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成・敗・バイ!

忍風戦隊ハリケンジャー』簡易構成分析

 あれもこれも貯まりすぎているので、ひとまず、データだけ集めておいて総括と構成分析の叩き台にする作業をしておこうシリーズ。

◇演出
 渡辺勝也〔1.2.7.8.15.16.29.30.35.36.41.42.49.50.51〕:15本
 諸田敏〔3.4.9.10.17.18.21.22.27.28.33.34.47.48.〕:14本
 小中肇〔5.6.13.14.37.38.〕:6本
 竹本昇〔19.20.25.26.43.44〕:6本
 大井利夫〔23.24.31.32〕:4本
 橋本一〔11.12〕:2本
 舞原賢三〔39.40〕:2本
 中澤祥次郎〔45.46〕:2本

 パイロット版-夏の劇場版-ラスト3本を担当した渡辺監督が最多演出で、2桁担当は、その渡辺監督と、年間通してTV本編に参加した諸田監督のみ。
 以下6名、合計8名の監督が参加し、大きいトピックとしては、『タイム』『ガオ』では総集編の1本のみだった中澤監督が、もう1本撮っているところでしょうか。

◇脚本
 宮下隼一〔1.2.3.4.7.8.11.16.17.18.23.24.28.31.32.35.39.40.43.44.49.50.51〕:23本
 前川淳〔9.13.19.26.33.34.42.45.46〕:9本
 荒川稔久〔12.15.21.22.25.30.36.37〕:8本
 酒井直行〔5.6.10.14.20.27.41〕:7本
 吉田伸〔29.38.47.48〕:4本

 90年代に入って長く続いた曽田博久メイン体制が『ファイブマン』で終了し、井上敏樹ジェットマン』を挟んで『ジュウレンジャー』~『オーレンジャー』まで杉村升が4年連続メインライターを務めた後、制作体制の見直しが本格化したのか、浦沢義雄武上純希小林靖子武上純希小林靖子武上純希、と入れ替わるようになったメインライターは、90年代《メタルヒーロー》で『エクシードラフト』~『BFカブト』まで5年連続でメインライターを務めていた(《スーパー戦隊》に比べると参加脚本家が多い傾向があるにせよ、東映……)宮下隼一が担当。
 その宮下さんを中心に4人のサブライターが参加し、チュウズーボ退場回は前川さん、マンマルバ退場回は荒川さん、など節目のエピソードが必ずしも宮下さん担当というわけでもなく、メインライターに負担が集中するのを避けたような布陣になっていますが、付き合いの長い宮下さんをメインに据えつつ、次代のメインを張れる脚本家探しの面もあったのかもしれません。
 チュウズーボ退場回の第19話、一鍬が恋の魔術で牛を引く第26話の面白かった前川さんが、サブライター陣では印象的な仕事。

 メイン回(判定は筆者の独断によります)は、以下の通り。 ※()内は、コンビ回。

ハリケンレッド/椎名鷹介
 〔2.5.9.13.20.27.29.32〕:8(4)回
ハリケンブルー/野乃七海
 〔3.6.13.26.30.46〕:6(2)回
ハリケンイエロー/尾藤吼太
 〔4.11.25.29.41〕:5(2)回
カブトライジャー/霞一甲
 〔20.24.28.32.36〕:5(4)回
クワガライジャー/霞一鍬
 〔26.28.36.38〕:4(3)回
シュリケンジャー
 〔23.40.41.49〕:4(1)回
日向おぼろ
 〔12〕:1回
御前様
 〔47.48〕:2回

 初期3人戦隊という事で、立ち上がり順々にメイン回を回し……ているところに電光石火ゴウライジャー推参で一つ飛ばされた吼太が不憫ルートへと突入し、色々と商業展開のスケジュールがあったのでしょうが、せめてメイン回2巡は待ってあげてほしかったところです。
 第7話(ゴウライジャー本格登場)~第18話(ゴウライジャー転校)までの12話で、キャラ回といえるエピソードが4つで、その間に良くも悪くも、個別の掘り下げよりも、〔サポートメンバーも含めたハリケントリオ〕と、〔孤高のゴウライコンビ〕のチーム単位でキャラを描く今作のスタイルが確立。
 これは疾風・迅雷、それぞれの色分けを明確にし、特にハリケン組のカラッと明るい一体感を打ち出すメリットがあった一方、鷹介以外とゴウライ兄弟の距離感がちっとも縮まらない・どうしても一鍬が一甲のおまけになってしまうデメリットも発生し、一長一短。
 その鷹介は一甲ルートの攻略後はこれといったメイン回が無くなるのですが、前半からの〔サポートメンバーも含めたハリケントリオ〕としての描き方が、「物語の中心となる主人公格としての椎名鷹介」よりもハリケンジャー代表としての椎名鷹介」に収まっていくのが、今作の特徴といえるでしょうか。
 合わせて、3+2+1の変則的なメンバー構成に加えて、あくまでセット単位で動くので、従来的なセオリーのキャラ回にこだわらないのも、かなり挑戦した作り。
 今作と次作『アバレンジャー』は、『ガオ』以降における、コンパチ追加武装の導入と追加戦士の定番化を消化するスタイルの確立期でありつつ、基本のメンバー構成が変則的とかなり大胆な事をやっているのですが、今作においてそれが成功していたかというと、少々、難しいところ。
 特に第18-19話でゴウライジャーと協調路線に進んでまもなく第22話でシュリケンジャーが登場すると、その活躍の余地を作る為もあって一甲が面倒くさいルートに入ってハリケンジャーと距離を置くようになってしまい、シュリケンジャーはシュリケンジャーで物語の核心に関わる御前様と繋がっている為に、最終4クール目まで内面の掘り下げに入れなかったのは、商業展開の都合と合わせて色々ちぐはぐな部分を生んでしまいました。
 また、いわゆるシュリケンジャーゲスト(シュリケンジャーの変装として過去ヒーロー俳優が出現する)が、話の筋に大きく関わるわけではないが、ある程度の尺を採って登場する縛りを生んでしまい、発想そのものは面白かったものの、他メンバーのキャラ回を展開しづらい一因に。
 これらの煽りを大きく受けた一鍬は、ラブコメ忍術に引っかかる飛び道具でインパクトは出せたものの、個人としてのフォーカスは兄者の宿命症候群が落ち着くまで先送りされる事になってしまい、本格的な七海×一鍬回・鷹介以外と距離感を縮める吼太×一甲回・キャラの奥行きを作る霞兄弟日常回、の3点は欲しかったなと思うエピソード。
 兄者の宿命症候群が治療された後、4クール目に入ってようやく、延々と絡みづらかったシュリケンジャーの内面に迫れるようになるのですが、既に3神合体までやった後でシュリケンジャーと心を一つになる話を描く事になったり、シュリケンジャー周りはどうにもイベントのタイミングがズレ続け、シュリケンジャー登場以後の強化ギミックを物語と上手く繋げていけなかったのは、残念な点。
 そんな構成面での不満はありつつ、最終的に“未来に向かう若者たち”の物語として気持ちよくまとまったのは、序盤から積み上げてきた“陽性でさっぱりとして気のいい”ハリケントリオのヒーロー性に依るところが大きく、チームとしての魅力の押し出しに成功したのは、今作の強みでした。

 主なイベントは、以下(※各カラクリボールは割愛)。

 第7話 ゴウライジャー本格登場
 第10話 轟雷神登場
 第18話 ゴウライジャー転職
 第19話 轟雷旋風神誕生・チュウズーボ卒業
 第21話 サタラクラ登場・マンマルバ成長
 第22話 天空忍者シュリケンジャー登場
 第33話 リボルバーマンモス登場
 第37話 天雷旋風神誕生・マンマルバ卒業
 第39話 サンダール登場
 第43話 サーガイン卒業
 第44話 御前様、正体を見せる
 第48話 御前様、消滅

 カラクリボールは割愛しましたが、前作のパワーアニマルが、知性と自由意志を持つ為に出す際にはエピソード内容に絡めなくてはいけないのが量的に負担だったのか、追加装備は基本、ざっくりアイテム扱い。
 そこから前作のガオマッスル誕生タイミングで轟雷神が投入され、ガオハンター(第18話)と似たタイミングでスーパー合体が発動。『ガオ』はその後、ロウキ→ガオシルバー誕生(第24話)まで少し時間をかけるのですが、やはりそこが長すぎたと判断されたのか、今作では、幹部撃破→新幹部登場→追加戦士登場、を畳みかける形に。
 その後しばらく、宿命に酔う兄者、それに振り回される一鍬、絡みづらいシュリケンジャー、と微妙な距離感が続きながらキャラ回が幾つか盛り込まれ、前後の構成に難を感じるも中盤この辺りの箸休め的エピソードの出来が良かった(赤黄対立とか中退した落第仲間とか演ドルとか)のは、今作の良かったところ。
 一方で、追加装備の運び屋と化したシュリケンジャーとの間で“正体を明かして人間的な面を見せられない為に距離が縮まるのもトラブルが起きるのもどちらも説得力に欠ける”状態が延々と続いてしまい、30話台の強化展開が上手く盛り上がらないのは構成の難となってしまいました。
 新しい作劇の取り込みを図ると同時に、既存のパターンに大きなアレンジを加える試みをダブル進行するのが限界に達した面もあったのかとは思いますが、結果的にこのシュリケンジャースタイルを踏襲する形となり、一人のキャラクターが物語の核心に近すぎるが為に重い責任を背負ってしまう失敗を繰り返してしまったのが、『ルパパト』のノエルだったかな、とは思ってみたり。
 シュリケンジャーは最終的に、偉大なる先達として後輩たちに未来へのパスを繋ぐ事でキャラクターをまとめてみせましたが、最後まで素顔を見せず心の裡も明かさないシリーズ歴代でも珍しいタイプの追加戦士となりました。この後、更に冒険してくる『アバレンジャー』を経て、追加戦士の定石が固まってくるのは『デカ』『マジ』に入ってからになる事に。