近までいましたが)。
 第9話からはロボタロウのターンとなっており、そのクライマックスが今回のオニタイジンとなったわけですが、ロボタロウからオニタイジンへの段取り自体は割と話数をかけて踏んでいるのに、そこにドラマを伴わせる事を放棄しているので、ロボ周りの全てが唐突かつ勢い任せになっており、その割り切りをドンモモのキャラクター性と合体そのものの出鱈目さで突破しようとする大胆な作り。
 一方で今回のように、オニタイジン大暴れに尺を採る分、きららの嘘と真実で特に話を引っかき回す事なく祖父の為に嘘をついた背景もあっさり告白、と物語上の仕掛けと、作品としてのクライマックスがズレたまま、みたいな事も起きうるわけですが(ゆえに演出としては前半ひたすら歌わせる変な回として誤魔化している)、変形合体に困惑しつつも巨大ロボの快楽に目覚めていくお伴たちの図は面白かったので、後は数字に繋がってくれると良いな……と祈りたいです。
 今作はとにかく、どこで面白く見せようとしているのかはハッキリしている作品なので、オニタイジンに向けた一連の流れについては、不足はあるけど不満はない、といった感じ。
 ……ところで、1クールの間に、ソノニとソノイが一回ずつ撃墜マークを稼いでいるのですが…………頑張れ、ソノザ。
 次回――キラキラ輝く為に僕らは巡り会ってしまったから。