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虫愛づる狼

牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第9話

◆第9話「飼育」◆ (監督:松田康洋 脚本:雨宮慶太/梅田寿美子)
 道で裸の女を拾い、魅入られてしまう男。
 青ざめた肌、表情もなく、言葉もなく、まるで人形のような女だが、水槽の魚をバリバリと口にすると奇妙な事に女の肌は赤みを取り戻し……本編の半分以上を、全裸の女とそれを愛でる男の映像が占め、一面で《牙狼》を特徴づける〔エロス・グロテスク・バイオレンス〕の中から、今作ではここまでのところ控え目だった、〔エロス〕を大きく取り上げたエピソード。
 ……と見せて終盤に仕掛けのある、トリッキーといっていい一編。
 裸の女とそれを拾った男が、不気味で官能的で奇妙な同居生活を始めていた頃、ゴンザは掃除中に庭で見つけたクワガタを大喜びでマユリに披露し、なにやら元昆虫少年であった。
 「おお、こいつは強そうだ」
 そして雷牙の注目点は、そこか(笑)
 「ほら、力強く生きてる」
 「こんなに小さいのに……」
 「どんなに小さな生き物でも、魂は等しく宿っているものです。……マユリ様も、一緒に世話してみますか?」
 そこから始まる、マユリの情操教育(笑)
 一方、裸の女の背中が割れると、そこからは瓜二つの女が生み出され、番犬所では雷牙とクロウにホラー討伐の命令が下される。
 気配を辿る魔戒騎士ご一行様が近づく中、男の友人が女に食い殺され、男は真っ白なサナギと化した女を連れて逃亡。
 「なんで?! なんで?! 俺が君に食われたかったのに!」
 悪魔に魅入られた男が道を踏み外していく物語かと思いきや、男の中には狂気めいた願望が存在しており、一種の共生関係……かと思ったら、そこに雷牙らが踏み込んでくると、事態は更に一回転。
 男の前で羽化したサナギの女は“最初から死体”であり、男の方こそが、卑劣な婦女暴行犯にしてその際に開いたゲートで陰我に囚われ、以後、被害者の女性の一部を喰らっては写真に収め続けていた、猟奇殺人ホラーだったのだ!
 と、男女の位置づけが逆転して真犯人が明らかになると同時に、〔エロス〕を大きく取り上げたと見せて、その裏側に〔グロテスク〕が隠されていた(扉の奥に隠されていた大量の死体シーンあり)ひねりの入った構成で、次回予告とサブタイトルも巧妙に機能して、これはまんまと騙されました。
 映像による叙述トリックを厳密に行っているわけではありませんが、男性主観のシーンにおける、冒頭の「青ざめた肌」の女は実際に死亡していたのであり、新たな女の誕生や、餌を与えて肌に赤みが差す女というのは、男主観では同じ顔だが、恐らくは、“新しい獲物”を示していたと思われるのが、振り返ってホラー。
 全てが明らかになってみると、シンプルに“凄く嫌な話”でありますが、エロスとグロテスクから“命”をあぶり出して悪を許さぬバイオレンスへ繋げる、めんつゆ《牙狼》ストレート、みたいな作り。
 「ホラー・リザリー! 命を軽んじる貴様の陰我――俺が断ち切る!」
 怒りの雷牙に対し、男は典型的な悪魔スタイルにGなアレを組み合わせたような正体を見せるが、吼狼とガロの連携攻撃により、さっくり消滅。
 ガロと吼狼は逆光のシルエットで決めポーズを取り、見所は、その後ろでセンターに格好良く立っているマユリ。
 屋敷に戻ると、虫かごの中のクワガタは冷たくなっており……
 「空っぽだ……ここにあった魂は、どこへ行ったんだろうな」
 「わからない。でも……ここにあった事だけは確かだ」
 「ああ……そうだな」
 と、マユリが少しずつ見せていく感情の発露を描いて、つづく。