東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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5/4付けレス

 本日は『ブンブンジャー』感想を書きました。気温に脳がついていけていない……。

赤くて駄目な敵がまた一人

◆chi-chanさん
 >せめて十面鬼編終了後から日本語が流暢になったらアマゾンの成長と新展開突入が分かりやすくなったのではとも…。
冒頭の藤兵衛とのやり取りはあまりにも急展開だったので、一区切り合わせ、の方が呑み込みやすかったかもですね……。
 >マサヒコに日本語を教わったのに藤兵衛を「オヤジさん」とも呼ぶ理由は微妙に謎ですが(笑)。
この辺りはホント、面倒なので従来作に寄せたような感じが出てしまいましたよね(笑) もうワンクッション置ければちょっと違ったとは思うのですが。
 >日本語習得後も穏やかでもの静かな青年味がしているアマゾンですが、そのせいで戦闘時に一気に野生回帰…(笑)。
学者の子なので学者肌、はこの時代らしいといえばらしいですが、語り口が割とマイルドなのは、慣れるまでちょっとかかりました(笑)
 >この辺ではモグラに続いてずっと後に繋がる「一般怪人の自我確立」が描かれてますね。
この点のこだわりは、面白いポイントになりましたねー。ホント、忠誠回路仕込んでとは思いますが、そういうところに組織のガタが見えるというか(笑)
 >裏設定ではこの「埋め込まれた顔」は本体の「ゴルゴス」が自らを改造した際に各地から9人の悪党の首を集めて
ああ! そういうのは、子供心に盛り上がる設定ですね! デザインとアイデアは本当に面白かったのですが……。
 >大分シンプルな名ですが、ついにアマゾンに必殺技名が…。
アマゾンといえば大切断、は視聴前の個人的なイメージだったのですが、前作のキングダークが後半まで出てこないとの同様、初めて技名が出るのは1クール目の最後、は驚きでした。

◆ヘイスタックさん
 >色々と野心的な試みがなされた『アマゾン』
現代の作劇にも繋がる確かな意欲作でしたが、やはりなかなか、爽快感などとのバランスが難しいですね……。
 >実際にその設定とキャラで”どう番組を展開していくか”という所まで考えが及んでいない
テーゼ中心の立ち上がりは良かったものの、ではこれで単発エピソードをどう転がすのか……のタイミングで途端に苦しさが出てきたのは、残念ながらありましたよね……。
 >「トンボ獣人」だとハッタリが足りない、みたいな判断でもあったのでしょうか。
名前がシンプルすぎるのもやはり難しいな……と思わされますが、カタツムリとかヤマアラシのように5文字ぐらい欲しくなるのかなと(笑)
 >こういった作劇から後の人物錯綜劇へと繋がっていったのでしょうね。
欲望に率直な感じとなりましたが、新組織への繋ぎとしても、ヘビトンボの動きと見せ方は、なかなか面白かったところです。
 >「頼りになるのはお前だけになってしまった」と零す十面鬼……(笑)
つい先日まで「獣人はまだまだ沢山居る」と言っていた気がするのですが、ストックを把握できていなかったのか虚しいハッタリだったのか、それも納得できてしまう、色々な点で、駄目すぎるボスキャラ格でしたね(笑) …………そういえば、赤い……。
 >5話以降の手足のヒレカッターによる斬撃→流血や切断によるフィニッシュ、は全て大切断という扱いになっているようです。
成る程、言語を習得した事で、自らの攻撃に「名付け」を行ったという扱いだったのですね。

さすらいブンブン流れ星-目指せあの子の一等星-

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第9話

◆バクアゲ9「届け屋たちのハンドル」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:冨岡淳広
 「とにかく、大也が元気になるまでに、ブンブンカーを復活させる」
 「大也さんの夢の為にですか?」
 個人的には率直に、それの何が悪いのかと思うところですが、どうも阿久瀬は、思い込みの激しさと理想の強さから、独り相撲で「裏切られた」気になっている節があり、そもそも“地球防衛の戦力”という観点では公権力サイドがブンブンジャーに「タダ乗りしようとしている」現状――ここで阿久瀬だけは、そのチケットとして“命懸けで戦う”を支払っているのですが、それでトントンといえるわけで――、ブンブンジャーの行き先が思っていたのと違う憤りを大也にぶつけるのは筋違いというか、「自身が理想に向けて邁進する」のと「他者がその理想に沿う事を求める」のが混ざってしまっている印象。
 もう少し阿久瀬に好意的に解釈するならば、大也……君に惚れた! と、理想に応えてくれる存在としての大也(ブンブンジャー)に惚れ込んでいたが故に、つい理想を押しつけてしまうとも捉えられない事は無いですが、そう持ってくるならば、もう少しここまでに“大也に懐く阿久瀬”の描写が欲しかったかなと。
 阿久瀬については恐らく、過去作『炎神戦隊ゴーオンジャー』の軍平(元警察官で、“理想のヒーロー”像をゴーオンジャーに投影しがち)への意識はあると思われますが、ヒーローについてレッドと衝突しがちな軍平が性格に問題の多々ある“ちょっと面倒くさい奴”と描かれていたのと較べると、阿久瀬はあくまで“裏表の無い良い奴”として描こうとしており、マッドレックスと戦う為の戦力を急いで立て直そう、と言っている時に「でもそれは別件の夢の為なんでしょ?」と被せてくる明確な感じの悪さを、あまり感じ悪くならないように――阿久瀬の短所として見えないように――“真っ直ぐさ”の出力めいた表現で濁した結果、かえって“無自覚に他人に理想を押しつける奴”になってしまった感があり、個人的にちょっと苦手なタイプに。
 ……大也は大也で、自覚的に“そうと決めた相手”に似たような事をしている面はあるので、つまるところ裏表に近い関係なのでしょうが、阿久瀬の「理想の押しつけ」と大也の「裏切られる事を面白がる」の対比関係を上手く組み立てきれなかったなと。
 「俺、大也さんの事わかんないです! あの人なに考えてるんすか!」
 「大也は……言葉が足らないからな」
 「シロ先輩もですよ!」
 「情報屋は、大也の事を甘やかすからなぁ」
 言・わ・れ・た(笑)
 うかうかしているとオカン一直線の射士郎が玄蕃に食ってかかっていくと、黙り込んでいた未来が怒りのデステーブル。
 「大也にとって、あたし達ってなに? 大也はなんでグランプリなんかに命を賭けてるの?! 命懸けの夢ってなに?!」
 「……それは――」
 「確かに、腑に落ちませんね。個人の夢を持つのは自由ですが、現実に、地球は敵の侵略にさらされているのです。対抗できる手段がブンブンジャーに限られている以上、個人の夢を理由に独占されるのは非常に問題です」
 そこに細武が入ってくると、目をそらしてしばらく言いよどみながらも後ろ盾となる法的根拠を用意した上で、ブンブンジャーの接収と解散を再び通告。
 「つまり、ブンブンジャーは解散です」
 5話ぶり2度目の解散宣言に、それに従う義務があるのか未来が反問すると、事は個人の問題ではなく、世界の平和・人類の存続に関わる問題なのだと細武は告げ、最大多数の自由と幸福の為に個人の意志が切り捨てられる、公と私の徹底的な対立を描いて、“ヒーローの在り方”の基盤に置いてくる切り口。
 「今は夢を見ている場合ではないという事です」
 外宇宙からの侵略に曝されているのだから、四の五の言わずに戦争じゃぁ、と「私」を圧迫する理由としての生存闘争が置かれ、見方によってかなり際どい切り口ですが(元来、ヒーローフィクションにはそういった寓話的機能があるとはいえ)、話運びとしては幾つか難点は感じ……
 1・確かにハシリヤンは人類の脅威だが、惑星規模の侵略者として捉えるには、ここまでのスケール感描写が小さい。
 2・「外宇宙からの生命体に関わる問題全般を扱う」とはいえ、ISAが宇宙からの侵略問題に対して全権を振るっているのは、組織規模も曖昧で説得力が感じにくい。
 3・やりたい事のニュアンスはわかるが、あまり公権の監視や介入といったところでリアリティラインを引き上げようとすると、そもそも私設軍隊として凶悪すぎて、別の法律に引っかかりそう(というか、既に引っかかっているのでは)。
 と、一つ一つは大きな穴では無いながら、全体として見ると、接収命令に説得力があるというよりも細武が過大に状況の深刻さを煽っているように見えてしまうのは、必要なディテールの掘り下げが甘くなった印象。
 ハシリヤンの脅威度に関しては細武の認識が正しいとは思うのですが、それを「世間」や「組織」がどう考えるかはまた別の話になるわけで……これもあまりやり過ぎると普段の日常シーンの描写との間に齟齬が出てしまうポイントでもありますし、今作ここまでのアベレージが高いだけに気になった部分ではありますが、あまりスムーズな組み立てには出来なかったな、と。
 せめてもう少し、ISAの巨大組織感をねじ込むぐらいは出来たのではないかな、とは思うのですが、今回の落着まで見ると、将来の危険性や不確実性の芽を摘む為にも今の内に手綱を付けておこうと、細武さんがかなりのところを独断で進めた可能性の方が、高いのかも(笑)
 努めて冷静を装っていますが、実態は割と暴走特急なのでは……という気もしてきた細武の足を止めたのは、
 「……夢見たっていいじゃないか! ……大也の夢って、元々は、俺の夢なんだ……」
 未来に事情を説明しようとしかけていたブンブンの叫び。
 「俺は昔、ビッグバングランプリのレーサーだったんだ。でも……ある事故で、グランプリのライセンスを取り上げられて、走れなくなった。自棄になった俺は、宇宙を彷徨って……そして……」
 隕石として地球に墜落したブンブンは、偶然にも大也(レーシングスーツ姿)に拾われて修理を受け、大金持ちで自身で機械弄りが好きという主人公像は、パルプ・フィクション-古典スペースオペラ-アメコミの系譜だなと改めて。
 「なんで……助けてくれたんだ?」
 「爆上がったからなぁ」
 金ならある。
 求めているのは、お金で買えないスリルとロマン。
 「俺、大也に話したんだ。俺に起きた事、ビッグバングランプリの事、俺の夢……全部。そしたらさ――」
 「その夢……惚れた! 俺がその夢を届ける! 俺が走って、君がメカニック。君をもう一度、ビッグバングランプリの舞台に届けてやる。約束だ!」
 「……ありがとう。……でもさ……なんで?」
 「――俺、届け屋だからな」
 この時に「届け屋」を名乗ったのか(それはそれで劇的)、これ以前から届け屋をやっていたのかはわかりませんが、ビッグバングランプリへの出走は大也の私的な夢ではなく、ブンブンの為にブンブンと一緒にかなえようとしていた夢だったと明らかになり、大也の根本が“他者の夢を届ける為に命を懸けられる”人間だと改めて知った未来と阿久瀬は表情を変える。
 「……夢を、届ける……」
 「……届け屋」
 「うん。大也は俺に新しい夢をくれたんだ。俺も、ずっと忘れてた、生きる力が湧いてきた。大也と二人で作った、このブンブンカー軍団で、ビッグバングランプリを勝ち抜く! だから……俺も大也も、諦めない!」
 遂に大也とブンブンの出会いが語られて、やさぐれて自棄になっていたブンブンに生きる希望を大也が与え、二人で一つの夢に向かって邁進していた関係と判明。
 この流れだと、既に事情を聞いていた玄蕃はノーマル地球人でも話は通りそうで、ブンブンカーが「軍団」なのは、BBGには様々なタイプのレースがあって、スピードタイプ以外の車や適性の高いメンバーも必要、という感じでしょうか。
 ブンブンジャー内部のもめ事に関しては「曖昧にしておくほど、ややこしくも恥ずかしくもない事情だった(大也が悪い)」と「確かに、俺と一緒にBBGに出ないか? は、ちょっと説明しにくい(情状酌量の余地あり)」で意見が分かれていますが、「やらかしたのは玄蕃」については、全会一致で議決されました。
 「いくら考えてもわかりません。あなたの目的は地球の防衛ではないのに。彼等は……あなたはなぜ戦うのですか」
 傷だらけの大也が目を覚ますと、基地に居たのはブンブンと細武のみで、他のメンバーはマッドレックスと交戦中。
 「その先に、デカい夢があるからだ」
 公の代表としての細武に対し、“公の正義”を貫いた先に“私の夢”の達成があると、公と私の対立ではなく関係と接続を大也は語るのですが、結局、何故そうなのか? について具体的には触れられず、ふんわりした扱いで終わってしまったのは、物足りなかったところ。……実際に具体的な関連性があるわけではなく、あくまで大也の理念の問題なのかもですが。
 「……それは彼の夢でしょ。あなたの夢じゃない」
 「俺の夢だ」
 「……夢を“届ける”という事ですか……。教えて。何故そこまで届ける事にこだわるのですか?」
 「さぁてな。…………届けてみればわかるさ」
 戦いの場へ向かう大也は振り返ると細武に告げ、ここもキザな言い回しでふんわりとしたやり取りに終始し、「作風」「大也のキャラクター性」として選んだのか、「今後の話の余地の都合」なのかはちょっと判断つきかねますが、個人的にはもう少し、具体的な踏み込みが欲しかった部分(後半まで見たら、これで良かった、となるかもですが)。
 後、前作で蓄積した手法の継承なのでしょうが、秘密基地は基本、背景が合成になる今作、どうしてもこのデジタル背景は“浮き”の違和感が気になり、見せ場のやり取りは出来れば外でやって欲しかったなと、個人的には(前作はストーリー以上に、映像と演出が駄目で脱落してしまったので)。
 大也が復帰を果たす一方、青桃黒橙はマッドレックスに挑むも怒りのデスロッドで蹴散らされ、変身解除して地面に倒れたところに、細武のハンドルによって届けられたのは、ブンレッド――範道大也。
 「来たか、ブーンレッド」
 「マッドレックス、決着をつけようか」
 「勝手に決着つけないでくれる?!」
 「……え?」
 格好つけて一騎打ちに挑もうとした大也は、背後からの声に目を見開き、今作のこの、有能リーダーがあちらこちらで予測を裏切られるのは好きな路線。
 「……あたし、あんたにハンドル預けてないよ? あたしは自分の意志でここに居る。ブンちゃんの夢を届けるのが大也の夢なら、その夢を届けるのがあたしの夢!」
 「俺は何もわかってなかった! ……夢は生きる力ですもんね。それなら……夢を守るのが俺の! ……ブンブンジャーの使命です!」
 「……特等席は降りない。おまえさんが嫌だと言ってもね」
 「……というわけだ。……今度は、置いていくなよ」
 ここまでの各自メイン回から繋げる形で、全員が改めて「ブンブンジャーとして戦う」意志を一つにし、震えるほどの傑作回……というわけではなかったですが、序盤の一波乱を乗り越えてチームの結束を高めるエピソードとしては、及第点の出来。
 未来についてはほぼほぼ、大也の為ではなくブンブンの為になっていますが――それこそが「自分のハンドル」とはいえ――、ブンブンが好感度を稼いでくれていて良かったな大也……!
 ……考えてみる今のところ、ブンブンが圧倒的に今作モテヒエラルキーの頂点。
 「……みんな」
 「自分のハンドルを握るって、こういう事でしょ?」
 「……最っ高の」
 「「「「「爆上げだ」「な」「ぜ」」」」
 5人は声を揃え、それを微笑で見つめる細武。
 「……爆上げだ」
 誰かの想いを誰かに“届け”る事を体験した細武は態度を和らげ、細武役のハシヤスメアツコさん、一体全体どういう経緯のキャスティングだったのだろうと気になって公式サイトを覗いてみたら、中澤監督がかなりプッシュしていたそうで、半分ぐらい細武回だった事に納得しつつ、細武さんの扱いに関しては、制作側のウェイトと個人的な見立ての間にだいぶギャップを感じたエピソードではありました。
 まあ今回、めでたく爆上げウィルスに感染したので、“公と私の対立”というテーゼはひとまず解決して、総合的にここからブンブンジャーの本当のスタート、といった感じでありましょうか。
 「みんなで走るぞ!」
 「「「「オーライ!」」」」
 5人は改めてマッドレックスに向き合い、うまく積み上げないと、強敵そっちのけで悠長に身内同士で話し合って緊迫感皆無になってしまう場面でしたが、マッドレックス様は、場の盛り上がりの為なら“待ってくれそう”な納得感があるのが、どこまでもいい悪役(笑)
 「「「「「爆上戦隊! ブンブンジャー!!」」」」」
 「そのタイヤ、残らず抉りとってやらぁ!」
 それぞれのハンドルを握りしめたブンブンジャーとマッドレックスがフルパワーで激突し、取り囲んでの一斉攻撃に大ダメージを受けたマッドレックスはギャーソリンを要求。前回のヤルカーの扱いに対して不満げであったデコトラとイターシャですが、嫌がるヤルカーを上司めがけで蹴り飛ばし、仲間意識は組織の上下関係の前に儚く散りました(笑)
 巨大化したマッドレックスを前にブンブンレーシングが実戦投入されると、トレーラー・レーシング・クラシックの組み合わせにより、右手に剣を構え、左肩にマント風味のパーツが広がる、ザンザン斬りたいブンブンジャーロボナイトが誕生。
 マッドレックスのドリルドライブに対して、バーニングマントによるブーストで“スピードの向こう側”に到達したナイトはカウンターを一閃。続けて、愛車を失ったマッドレックスにブンブンカー軍団が飛んできて体当たりを仕掛け、前回は踏み台だったブンブンカーに、“仲間”としての見せ場が用意されているのが、手堅い目配りと販促。
 「見たか! これがナイトとブンブンカーのパワーだ!」
 最後は、ブンブン剣爆上げ斬りがマッドレックスを切り裂き、ハシリヤン切り込み隊長マッドレックス、パラリラ退場。
 ヒーローの前に立ちはだかる最初の強敵として、大変いい悪役でありました。
 「「「マッドレックス様ーーー!!」」」
 三下トリオは絶叫し、細武が手を回してブンブンジャーの解散命令は保留となり、勝利のカレーパーティで、つづく。
 結局、「その先に、デカい夢がある」点と、「大也にとって、あたし達ってなに?」については具体的な踏み込みは一切されず、未来も阿久瀬も自分なりに納得はしましたが、そこで寝っ転がって「…………ありがとう。……みんな」と呟いている派手なシャツの奴は、ブンブンの回想シーン以外の事は何も説明していないからな皆!
 甘やかしちゃ駄目だ!!
 ……まあ、ブンブンがライセンスを失う事になった「ある事故」にハシリヤンが関わっているとか、ハシリヤンの一つや二つぐらい潰せないと出場資格が得られないとか、今後どこかで繋げてはくるのでしょうが、上述したように、諸々のキー要素について、あれもこれもふんわりで収めてしまったのは、ちょっと物足りないところでした。
 ただ、ここ数年の模索を踏まえた上で、シリーズのスタンダードな見せ方に寄せつつ、如何にメカとキャラの魅力に繋げるかの工夫が見える巨大戦はここまで総じて面白く、3体合体の特性を、積極的な非対称デザインで活用してくるブンブンジャーロボが格好良いのは、大きな長所。
 後は数字に繋がっている事を願ってやみませんが、次回――届け屋のお仕事回をやってくれるのは嬉しい。

春のさっくり読書メモ

久方ぶりに読書が捗る

●『ダイヤル7をまわす時』(泡坂妻夫
 全7編収録のノン・シリーズ短編集。
 全体的に語り口が回りくどい感じがあって、そこがいまいちでしたが、「可愛い動機」「広重好み」「青泉さん」はなかなか面白かったです。特に「青泉さん」は、余韻の染みる佳作。

●『あなたには、殺せません』(石持浅海
 ――「そうですか。でしたら、やめておいた方がいいですね」
 人を殺そうと考えながらも、その決行を思い悩んでいる者が最後の駆け込み寺として相談に訪れるNPO。そこでは年齢不詳のビジネスマンのような相談員が、相談者に的確なアドバイスを与えて殺人の実行を思いとどまらせようとするのだが、果たして相談者たちの殺意の行方は……。
 どこか《腕貫探偵》シリーズ(西澤保彦)の腕貫さんを思わせる相談員は、恐らくオマージュかとは思うのですが、「殺人者からの相談」という特殊設定・「殺人方法の検討」を巡るディスカッション・「殺人者の話を平然と受け止める」特異な倫理観、と如何にも石持さんらしい構成要素が並ぶ、ひねた設定の連作短編集。
 殺人を考える者が相談に訪れる、という類似の発端から、如何に結末のバリエーションを生み出すかにこだわりが見える内容ですが、その為、雑誌掲載をまとめた短編集として仕方ない面はあるにしても、一編一編の開始後しばらくは、“同じような内容と説明”が数ページにわたって続くのは、短編集としてはだいぶマイナス。
 そこからの展開も半分以上は先を読めてしまいましたが、「夫の罪と妻の罪」は面白かったです。

●『ただし、無音に限り』(織守きょうや)
 霊の存在を視認できるが意思疎通は出来ず、霊の居る場所で眠る事により記憶の一部を共有する事ができるが見えるのは断片的な映像だけ……不自由な霊能力を持った私立探偵・天野春近が、ある資産家の死の真相と、失踪者捜しに挑むミステリ。
 推理小説の名探偵に憧れてはいるが卓抜した推理力を持つわけでもない主人公が、自身の特異体質から得たヒントを頼りに地道な捜査で奮闘する姿が柔らかいタッチで描かれ、作者の小説の巧さが光る中編2本でした。
 とある著名作品を、少しひねった形で取り込んだ……のかもしれないアイデアなどが、推理小説として味のあったところ。

●『模倣の殺意』(中町)
 午後七時――。坂井正夫は、死んだ。
 新進作家が青酸カリの中毒で死亡し、現場の状況などから警察は自殺と判断するが、死者の恋人・中川秋子と、交友のあった作家仲間・津久見伸助は、それぞれの理由から独自に事件を調査し始める……。
 1972年に発表された著者の長編デビュー作で、あるトリックのエポック的作品との事ですが、その分、今読むとトリックにさほどの面白みはなく、旅情・男女のもつれ・アリバイトリック、といった筋立ての濃厚な2時間サスペンス感にちょっと胸焼け(笑) また、フィクションの都合もあるのかとは思いますが、1970年代日本、友人知人を名乗ると病院や旅館で個人情報がポロポロと転がり出してくるのには、目眩がしてきます(笑)
 警察の捜査が雑なのも含めて、その辺りが時代背景としてはおかしくなかったのか、作者の技量的問題なのか、ちょっとメタなノイズになるので読み進めるのに一定の割り切りが必要でした。淡泊な筆致はある意味でトリックの目くらましにもなっていますが、新味さの減少を割り引くにしても、物語としてはあまり面白く感じられず。

●『サーチライトと誘蛾灯』(櫻田智也)
 昆虫マニアの青年・エリ(※魚+入)沢泉が、行く先々で出会った事件を鮮やかに解きほぐす、連作短編集。
 泡坂妻夫の《亜愛一郎》シリーズを意識して書いた事を著者が明言しており、「昆虫」を共通した要素に用いつつ、どこかピントのズレた探偵役の言行が、実は事件の真実にピタリとピントを当てていた、という作り。
 「事件の謎解き」というよりも「事件にまつわる人の心の謎解き」が中心に置かれ、粒ぞろいの出来でした。以前にアンソロジーで読んでいましたが、「火事と標本」は名品。

●『ヴァンプドッグは叫ばない』(市川憂人)
 5人組の現金強奪犯を追跡する為、捜査協力に駆り出されるマリアと漣。首尾良く強奪犯の足取りを掴んだのも束の間、強奪犯が向かったと思われる州都フェニックスではU国全土を揺るがしかねない大事件が発生していた。20年前に逮捕された連続殺人鬼『ヴァンプドッグ』の脱走と、その手口に酷似した殺人――。用意周到に市内に潜伏先を用意していた現金強奪グループだが、厳戒態勢の市内で身動きが取れなくなった上、隠れ家の中で仲間の1人が死体となって発見される。一方、市内でも更なる被害者が発見され……
 『ジェリーフィッシュは凍らない』から続く、現実とはちょっとだけズレた架空の1980年代U国を舞台とした、マリア&漣シリーズの第5弾。
 第1作が非常に良かった後、シリーズとしては右肩下がりの出来だったのですが……今回は面白かった!
 隠れ家で起きた殺人の手段と目的は?
 市内を騒がせる殺人事件の犯人は?
 いずれも『ヴァンプドッグ』を思わせる殺人は、殺人鬼自身の手によるのか、それとも模倣犯なのか?
 凝った叙述と「内」と「外」の分断が、幾つもの謎の織り成すサスペンスを効果的に盛り上げ、中盤にシリーズらしいアクロバットが盛り込まれた後も新たな謎が生まれながら、テンポ良く進行。
 謎解き小説としては、読者に対する情報の明かし方の点でフェアネスが弱いところはありましたが、本格ミステリ構造のサスペンスとしては出来が良く、真相解明におけるピースの使い切り方も鮮やか。
 難を言えば一点、全部それで片付けていいのか……という要素はありましたが、それをシリーズの引き要素にする事で問題はありつつも物語の中に収めてみせ、これまでよりも縦の連続性に強い意識の見えた今回、シリーズの転機の意図も見えたので、ここからどう展開していくのか楽しみです。