東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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「たった一度の奇跡があったとしても、遥か昔に終わってる」

ゴジラ S.P』ざっくり感想(前半戦)


 千葉県逃尾市――夏祭りの日の夜、便利屋まがいの仕事を請け負うオオタキファクトリーのユンとハベルは、地元で騒がれる幽霊屋敷の正体が、隠し部屋に置かれていた鉱石ラジオ、そこから流れていた歌が原因だったと突き止める。同じ頃、教授の代理としてミサキオク電波観測所を訪れた大学院生・メイは、同じ歌の周波数に反応して、施設の非常ランプが鳴り続けている事態への立ち合いを求められる……。
 果たしてその歌は何を意味するのか? 屋敷の主は何者なのか? 古びた観測所の存在目的は? 異常発生する赤潮、地下に隠された巨大な恐竜の骨、ジェットジャガー、古史羅、謎の電波、この世には存在しない筈の分子構造……そして、誰も見た事もないような巨大な怪鳥が姿を見せたその時、世界は、既に特異点を越えていたのかもしれなかった――。

 SF作家・円城塔がシリーズ構成とSF考証を担当し、近年の《ウルトラ》シリーズで見知った小柳啓伍が脚本協力とミリタリー考証を務める、SF怪獣TVアニメを、色々あって、急に見ました。
 タイトル通り《ゴジラ》シリーズを題材とし、シリーズ作品の怪獣の登場や、様々なオマージュを散りばめつつオリジナルストーリーが展開し、現在、第6話まで見たところですが、人類が初めて巨大怪獣と遭遇した物語として、良い出来。
 まあ、ここぞというシーンで流れる、馴らされているほどに刺さる原典ベースの音楽の力も強いですが(笑)
 タイトルが堂々『ゴジラ』を冠しているので怪獣映画の文脈は強く、多少の親和性は必要になるかもしれませんが、原典オマージュ要素はわからなくても問題なく面白いですし(私自身、さして詳しくないのでほとんどわかっていない)、ダブル主人公の視点でテンポ良く展開し、ジェットジャガーでちょっと心配しましたが、内輪ネタを弄んでいる感もこれといってないのは、安心して見られるところ。
 要所に配置されている、食えない人物、生真面目な人、如何にも胡散臭い男……といったキャラ造型も良く、特に男主人公ユンは、白髪眼鏡の天才エンジニアというキャラ付けながら、いざという時には守りたいものの為に躊躇無く体を張って動ける人物なのは、好感が持てます。
 また、序盤から行方不明者の報道はありますし、“カメラに映っていない世界全体”として被害が拡大していく状況が徐々に描かれてはいますが、今のところ、視聴者に感情移入させたモブを用いた“カメラの前の悲劇”で臨場感を煽る作劇を避けているのも、個人的には好感の持てるポイント。
 ……これに関しては予兆があるので、前半は怪獣が緩めで、後半に入っていくとドンドン明確な被害規模が拡大していく事にはなりそうですが、それもまた、劇中世界の人々と同じく、視聴者に向けて、現実/非現実の揺らぎ――存在するが通り過ぎていく怪獣――を感じさせるのに一役買っている印象。
 後、怪獣映画は“立ち向かう人々”をどう描くかもキモだと思っているので、ジェットジャガーという飛び道具もありつつ、その部分への目配りがあるのも嬉しく、第3話の、やたら肝の据わった弓道女子高生コンビとかが、割と好きです(笑)
 ここから後半、どう話が転がっていくのか全く予想がつかず、方向性や飛躍の仕方によっては趣味から外れる可能性もありますが、現状かなり楽しんでおり、出来ればこの雰囲気のまま、最後まで突っ切ってくれると嬉しい。