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世界を色でかき回せ

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第24話

◆バクアゲ24「届けたい歌」◆ (監督:葉山康一郎 脚本:森地夏美)
 届け屋一同は、大也が子供の頃に通っていた学童保育施設を訪問し、なんかもう、凄く普通にブンブンも混ざってますね……一応、大也が雇ったマイナーゆるキャラの着ぐるみで通らない事もなさそうですが(或いは、巷で噂のブンブンジャーロボの本格コスプレ?)。
 そして大也は既に、大きなギターケースを抱えて、俺の歌声を披露する気満々だった。
 ……まあ別に警戒するような状況設定ではないのですが、例の「こどもの日」事件以来、大也が子供と絡んでいると、前後の脈絡と関係なく、来賓代表の挨拶みたいなスピーチを始めそうな不信感が先に立ってしまいます(笑)
 一方、上納金の集まりが悪く、上からお叱りを受けた改造隊長は崖っぷちに追い込まれており、手近に捨てられていたアコースティックギターをイグニッション。
 ……OPクレジットの「アコギグルマー」の文字を見て、モチーフが「阿漕」って何をしてくるのだろうとドキドキしていたのですが、楽器の略称でした。
 改造隊長キャノンボーグ、第11話での初登場から数えること13話、前任のマッドレックス様が第6~9話の短期間で圧縮して派手な花火を打ち上げた事との対比も加わってダラダラと前線指揮官に居座っていた印象が強いのですが、唐突に「もう、後が無い……」と言い出し、今作の意識が強いと思われる80年代ぐらいの作品には確かに敵サイドが急にセルフで追い詰められる事はままありましたが、2020年代にそのまま似たような事をするのは、ちょっと苦しい。
 届け屋一同は子供達と楽しく触れ合い、始末屋の2人については、「三食カレー付きに釣られたから」とちゃんと理由付け。
 そして大也の初恋の人の存在が、幼少期を知っているベテラン教師からバレるのは、『ブンブン』名物・外野からいきなりの情報提供、の中では大変珍しく納得度が高かったです(笑)
 「「初恋?!」」
 未来とビュンディーが物凄い勢いで食いつくと、ビュンディーは手帳まで取り出し……先斗によると、自作の恋愛小説を執筆しているとの事で、経緯はさっぱりわかりませんが、多少の飛び道具を使ってでも、もう少しキャラの個性を尖らせようとする意識は感じられます。
 ベテラン教師いわく、「当時、恥ずかしがり屋で、人見知りだった大也くん」は、若くて美人のマヒロ先生の言葉にコロッと参ると、先生からギターを学び……範道大也さん、女にモテる為にギターを始めていた過去が発覚。
 弾き語りを終えた大也は、舞台袖で机の引き出しに隠していたの日記公開レベルの大暴露が行われていた事を知って慌てるが、マヒロ先生について問われると、
 「…………遠くに、行っちゃったんだ」
 と寂しそうな表情を浮かべ、なんとなく事情を察した射士郎がすかさずフォローを入れ、今回、珍しくメンバーが一堂に会している事もあり、なるべく全員を動かそうとする意識が見えたのは良かったところ……良かった……というか……ようやく……というか。
 施設を離れ、公園で子供達を遊ばせているとギターをかきならすクルマ獣が出現し、放たれるメロディから子供達をかばって直撃を受けた大也と先斗は、強制的な眠りの中で過去の自分の姿を目の当たりにする。
 アコギギターの阿漕な能力により、果たされなかった願望を満たす虚構の過去に囚われる大也と先斗だが…………先斗、一人で先に打ち破った(笑)
 「レッドを連れてこっから離れろ! 過去の呪縛を解く為の、ヒントを探せ」
 紫が怪人を足止めしている間に一同は大也を引きずって施設まで撤退し、先斗が「友人が優しい言葉で引き留めてくれる幻影」を、始末屋として宇宙へ旅立った事を後悔していないからと打ち破ったのに対して、大也が「初恋の先生にハグされる幻影」から抜け出せない姿がちょっと情けない事に。
 ……先斗が幻影を打ち破れたのは大也と出会ったからではあり、恐らく大也の方は、この幻影を抜け出した先にある「喪失」への恐怖感が影響しているのだろうとは思われますが、ただそれなら、お互いの直面する問題が別々なのに、どうしてこの精神トラップで大也と先斗を対比させたのか、がちょっと首をひねるところ(大也は「失った現実」に戻るけど、先斗は「手に入れ直した現実」に戻るので)。
 予告を見るに、次回どうも先斗とブンブンジャーの関係に焦点を当てそうな雰囲気なので、その前振りの面はあるのでしょうが、“主人公の過去の掘り下げ”と“自分の現在地を明確にする追加戦士”を、互いのテーマ性が違うのに1話にまとめるのは、だいぶ強引な運転になりました。
 ……さすがに前回の今回でこんな無理矢理な詰め合わせを見せられると、いや前回、どうしてパロディ野球回にしたの……? と、特大の疑問符は浮かんできます。
 大也の様子を見ていた射士郎は、思い出の歌を外部から合唱する事で、大也に幻影を認識させ……つまりこれは、凄くマイルドな、
 「まだ目が覚めていないようね。彼女は、死んだのよ! バイラムに、殺されたの!」
 なのでは。
 ブンブン一同と子供達の合唱は大也の心へと届き、大也は、虚像のマヒロを、過去の真実で乗り越える。
 「あの時、先生が“届け”てくれた言葉は……」
 「「自分と違う色を持った人が一緒だと、世界はカラフルで、もっともっと面白くなるよ」」
 それは、一人の世界に閉じこもっていた大也を、彩り溢れる世界へ飛び出させてくれた、大事な大事な思い出の言葉。
 「……ありがとう。先生の言葉が、俺を導いてくれた。……今! すっごく面白いよ!」
 ……うーん…………「届け」というキーワードを入れたり、《スーパー戦隊》に絡めて「色」を取り込んだ台詞そのものは悪くなかったのですが、「届け屋」のルーツに関しては内藤絡みであると以前にすっごく雑に処理されているで加速に使えず、正直今作、序盤の一時期を除けば、大也が個性的な(色とりどりの)仲間達と出会って世界を面白くぶん回す話……としては全く成立していない――中心となる大也でさえ、他メンバーとの絡みがあまりにも少ない上、肝心な事を自分の口から明かした例しもない――ので、言葉の中身に24話分の積み重ねが伴っていないのが『ブンブンジャー』の現在地として大変残念。
 床に寝かされた大也を前に皆で歌っている、というブンブン復活の儀式みたいな状況で目覚めた大也が戦線復帰すると紫に合流し、アコギグルマーはギガストリーマーもとい消火器ブラスターでさっくりオーバードライブ。
 ……商業展開との関係性は常に難しいですが、黙秘権を行使している内に夢がかなって一人スーパー化に始まり、ワンワンナインで野球はチームプレイだが超爆上げ合体は2人乗りで、違う色を持った仲間たちは後方置き去りのまま圧倒的水圧によりソロフィニッシュ……と、なかなかの大惨事が続きます。
 巨大アコギグルマーはギターの調べで信号機を召喚して地球の交通ルールでBBロボの動きを封じ、信号機からレーザー光線が飛び出すのは、レスキューポリス》魂を感じますね……!
 状況打破の為にレオレスキューを召喚すると、緊急車両に赤信号は通用しない! で攻略するのは、頓知としては面白かったです。
 アコギグルマーは水圧ソードでばっさり斬られ、単独の1エピソードとしては、“幼少期の大也が良き大人と出会っていた話”として悪い出来ではありませんでしたが、ではそれをどこへ繋いでいくのか? といえば、最後に大也の元に集まった仲間達の合唱に閉じてしまい、いやそこは、大也が次の子供に繋いでいかないといけないのでは……? というのが、一つ不満点。
 敢えて今回、誰がその“子供”に該当していたのかといえば、たぶん先斗なのですが、それならそれで、


 「だから、今の俺は、聞こえた悲鳴を絶対に無視しない。誰よりも速く駆けつけて、笑顔に変える。それが、ブンブンジャーだ」
 「ご立派な事だが……地球人で俺の悲鳴を聞いた奴なんかいねぇよ!」
 「ここに居るじゃないか。余裕が無いと、聞こえるものも聞こえない。今の俺には聞こえるんだ」

 を踏まえた上で、かつて“良き大人に導かれていた大也”が、“今は導く良き大人になろうとしている”ところまで収めてこそだと思うのですが(この点は次回、もう少し何とかしてくるかもですが)、上述した要素も含めて、『爆上戦隊ブンブンジャー』第24話としては、物足りない内容でした。
 とにかく今作、今もって『ブンブンジャー』とは如何なる物語か、を貫く要素があやふやな為に前後のテーゼが一つの物語として繋がらず、毎度毎度、戦隊メンバーもエピソードテーマも敵サイドの行動さえもフワフワと宙を漂っているわけですが、「届け屋」でも「夢」でも別の何かでもいいので、とにかく作品全体を貫く背骨を早急にサイボーグ手術で埋め込んで、鎖がちぎれてバラバラになったネックレスみたいな状況を改善してくれる事を願います。
 例えば“誰よりも速く駆けつけて、笑顔に変える”ヒーローを描くと決めたなら、それを点と点を紡ぎ合わせる線に据えてくれれば、話数を重ねていく中で「ああ、ブンブンジャーはそういうヒーローなのか」といったものが生まれていく(好みに合う合わないは別に自然と物語もまとまりが出てくる)のですが、今作はそこがあやふやで、確たるビジョンが無いまま、各脚本家に自由に投げすぎているのでは、という印象。
 届け屋をやる、悲鳴を聞いたら駆けつける、BBGを目指す……マルチな顔を持つヒーローを打ち出してみたものの、その中心になるものが存在せず、ものの見事に、何でもありは何でもなし、の八方中途半端になっている感があります。
 それから、マヒロ先生に関して物故を思わせる仄めかしがあるのは回想キャラとはいえ感じが悪く、実際の想定がどうだったのかはわかりませんが、「結婚して外国へ行った」ぐらいに収めておいた方が良かったなと(ラストシーンに写真立て1枚とかで表現できますし)。
 まあその場合、大也の引きずり加減が重くなりますが、そこはそれほど大きな存在だったと描き方次第でなんとかなりますし、そういった形でキャラクターを大事に出来ないのだったら、そもそも精神攻撃の内容設定が悪いのではレベル。
 今回の中身を次の一山のステップに用いるようならば、だいぶ不安は募りますが、次回――改造隊長、いよいよ最後の大一番?!