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スーパー藤井邦夫タイム

超獣戦隊ライブマン』感想・第17-18話

◆第17話「泣く人形!襲う人形!」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 見所は、玉乗りしながら現れる頭脳獣。
 「ケンプが探し続けている心を持った人形。本当に居たとは」
 「確かにあの人形、持ち主の必死の願いが乗り移り、心を持っている。とうとう発見できたか」
 病弱な妹・春子を元気づけようと陸上競技に打ち込む姉・令子の為に作られた人形トトに心が宿るザ・藤井節。
 ファンタジーとしてはそんな事もあるだろうという要素なのですが、基本的に「科学」テーマ寄りの今作において、超科学的解釈などを一切交えずにオカルトをそのまま突っ込んでくる為に非常に咀嚼しづらく、持ち込んだメルヘンやロマンスが物語性と噛み合わないまま進行する、悪い時の藤井脚本。
 年間のバリエーションとしてメルヘン的なエピソードがあっても良いとは思うのですが、あまりにも『ライブマン』と接続する為の仕掛が不足しており、素材が巧く馴染んでくれませんでした。
 ……前回と比べると、いきなりキョンシーが出現したところから、複雑な過去の因縁と絡めて確かに『ライブマン』にしてしまうのが、曽田さんの魔術といいましょうか(この辺りは勿論、求められている役割の違いなども出ますが)。
 「あの人形を奪うのか」
 「当然だ! だが、力尽くで奪っては、人形の心が消えるかもしれん」
 念を入れたケンプは、令子の夢枕に囁いて悪魔の靴と人形を取引すると、手に入れた人形を素体にピエロヅノーを作り出し、藤井先生のメルヘン趣味がすっぽ抜けて三塁側ベンチ前まで転がっていくパターンの中、とんちきな作戦行動に終始大真面目なケンプの体調が不安になります。
 ケンプは、心を持った人形により心を持たない人形を操る事で街をぬいぐるみパニックに陥れ、ぬいぐるみを利用する事で、愚かな人間の唱える優しさが欺瞞に過ぎない事を暴くのだ、と理論武装
 令子の頑張りを見守っていためぐみが、ピエロヅノーの素体がトトである事に気付いて説得を試み、後は、めぐみさんの可愛さで強行突破。
 3人パーティの紅一点でフォーカスしやすく、また、女性メンバー二人体制の時期に培ってきたキャラクター性を一人に統合した、という要因もありますが、めぐみさんの“強くて可愛い、そして賢い”は、80年代戦隊ヒロインの究極体ともいえる造形で、それを見事に受け止めてみせた森恵さんは、会心の好キャスティング。
 めぐみ必死の説得が功を奏して正気を取り戻したトトは、令子に悪魔の靴を脱がせ、ピエロヅノーはライブマンが撃破。トトと一緒に頑張れば、その真心こそが妹に伝わって励みになる筈だとめぐみは令子を諭し、姉妹の抱える根本的問題は解決しない(しようがない)まま終わるのは、この時代らしさでしょうか。

◆第18話「罠!丈の愛した頭脳獣」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 珍しく険しい表情のビアス様がマゼンダの前にガラス瓶を投げ捨て、その中身に目を開くマゼンダ。
 「マゼンダ、それが何かわかっているな」
 「……はい」
 「おまえは自己改造した時に人間・仙田ルイを捨てた。かすかに残っていた、優しさと愛する心の遺伝子もな」
 「はい」
 「ではなぜ! 優しさと愛する心のこの遺伝子が、おまえの実験室に大切に保管してあったのだ。人間と地球を支配しようという超天才にあるまじき愚かな行為、許しがたい」
 瓶を投げたり踏みにじったり見せつけたり、ビアス様が大忙し。
 「……私は、愚か者ではありません」
 「ではなんの為に、このくだらぬ遺伝子を保管しておいた?!」
 狼狽して目を泳がせるマゼンダは咄嗟に、その遺伝子のカオスで頭脳獣を作りライブマンを倒してみせると宣言。
 「面白い作戦だなマゼンダ」
 凄みを効かせてマゼンダを見下ろすビアス様が握った瓶を落とすとバラバラに砕け散り、そこにサブタイトルが入るのが、格好いいアバン。
 そして……派手なスケボーのトリックを決めていた丈は、怪我をした少年を助ける白いワンピース概念のマゼンダそっくりの女性を目撃し、そう、予告からそんな予感はしていましたが(今作だと井上敏樹の可能性もありましたが)、今回も、藤井節全開でお届けいたします!
 「マゼンダの奴いったい何考えてんだ?」
 「きっと何か企んでるんだ。俺たちもそっちに行く。油断すんなよ」
 「そう、クライムは悪いに決まってるんだ」
 ……じゃなかった、マゼンダ?を尾行する丈だが、妙に可愛い声のマゼンダ?は今度は老婆が階段を登るのを手伝い、少女の為に水に濡れてボールを拾い……その姿に困惑を深める丈。
 (優しすぎる……マゼンダにしては優しすぎる。……変だな。顔かたちはルイだ。でもその心は優しさと愛に溢れ、まるで正反対。まさか……)
 マゼンダ?を追い続ける丈は、坂道を爆走する乳母車を一緒に助けた事から、マゼンダ?は、マゼンダではない、と結論づける。
 (人のために優しく、涙まで流す。この人はルイじゃない。ルイによく似た別人なんだ!)
 元より惚れっぽい丈は「レイ」と名乗った女性と公園で花を愛で、長石監督の、女優さんはなるべく綺麗に撮ってあげよう力が炸裂!
 「完全に気を許したな丈。ツインヅノー、丈を早くアジトに誘い込め」
 それを正真正銘のドクターマゼンダが見つめる中、順調にいい雰囲気になっていく二人。丈はレイにペンダントを贈り、それを受け取ってはにかむレイだが、丈が離席した隙に、焦れるマゼンダの平手打ちが炸裂!
 声と芝居と映像と演技の合わせ技により、危うく視聴者も眩惑されかけたところで、しっかり、マゼンダの悪を見せてくるのが、手堅い。それにしてもマゼンダ、第3話か4話ぐらいから顎周りのメイクが追加されたのは、油断すると顔が綺麗に撮れすぎるとかだったのでしょうか……。
 「丈……私のレイって名前、「冷たい」って、書くの……私は……私は……さよなら!」
 自宅と称したアジトに近付くも、丈を罠にかける事に苦しむレイは丈を振り切って走り去るが、それを追いかけた丈は結局、罠にはまって地下室に落下してしまう事に。
 「許して……許して丈」
 泣き崩れるレイを見下ろしながら階段を降りてきたマゼンダが光線を浴びせると、レイの姿は醜い頭脳獣ツインヅノーへと変貌。
 「丈、おまえに高性能液体火薬を注入し、人間爆弾に改造してライブマンの基地に送り返し、一気に破壊してやる」
 罠にはまったヒーロー史上でも結構大変な事になりかける丈だが、赤と青が駆け付けて救出され、バイモーションバスターでツインヅノーを消し飛ばそうとする二人を止めると、ライブマンは一時撤収。
 「だけどあの頭脳獣はレイって人なんだ!」
 レイ/ツインヅノーについて、ルイそっくりの女性が頭脳獣に改造されたと捉えている丈が基地を飛び出していく一方、マゼンダは砂浜に佇むレイの姿を、複雑な面持ちで見つめていた。
 (私の捨てた、優しさと、愛する心……)
 そこにケンプが姿を見せ、vsライブマンという構図のみならず、ボルト側の人間関係も肉付けしてくるのが秀逸。
 今回巧いのは、レイが“もともと性格の良い怪人”とか“色々あって良心に目覚めた怪人”とかではなく、“優しさと愛する心の化身そのもの”であり、その優しさも、丈と惹かれ合った事も紛う事なき真実であると共に、苦し紛れの罠を張った結果として、はからずもマゼンダが、擬人化された自らの良心を目の前に見せつけられている構造。
 それは目を逸らそうにも否定できない自らの真実の一部であり、ここまで読んだ上での「面白い作戦だな」だったら、大教授、えぐい。
 また、“ハートの形をした遺伝子から生まれた怪物がヒーローと恋に落ちる”のもメルヘンといえば実にメルヘンなのですが、それを“生体改造の際に捨てたはずの愛と優しさの心”と置く事で『ライブマン』の物語性としっかり接続されているのが、前回との差といえます(同時に、「遺伝子」が具体的な物質でも、寓意的な象徴でも成立するようになっている)。
 「どうしたマゼンダ? おまえまさか……レイを見ていて人間としての自分を、取り戻したくなったのか」
 「黙れケンプ! 私は、ライブマンを倒す!」
 唇を噛んでマゼンダが立ち去ると、そのやりとりをドクターアシュラが物陰で聞いており、アシュラ参戦後、やや散らかっていたボルト側の人間関係が新たなスパイスを加えて再構築されそうなのは、今後へ向けた好材料
 「私は……仙田ルイが捨てた、優しさと愛する心の遺伝子のカオスで作られた、頭脳獣だからなのよ」
 再び砂浜に駆け付けた丈に対しレイは自らの正体を語り、レイ/ツインヅノーに秘められた事情を知るライブマン
 「レイ……このペンダントは、俺が君の優しさを信じた証だ。……たとえ君が頭脳獣だとしても!」
 だが丈は「レイ」という存在を信じてペンダントを再び握らせ、泣き崩れるレイ、やるせない表情を浮かべる丈たち、逆巻く波濤を背景に、役者さんの表情をたっぷりと引き出す、実に長石監督らしい演出。
 長石多可男×藤井邦夫というと、前作『マスクマン』第26話「熱砂に消えた命!」が、良い怪人×交流と悲恋×海、と今回に近い素材が並んだプロットなのですが、このエピソードではマスクマン側が“醜い怪物としてのゲストの正体”と実質向き合わないままだったのが非常に不満だったので、今回は丈がレイ=頭脳獣と知る段階を踏まえた上でその先へ進んでくれたのは、とても良かったです。
 「マゼンダ、レイがおまえの捨てた優しさと愛する心なら、俺は意地でも守り抜くぜ!」
 「くだらぬ意地だ。かかれ!」
 勇介とめぐみが戦闘員を相手取っている間にレイを連れて逃げようとする丈だが、その前に立ちはだかるマゼンダ。
 「破壊してやる。優しさと愛する心の遺伝子で作ったレイを!」
 「やめろマゼンダ! おまえに人間の心が少しでも残ってるなら、レイを頭脳獣に戻すな!」
 「さらばだ、レイ」
 レイを必死にかばう丈に対し、躊躇うような表情を浮かべながらもマゼンダは光線を放ち続け、最後は丈をかばって光線を浴びた事で、レイはツインヅノーへと変貌してしまい、砂浜に無情に落ちるペンダント。
 「あははははははは! あははははははは! あはははははは……」
 自らの優しさと愛する心を葬り去ったマゼンダは狂ったように笑い、今度こそ完全に人間を捨てた……のかと思いきや、丈に背中を向けるとその頬を涙が伝い落ち、それをアシュラだけが見ていたというのが、渋い。
 「……マゼンダ」
 「マゼンダ!」
 哀惜の表情を浮かべていたマゼンダが涙をぬぐい振り返ると、文字通りに人の心を捨てたマゼンダに対し、怒りを向ける丈。
 「どうしてわかってくれなかった? よくもレイを。許さん! ――イエロー・ライオン!!」
 単独変身バンクから主題歌イントロが流れ出して、マゼンダに躍りかかるイエローライオン。ツインヅノーの光線技を回避した勇介とめぐみも変身してOPに合わせて戦闘となり、前回から一転、悲恋ロマンス趣味が鋭い回転でインコースギリギリに決まった藤井脚本と、名匠・長石多可男の情感溢れる演出が絶妙に噛み合って、ドラマからクライマックスバトルへの劇的な切り替えが、完っ璧。


悲しみ溢れた時は 勇気の鐘を鳴らすのさ
涙の欠片ぬぐって 希望に巡り会える日まで

 イエローは悲しみのライオンパンチをツインヅノーに叩き込み、生命のヒーローは、バイモーションバスターでフィニッシュ。巨大ツインはざっくり超獣剣の錆となり、ヅノーベースから地球を見つめるマゼンダに近付くドクターアシュラの手には……丈がレイに贈ったペンダントが。アシュラは無言のままそれをマゼンダに投げ渡して去って行き……渋い。
 「マゼンダの奴……どうしてルイの優しさと、愛する心の遺伝子を取っといたのかな」
 「わからない。でも私、マゼンダがツインヅノーを作るためだけに、取っておいたとは思いたくないわ」
 果たしてそれは、捨てた筈の人間への未練だったのか? 答は誰にもわからないまま、丈は砂浜に、この世に命を得ながら、波間に浮かぶ泡沫のごとく儚く消えていったレイの幻を目にする――
 (さあ……大地にしっかり根を下ろして、花を咲かせるのよ)
 「レイ……」
 しばし幻影と戯れる丈だが、やがてそれは寄せては返す波にさらわれ消えていき、丈は決意を持って、遠い海を見つめる。
 ナレーション「丈は願った。優しさと、愛する心の遺伝子で作られたレイが、かすかにでも、マゼンダに残っている事を」
 「また会えるさ、レイ」
 果たしてその想いが、マゼンダの中のレイを、揺り動かす日は訪れるのか……?
 趣味が合うのか長石×藤井コンビは毎年のようにこういった雰囲気のエピソードを手がけており当たり外れはありますが、藤井先生お得意の悲恋物というのみならず、人が好くて真っ直ぐな丈の格好良さを引き出した上で、ボルトサイドの人間関係の掘り下げに、先々へ繋がる様々な感情の流れも描き、およそ17分の尺でここまで詰め込めるのか! と濃厚な内容で、今回は大当たり。
 怪人との交流エピソードに悪の幹部顔出し活躍編を組み合わせた基本はオーソドックスな作りながら、そこに横軸の人間関係を盛り込む事で1エピソードに収まりきらない物語世界の奥行きを生み出し、それによって「優しさと愛する心」を捨てきれずにいたマゼンダの情も深まる、というのが見事な作りでした。
 前回はメルヘン大暴投、今回は悲恋ロマンス会心の一投、と、どちらも実に藤井邦夫! という脚本が2連発で、溢れる趣味性から出来不出来の落差まで、(2話ずつ配信の関係で)大変濃厚な藤井邦夫スペシャルでした。
 次回――オブラーが、なんだか色々大ピンチ。

凄く目を逸らす男

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第13話

◆エピソード13「地底大戦争」◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久
 「ワンダーーー抱っこ!」
 ささ姫様、もう2、3発、往復ビンタを叩き込んでも、民衆は姫様を支持なさいますぞ!
 そんな姫様いわく「仲間になんかなりません! ……あの人は……宝探しにしか、興味ありませんから」と、大酷評を受けるクリスタリア宝路の正体は、オラディン王が養子に迎えた地球人、とあっさり判明。
 あらゆる世界の石を研究していたオラディン王は、強い力を放つ石たちの存在を突き止め、例のクリスタルに乗って地球を訪問(あ、この時に……)。
 そこで宝路の父と知り合うと、宝路父が開発した球形キラメイチェンジャーにより地球に点在するパワーストーンの在処をサーチしていき、その場所を手帳にメモ。いざ発掘の段階になって若き日の宝路が参加するが、掘り出したストーンの一つがたまたまモンストーンだった事から、宝路の体内へと入り込んでしまう!
 オラディンは命の危機に陥った宝路をクリスタリアへ連れ帰ると、特殊なキラメイストーンを体内に埋め込む事でモンストーンの力を制御する事に成功し、つまりクリスタリア宝路は、クリスタリア製改造人間第1号なのだ。
 モンストーンが人体に入った実例・怪力の秘密・養子の事情がハイペースでまとめて明かされたのに加え、宝路父の作ったお宝サーチャーが、キラメイストーンの力を引き出すキラメイチャンジャーのプロトタイプに転用されたらしい事も判明。
 「そのまま俺はクリスタリアに残り、王子として、また、戦士キラメイシルバーとして、ワンダーに活躍してきたってわけだ」
 今です姫様、出会い頭に助走からのヘッドバットを!
 「何故ここに来たのです!」
 「無鈴に頼んだ、お宝探しの秘密メカ、今日が納品日なんだ」
 「おい、無鈴って……目上の博多南さんを呼び捨てはねぇだろ」
 即座にツッコむ為朝、君はホントに、真面目ないい奴すぎて目眩がしてくるな!
 「いや、俺とあいつなら俺の方が上なんで」
 ところが全く悪びれない宝路は高圧的な態度で博多南に連絡を取り、宝路の為に開発していた秘密メカの最終調整を突貫で行っていた博多南、前回の険しい表情の真相は、(あ……まだ……発注されたメカ……完成してない……)だったのか(笑)
 「魔進を越えるCARAT版スーパーメカだから」
 「聞き捨てならねぇな」
 納期に追われる博多南の弁解に魔進たちがブーイングを浴びせ、実際、コンセプト的にそれはどうなのでしょうか(笑)
 そもそもクリスタリア人なのか地球人なのか、オラディンやマブシーナとの詳しい関係は、といった謎が早々に解かれた一方で、オラディンはかつて地球に来ていた、宝路はモンストーン内蔵改造人間、何故か博多南を顎で使う、と情報量が多すぎて皆の疑問やツッコミが間に合わない中で(唯一ツッコんだのが人間関係へのマナーで、凄いよタメくん……)、響き渡るヨドン警報。
 姫様の気持ちも慮ってか、宝路への態度を決めかねる様子のキラメイジャーだが、ずっとキラキラした眼差しを送る約1名。
 「行きましょう! 戦ってくれるんですよね? 先輩!」
 「……いや」
 あ、目、逸らした。
 部屋に乗り込んできて姫様になじられた際も、露骨に目を逸らして芝居がかったポーズで誤魔化しましたし、共闘拒否を嫌な感じにしない為でしょうが、本心を覚られまいと逃げを打つ時の態度が、かなりわかりやすい人に。
 「……えっ……でも……さっき、戦士キラメイシルバーって自分で……」
 そして、凄く真っ当に、ツッコまれた。
 「今の俺がやるのは、お宝探しだけだ。じゃあな」
 「……言ったでしょう。そういう人だと」
 形勢不利と見るや宝路はそそくさと退場し、出撃したキラメイジャーは巨大ハエトリソウと戦闘員の組み合わせに苦戦するが、突然飛んできたシルバーが、ハエトリソウに囚われた市民をしゃいっと救出。
 「良かった良かった。幸せにな!」
 「お宝探しは? なんで来たの?」
 「……小夜、君が欲しくて」
 「は?」
 手帳の暗号を解くために小夜の頭脳が欲しい、と言い訳したシルバーはピンクを抱えて再びドリルで空を飛び、大変便利だ魔法のドリル。
 「なんなんだあいつ?」
 「……ちゃらいな」
 「でも、なんだか……」
 絶対不可侵のヒエラルキー最上位に君臨してきた女帝を手玉に取るシルバーに対し、どう受け止めればいいのか困惑を隠せない男性陣、の背後でコイバナに悶える約一名(笑)
 そして実際、さくっと謎を解く小夜ですが、いったいぜんたいオラディンは何故、そんなややこしい形でメモを残したのか。……悪用される可能性を危惧して、というのが一番ありそうですが、「その方が、面白いだろ?」ぐらいのノリだった気もして、後代の人間が迷惑しています。
 「ねぇ、お兄さんが探しているお宝って、なんなの?」
 宝路のお宝大好き発言に引っかかりを覚える充瑠はマブシーナに直接質問し、充瑠の真っ直ぐさ(と他者の在り方を大事にする視点)がもつれた状況を解きほぐして真実に近付いていく――という道筋はわかるのですが、ノリノリのイラストに始まって、今回の充瑠はどうも、姫様を蔑ろにしている感が強いのは、気になった点。……勿論、感情のもつれから必要以上に攻撃的になっている姫様が間違っているのなら、それをただすのも仲間の在り方とはいえますが、もう少し、姫様の悲しみに寄り添う形で見せられなかったかな、と。
 「……かつては……わたくしの事を、物凄く可愛がってくれた、お兄様でした。……わたくしの笑顔は半分以上、お兄様がくれたものだったといっても過言ではありません」
 そして、ファザコンの気配が濃い姫様は、案の定、ブラコンもこじらせていた。
 ……真面目な話としては、これまでマブシーナにとって理想郷のように語られてきたクリスタリアにおいて、「落ち込むマブシーナを元気づける宝路がパターン化しているような描写」「笑顔の半分以上はお兄様がくれたもの発言」は、マブシーナの抱える何かがあるのか、気になる点。
 「けれど、ヨドン軍がクリスタリアに侵攻してくる、少し前――」
 険しい表情で、オラディンの手帳を手にする宝路。
 「これは、宝の地図だ。俺が何より求めるものの在処が記されている」
 「お兄様は、みんなの笑顔があればなにもいらない。それが俺の求めるものだって、いつもおっしゃっていたのに」
 「そうだったか? 忘れたな。今はお宝、お宝命」
 宝路は冷たい表情で身を翻し……「だって、宝の地図だぞ? かーーーっと熱くならないか?」……げほごほっ、失礼しました。また強めのノイズが入りました。
 「そのお宝がなんなのか、わたくしにはわかりません。ですがお宝が、お兄様を駄目にしてしまったのです」
 はともかく、『ボウケンジャー』好きとしては、凄く攻撃力の高かった台詞(笑)
 「なにより、求めるもの……」
 再びヨドン反応にキラメイジャーは出撃し、大量の雑兵に阻まれて市民の救助に苦しむキラメイジャーだが、今回もすんでのところでワンダーレスキュー。
 「大丈夫か? ワンダーキュートお嬢ちゃん」
 「また~。お宝一筋じゃなかったの?」
 「だからすぐ帰る」
 空飛ぶドリルで立ち去ろうとする銀だが、巨大ハエトリソウの茎が地下から伸びているのがわかったタイミングで博多南から地中を高速で突き進む事が可能な秘密メカ完成の連絡が入り、一同からキラキラした視線を向けられる事に。
 「俺は余計な事してる暇はないの。じゃあな」
 「……あの人、嘘つきだ」
 背中を向けた銀の態度に何やら思う事があるらしい赤が一時離脱する一方、宝路と博多南がいよいよご対面。
 「久しぶり」
 「……年取ったなおまえ」
 「そりゃそうだよ。30年ぶりだもん」
 旧知の仲が確認されて、前回の不穏な雰囲気の演出から一転、思わぬにこやかな再会となり、やはりあの表情は、(二徹……いや、三徹……俺も、オラディン王、見えちゃうかもしれないよ、充瑠くん……)だったのか。
 「ワンダーサンキュー無鈴! これで心置きなく、お宝探しに専念できるぜ!」
 「嘘だ!」
 完成した超重機ドリジャンを喜ぶ宝路だが、そこに駆け込んできたのは充瑠。
 「おまえか。なんなんだよ嘘って」
 「お宝探し、好きですか?」
 「……俺は……お宝探し命だ」
 充瑠の真っ直ぐな問いかけに、一瞬口ごもり、またも目を逸らす宝路。
 「でも、やらなきゃいけないからやってるんですよね。で、人助けは好きでしょ?」
 「は?」
 「行かないって言ってて、二度も駆け付けてくれました。それに、助けてくれた人が喜んでくれた時、いっちばんキラキラしてました」
 ワンダーレスキュー時のキラキラは、てっきり演出上の誇張表現(王子オーラ的なやつ)だとばかり思っていたら、実際にキラメンタルが外に溢れて視覚化されていたようで(少なくとも、充瑠には煌めきが見えた)、そういえば、そういう世界観でした!
 「それより大事な、あなたが何より求める物って、いったいなんなんですか?」
 「おまえの知ったことじゃない」
 机に拳を叩きつけて強い拒絶を示す宝路だが、睨み付けられても怯まない充瑠が、ここ一番の強さを発揮。
 「俺は! あなたがもっとキラキラしたとこがみたいんです!」



 「俺達キラメイジャーだから! 一人一人が輝いてないといけないんだよ! その為の5人なんだ!」
 「俺がもし、絵なんか描くのやめて戦えって言われたら絶対に無理だなって思って。だから、瀬奈さんにも、大切なことは貫き通して欲しいんです」
 「……一人一人が輝く為に、支え合うから五人必要なんです。そして、そんな五人なら、居場所がバラバラだって、いつだってチームとして一つなんです!」

 充瑠の目にしたシルバーの行動を根拠とした上で宝路の言い回しを逆手にとって「やらなきゃいけない事」と「好きな事」は違う、と示した上で、やらなきゃいけない事を仲間として支えるから好きな事で輝いてほしいと第2話のテーゼ――キラメイジャーの基本方針――に接続したのは、実にお見事。
 また『轟轟戦隊ボウケンジャー』好きとしては、

 「おまえらがやってる宝探しなんて、遊びだよ。俺様みたいに逃れられない宿命でもなんでもない。 ……どうせ好きでやってるだけだろ? 嫌ならとっととやめちまったらどうだ」
(『轟轟戦隊ボウケンジャー』Task.18「生きていた男」)
 を思い出すところでありますが、今作の方向性からすると、意図的な仕掛けかもしれません。
 「生意気言って、すいませんでした」
 再びのヨドン警報に出撃する際、充瑠は一礼してから去って行き、要所要所でキャラクターが人と人との間の丁寧な関係を忘れないのは、今作の好きなところ。
 「……なんなんだよあいつ」
 「変わった子だろ? 不器用で、恥ずかしがりで、人付き合いも苦手なタイプなんだけど、ハートが燃えると誰よりも強くなるんだ」
 充瑠が去った後で博多南の充瑠評が入ったのは、主人公としての充瑠と、長官ポジションとしての博多南、双方の補強になって良かったです。
 「彼のお陰で、キラメイジャーはより、キラキラできた。……なんか秘密がありそうだなってのは俺も感じてはいたよ。まあ、今の気持ちに素直にやればいいんじゃない? あの子たちは、あてにはしてないと思うけど、待ってくれてると思うよ。先輩キラメイジャー、キラメイシルバーの、煌めきをね」
 博多南の言葉もあってか、轟天号もとい超重機ドリジャンに乗り込んだシルバーは三つのドリルで地底を掘り進み、後を追う陸上魔進トリオ。地下で成長していた巨大植物邪面獣を発見すると先制のドリルアタックからクレーン放り投げを決め、魔進トリオがランドメイジに変形合体。戦隊ではあまり無い気がする地下空洞での殴り合いとなるが、助勢しようとしたドリルの前には、スモッグジョーキーが立ちはだかる。
 「久しぶりだな、宝路」
 ドリジャンのロボット形態はお預けになりましたが、ジョーキーが突き出されたドリルをがぶっと口で受け止めてみせ、その上で対峙するガルザとシルバーは、大変格好いいシーンでした。
 「だいぶイメチェンしたじゃねぇか叔父上。よく俺の前に、顔を出せたな」
 何やら穏やかならぬ互いの因縁が早速暗示され、銀の人は、スーツ着ている方が声の格好良さが目立つような(笑)
 「この暗黒の鎧は、おまえの最期を見届けるための礼服だ」
 両者が剣とドリルで直接激突している間にランドメイジがぐるぐるショベルパンチで邪面獣を葬り去り、カメラ戻るとなんか既に膝を付いている叔父上?! 叔父上ーーー?!
 「お宝は見つかったのか?」
 爆発を背景に格好良く飛びかかるシルバーだが、ガルザの放った一言に、寸前で止まるドリルの切っ先。
 「……ガルザ……貴様……」
 「またお前の手助けをしてやってもいいぞ?」
 「卑怯な裏切り者の言葉など、二度と耳を貸すか」
 銀の動揺を誘ったガルザは、ドリルを払いのけると体勢を立て直し、嫌がらせに登場としたと思ったらちょっと目を離した隙に膝を付いていたけど、段々と、口車で精神的優位に立つ強者ムーヴが板に付いてきました。
 「宝路、ヨドンヘイムはいいぞ……ふぅはははっはっはっは!」
 攪乱するだけ攪乱してガルザは撤収し、悪の誘惑として大変いやらしい言い回しが良かったですが、宝路が「やらなきゃいけない事」と「好きな事」の狭間に立っているのに対して、恐らくはかつてクリスタリアにおいて「やらなきゃいけない事」と「好きな事」の狭間に立っていたガルザが、前者を放り捨ててヨドンへイムに加わった事で今、人生を謳歌してキラキラしているのかと思うと、かなり重い。
 ……そこいくと、今のところ描かれるオラディンは「やらなきゃいけない事」と「好きな事」が一致していた人に思われるので、そういう人が善意で押しつけてくる義務と責任って身近に居るほど辛いな……と思ってしまうのでありました。
 この辺り、油断していると寓話を破壊して「そうはいっても……」という現実に寄りすぎかねないので、本格的に持ち込むならば巧く舵取り、ないしドリルで壁を突き抜けていってほしい要素です。
 「さいっこーーーのキラキラでした!」
 姫様が黄昏に思い沈む一方、完全に、じゃれついてくる子犬状態の充瑠に握手を求められた宝路だが、精神判定に成功してそっぽを向いた!
 「………………勘違いすんな。あくまで俺は、お宝探し命だ」
 ここまでのリアクションを見ている限り、たぶん「先輩!」が効くぞ!
 「そう来たか」
 「にぃにらしいや」
 その姿に博多南のこぼした言葉に、一同愕然。
 「にぃにはやめろ! せめて、兄貴と呼べ」
 「え? どういう事? 博多南さんの……兄貴?!」
 「そう。俺の2コ上の、にぃにだ」
 宝路は、なんかもう諦めて、はいそうです、すいません、にぃにです、という顔になり、博多南と宝路(とオラディン)の関係性が、1クールの締めに判明。つまり、地球に来たオラディンと最初に友誼を結んでキラメイサーチャーを提供したのは博多南(父)という事になり、一昔前から奇特な富豪だったのでしょうか。
 「にぃには、俺が15才の時、クリスタリアに養子に行った。体の中のストーンのお陰で、歳は取りにくいらしいが、こう見えてバリバリの昭和の男なんだよ」
 クリスタリア宝路・47歳の事実に、総員、顔芸で絶叫。
 「じゃ、風邪引くなよ。お風呂入れよ。頭洗えよ。宿題しろよ。また来週!」
 宝路はにこやかにまくしたてると笑顔で基地を去って行き、「昭和の男」から『8時だョ!全員集合』ネタを繰り出して、わかる人にわかる人ネタかと思いきや……
 「あれが昭和の別れの挨拶だ」
 博多南がさらっと歴史を捏造して、大爆笑しました(笑)
 アンチエイジング路線というと、シリーズ過去作では理央様(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』)、陣マサト(『特命戦隊ゴーバスターズ』)を思い出しますが、特に長官ポジションと旧知であり、その登場により長官キャラのキャラクター性に変化を生じさせるのは、黒りん-マサトの関係を思い浮かべるところで、良い化学反応になってほしい部分。
 通信機なりで交流はあったのかもですが、30年ぶりの再会でも変わらぬ「にぃに」呼び、抱えている秘密は知らないなりに兄の行動を強く信じている、兄の依頼でスーパーメカ@昭和を作ってしまうなど、かなり兄好き博多南さん、出来れば姫様のメンタルケアもお願いしたいところなのですが……。
 次回――独自行動にこだわる、というか、年齢ダブルスコアの平成ボーイ&ガールの間にどうやって入っていいかわからないでしょ?! と心中密かにキレているかもしれない宝路お兄さんは、充瑠の繰り出す捨てられた子犬のような視線攻撃に耐え抜く事ができるのか?!
 ……ところで、姫様、何歳? (※クリスタリア人が基本的に長命種族かもですが)

7/6付けレス

 本日は『ウルトラマン80』感想を書きました。

そういえば『ダイレンジャー』にはサッカー回が

◆五月サツキさん
 >鎧はメタ的なキャラ付けもされているので、好き嫌いはどうしても出ますねー。
改めて、思い切ったキャラを放り込んできましたよね……。
 >ジョーはザンギャック時代に子供を斬れという命令を拒否していたので、元々子供好きだったりするのではと思ってます。
なんだかんだ、面倒見がいいですしね……そして、相棒は、大きな子供……?(笑)
 >初登場回で転んだ子供を起こしてあげるよう主張していた鎧ですが、子供は守られるだけの存在ではないとここで改めて実感したのではないのかと。
ギャグっぽい見せ方だったのですっかり忘れていましたが、これはあったのかもですね。ヒーローと子供の関係は、護り護られるだけではないし、それはとりもなおさず、ヒーローになろうとしている鎧自身でもある、と。
 >思い返すと過去作の子役レギュラーはメンタルが強い、もしくは強くなったキャラが多かったように思います(そして投石)。
鎧って、そういう地球の子供達、でもあるのかもですね。
 >ダイレンは未視聴でして。脚本家ローテが特殊でぐだったとは聞きますが……。
複数の「○○」編を担当脚本家を決めて割り振る事で縦糸を走らせるアイデア自体は面白かったのですが、縦糸と縦糸の間に誰も横糸を通さないまま終盤に至ってしまったという……。
 >そして星絡みのゴーカイチェンジと。ギンガマンあたりも星っぽそうですが。
2つ前に『ギンガ』回でなければ、素直に「星獣戦隊」だったかもですねー。

◆あきさん
 >でもその場合蘇える敵がクエスターになったりだと余計ややこしいな?とか思いつつちょっと見て見たかった気もします。
もし、ハカセ×鎧話をレジェンド回で展開していたとしたら、野菜の冒険者は大変ふさわしかったかもですね(笑)
 >いかにもボウケンジャーらしい独特なスタンスに笑ってしまいました。
冒険の結果ならそれでOK、というのは特性が出て良かったですね。
 >選考基準は恐らくある時期以降の戦隊の玩具売上順でボウケンジャーは惜しくも次点でした(2006年は男児玩具激戦区)。
都合はわかるけど指標は何かあったのだろうか、と思ってはいたのですが、割と明確な数字でやっていたのですね。
 >宇都宮Pが「ゴーカイジャーという作品に火をつけてくれたのは199だと思っている」と仰っているので、タイミング的にその撮影も大きく影響したのではと。
やりたい事をやれるだけやってやる、のが一つ形になったのがあの劇場版だったんですかね。そして、カーレン……と(笑)
 >マジレンジャーなんかも順番が遅ければもっと出番は多かったかもですね。。
そうなると前半、ゴーカイオーのメインギミックになる作品の方が縛りの多い状態で早めに出るしかなかった、というのは皮肉というかなんというかですね……結果的に、好き勝手やれた不滅の牙という。
 >最初にくどいほど印象づけていくことが後々彼のキャラ描写にも物語にも効いてくるのかなと
改めて劇薬というか、用法・用量に気をつけてちょっと零れ気味なようなというか(笑)
 >台本になかったダイレンジャーへの豪快チェンジを増やし、鎧役の池田さんは念願のキバレンジャーになれて凄く喜んでいたとのことです。
てっきりゲストの名前からダイレンジャー前提で組んでいたとばかり思っていたら、ダイレンジャーは監督追加だったのですね。
 >ゴーカイジャーはここまでレジェンドとの交流に比べて、守る価値を見つけるべき地球の一般人との交流が少なめなので、
 >そこをフォローするのに地球人代表の鎧を絡めたかった、という面もあったのかもとは思います。
この辺りは、アベレージが高いが故に、ちょっと気になるところ、という感じでありますが、鎧の参入による変質がどうなっていくのか、今後も楽しみにしたいと思います。