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軽い読書メモ

ギリシア棺の謎』(エラリー・クイーン)、読了

 著名な美術商が病死し、その遺体が古い墓地に埋葬された日――美術商が数日前に書き換えたばかりの遺言状が消失する事件が発生する。父クイーン警視と共に現場となった邸宅の捜索に赴く若きエラリー・クイーンだが、今度は美術商の死体を収めた棺の中から、全く別の新たな死体が発見される!
 久方ぶりのエラリー・クイーン本格ミステリとしては古典中の古典であり、定期的に、もうちょっとクイーン読んでおこう……と思っては続かないパターンを繰り返すのですが、今回、その理由がわかった気がします。
 読んだのは旧訳版なので、2000年代に出ている新訳版だと以下にあげる理由の幾つかは解消されているかもしれませんが、まず一つは、原書がおよそ90年前(1932年)の刊行とはいえ、主人公をはじめ登場人物たちの、下層階級(など)に対するナチュラルな侮蔑的表現が、きつい。
 この点に関しては、当時はそれが自然であった、と読むべきではあるのでしょうが、全くなんの悪意もなく「うすのろ」とか「虫けら」とか口にする主人公には、今日読むとなかなか好感度を持ちづらいところがあります。
 第二は、よく言えば格調高く、悪く言えば回りくどい文章。
 これは単純に、エラリー・クイーンの文章との相性の悪さかと思いますし、時代的には特別装飾過多でもないかとは思いますが、現代の本格ミステリを読み慣れている目には、必要な情報に行き着くまでが長すぎる印象。
 第三に、クイーンの趣味だったのか、商業的事情だったのかはわかりませんが、ゲストヒロイン的存在が出てくると急に描写が増え、文章のテンポが明らかに悪くなると共に会話の面倒くささも増し、スポットが当たる度にドンドンげんなりしてくる事(笑)
 時代によっては、ある種のロマンスの挿入が流行小説としての約束事になっていた頃もあったそうなので、そういう事情なのかなとは思うのですが、劇中での扱われ方がとにかく面倒くさい上に、90年前の男女の機微がさっぱりわからなくて困ります。
 思えば以前に読んだ『オランダ靴の謎』も、そこそこ楽しんだものの、謎や真相よりも「捜査中に殺人現場の隣の手術室で昼食休憩を始める刑事たち」のインパクトが強く、それしか記憶に残っていないのも、近過去小説を読む時の難しさかなと(笑)
 とまあそんなわけで、面白いとか面白くないとかいうより、諸々の相性の悪さが引っかかってしまう一作となりました。