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おりがみのしゅりけん

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第11話

◆ドン11話「いぬのかくらん」◆ (監督:山口恭平 脚本:井上敏樹
 「獣人……かれらは人間に成り代わり、世界を侵食していく」
 今回も、これまで一度もしていない発言を冒頭モノローグにねじ込んで事実認定してくる富野メソッドでスタート。
 ソノイが獣人への対策を「守護人」に問うと、ソノーズはお馴染みの独房に飛び、これまで、呪いのサングラスを通行証として、はるか達に様々な情報を伝えていた謎の囚人――桃井タロウの育ての親らしき人物――は、かつて罪を犯して守護人となった者であり、その独房は、人間界と脳人の世界の境界にして、獣人の抜け道を防ぐ為の封印であったと判明する。
 「脳人の者よ、獣人の出現はありえない。私がここに居るかぎり」
 囚人はきっぱりと断言し、信用度でいうと「ライダーシステムに不備はない」レベルです!!
 ま、俺のせいじゃないけど、本当に獣人が出たなら、人間界も脳人の世界も地獄まっしぐらだよね……と煽るだけ煽って、囚人は本日も時間切れを宣言。だが……
 「――最後に一つだけ」
 「まずは桃井タロウを探す事だ。彼の前で跪き、忠誠を誓え」
 ……じゃなかった、
 「獣人は折り紙を折る。注意する事だ。何を折っているか」
 ネコか、ツルか、ペンギンか……なんともいえない情報を残し、今のところ折り紙の象徴するものは不明ですが、思いつくところというと、2D(紙)→3D(立体)への変換、でありましょうか。
 脳人に続いて獣人が現れ、そういえば、うさんくさい管理人は「介人」だな……は、さすがに穿ちすぎかもしれませんが、そろそろ1クールも終わろうというのにまだまだ物語世界の全容が見渡せない中、バス事件前の記憶を失うも復職した狭山刑事(ちなみに、定年退職→温泉旅行→バス事故、だとばかり思っていたのですが、警察鬼事件を経て休暇を取っただけで、まだ定年前だった模様)は、指名手配のポスターをひたすらネコの顔に折り続けていた。
 『ドンブラ』世界の警察は色々大丈夫なのか、と不安になる一方、逃走中の犬塚翼は夏美との思い出にひたっており……「全部もらおう。36回払いで」は、実に井上敏樹感(笑)
 歯の浮くような言葉を繰り返し、どうも逃亡以前から突発性ハードボイルド症候群に罹患していたらしい犬塚翼、指名手配の罪状は、各地で借金の踏み倒しだったのではないかと疑惑が浮上します。
 (※左翔太郎が一周すると涼村暁になるのかもしれない、という謎の気づき)
 警察に捕まりかけた犬塚はバイクで逃走するが、食堂に飛び込んで肉のパワーを手に入れた狭山刑事が犬歯を剥き出しにして鼻からニンニクの香り(に見えて仕方が無い)を吹き出しながら生身でバイクに追いつく、人間離れした能力を発揮。
 やや前傾姿勢の追走シーンは完全にホラーで、手づかみで肉をむさぼり食う姿にも大変気持ち悪い迫力があり、まさか、こんな跳ね方をするキャスティングだったとは。
 行く手を塞がれた犬はバイクで轢……かずにサングラスの力で逃走を図るが、狭山刑事はそれさえも追跡し、ノイズのかかった映像で獣人(?)の姿を垣間見せた狭山により、どういうわけか折り紙を口の中にねじこまれてしまう。
 辛うじてサマーソルトキック(多分、ハードボイル度を高める為に通信教育で覚えました!)を浴びせた犬塚は逃走し……残された狭山は、ネコのような仕草を見せる……。
 その頃、忍者マニアの男・大野に荷物を届けたタロウは、困った事があれば力になる、と声をかけたところ、ニンタリティを上げる為にまずは勝負だ、と鎖鎌で襲撃を受けるもこれを危なげなく一蹴。「忍者ごっこ」呼ばわりしてまたも鬼に成る要因を生んでしまうが、今回は正当防衛というかタロウが常識的に見えるレベルの狂人が相手だったので、忍道はかくも人を狂わせるのです。
 「忍者ごっこだとぉ……?! 俺の忍者道を馬鹿にしやがって! ……許せん! 許せぇん! 許せぇぇぇぇん!!」
 模造刀の刃を見つめ、自らに心の一方をかけた大野の背後に鬼が浮かび上がる一方、折り紙の影響か、高熱を出し、助けを求めて部屋の前に倒れていた犬を発見した雉は、パニックになってタロウに助けを求めるが、医者でもなければ仕事もあるタロウが、代わりに助っ人として派遣したのは、鬼頭はるか。
 「運命」を誰かに押しつけずに立ち向かう……ッ! 漫画家としての「栄光」も取り戻す……ッ! 両方やらなきゃならないのが、ヒーローの、「覚悟」ッッ!
 つまり……看病とかおいしすぎるネタだぜぐぇへへへ!
 とやってくれたら懸念点が一つ解決したのですが特に言及なく、さて今後、どうなりますか。
 「抑えて下さいはるかさん! 病人ですよ!」
 それはそれとして、恋人ごっこに付き合って甲斐甲斐しく看病をするも蹴り飛ばされて壁に叩きつけられたら、床に落ちていたダンベルを頭頂部に振り落としてもさすがに無罪だと思いますが、床に血痕を残さないで……! と雉野が新婚家庭で痴情のもつれから流血沙汰の発生を食い止めていると、第二の助っ人として猿原が到着し、雉野家は果てしない混乱の坩堝へ。
 荷物と一緒に幸せを運び、荷物の無いところには混沌を起こすタロウは不意打ちで手裏剣を投げつけられ、忍者マニアが鬼へと変貌。忍者モチーフの怪人は歴代戦隊の候補が3つあって絞りきれないのですが、デザインが手裏剣を強調(蓑傘の見立てか)しているので手裏剣鬼(ニンニンジャー)でしょうか、餃子!
 ドンモモが戦いを始める一方で看病は続き、仮病で薬を貰ってきたらどうだ、と雉野に進める教授。
 その悪知恵を戦いに活かせばいいのに……と口を滑らせ、台所(犬の寝床から見えない場所として機能)でたしなめられたはるかは、桃と黒の正体について触れ、第1話における雉野との遭遇は、色々それどころではなくてハッキリと顔を覚えていない、と改めてフォロー。
 そうこうしている内に戦いに召喚される猿・雉・鬼だが、「ここは俺に任せろ」と言われると、いつの間にか習得していたチェンジオフなる機能で変身を解除して台所に戻り、以後、井上敏樹の得意技であるドタバタ喜劇風味で雉野家のリビングと戦場を行き来しながらの展開となって、細かい時系列の無理は気にしません!
 手裏剣鬼の放ったまきびしを踏んだキジは、雉野として病院で治療を受けて帰宅。持ち帰った薬を教授の作戦に従ったと誤解して犬塚に飲ませる際、手ぬぐいをひたす用のたらいの水をそのまま犬塚の口に突っ込むはるかの姿に、ええ?! となる猿の表情が素晴らしかったです(笑)
 割と、常識人(おかゆは出汁から)。
 雉野が自分用に処方してもらっていた下剤を飲まされた犬塚はトイレに駆け込み、今度はおかゆを作り出した猿と鬼は、出汁が取れるまで時間があるからタロウの様子を見に行こう、とアバターチェンジ。
 看病を続けていた雉野は、火にかけっぱなしで放置された鍋を発見すると、慌てて火から下ろそうとして鍋をひっくり返したところで強制召喚を受け、とにかくドタバタ喜劇の勢いで細かい整合性は無視して突き進んでいくのですが、強制召喚に関して青黄と桃に扱いの差があるのは、ドンモモに対するお伴貢献度の差によって、スキルがアンロックされていなかったりする可能性もありそうでしょうか(……多分、今回の話の都合だとは思いますが)。
 足に熱湯を浴び、悲鳴をあげたところで召喚されたキジは、キジ手裏剣として戦闘員の掃除に使われて爆炎の中に姿を消し、はるかと猿原が雉野家に一次帰還すると、ズボンをだし汁で染めた雉野が床に転がっている絵は面白かったです。
 あわや密室殺人事件・犯人は犬塚翼?! になるところでしたが、幸い雉野の打ち所は悪くなく、一向に容態の回復しない犬塚を前に、猿原が最後の手段を提唱し……
 1・洗面器いっぱいに塩を入れる
 2・それを頭にのせる
 3・患者の回復をひたすら祈る (注意! 塩をこぼさない)
 ……願掛けの荒行だった。
 基本的に人の良い雉野が一心不乱に祈っている間、はるかと猿原が戦いに戻ると、ドンモモは分身の術さえも駆使する手裏剣鬼に思いがけない苦戦を強いられており、やはり、忍者こそが最強の戦闘生物!
 「一つ借りだな」
 ドンモモのピンチを救う青黄だが、3人になっても苦戦しているところに、頭に塩を乗せた桃が召喚され、まさかの盛り塩バレ。
 「まさかキジは……雉野つよしかっ?!」
 引っ張った末に、ええそれで?! みたいな要素で凄くどうでもいい感じに解決されるのは井上脚本には時々あるイメージですが、これにて、はるか・猿原・雉野がそれぞれがドンブラザーズだと認識する事になり……なんだかんだ1クール目の内に犬を除いて互いの正体を知る事になりましたが、このペースだと2クール目以降にもっと大きな仕掛けが飛び出してくるのではないか、と期待したいところです。
 一方、予定より早く帰宅したみほは、自宅で見知らぬ男がうなされているのを見て狼狽するが、その視点にフィルターのようなものがかかると様子が変わり、犬塚の口の中に指を突っ込んで折り紙を取り出すと、犬は瞬く間の内に回復。
 みほが折り紙を握りつぶした際になにやら悲鳴のような効果音が入った事からすると、どうやら一種の呪詛の類だったのかと思われ、朦朧としながら一瞬、夏美の姿を目にする犬塚だが、目を覚ますとみほの姿はそこにはなく、困惑している内に戦場へと召喚。
 回復したイヌの跳び蹴りがキジに誤爆した拍子に飛び散った塩が手裏剣鬼の目を潰し、今作の小道具の使い方からすると、これもまた“浄めの塩”の意味づけが入っていそうでしょうか。
 「サングラスついてて良かったぁ……」
 目つぶし無効のドンブラザーズは揃ってロボターチェンジし、ロボブラザーズとなるとEDが流れ出す新趣向で、EDに乗せて……という程の事もなく、手裏剣鬼×5は瞬殺されて壊滅し、ドン! ドン! ドンブラザーズ!
 忍者マニアの大野は元に戻って大団円……かと思ったら、雉野家のリビングのみほが映し出されたところで不意にEDテーマが途切れるのは、EDテーマの使い方として二回のひねりを入れる事で、二回目のひねりがより印象的になってお見事。
 今作初登板となった山口監督、平手打ちを受けた犬塚の顔にべったり赤い手形、とかは好きな傾向の見せ方ではないのですが、ここは良かったです。
 机上のメモ帳に手を伸ばしたみほは、薄暗くなったリビングで灯りもつけずに折り紙を折ると、その手に乗ったのはツル、そして赤ん坊の泣き声のような声が背後に響き渡り……つづく。
 夫に続いて妻までもサイコサスペンス調のオチを付けた雉野夫妻、ストレートに考えると、夏美に獣人が憑依して(夏美としての記憶を持たない)雉野みほとして平凡な女性を装っている……といった推測ができますが、OPクレジットも雉野みほ/夏美となり、留まる事を知らないそのヒロイン力の増大に、マンガの鬼は打ち克つ事が出来るのか?!
 ヒーローになる「覚悟」とは! 時にはヒロインへの道を切り捨てる事……かもしれない。
 次回――見つめ合って笑顔をかわすタロウとソノイが、巨大ロボの100倍ぐらい気になります。