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生死を超えて翔んでいけ

仮面ライダー(新)』感想・第28話

◆第28話「8人ライダー 友情の大特訓」◆ (監督:山田稔 脚本:田口勝彦
 特殊砲弾で数万人を消し飛ばそうとしたヒルビランのミニ戦車は8人ライダーの前に敗れた。だが、二世怪人部隊に労働人間を狩り集めさせるグランバザーミは、地底のマグマを活断層から噴出させる事で日本全土を溶岩の海に沈めるマグマ噴出作戦を着々と進めていた!
 人間狩りを阻止しようとする8人ライダーだが、 天の道を往き全てを司る 世界最強の改造人間と大言壮語を吐くだけの実力を持ったグランバサミの高速移動により全ての必殺キックを回避されてしまい……これは、クロックアップ(笑)
 そもそも両面作戦だった筈が納期に遅延を起こしたグランバサミは、魔神提督のアドバイスにより石油関係の技術者をさらおうと石油化学研究所を襲撃し、デザイン上(首にあたる部分が無いとかスーツアクターの視界を覆ってしまうとか)の問題か、一部の二世怪人が黄色いスカーフをたすき掛けにしているのが、一周回って何やらお洒落感。
 それを阻止せんとするライダー部隊だが、またもクロックアップに翻弄されるとXキックとスカイキックがライダーマン誤爆し、危うく辞世の句を詠んで弾け飛んでしまうところでしたが、耐えてくれて良かった。
 「恐るべきグランバザーミの力だ」
 「俺達のキックが敗れた」
 スカイキック(とV3キック)どころか先輩たちのキックまで通用しない事でグランバサミの強敵ぶりが印象づけられると、さらわれた技術者の子供をブランカで保護する前回のリプレイのような場面を挟み、シゲルがおもむろに取り出し、この後の展開に何も関わらないスカイライダーバッジは、なんらかの商品か景品の宣伝でしょうか。
 グランバサミのアジトでは掘削作業が進み、マグマ溜まりまで残るは1万5千メートル……雑に労働人間を減らしたグランバサミがまたも人間狩りに向かう姿で“ネオショッカーの支配する世界”が暗示され、立ち向かうスカイライダーだが強烈なハサミ攻撃の前に手も足も出ないまま倒れると、カメラがグルグル回転しながら洋の内心の描写に入る、シリーズでは珍しい演出。
 かつてない強敵怪人の力に恐怖を覚える洋だが、勇気を奮い起こして辛くも立ち上がると、引き裂かれた親子の幻影を目にして、
 「俺は……この子達の為にも、負けられない!!」
 と叫ぶのが、筑波洋のヒーロー性の再確認/再構築として、非常にヒロイックになって良かったです。
 「そうだ、筑波洋。それでこそスカイライダーだ!」
 そして、平然と内心に侵食してくる1号先輩(笑)
 「教えてくれ! 俺は、どうしたら勝てる?!」
 1号先輩に向けて問いかける洋の背後に、ぬぼーっと下から現れる2号先輩の図が滅茶苦茶面白く、この時点では、今回のハイライトはここだ! と思っていました、ハイ。
 「俺は、何度も死ぬような目に遭った。だが、自らの命を鍛えて、立ち直ったんだ!」
 「自らの命を、鍛えるとは?!」
 「特訓だ」
 「特訓?」
 「自らの力に、挑戦する事だ」
 「耐えられるか?」
 「死ぬより辛いぞ」
 「耐えられるか?」
 先輩たちが順々に出てくると、最後は一同揃って「耐えられるか」を繰り返す恐怖のライダー圧迫面接が始まり、この一連のシーンだけで半年分の元が取れてお釣りが来る勢いだったのですが…………実はまだ、本番はこれから。
 「俺は……耐えるぞぉぉ!!」
 絶叫した洋がグルグル回ったところでアイキャッチに繋がって(こういう、ちょっと凝ったアイキャッチの使い方は好き)Bパートに入ると、意識を取り戻した洋は、先輩達に岩場で囲まれていた。
 「今、みんなと話し合った」
 V3先輩から、グランバサミを倒せるのは君しかいない、と持ちかけられた洋は前のめりに承諾し、先輩たちが闘魂もといライダーパワーを注入する特訓契約に、サインを、して、しまいました。
 「よし、遠慮はしないぞ。行くぞ! とぉ!」
 開幕いきなり、生身の顔面に右ストレートで、今回のハイライトを更新(笑)
 V3先輩の打撃を受けてよろめいた洋は、おいおい、まだおねんねするには早すぎるぜ? と背後に控えていた1号先輩とX先輩に受け止められると、そのまま勢いよく放り投げられ…………え、あの……これは……専門用語でいう、「ヤキを入れる」……というヤツでは……?
 そこから生身の洋を先輩たちが次々と投げ飛ばし、ぶつかり稽古が行われ、注入されていくライダー精神と共に洋が斜面を転がり落ちていくと、下ではS先輩がどこから用意したのか鎖鉄球をグルングルンと振り回し…………いや、あの……だからこれは……専門用語でいう、「ヤキを入れる」……というヤツでは……?
 えーまあ、筑波洋が真の“仮面ライダー”となる為の第二の通過儀礼として、先輩たちの手によって再び「生死の境界を越える」特訓内容には納得がいってしまうのですが、スポ根文脈などが引き継がれているだろうにしても、展開される映像は破壊力抜群。
 そして、あまりにも仮面ライダー過ぎて面白い(笑)
 隠居したオヤジに代わって、これが俺達なりの襲名式じゃぁ、とやる事が凄く本物っぽくなったS先輩は鉄球で洋を立て続けに殴打し、ライダーマン先輩によるロープアクション講座を挟んだ洋に、今度はV&S先輩がバイクで襲いかかり、限界を超える走力に目覚めた洋が斜面を駆け上がって追跡をかわすと、すかさず電ショックを放つS先輩……本当に今回は凄く本人っぽいな!!
 ちなみに先輩ライダーはいずれも別人が声をあてていますが、7人まとめて出てくると段々気にならなくなってくる事がわかりました(笑)
 偽物ぽい事は偽物ぽいので、全ては重傷を負った洋が生死の狭間で7人ライダー概念と出会って特訓を受けた神秘体験の可能性も捨てきれないものの、数が多くて単独の長台詞がほとんど無いのと、話のテンポがとにかく早いので、気になるより先に物語が進んでいくという力技(笑)
 電ショックの一撃が、最後の仮面ライダー精神の注入となり、洋の姿は、スカイライダーに変身。
 「よし、仕上げだ!」
 ……あ、まだあるんですね。
 V3を先頭に、スカイライダーへ立て続けに飛び蹴りが打ち込まれ、仮面ライダー精神――注入完了!!
 「見事だ。出来たぞ、スカイライダー!」
 「……ありがとう。みんなのお陰だ」
 この特訓を受けた上でなお、タメ口を貫き通すスカイライダー、逸・材。
 最後に8人が手を重ね合わせると、イニシエーションを克服し、7人ライダーのエネルギーを受け取ったスカイライダーは体色が明るくなり、開始当初、地味な色だな……とは正直思っていたので(見ている内に慣れはしましたが)、1年の折り返し地点で強化特訓を経てのカラー変更は、タイミングも良く頷けるモデルチェンジとなりました
 また、この特訓そのものが「死と再生の通過儀礼」と考えられるので、それを乗り越えた時に新生スカイライダーが誕生する、のも納得。
 8人ライダーはバイクで一斉出撃すると、アジトを出て待ち受けるグランバサミ軍団との決戦に突入し、ノリは完全に、いわゆる《平成ライダー》春映画(笑)
 歴代ライダー8人vs二世怪人12体+グランバザーミ
 総計21が風吹きすさぶ荒野で向かい合うと陣太鼓調のリズムを背に肉弾戦の間合いに入り――これより結びの一番!
 元よりネオショッカー怪人の二世部隊など先輩たちの相手にはならず、次々と必殺技が飛び交うと、折り重なった死体の山が大爆発。一方、特訓によりクロックアップを修得したスカイライダーは、グランバサミの高速移動についていくと火炎放射を回避し、縦横無尽の壁蹴り移動から放つ、大反転スカイキックがグランバサミの頭部に直撃。
 「うぉ……強烈……」
 それでも立ち上がるグランバサミであったが、角材で一撃を与えたスカイライダーは、よろめいたグランバサミを肩に担ぎ上げると垂直ジャンプ。空中で一回転すると、敵の背骨に足で全体重をかけながら地面に叩き落とし脊椎に致命的なダメージを与える殺人技・ライダー飯綱落としが炸裂!
 かつてX先輩が修得し、ゴッド怪人を血祭りにあげた真空地獄車を彷彿とさせる、改造人間殺しのライダー忍法奥義を浴びたグランバサミは、脊椎と腰椎を同時に砕かれて再起不能になると爆散し……これが、これこそが、ライダースピリッツだ!!
 囚われの人々が救出されると、マグマを吸い上げようとしていたアジトは雑に破壊され、魔神提督の日本壊滅作戦はまたも失敗。
 先輩たちはネオショッカーとの戦いの為に再び全世界へと旅立っていき、作戦の規模といい味方の戦力といい、正直、魔神提督退場編でも良かったような気はするのですが……途中から全く出てこなくなってしまい、現在の胃の調子が心配です。
 そして、いざ退場となった時に今回より盛り上げる事は出来るのでしょうか……。
 予告洋は今回も交通安全をアピールし、次回はミイラ大作戦なので、改めていきなりの退職処分は避けられそうですが、見た目といい高笑いといい、幹部としての印象度は悪くないので、その時が来たら華々しく散ってほしいところ。
 ゲストの扱いがほぼ前回の焼き増しだったり、わざわざ研究所からさらってきた専門家にやらせる事が“掘削ドリルの手動による微調整”だったりはありましたが、歴代ライダー+再生怪人軍団の物量勝負において、一切の出し惜しみをせずに開幕からアクションに次ぐアクションで展開し、先輩ライダー全員登場のお祭り感――こじつければ、通過儀礼が「祭りの場」となるのもまた必然であり――を途切れさせないまま、
 〔強敵への敗北 → 恐怖を乗り越え守るべきものの為に再起する洋 → 地獄の特訓 → 新生スカイライダー誕生 → インパクト抜群の新必殺技〕
 と、これまでの洋に割と足りていなかった精神的な起伏と成長を描いてヒーローとしての足場を固め直した上で、先輩ライダー達の見せ場も充分に確保しながら、最後は主人公の鬼畜な新必殺技に集約される決着までを1話に綺麗に収め、個人的に、今作ここまでの最高傑作回でした。
 なお、後半は概ねV先輩が仕切って話を進めていくのですが、単独の客演回も含めてV先輩とS先輩が目立ち加減なのは、当時の人気の反映などでしょうか?
 次回――今期事業計画の大幅見直しに直面するネオショッカー日本支部で、優勝請負人・魔神提督は起死回生の業績回復を達成できるのか? そして、シゲルと喫茶ブランカに3クール目の出番はあるのか?!