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凄く目を逸らす男

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第13話

◆エピソード13「地底大戦争」◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久
 「ワンダーーー抱っこ!」
 ささ姫様、もう2、3発、往復ビンタを叩き込んでも、民衆は姫様を支持なさいますぞ!
 そんな姫様いわく「仲間になんかなりません! ……あの人は……宝探しにしか、興味ありませんから」と、大酷評を受けるクリスタリア宝路の正体は、オラディン王が養子に迎えた地球人、とあっさり判明。
 あらゆる世界の石を研究していたオラディン王は、強い力を放つ石たちの存在を突き止め、例のクリスタルに乗って地球を訪問(あ、この時に……)。
 そこで宝路の父と知り合うと、宝路父が開発した球形キラメイチェンジャーにより地球に点在するパワーストーンの在処をサーチしていき、その場所を手帳にメモ。いざ発掘の段階になって若き日の宝路が参加するが、掘り出したストーンの一つがたまたまモンストーンだった事から、宝路の体内へと入り込んでしまう!
 オラディンは命の危機に陥った宝路をクリスタリアへ連れ帰ると、特殊なキラメイストーンを体内に埋め込む事でモンストーンの力を制御する事に成功し、つまりクリスタリア宝路は、クリスタリア製改造人間第1号なのだ。
 モンストーンが人体に入った実例・怪力の秘密・養子の事情がハイペースでまとめて明かされたのに加え、宝路父の作ったお宝サーチャーが、キラメイストーンの力を引き出すキラメイチャンジャーのプロトタイプに転用されたらしい事も判明。
 「そのまま俺はクリスタリアに残り、王子として、また、戦士キラメイシルバーとして、ワンダーに活躍してきたってわけだ」
 今です姫様、出会い頭に助走からのヘッドバットを!
 「何故ここに来たのです!」
 「無鈴に頼んだ、お宝探しの秘密メカ、今日が納品日なんだ」
 「おい、無鈴って……目上の博多南さんを呼び捨てはねぇだろ」
 即座にツッコむ為朝、君はホントに、真面目ないい奴すぎて目眩がしてくるな!
 「いや、俺とあいつなら俺の方が上なんで」
 ところが全く悪びれない宝路は高圧的な態度で博多南に連絡を取り、宝路の為に開発していた秘密メカの最終調整を突貫で行っていた博多南、前回の険しい表情の真相は、(あ……まだ……発注されたメカ……完成してない……)だったのか(笑)
 「魔進を越えるCARAT版スーパーメカだから」
 「聞き捨てならねぇな」
 納期に追われる博多南の弁解に魔進たちがブーイングを浴びせ、実際、コンセプト的にそれはどうなのでしょうか(笑)
 そもそもクリスタリア人なのか地球人なのか、オラディンやマブシーナとの詳しい関係は、といった謎が早々に解かれた一方で、オラディンはかつて地球に来ていた、宝路はモンストーン内蔵改造人間、何故か博多南を顎で使う、と情報量が多すぎて皆の疑問やツッコミが間に合わない中で(唯一ツッコんだのが人間関係へのマナーで、凄いよタメくん……)、響き渡るヨドン警報。
 姫様の気持ちも慮ってか、宝路への態度を決めかねる様子のキラメイジャーだが、ずっとキラキラした眼差しを送る約1名。
 「行きましょう! 戦ってくれるんですよね? 先輩!」
 「……いや」
 あ、目、逸らした。
 部屋に乗り込んできて姫様になじられた際も、露骨に目を逸らして芝居がかったポーズで誤魔化しましたし、共闘拒否を嫌な感じにしない為でしょうが、本心を覚られまいと逃げを打つ時の態度が、かなりわかりやすい人に。
 「……えっ……でも……さっき、戦士キラメイシルバーって自分で……」
 そして、凄く真っ当に、ツッコまれた。
 「今の俺がやるのは、お宝探しだけだ。じゃあな」
 「……言ったでしょう。そういう人だと」
 形勢不利と見るや宝路はそそくさと退場し、出撃したキラメイジャーは巨大ハエトリソウと戦闘員の組み合わせに苦戦するが、突然飛んできたシルバーが、ハエトリソウに囚われた市民をしゃいっと救出。
 「良かった良かった。幸せにな!」
 「お宝探しは? なんで来たの?」
 「……小夜、君が欲しくて」
 「は?」
 手帳の暗号を解くために小夜の頭脳が欲しい、と言い訳したシルバーはピンクを抱えて再びドリルで空を飛び、大変便利だ魔法のドリル。
 「なんなんだあいつ?」
 「……ちゃらいな」
 「でも、なんだか……」
 絶対不可侵のヒエラルキー最上位に君臨してきた女帝を手玉に取るシルバーに対し、どう受け止めればいいのか困惑を隠せない男性陣、の背後でコイバナに悶える約一名(笑)
 そして実際、さくっと謎を解く小夜ですが、いったいぜんたいオラディンは何故、そんなややこしい形でメモを残したのか。……悪用される可能性を危惧して、というのが一番ありそうですが、「その方が、面白いだろ?」ぐらいのノリだった気もして、後代の人間が迷惑しています。
 「ねぇ、お兄さんが探しているお宝って、なんなの?」
 宝路のお宝大好き発言に引っかかりを覚える充瑠はマブシーナに直接質問し、充瑠の真っ直ぐさ(と他者の在り方を大事にする視点)がもつれた状況を解きほぐして真実に近付いていく――という道筋はわかるのですが、ノリノリのイラストに始まって、今回の充瑠はどうも、姫様を蔑ろにしている感が強いのは、気になった点。……勿論、感情のもつれから必要以上に攻撃的になっている姫様が間違っているのなら、それをただすのも仲間の在り方とはいえますが、もう少し、姫様の悲しみに寄り添う形で見せられなかったかな、と。
 「……かつては……わたくしの事を、物凄く可愛がってくれた、お兄様でした。……わたくしの笑顔は半分以上、お兄様がくれたものだったといっても過言ではありません」
 そして、ファザコンの気配が濃い姫様は、案の定、ブラコンもこじらせていた。
 ……真面目な話としては、これまでマブシーナにとって理想郷のように語られてきたクリスタリアにおいて、「落ち込むマブシーナを元気づける宝路がパターン化しているような描写」「笑顔の半分以上はお兄様がくれたもの発言」は、マブシーナの抱える何かがあるのか、気になる点。
 「けれど、ヨドン軍がクリスタリアに侵攻してくる、少し前――」
 険しい表情で、オラディンの手帳を手にする宝路。
 「これは、宝の地図だ。俺が何より求めるものの在処が記されている」
 「お兄様は、みんなの笑顔があればなにもいらない。それが俺の求めるものだって、いつもおっしゃっていたのに」
 「そうだったか? 忘れたな。今はお宝、お宝命」
 宝路は冷たい表情で身を翻し……「だって、宝の地図だぞ? かーーーっと熱くならないか?」……げほごほっ、失礼しました。また強めのノイズが入りました。
 「そのお宝がなんなのか、わたくしにはわかりません。ですがお宝が、お兄様を駄目にしてしまったのです」
 はともかく、『ボウケンジャー』好きとしては、凄く攻撃力の高かった台詞(笑)
 「なにより、求めるもの……」
 再びヨドン反応にキラメイジャーは出撃し、大量の雑兵に阻まれて市民の救助に苦しむキラメイジャーだが、今回もすんでのところでワンダーレスキュー。
 「大丈夫か? ワンダーキュートお嬢ちゃん」
 「また~。お宝一筋じゃなかったの?」
 「だからすぐ帰る」
 空飛ぶドリルで立ち去ろうとする銀だが、巨大ハエトリソウの茎が地下から伸びているのがわかったタイミングで博多南から地中を高速で突き進む事が可能な秘密メカ完成の連絡が入り、一同からキラキラした視線を向けられる事に。
 「俺は余計な事してる暇はないの。じゃあな」
 「……あの人、嘘つきだ」
 背中を向けた銀の態度に何やら思う事があるらしい赤が一時離脱する一方、宝路と博多南がいよいよご対面。
 「久しぶり」
 「……年取ったなおまえ」
 「そりゃそうだよ。30年ぶりだもん」
 旧知の仲が確認されて、前回の不穏な雰囲気の演出から一転、思わぬにこやかな再会となり、やはりあの表情は、(二徹……いや、三徹……俺も、オラディン王、見えちゃうかもしれないよ、充瑠くん……)だったのか。
 「ワンダーサンキュー無鈴! これで心置きなく、お宝探しに専念できるぜ!」
 「嘘だ!」
 完成した超重機ドリジャンを喜ぶ宝路だが、そこに駆け込んできたのは充瑠。
 「おまえか。なんなんだよ嘘って」
 「お宝探し、好きですか?」
 「……俺は……お宝探し命だ」
 充瑠の真っ直ぐな問いかけに、一瞬口ごもり、またも目を逸らす宝路。
 「でも、やらなきゃいけないからやってるんですよね。で、人助けは好きでしょ?」
 「は?」
 「行かないって言ってて、二度も駆け付けてくれました。それに、助けてくれた人が喜んでくれた時、いっちばんキラキラしてました」
 ワンダーレスキュー時のキラキラは、てっきり演出上の誇張表現(王子オーラ的なやつ)だとばかり思っていたら、実際にキラメンタルが外に溢れて視覚化されていたようで(少なくとも、充瑠には煌めきが見えた)、そういえば、そういう世界観でした!
 「それより大事な、あなたが何より求める物って、いったいなんなんですか?」
 「おまえの知ったことじゃない」
 机に拳を叩きつけて強い拒絶を示す宝路だが、睨み付けられても怯まない充瑠が、ここ一番の強さを発揮。
 「俺は! あなたがもっとキラキラしたとこがみたいんです!」



 「俺達キラメイジャーだから! 一人一人が輝いてないといけないんだよ! その為の5人なんだ!」
 「俺がもし、絵なんか描くのやめて戦えって言われたら絶対に無理だなって思って。だから、瀬奈さんにも、大切なことは貫き通して欲しいんです」
 「……一人一人が輝く為に、支え合うから五人必要なんです。そして、そんな五人なら、居場所がバラバラだって、いつだってチームとして一つなんです!」

 充瑠の目にしたシルバーの行動を根拠とした上で宝路の言い回しを逆手にとって「やらなきゃいけない事」と「好きな事」は違う、と示した上で、やらなきゃいけない事を仲間として支えるから好きな事で輝いてほしいと第2話のテーゼ――キラメイジャーの基本方針――に接続したのは、実にお見事。
 また『轟轟戦隊ボウケンジャー』好きとしては、

 「おまえらがやってる宝探しなんて、遊びだよ。俺様みたいに逃れられない宿命でもなんでもない。 ……どうせ好きでやってるだけだろ? 嫌ならとっととやめちまったらどうだ」
(『轟轟戦隊ボウケンジャー』Task.18「生きていた男」)
 を思い出すところでありますが、今作の方向性からすると、意図的な仕掛けかもしれません。
 「生意気言って、すいませんでした」
 再びのヨドン警報に出撃する際、充瑠は一礼してから去って行き、要所要所でキャラクターが人と人との間の丁寧な関係を忘れないのは、今作の好きなところ。
 「……なんなんだよあいつ」
 「変わった子だろ? 不器用で、恥ずかしがりで、人付き合いも苦手なタイプなんだけど、ハートが燃えると誰よりも強くなるんだ」
 充瑠が去った後で博多南の充瑠評が入ったのは、主人公としての充瑠と、長官ポジションとしての博多南、双方の補強になって良かったです。
 「彼のお陰で、キラメイジャーはより、キラキラできた。……なんか秘密がありそうだなってのは俺も感じてはいたよ。まあ、今の気持ちに素直にやればいいんじゃない? あの子たちは、あてにはしてないと思うけど、待ってくれてると思うよ。先輩キラメイジャー、キラメイシルバーの、煌めきをね」
 博多南の言葉もあってか、轟天号もとい超重機ドリジャンに乗り込んだシルバーは三つのドリルで地底を掘り進み、後を追う陸上魔進トリオ。地下で成長していた巨大植物邪面獣を発見すると先制のドリルアタックからクレーン放り投げを決め、魔進トリオがランドメイジに変形合体。戦隊ではあまり無い気がする地下空洞での殴り合いとなるが、助勢しようとしたドリルの前には、スモッグジョーキーが立ちはだかる。
 「久しぶりだな、宝路」
 ドリジャンのロボット形態はお預けになりましたが、ジョーキーが突き出されたドリルをがぶっと口で受け止めてみせ、その上で対峙するガルザとシルバーは、大変格好いいシーンでした。
 「だいぶイメチェンしたじゃねぇか叔父上。よく俺の前に、顔を出せたな」
 何やら穏やかならぬ互いの因縁が早速暗示され、銀の人は、スーツ着ている方が声の格好良さが目立つような(笑)
 「この暗黒の鎧は、おまえの最期を見届けるための礼服だ」
 両者が剣とドリルで直接激突している間にランドメイジがぐるぐるショベルパンチで邪面獣を葬り去り、カメラ戻るとなんか既に膝を付いている叔父上?! 叔父上ーーー?!
 「お宝は見つかったのか?」
 爆発を背景に格好良く飛びかかるシルバーだが、ガルザの放った一言に、寸前で止まるドリルの切っ先。
 「……ガルザ……貴様……」
 「またお前の手助けをしてやってもいいぞ?」
 「卑怯な裏切り者の言葉など、二度と耳を貸すか」
 銀の動揺を誘ったガルザは、ドリルを払いのけると体勢を立て直し、嫌がらせに登場としたと思ったらちょっと目を離した隙に膝を付いていたけど、段々と、口車で精神的優位に立つ強者ムーヴが板に付いてきました。
 「宝路、ヨドンヘイムはいいぞ……ふぅはははっはっはっは!」
 攪乱するだけ攪乱してガルザは撤収し、悪の誘惑として大変いやらしい言い回しが良かったですが、宝路が「やらなきゃいけない事」と「好きな事」の狭間に立っているのに対して、恐らくはかつてクリスタリアにおいて「やらなきゃいけない事」と「好きな事」の狭間に立っていたガルザが、前者を放り捨ててヨドンへイムに加わった事で今、人生を謳歌してキラキラしているのかと思うと、かなり重い。
 ……そこいくと、今のところ描かれるオラディンは「やらなきゃいけない事」と「好きな事」が一致していた人に思われるので、そういう人が善意で押しつけてくる義務と責任って身近に居るほど辛いな……と思ってしまうのでありました。
 この辺り、油断していると寓話を破壊して「そうはいっても……」という現実に寄りすぎかねないので、本格的に持ち込むならば巧く舵取り、ないしドリルで壁を突き抜けていってほしい要素です。
 「さいっこーーーのキラキラでした!」
 姫様が黄昏に思い沈む一方、完全に、じゃれついてくる子犬状態の充瑠に握手を求められた宝路だが、精神判定に成功してそっぽを向いた!
 「………………勘違いすんな。あくまで俺は、お宝探し命だ」
 ここまでのリアクションを見ている限り、たぶん「先輩!」が効くぞ!
 「そう来たか」
 「にぃにらしいや」
 その姿に博多南のこぼした言葉に、一同愕然。
 「にぃにはやめろ! せめて、兄貴と呼べ」
 「え? どういう事? 博多南さんの……兄貴?!」
 「そう。俺の2コ上の、にぃにだ」
 宝路は、なんかもう諦めて、はいそうです、すいません、にぃにです、という顔になり、博多南と宝路(とオラディン)の関係性が、1クールの締めに判明。つまり、地球に来たオラディンと最初に友誼を結んでキラメイサーチャーを提供したのは博多南(父)という事になり、一昔前から奇特な富豪だったのでしょうか。
 「にぃには、俺が15才の時、クリスタリアに養子に行った。体の中のストーンのお陰で、歳は取りにくいらしいが、こう見えてバリバリの昭和の男なんだよ」
 クリスタリア宝路・47歳の事実に、総員、顔芸で絶叫。
 「じゃ、風邪引くなよ。お風呂入れよ。頭洗えよ。宿題しろよ。また来週!」
 宝路はにこやかにまくしたてると笑顔で基地を去って行き、「昭和の男」から『8時だョ!全員集合』ネタを繰り出して、わかる人にわかる人ネタかと思いきや……
 「あれが昭和の別れの挨拶だ」
 博多南がさらっと歴史を捏造して、大爆笑しました(笑)
 アンチエイジング路線というと、シリーズ過去作では理央様(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』)、陣マサト(『特命戦隊ゴーバスターズ』)を思い出しますが、特に長官ポジションと旧知であり、その登場により長官キャラのキャラクター性に変化を生じさせるのは、黒りん-マサトの関係を思い浮かべるところで、良い化学反応になってほしい部分。
 通信機なりで交流はあったのかもですが、30年ぶりの再会でも変わらぬ「にぃに」呼び、抱えている秘密は知らないなりに兄の行動を強く信じている、兄の依頼でスーパーメカ@昭和を作ってしまうなど、かなり兄好き博多南さん、出来れば姫様のメンタルケアもお願いしたいところなのですが……。
 次回――独自行動にこだわる、というか、年齢ダブルスコアの平成ボーイ&ガールの間にどうやって入っていいかわからないでしょ?! と心中密かにキレているかもしれない宝路お兄さんは、充瑠の繰り出す捨てられた子犬のような視線攻撃に耐え抜く事ができるのか?!
 ……ところで、姫様、何歳? (※クリスタリア人が基本的に長命種族かもですが)