東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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猛る残暑の読書メモ

ミステリとか図像学とか

●『高島太一を殺したい五人』(石持浅海
 ある“目撃者”になった事から、同僚の塾講師・高島太一に殺意を抱く5名の男女。くしくも同じ日時と場所を殺人の機会に選ぶ5人だが、そこには既に、床に頭を打ち付けた様子でピクリとも動かない高島の姿が――。
 果たして高島は既に絶命しているのか? 5人の内の誰かが嘘をついているのか? この場をどうするのが“最善”の選択なのか? ……同じ目的を持ちながらも不可解な状況に置かれた5人が、図らずも現場に残された謎の解明を迫られる長編ミステリ。
 石持さんお得意の、「特殊状況」×「ディスカッション」で展開し、導入のアイデアは面白かったですが、出来はいまいち。
 たまたま、この1年ほどに読んだ石持作品(『君が護りたい人は』『あなたには、殺せません』)がどちらも、「殺人が生む謎」よりも、「殺人という行為そのもの」に主眼が置かれており、今作もそうなのですが、“実行された殺人”と“実行するつもりだった殺人”の間に存在する差を埋める為の小説としての仕掛け、そして物語としての美しさが不足している感。
 また、どこまで作者の意図通りかわかりかねますが、主要登場人物全員、この後しっぺ返しを受けるといいな……が素直な感想で、読後そう思う小説は、趣味とも合いませんでした。

●『透明人間は密室に潜む』(阿津川辰海)
 人間が透明化する奇病が存在する世界で、透明人間が完全殺人を計画する「透明人間は密室に潜む」
 アイドルファン同士のいざこざで起きた殺人事件、その裁判員裁判の最終日に予想外の事態が巻き起こる「六人の熱狂する日本人」
 浮気調査の途中に殺人事件を盗聴してしまった探偵が、優れた聴覚を持つ助手と共に真犯人を捜す「盗聴された殺人」
 クルーズ船内で行われる脱出ゲームの中で起こった事件から、プライドを賭けた知恵比べが繰り広げられる「第13号船室からの脱出」
 チェスタトンの「見えない男」や、フットレルの「十三号独房の問題」などなど、様々な過去の名作に題を採ったりオマージュが盛り込まれ、それぞれ趣向に富んだ、ノン・シリーズ作品集。
 作者の、過去に読んだ長編は今ひとつだったのですが、今作は粒ぞろいの出来。
 特に「六人の熱狂する日本人」は、タイトル通りのパロディ色強めの状況設定に始まり、目まぐるしく移り変わるシチュエーションコメディすれすれの展開の中に、“本格ミステリ”としての背骨を通して見せて、ジャンル小説への筆者のこだわりが感じられて面白かったです。

 他、最近読んだ小説以外。

●『宗教図像学入門』(中村圭志)
●『図像学入門』(山本陽子
●『老荘を読む』(蜂屋邦夫)

 図像学の本を読んでようやく、「如来」(悟りを得た存在。図像的なモチーフは、一種の神格化をされた釈迦)と「菩薩」(悟りを得る予定の存在。図像的なモチーフは、王子時代の釈迦)の違いが大まかに覚えられました。
 後、専門的な本を読むと、もう少し違う事が書いてあるかもですが、ヒンドゥー教に対抗する為にヒンドゥー教の要素を取り入れたが、取り入れすぎて地元インドではヒンドゥー教に吸収されてしまい、結果的にチベットやモンゴル、そして日本で生き残る事になったのが「密教」というのも、ようやく飲み込めました。