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未来を救え 大きな夢で

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第21-22話

◆バクアゲ21「炎の届け物」◆ (監督:加藤弘之 脚本:山口宏)
 ……レスキュー……炎の…………う、ううっ、黙示録が、黙示録が始まってしまうの……?!
 次回予告を見て以降、真夏に飛び交うサンタクロースの幻影に悩まされていた筆者の持病はさておき、日本の夏に負け気味のハシリヤンでは、三下トリオが成り行きから消火器をイグニッション。
 一方、広い範道邸の使われていない部屋を掃除していたブンブン&射士郎&未来の3人は、段ボールの中から子供の頃の大也が描いたと思われる絵を発見していた。
 おさんどん担当の同居人ブンブンと、いわゆる後方彼氏がすっかり板に付いてきた射士郎から、地下ガレージにこもりきりで掃除をしない男扱いを受けている大也……率直に、上層の管理は身内にやらせないで金払ってプロを雇うべきではと思うのですが、フィクションの都合はわかるにせよ、〔大富豪×慈善家〕設定なら、もう少し、経済を回している描写が欲しいなーと。
 〔大富豪×趣味人〕なら、唸る資産はブンブン活動資金の理由付けで終わってもいいのですが、世の中に目を向ける意識を持っているのならば、お金を使う具体的な描写をもっと積極的に劇中で行ってほしいところ……その点で、序盤のブティック買収やスクラップ置き場買収は良かったのですが、最近の、他人に見返りを求めないのが金持ち仕草、みたいなのは少し違う気がして引っかかりになっている部分の一つです。
 幼少期の大也が消防士を描いていた事から、親友として応援したいと「大也個人の夢」を改めて問うブンブンだが、いつものように容疑者は無駄に黙秘権を行使し、いつものように外野から大也のパーソナルに触れるも、いつものように当人が煮え切らない反応を示している内に、いつものように一手二手足りないままクライマックスに入ってしまう、今回もいつもの『ブンブン』ロード。
 格好つけだけど照れ屋(ただし他人の話にはぐいぐい行ける)、はわからないでもないのですが、それはそれとして節目で内心を吐露して視聴者を引きつける機会を完全に見失ったまま20話台まで来てしまった感がある大也、ここまで来ると、『シンケンジャー』並の爆弾を抱えているのではとさえ思えてきますが、それにしても今のところ、大也のだんまりが物語を面白くするのにほぼ寄与していないのは、今作の厳しいところ。
 ブンブンがディスプレイ破壊アタックを繰り出して経済活動に貢献していた頃、細武の指令を受けた阿久瀬は連続不審火事件の調査中、金田一コスプレで「あめ玉探偵」を名乗る玄蕃と出会い…………こ、これは、『烈車戦隊トッキュウジャー』10周年記念「けん玉探偵ヒカリ」セルフパロディ……?
 はともかくとして、せっかく阿久瀬と玄蕃が行動を共にし、今作にしては長時間の絡みが続いたのに、どうして玄蕃にコスプレさせてしまったのか……。
 “普段通りの玄蕃”と阿久瀬を絡めてこそ今作に不足している成分を補えるのに、片方をなりきりコスプレ真っ最中にしてしまったのは、明らかに大失着。
 そもそも、なりきりコスプレは基盤になる普段のキャラ付けが明確でこそ面白くなるわけで、普段からふわふわしている玄蕃が、本日は「あめ玉探偵です」を自称しても、これといった新鮮な面白みが生まれるわけでもなく……あっちもこっちも、キャラクターの土台や関係性の構築及び掘り下げを怠ってきたツケが深く内臓に突き刺さります。
 ……玄蕃は玄蕃で、普段の「調達屋」も一種のなりきりコスプレの可能性があり得なくもないですが。
 大也と上手くコミュニケーションが取れず、外で座り込んでいたブンブンは始末屋コンビと出会い、落ち込むブンブンに対する先斗の、「パンクしたような顔して」は表現として面白かったです(笑)
 大也の子供の頃の夢をかなえたいと意気込むも空回りしていたブンブン総司令はビュンビュンのアドバイスで解決法を閃き、看板通りに、爆速5秒マッハで始末! (※正確には劇中50秒)
 「やれやれ。単純すぎて羨ましくなるぜ」
 「本音だな、先斗」
 「……よせよ」
 の表情の切り取り方も良く、先斗は上手く育てていってほしいと切に願うところです。
 総司令が人生を彷徨している間に、刑事と探偵は不審火事件の真相に気付き、ハシリヤンが配り歩いていた消火器を回収。5人揃って消火器グルマーと激突するも火炎放射に苦戦を強いられ、強化展開の前振りではありますが、最近のブンブンジャーは何を相手にも苦戦しているイメージなのが悩ましい(笑)
 デンジマンと違って無敵時間のある前ダッシュ技を持たないブンブンジャーが、炎に巻かれて蒸し焼きの危機に陥ると紫とビュンディーが助けに入り、VDのアドバイスを受けて“大也の夢をかなえる”為の新装備を開発したBBが炎の中にトランクを届ける事に成功。
 ……始末屋コンビがBBに花を持たせるナイスサポートではあるのですが、お椀回の感想でも書いたように、特に紫が暴れる時と暴れない時の基準がさっぱりわからず、それを「カオス」で理由付けしているものの、
 ではその「カオス」とは何か? の中身もなければ、
 先斗は何故「カオス」を好むのか? についても一切触れられておらず、
 何から何まで説明が必要とは思いませんが、あまりにも示唆も布石も見えないまま独自のマルチワードに丸投げして説明は後付け待ちなのは、今作の根深い悪癖。
 腕と目配りのあるスタッフならば、キャラクターの背景に関わりそうな要素を劇中に散布して視聴者の想像力を刺激し、人物に奥行きをつけると共に“推測する楽しみ”を提供してくるのですが(例えば『ドンブラ』のように、やりすぎて破綻する場合もありはしますが)、今作はあまりにも枝葉を刈り込みすぎて枝振りの面白さが存在しない印象です。
 「大也! それを使って夢を叶えるんだ!」
 炎の中に投げ込まれた届け物の中身は、ブンブン消火ブラスター。
 それを手にした赤がマスクの中で目を閉じると、消防士の絵を思い浮かべるカットが入るのですが…………ここまで、大也側の布石が全く皆無であり、下手をすれば校外学習の写生教室で消防署に行っただけという、ブンブンによるパーフェクト勘違いな可能性もあったわけで、間接的なものでも、視聴者には実際に大也の幼少期の夢が存在していた事を見せておかないと、この瞬間が劇的にならない……という、なんというか欲しいところに手が伸ばされていない、いつもの『ブンブン』クオリティ。
 ブラスターを手に取った赤がポンプアクションを行うと、大変やかましいシステム音声が鳴り響き、ブンブンならぬズンズンチェンジにより、ブンレッドは119。
 「おまえは誰なのでしょうか?!」
 「俺は、ブーーンレッド! ワン・ワン・ナイン!」
 ブンレッドは、後頭部にヘルメットを被り、胸部と肩部にプロテクターとアーマーが増設、放水ポンプキャノンを両肩装備した姿にスーパー化し……恐らく出てくるであろう消防車を視野に入れれば、既に登場しているショベルカーなどと共に“はたらくくるま”カテゴリではあるのですが、車より先行して一人だけレスキューポリスされると、どうしてこうなったの?! 感はちょっと(笑)
 発動とともに周囲の炎を鎮火したワンワンナイン(犬の野球チームではない)は、消火器グルマーの火炎放射を放水バスターで押し返すと、大出力の消化剤でクルマ獣を圧倒し、トドメはゼロ距離消火オーバードライブ。
 ……デザインが悪いわけではないし、スーパー変身直後に挿入歌を突っ込んでくる演出とか嫌いではないのですが、
 とにかく大也側の心理描写が皆無に近い
 ので、スーパー化そのものの劇的さに著しく欠けるのが非常に勿体ない。
 「……ありがとう。おかげで、子供の頃の夢がかなったよ」
 「大也ーーー!!」
 巨大消火器グルマーはウイングモンスタースピンで塵に還り、大也とブンブンは熱烈なハグで仲直り。
 「……けど、消防士だけじゃなくて他にもいろんな絵があるんですね」
 「夢いっぱいって感じ」
 「それが、範道大也という男だ」
 机に並んだ絵の数々を射士郎が評し……いやそれ、子供ならありがちな話で、格好つけて言うほどの事ではないのでは……?
 まあ、バケツプリンを食べたい、みたいな具合で、大人になって子供の頃の夢が一つかなった、事そのものは悪い話ではないのですが、これらは本当に“大也の夢”なのかには一抹の疑問が残り、もしかするとこの絵は、大也がお金を出している養護施設の子供達からのプレゼントにして、その中でも“果たされなかった夢”なのではないか? とか無駄に黒い邪推もしたくなり、特にひねる気持ちが無いのならば、冒頭時点で絵の裏に「1ねん1くみ はんどうだいや」みたいに名前を確認させておくとか、脚本・演出ともに目配りの不足を感じるエピソードでした。

◆バクアゲ22「炎の獅子奮迅」◆ (監督:加藤弘之 脚本:山口宏)
 「いやーーー! はっはっははは、君がブンレッドだったとはなぁ! 実に素晴らしい!」
 以前にも登場した、かつての恩人・内藤雷汰から、キャンプ教室に行っている甥っ子の元に花火セットを届けてくれと依頼を受ける大也だが、そのキャンプ先にテントグルマーが出現。
 「さあ! 楽しいキャンプを始めようじゃないか! ただし――ソロでな」
 上空から振ってきたテントと接触した子供達と引率の先生は、テントと合体してしまう強制ソロキャンプの刑を執行されてギャーソリンを放出し、テントグルマー、顔が網目の奥に隠れている事により、闇の中で炎を模した赤い瞳が揺らめいているような効果が出ているのは、秀逸な造型。その周囲に夏の昆虫があしらわれているのも、良いアクセント。
 「よーぉ! ハシリヤン達も楽しいキャンプか?」
 ただ一人、逃走に成功した少年(内藤の甥)は、アウトドア生活を堪能していた始末屋コンビに助けられ、紫が戦闘員を蹴散らしているところを、山の麓まで車でやってきた大也が目撃。
 少年と合流するもテントグルマーが現れてテントを降らせ、咄嗟に大也と少年をかばった紫がソロキャンすると、続けてビュンディーもリタイア。
 少年と共に逃げ出した大也だが、三下トリオが愛車と写真撮影しているトラブルにより車に戻れず…………少年の安全を優先した判断だとしても、正直、二人で徒歩により山を越えるという判断と、その最中に「花火を届けに来た」とトランクを開いてみせるのは飲み込みづらく、そのキャンプの仲間達がソロキャン中なわけですが、事情を聞いた上で、友達は後で必ず助けるからまずは君が無事なところまで逃げるんだ、ぐらいのやり取りはカットせずに入れてほしいなと。
 代わりに優先されているのがまた、こどもの日の時のような「大人にはこどもの笑顔が一番大事」みたいなスピーチなので、ますます首をひねります。
 後、福々しい少年の顔のアップがやたらに多いのは何故なのかとか、前回-今回と、どうも加藤監督の演出に首をひねるシーンが多め。
 「見つからないのなら、向こうから来てきてもらうまでです」
 一方、キャノンボーグ様がソロキャン一行を人質に使い、単身で呼び出しに応える大也だが、ソロキャンを力尽くで打ち破った先斗が合流し……なんかもう、「逃走劇」も「人質作戦」も「単身突入」も、何もかも台無し(笑)
 「ブーーーンレッド!」
 「ブーーーンバイオレット!」
 「楽しいキャンプの始まりだァーーー!」
 赤と紫が二人並ぶとテントグルマーは顔面から炭火ミサイルを放ち、声質は割と格好良く聞こえるのにテンション高い場面での弾けた芝居ぶりも違和感なく面白く、テントグルマーは声優さんも好演。
 流行に乗りに行く感じといい攻撃手段といい奇声といい、てっきりギャグ怪人かと思われたテントグルマーだが、頭上から降り注ぐテント(一撃で戦闘不能)と、本体による炭火攻撃(遠近両用)の一人コンビネーションで赤紫を苦戦させ、意外や正統派の強敵。
 「永遠にソロキャンプしてろぉ!」
 ただのアクセサリではなかった昆虫ファンネルで赤の足を止めると、巨大テントでフィニッシュにかかるクルマ獣だが、間一髪、紫の銃撃がテントを切り裂き、敵が体勢を崩している間に、赤は119。
 今回も挿入歌に乗せて走り出すとズンズン零距離射撃を叩き込み、吹き飛んだ怪人の背中にブンブン加速から回し蹴りを入れ、ブンとズンの組み合わせによりヒーローも一人時間差コンビネーション。
 炭火のパワーを全開にしたテントグルマーがバーニングテントアタックで突撃してくると、赤119は放水でそれを弾き飛ばし、滑空体当たりを仕掛けてきた怪人が放水を食らい、回転しながら宙を舞っていく姿を下から撮ったのは面白いカメラワークでした。
 「まだキャンプは終わりませんよ。わたくしめにも立場というものがありますからねェ」
 テントグルマーがズンズンオーバードライブで消し飛んだ後、ハイウェイ光線で巨大化すると、改造隊長は開発中のビッグネジネジを用いて、戦闘員を巨大化。
 ここまで存在の消滅していた人質が巨大キャンプファイヤーの供物としてようやく活用され、本格的に《レスキューポリス》してきたところに残りメンバーが凄くのっそり合流すると、新たなブンブンカー・ブンブンレオレスキューが発進。
 そもそも単独スーパー変身は扱いが難しいですが、前回-今回とキャラの出番が激しく偏りつつ、消火ブラスターはブンブンの友情から、新マシンは残りメンバーが協力して完成させた、という形でなんとかチーム物の体裁をフォロー。……ただその割には、一般市民に迫るストレートな命の危機に対して、青以下のメンバーの描写が切迫感に欠けてしまったのは残念で、スポット偏向によって生じるひづみを上手く隠し切れませんでした。
 ただ、大型ユニットを外装として小型のブンブン消防車が合体していた、というレオレスキューのギミックは面白く、巨大戦闘員を片付けた赤119が炎の中に飛び込んでいったところで主題歌インストが流れ出すのは格好良かったです!
 内部の消火と人質の救出作業に成功すると、消防ユニットがライオン型のマシン・ブンブンレオンへと変形し、レオンのデザインと、CGの動きもなかなか秀逸。
 「よし、俺達も行くぞ!」
 ……あ、良かった、前回は炎の中で盆踊りに終始し、今回は消防車の活躍を見上げてずっと棒立ちだったらどうしようかと思ったよ……。
 青桃黒橙がブンブンカーに乗り込むと、レオン頭部の梯子ギミックでアタックモードに変形してレオンの四肢と尻尾に装着され、玩具のプレイバリューとしては、おお、と思いましたが……見た目はもうすっかり、ゾイド(タカ○トミー)。
 全身のブンブン殺意を用いた爆上げスクランブルにより切り刻まれたテントグルマーは、キャンプ終了のお知らせで退場し、子供達はその勇姿に(ちょっとわざとらしく)歓声をあげるのであった。
 「子供には、悲鳴より笑顔がお似合いってなぁ」
 どうやら、ソロキャン破りの為に肋骨を犠牲にしたらしい先斗はビュンディーと共に人知れずその場を去って行き、だいぶヒーロー仕草が馴染んできましたが、次回――炎のワンワンナイン、逆境に挑む!
 山口さんが連投しての119前後編、前回は布石不足から劇的になりきりませんでしたが、後編の終盤は、レオレスキューのギミック的面白さに、《レスキューポリス》文法も噛み合って、瞬間最大火力的な面白さはありました。
 内藤の再登場とか、内藤への唐突な正体バレとかが、今回単位では特にどこにも繋がらない辺りが、まあ『ブンブン』ですが……終わってみると大体『ウインスペクター』の主題歌になっていたのは、意識していたのやらしていないのやら(笑)
 『特警ウインスペクター』(1990)は、名作!