東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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『コスモス』の壁

ウルトラマンコスモス』感想・第20話

◆第20話「ムサシの空」◆ (監督/特技監督八木毅 脚本:林壮太郎
 注目は、珍しく、正しい事を言うフブキ。
 「自己管理も出来ん奴が、保護とか偉そうに怪獣の心配なんかしてんなぁ!!」
 ……まあなんだか急速に、感情表現が素直でない面倒くさい人になっていますが……。
 開発中のテックブースターの最終調整の為、宇宙開発センターへの出向を命じられたムサシ。僕はアイズには要らない子なの?! とこじらせて仲間たちとも気まずい別れとなるが、それはオーバーワークで倒れたムサシを気遣ったキャップの親心であり、テックブースター開発顧問の木本博士は、挿入される映像からすると前日譚劇場版の関係者でしょうか。
 というか、クレージーゴン……。
 旧知の木本博士から、プロジェクトへの長期参加を求められるムサシだが、ブースターの実験開始と同時に四つ足の怪獣が出現し、BGMの使い方など、ちょっと古典的な雰囲気の見せ方。
 パリと上海にも出現した怪獣の狙いは、テックブースターが放射するテクノプラズマであり、ブースターを守る為に防衛隊の出撃を要請しようとする研究員を止めたムサシは、自分の心は「怪獣保護」にこそある事を、改めて自覚。
 一方、チームアイズは宇宙開発センターを、そしてムサシを守る為に総員出撃し、
 「外さないでくれよぉ……」
 「俺を誰だと思ってる」
 ……うーん…………自信(意識)過剰?
 「チームアイズ、オペレーション、スタート!」
 ドイガキ発案の誘導作戦は失敗に終わるも、キャップが地上で囮役を引き受け、離ればなれになってもムサシと心は一つ! 皆の力を合わせて怪獣保護だ! と盛り上げようとしてくるのですが……プラズマウェーブより有効な、誘導弾、とは。
 生身で陸戦の方が緊迫感が出る、という映像的な旨みに引きずられたのでしょうが、空腹の怪獣が餌としてテクノプラズマを求めている → プラズマウェーブで引きつけよう! → 完全無視 → 誘導弾 → 効果はばつぐんだ! で、怪獣の特性に応じた作戦よりも通常装備の方が有効という、目を覆いたくなるような選択ミス。
 また、これは今回に限らない『コスモス』全体の曖昧さに起因する失策ですが……防衛軍の存在や行動などを見るに、今作における「怪獣保護」が優先はされるが絶対でない以上、チームアイズの本質は“引き際を常に心得て自分の命を守らなければならない組織”であって――何故なら、怪獣保護活動中に殉職者が出た場合、世論は怪獣処理に傾き、長期的視点での怪獣保護が困難さを増す事が想定されるので――、アイズのメンバーが命がけの囮作戦を行うと、それはアイズの活動意義とは矛盾しているのでは、という厄介な問題が発生しており、この二点が気になって、キャップ決死の侠気! みたいには全く盛り上がる事が出来ませんでした。
 「怪獣を保護して、テックブースターも守ります。両方守らなきゃ、意味がないんです。チームアイズを信じて、任せて下さい!」
 ……あまり信じられないので、最低限、博士は避難した方が良いと思います!
 なお、先程から激しく実弾を撃ちまくっているので、防衛軍呼ぶのと何が違うのかとっても不明。
 改めてのムサシのヒーロー宣言など、中盤戦突入を前に、チームアイズとは何か、ムサシの信念とは何か、を再提起する意図はわかるのですが、端々の描写に隙が多すぎて、『コスモス』としてのまとまりがない内容になってしまいました。
 結局フブキ機が撃墜されてムサシはコスモスに変身し、一心同体といえば一心同体なのですが、チームアイズの信用度はまるで上昇せず、コスモスがいつもよりたくさんポーズを取ると、劇中初の主題歌バトルに。
 コスモスが撃ち込んだエネルギーにより満腹になった怪獣が眠りにつく着地点は、“らしさ”が出て悪くなかったですが、それをアイズが考えた上で完遂しきれなかった部分をコスモスが手助けするならともかく、あれこれ言うけど実弾撃ってばかりだった末にコスモスがまるっと解決してしまうので、おんぶにだっこ感が強くなってしまうのでありました。
 これは《ウルトラ》シリーズの宿業ともいえる厄介な命題ではあるのですが、「怪獣保護」という独自のコンセプトを掲げる今作だからこそ、対怪獣チーム×ウルトラマンの共闘に独自の工夫を見せて欲しいのに、アイズの持ち玉が少ない×その分万能パワーの発動回数が多くなるコスモス、となってしまっているのは、今作ここまでの残念なところです。
 次回――ちょっと意表を突かれるデザインの怪獣。

8/1付けレス

 本日は『アギト』感想を書きました。

ハート様は存在感を取り戻せるのか

◆ログラムさん
 >今回の配信分を観た最初の感想は「デッドヒートって何だったの?」でした。
対ハート用、と意味づけはされていたものの、そのハートを一回殴り飛ばしたら、後は凄く中途半端な強化装備になってしまいましよね……正直、何がどう強いのかもよくわからないですし。
 >初登場時にハートを押していたのも今となっては無駄に幹部級の格を落としただけの描写になっていて
デッドヒートがさして活躍しないので、あっさり押し負けたハートも存在がなんだかよくわからなくなる、という物凄い負の連鎖が起きてますよね……色々、どうしてこうなった感。
 >チェイサーとの決着に被せたことで段取り不足で盛り上がりにくい戦いから更に盛り上がりが減じてしまったような。
フォーミュラはフォーミュラで、別に対チェイサー用というわけでもないので、デッドヒートと使い方が逆ではというか、どこから出てきた感がvsチェイスと噛み合わない感を増してしまいましたね。ここ数話ちょっとノリにくかったので、新展開で巻き直しを期待したいです。

◆橘まことさん
 >「桜島」と謳いつつ、ほとんど指宿ロケじゃないか! と物言いをつけたくなる鹿児島県人です。
改めて地図を確認してみたら、対岸といえば対岸なものの、かなり離れたところから降らせていたのですね、隕石……(笑)
 >25話のラストカット、バックにそびえ立つのは桜島ではないのですが、桜島だと思い込んだお子さんも多かったのではないでしょうか。
流れでもう完全に桜島だと思っていました!
 >そもそもジェットマンに対する認知が「伝説の最終回」に寄りすぎた上に
公式が作品の他の要素(良さ)を紹介するのではなく、紹介しやすいところをそのまま押し出した感じになってしまったのが、ウケやすさもわかる一方で、安易にいじった感じにもなりましたよねー。
 >いじるとしたら最終話を茶化す方向にしか考えられなくなっているように感じられました。掘ればもっと色々と出てくると思うのですが。
なまじ『ジェットマン』が、ヒーロー作品としてかなり普遍的なテーゼをとことん掘り下げた作品だったので、抽出や再構築がしにくい、というのはあるのかもですね……この辺りは、荒川さんや宇都宮Pの慧眼でもあったのかなと。
 >ロボ戦のセットがまずストーリー作りの念頭にあり、それにあった世界観(ワルド)を香村さんに発注
ダイワルドの、充ち満ちて~の仕掛けそのものは面白いですし、強調したいポイントなのもわかりますが、従来作とのアプローチの違いで苦心が続くかもですね……。
 >ライダーと続けてみているためか「パワーアップなんて降って湧いてもいいんじゃない?」と思い始めている今日この頃です(笑
……考えてみると、10年ぐらい前には地面から突然ダチョウ召喚カードが沸いて出たりしていたので、近年の戦隊はパワーアップ展開にけっこう真面目とはいえそうですね(笑)

愛が重すぎて

仮面ライダーアギト』感想・第39-40話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第39話「アギトvsアギト!」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:井上敏樹
 「戦え! 奴の姿に惑わされるな!」
 激しく拳を交わす翔一アギトと木野アギトは処刑キックも相討ちとなり、雅人禁断症状の出た木野アギトが撤退。真島&涼を狙ったイグアナアンノウンに対しては、ワイヤー拘束からのガトリングコンボでG3-Xが会心の勝利を収め、ライダーマンオマージュとは思われますが、G3に必要だったのはやはり、こういった行動阻害・攪乱系の武装だったと思います!
 そして、共に追われる身ながら、身を挺して瀕死の涼をかばう真島くんが、いい奴ポイントを山ほど稼いでいた(真島くん、けっこう好き)。
 警察上層部は、アギト=津上翔一に関して静観を決定し、いつになく悪の組織めいた演出で『アギト』全体からは違和感があるのですが、会議シーンの映像的面白さを重視するならば、初期からこれぐらいはやって良かったのかもな……と、案配の難しさを感じます。序盤は基本的に、『クウガ』からの流れを壊しすぎないようにはしたい意識があったのでしょうが。
 木野の裏切りにショックを受ける氷川をなぐさめている内に、アギトの正体を知っている事をぽろりとこぼしてしまった小沢は、え?! おかしくないですか?! 警視庁で一番アギトを好きなのはこの僕ですよね?! とヒートアップする氷川に問い詰められ、アギト愛が、重い。
 「氷川くん……あなた、津上翔一の事をどう思う?」
 「……どうして、津上さんが出てくるんです。今はアギトの話をしてるんです。知ってるなら教えて下さい! いったいどこの誰なんです?!」
 「……言いづらいわね……なんとなく」
 「何故です?!素晴らしい人間なんじゃないんですか?」
 「ええ。素晴らしい人間、そしてあなたがよく知ってる人間、あなたにとってはとても意外な人間よ」
 ・
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 「私がアギト?」
 勢い余った氷川くんは北條さんに疑問を投げかけ、今回、一番笑ったシーン。焼き肉屋のやり取りから場面が切り替わると、北條さんの声だけがまず入ってくるのが凄く面白いのですが、『アギト』はこの辺り、生もの感というか、文字情報に変換しにくい面白さが多い感。
 否定した北條もまたアギトの正体を知っている事をほのめかしてしまい、いつの間にやら蚊帳の外に置かれている事に気付く、氷川くん。
 「……氷川さん、あなたは、津上翔一の事を、どう思います?」
 「どうして津上さんが出てくるんです?! 今はアギトの話をしてるんです!」
 「……ふぅー……言いづらいですねぇ……なんとなく」
 久々登場の河野にアタック……するのはさすがに思い直した氷川はとうとう美杉家を訪れると、翔一に向けて理想の“アギトの正体像”を語り、とうとう、我慢の限界に達する翔一くん(笑)
 「あーー! 氷川さんはアギトを美化しすぎですって! 普通の奴ですよ普通の!」
 一連の氷川くんの迷走は基本コミカルに描かれているのですが、その中で、聖人ではなく凡俗としてのヒーローのモチーフが繰り返し持ち込まれるのは、今作の志向する“ヒーローをどこに立たせるのか”において、象徴的。
 勿論それは『アギト』のオリジナリティというわけではないのですが、石ノ森ヒーロー作品への意識を含めて、神話的であると同時に神話との訣別が主題になっているのは、一つ特徴に感じます。
 生死の淵を彷徨う涼の前には沢木が現れると、同意を得た上で真島の中のアギトの力を移植。
 これにて真島くんがアギトサバイバルレースから平和裏に脱落すると共に、涼復活の理由として相応の説得力を持たせた上で、アギトの力を捨てる事を真島に「選択させる」のも、物語の良いアクセントになりました。
 ……まあ、中盤の行動と比べると妙に甘いですし、沢木にはどうにも他者の運命を「狂わせている」感が強く、既に「狂ってしまった」ものだとしても、好感の持ちにくいキャラでありますが(なお私は、演者の小沢敦志さんが好きな為にだいぶひいき目です)。
 危機的状況を脱した涼だが木野アギトが迫り、駆け付けたG3-Xは完封負け。奪ったG3銃を使ってアギトと戦う変化球が織り込まれ、倒れた涼に銃を向ける卑怯者ムーヴに動きの鈍ったアギトは木野アギトに叩き伏せられ、G3-Xの前で変身解除。
 今回散々、氷川くんを弄んだ割には、肝心の正体バレがやたらあっさりだったのは、物足りなかった部分。引っ張った末にバレ方があっさりしすぎて面白い、を狙ったのかもしれませんが、ここはもっと明確に劇的にしても良かったかな、と。
 窮地に陥る翔一たちだが、何度目かの臨死体験を経た涼が覚醒し、夜気を切り裂く咆哮と共にギザギザの増えた強化ギルスが誕生して、つづく。……真島の中のアギトパワーを得て強化覚醒したので……つまり……アギルス?

◆第40話「ふたりはツガヒカ」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:井上敏樹
 見所は、車、垂直落下。
 夜戦でのこの爆発は、大変印象的な画になりました。
 体術で木野アギトを上回るトゲトゲギルスは背中から得体の知れない触手を伸ばし……描写が完全に遊星から来たクリーチャーになっていますが、元々アマゾンライダーの系譜だったとはいえ、メイン3ライダー制ゆえのエスカレート、といえましょうか。
 全身鋭角増量! というデザインの方針があまりにも悪役っぽい真ギルスは、必殺のクローアタック寸前、真島の叫びに攻撃を止めると、蹴り落とした木野を追うように海へと飛び込み、トレーラーに戻った氷川は、さすがの尾室が止めに入るレベルで、歯を剥き出しにして小沢に抗議していた。
 ……演じる藤田瞳子さんが、氷川くんのあまりの剣幕と顔面の圧力に、ちょっと素で笑いそうになっているような。
 翔一くんは翔一君で、ちょっと気まずいかもしれない、と重いながら皿を洗い、木野を拾っていた涼は、以前の木野が言ったように、アギト候補を守る事を宣言。
 「俺はもっと強くなりたかっただけだ。…………もっと……もっと……」
 木野は自らの右腕を見つめ……G3ユニットは屋台でラーメンをすすり、なりのデカい男二人に挟まれて、真ん中にこぢんまりと座る小沢さんが、いつになく微妙に可愛い(笑)
 前回今回と、そこはかとなく、小沢さんも可愛いぞキャンペーンの気配が見えるのですが、鈴村監督が小沢さんを気に入っていたりしたのでしょーか。
 「いずれにせよ、僕にはわからないんです。これから津上さんと、どう接していけばいいか」
 悩める氷川は不審者丸出しで美杉家の様子を窺い、翔一くんに見咎められるとダッシュで逃げた……末に、北條さんに相談していた(笑)
 「そうですか……遂にあなたも、アギトの正体を知りましたか」
 涼のターンだったここ数話から、メインストリームを取り返した途端に、氷川くんが思いもしない方向に面白くて困ります。そして、高級レストランでのランチに付き合わされる氷川くんは、ちゃんとお金を払えているのか気になります。
 「で、なんです? 相談事とは」
 「なぜ……津上さんがアギトなのかと。アギトとは、いったいなんなのかと」
 急に、核心に迫るな(笑)
 雑木林の中に突っ込んでいたかと思ったら、トンネルを抜けて不意に元の道に戻ってくるので油断なりませんが、個々のアギトの正体は大きな問題ではない、と口にした北條は、アギトの発生が人類全体に関わる大きな異変ではないかと示唆すると、思わぬ言葉で氷川を激励する。
 「私に言わせれば、あなたもまたアギトだ」
 「……僕が……アギト?」
 G3-Xを纏い、アギトに互してアンノウンと戦う氷川を北條は讃え、北條さんが北條さんだけに、本気で言っているのかどうか身構えてしまいますが、小沢さんへの厭味を伝言する事で自分でオチを付けてくれてホッとしました(笑)
 アギトとG3-Xは、新たに出現したジャッカルアンノウンの高速移動に対し、トルネイダー二人乗りからの並走ガトリングというマフィアみたいな戦法で大勝利。
 一方、木野家(本宅?)を捜索した北條はそこで、雪菜から「津上翔一」に宛てられた、謎の文字による手紙を発見。その手紙に触れた真魚は、白と黒、二人の少年の姿を幻視して、つづく。