東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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そろそろ春の読書メモ2

新規開拓

●『変調二人羽織』(連城三紀彦
 東京の空を舞う一羽の鶴が目撃された大晦日の夜――かつて一世を風靡した落語家・伊呂八亭破鶴が心臓を一突きした死体となって発見された。現場となったホテルの広間に居たのは、いずれも生前の破鶴に恨みを抱く関係者ばかり。だが、最後の独演会の真っ最中だった破鶴に近づける者は誰一人としておらず、果たして、その死は自殺か他殺か、二転三転する事件の真相は……。
 著者のデビュー作である表題作を始め、『幻影城』掲載作を中心として初期作品を集めた短編集。
 1970年代半ば、探偵小説誌と銘打った掲載誌の性格や、社会派推理小説が隆盛の時代背景もあるのでしょうが、収録作のいずれも必要以上にややこしい印象。もう少しスッキリしてくれた方が読みやすい……という内容が多かったですが、次は《花葬》シリーズを読んでみたいところ。

●『聴き屋の芸術学部祭』(市井豊
 とある大学の芸術学部、奇人変人が多く集う学舎で、他人の話を聞く事が苦にならない体質が高じて、ただただ相手の話を聞いて相づちを打つだけの“聴き屋”をしている大学生が巻き込まれる4つの事件を描いた短編集。
 特別博識なわけでも鋭い知性を閃かせるわけでもない探偵役が、聞き集めた情報を基に“どう考えればいいのか”の試行錯誤を繰り返しながら組み立てていく推理には説得力があり、ほどよく混じったユーモアも私好みで面白かったです。
 収録作の中では、散りばめた伏線の収まり方が綺麗な「泥棒たちの挽歌」が秀作。

●『落下する緑』(田中啓文
 唐島英治クインテットを率いるジャズミュージシャン・唐島が目をかけるテナーサックス奏者・永見緋太郎は、才能ある若き演奏家。優れた耳と技術を持ち、演奏に関しては真摯で熱意溢れる一方で、興味の無い事には無知・無関心な永見だが、逆さまにかけられた抽象画、新たに発見された大作家の原稿の真贋……不可解な謎に直面した時にその鋭敏な感性が鮮やかに真実に辿り着く、連作短編集。
 語り手(唐島)と探偵役(永見)が共にジャズミュージシャン、という少々変わり種の設定で、主に音楽業界を舞台とした“日常の謎”系とはいえるものの、ミステリ度は弱め。
 探偵が謎に対して明確に推理をするというよりも、なんとなくこうではないかと思った真相を確認する……といったタイプのエピソードが多いので、如何にもな謎解き小説ではないのですが、ジャズとミステリをブレンドしながら読み味のいい作品が揃っていてなかなか面白かったです(なお作者は実際にジャズ愛好家であり演奏家でもあるとの事)。