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中田博久スペシャルアワー

電子戦隊デンジマン』感想・第28話

◆第28話「呪いの館の密殺者」◆ (監督:小林義明 脚本:上原正三
 マリンルックに白髪交じりで、湘南の富裕層ダンディ風味な男(演じるのは、数々の悪役でお馴染み中田博久さん)が、ムーディな音楽で水着姿の桃井を目にするところから始まり……桃井さん、右手に力強く銛を握っているのですが、いったい何をされていたのでしょうか。
 運命の出会いとしては、ちょっと大胆なコーディネート。
 そそくさと上着を手にして立ち去っていく桃井は、コンパクト(……?)を落とし、今のところ、謎のダンディ以上に、銛を片手に海からあがってきて無言で走り去る桃井の方が圧倒的に怪しいのですが、密漁、密漁なのですか……?!
 桃井の落とし物を拾ったダンディが、海に向かって「えいっ!」と気合いの声を放つと、空手の力で海が割れ……はしなかったが、何故か魚がダンディの手の中へと吸い込まれるように飛び出し、海辺を立ち去るダンディを尾行する、これまた謎の男。
 「今日こそ正体をあばいてやる……」
 尾行する男が古い教会風の建物に辿り着いたところにサブタイトルがかかり、久方ぶりの古典スリラー風味です。
 半ば朽ち果て、内部には蜘蛛の巣のかかる屋敷の中に入り込んだ男が、室内の至る所に置かれた不気味な人形やオブジェの数々を目撃するのは小林監督らしい演出で、後年だと、玩具のぬいぐるみがシンバルを叩きながら現れそうなところで起こるポルターガイスト現象。
 「生きて出たくば、問いに答えよ……」
 続けて不気味な声が朗々と響き渡ると、ベーダー怪物ナゾラーが姿を見せ、てっきりダンディ=ナゾラーだと思ったら、それぞれ別人で方針を巡って内輪揉めを起こす変化球。
 ミラー&ケラーからも特別待遇を受けるダンディの正体は、闇の世界に名を馳せる悪魔の祈祷師・デリンジャー
 敢えて男(後にインターポールの捜査官と判明)を屋敷から逃したデリンジャーが、ナイフと不気味な像を手に呪文を唱え始めると、その姿が吸血鬼風味に変わり、写真を触媒にして男を鮮やかに呪殺する、どちらかというと《仮面ライダー》風味な展開。
 「おお、見事じゃデリンジャー……!」
 「まさに悪魔の祈祷師です!」
 快哉をあげるヘドリアン女王ですが、これ、女王陛下もやっていたような(笑)
 青梅が子供達のなぞなぞに一本取られるシーンを挟んで、インターポールから特別依頼を受けた電子戦隊はデンジランドに集合し……黄山?! 黄山くん?! どうして君まで。シャツの前をそんなに空けているの?!
 男性メンバー4人中3人が、シャツのボタンをかなり大胆に外して腹筋の上ぐらいまでを見せつけてくる、恐らく、スーパー戦隊》史上、空前絶後の映像になっているのですが、1980年日本の夏はそんなに暑かったのでしょうか。
 電子戦隊がインターポールよりデリンジャーの調査を依頼される(70年代的大らかさというか大雑把さ)一方、デリンジャーはベーダー一族からデンジマン暗殺の依頼を受けており、地球のオカルトに頼ってヒーローを呪い殺そうとする悪の組織…………の方は空前絶後とも言い切れなさそうな予感。
 デリンジャーと目される人物の周辺を洗う電子戦隊だが、目撃者が目の前で呪殺されたのを皮切りに、胸を押さえて苦しむ青梅は海に転落し、黄山は激しい頭痛に襲われ、赤城は目を、緑川は右腕を押さえてのたうち回り、これまでで一番、デンジマンを苦しめているかも(笑)
 トドメをかっさらおうとナゾラーが現れると、残っていた桃井がデンジスパーク。
 痛みに苦しむ男たちを助けながらの立ち回りとなり、金管を泣かせるEDジャズアレンジみたいなBGMが格好いい。
 桃井への呪いの行使をためらうデリンジャーが、出しゃばりのクエスチョン野郎が邪魔で呪いができない、と難癖をつけて戦闘は水入りとなるが、デンジランドに一時撤収した赤城ら4人は、呪いによる継続的な状態異常に苦しむ事に。
 「デリンジャーを早く探し出し、倒すこと」
 大元の祈祷師を殺れ、と多分一応人間を仕留めるようアイシーから指示された桃井は、デリンジャーを誘き出す為に水着姿で海へと向かう、ストレートなハニートラップ。
 (なんと美しい娘だ……)
 余裕を見せるデリンジャーは、敢えてその誘いに乗ると、デリンジャーの証であるサソリの痣を見せつけた上で、桃井を誘拐。
 コンパクトの緊急通信によりやってきた男たちには再び呪いを放つデリンジャーだが、心を奪われた桃井には呪いをかけようとしない姿勢を裏切りとみなされ、ベーダー一族はナゾラーと戦闘員を館へと送り込む。
 ……だがしかし、廃屋内部を華麗に飛び回るデリンジャーは、戦闘員より、普通に強かった。
 戦闘中のドタバタで目を覚ました桃井が呪いのナイフを抜き取り、男衆が状態以上を脱する一方、天井に立ちマントで風を起こすデリンジャー(多分一応人間ではないかもしれない)はナゾラーを翻弄していたが、天井に頭を打ち付けて転倒(交錯の際に傷を負ったという事だとは思うのですが、映像からは天井に頭をぶつけたダメージにしか見えず)。
 最後は桃井をかばってナゾラーの攻撃を受けて絶命し、悪党なりに美学(「愛情」とか「優しさ」ではなく、あくまで身勝手で独善的なもの)に散る形となりましたが、吸血鬼めいた扮装でベーダー怪物と互角の戦いを演じる、スーパー中田博久アワーでありました(正直、『アマゾン』のゼロ大帝より、存在感があったような(笑))。
 桃井がデンジスパークして館を脱出すると、ナゾラーに追い詰められたところで男衆が合流し、誰かが助けを求めてる~ どこかで誰かが叫んでる~。
 珍しく桃と怪人が一騎打ちを見せると、デンジスティックと知恵の輪スティックが相討ちとなり、赤が助けに入ってデンジパンチが炸裂。
 この辺りは前作同様、女性メンバーが戦闘力で一段落ちる扱いは続いており、5人揃ってショットガンアタックを放つも、知恵の輪縛りに動きを封じられたデンジマンは、青以外が次々となぞなぞを解いて知恵の輪を破ると、なぞなぞ返しのデンジブーメランでスパーク!
 巨大ナゾラーによる知恵の輪封じをデンジ剣で強引に打ち砕いたダイデンジンは、謎は筋肉で解けた!と、満月斬りで一刀両断し、前回と同じタイガー帰還の情景から、桃井の砂浜青春ダッシュで、つづく……背後で男衆も水着で走っている風なのですが、顔の判別もできないほど遠い上、左側の二人は桃井の背に完全に隠れている扱い(笑) もしかしたら、イメージカラーに合わせた水着を履かせているだけで、役者さん本人ではない可能性もありそう。
 ギリギリまで、デリンジャー東映名物:勝手にお墓が作られていないかドキドキしていましたが、名うての暗殺者である純然たる極悪人なのでドライに処理され、さすが、海で見かけたデリンジャーを第一印象で「気味悪い人だった」と切って捨てた桃井あきら、男性関係のトラブルは慣れっこです!
 上述したように、普段から戦闘力は一段低いと扱われがちなデンジピンクですが、男衆をまとめて状態異常にする事により立ち回りでの活躍シーンをスムーズに見せ、トラブルに巻き込まれがちだった桃井メイン回において、戦士の一面を戦闘と心構えの両面で強調したのは、工夫があって良かったポイント。
 次回――ようやく赤城メイン回の気配ですが、フランスの方から来たっぽい「超能力刑事」とはいったい。

 余談:第27話の映像を確認したところ、正面から撮った映像が少なかっただけで、黄山のシャツの前は既にほぼ全開だった事を報告します。1980年には普通のファッション感覚だったの……?!