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それが君のBAKUAGE

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第11話

◆バクアゲ11「少年がほしいもの」◆ (監督:渡辺淳 脚本:冨岡淳広
 「よぉ! しょうねーん! かーせいでるかーーーい!」
 大也に陽気かつ親しげに話しかける、やたらテンションの高い中年男性は、 ヒビキさ 世界的大企業・ライトニングテックの代表、内藤。
 「届け屋のきっかけになった人?」
 かつて、内藤が開発したクリーンシステムの機密が世界中の情報機関に狙われた際、“信頼できる人物”としてそのデータを運び、
 「未来に繋がる仕事をして、内藤たちにも喜ばれて、大也は届け屋を始める事を決めたそうだ」
 という過去が射士郎の口から明かされ、どうしてこう、本人が語らずに引っ張っていた要素が、外野からぽろぽろと公開されていくのか(笑)
 立ち上がりの札の伏せ方は非常に魅力的だったのに、ここまでのところ、伏せたカードの用い方が軒並みガックリで、謎めかした要素の数々が、物語を劇的にするのに全く効果を発揮していないのは、大変残念。
 謎を転がして興味を繋いでいくというよりも、わかりやすさと気持ちよさを重視してはいるのでしょうが、ならば中途半端に濁して視る側の期待を煽らない方が良かったのではないかな、と。
 つい先日、BBGに関して揉めた際の過去回想でも、大也の行動原理としての「届け屋」について深くは触れなかったのに、その2話後に本人以外からあっさり説明されて、いや今そのカード切るなら、もっと早いタイミングで切っておいた方が良かったのでは感が物凄いのですが、これならもういっそ第3話ぐらいで、「大也の行動原理と基本的な背景はこうです!」と見せてしまった方が、届け屋についてもブンブン活動についても前回の謎アピールについても、説得力が出たような。
 ……なんでしょう、役満を狙えそうな配牌から、変な切り方でどんどん崩して、気がつけば流局目前の麻雀を見ているような気持ち。
 旧知の人物(恐らく、少年時代の大也の金銭的援助者)である内藤からの依頼により、大也は病院の子供にブンブンジャーのぬいぐるみを届ける事に。
 「報酬は、その子供の笑顔がいい」
 「というルール、らしいが、貰えるものは貰っておけよ」
 「そのお金は、世界中の子供たちの為に、腹一杯食べさせてやってくれよ」
 ……う、うーん…………これ、大也が資産家でなければ、自らが気取る芝居っ気の為に食費を削れる馬鹿っぽさを含めてハード或いはハーフボイルドな格好良さになりえるのですが、本人は金に不自由していない身の上なので、なら自分で直接、慈善事業すれば……? みたいになってしまい(そういう基金の一つや二つ、既に運営していそうではありますが)、ビジネス以前の個人的関係があるにしても、「貰えるものは貰っておけよ」の方が正しいし、「心優しい慈善家ヒーロー」みたいな位置づけはシリーズ史において新しいですが、ブンブン活動の方はともかく、「うなるほど金を持っている男が慈善事業でやっている届け屋」には、魅力を感じにくいのが正直。
 今回は旧知の相手だから良しとしても、こんなこと言い出す人、幾らヒーローフィクションにしてもビジネスの相手としては全く信用できませんし……それだけ切羽詰まった人を助ける義賊的ヒーローとして描くなら話はまた変わりますし、いっそタイヤ人間モードで依頼を受けるならそれはそれで成立しますが…………その方が面白かったのでは?? という気が、今ちらっと。
 作劇としては、大也が内藤から受け取った報酬を寄付などに回す場面を描くと煩雑なので、その過程を省略したとも取れますが、「というルール」の後付け感(後付けでなければ、何故このタイミング?!感)も含めて、「自分が金に頓着しないから、金銭に関して筋を通さないし雑なだけの男」にも見えてしまう据わりの悪さを感じます。
 最初から明確に提示されていれば印象はまた違ったと思うのですが、大也の無駄な隠し事癖(或いは恥ずかしがり屋ぶり)をここまで見せつけられた後だと、BBG問題よりもむしろ、「届け屋は実質趣味」がメンバーと共有されているのかどうかの方が気になってくるというか、それは多分、人と人の間の信義として、共有しておいた方がいい前提だと思うのですが大也さん。
 BBG出場の夢、と一緒で、大也本人の自己満足は自己満足で特に異論は無いのですが、周囲の人間が“自己満足だとわかって手を貸している”のか“自己満足だと知らずに手を貸しているのか”の間には、割と差があるのではないかなと。
 ブンブンジャーに新たな埋設地雷の疑惑がお届けされる中、ダレきった三下トリオの元に外宇宙からお届けされたのは、ハシリヤンの新たな上司。
 「生まれも育ちも、惑星ニーダム。ボスの為なら――アイツは悪く、コイツは強く、魔かいぞ~う。わたくしこそ、ハシリヤン改造隊長・キャノーンボーグ!」
 (※「惑星ニーダム」は何か元ネタがあるのかと思ったら、映画『キャノンボール』の監督名でした)
 マッドレックス殉職の報を知って地球に飛来した、自称ハシリヤン一の切れ者で、眼鏡がトレードマークな改造隊長の命令を受け、三下トリオは手近にあったパラボラアンテナをイグニッション。
 市街地に繰り出したアンテナグルマーにより、頭にアンテナを取り付けられ、アンテナ人間にされてしまった人々は、アンテナに操られるままに奇妙な踊りを踊るとギャーソリンを献上し、なんだか、怪しい宗教みたいな画に(笑)
 そこに射士郎ら4人が駆けつけると、アンテナに操られる人々に襲われ、生身で攻撃をかいくぐりながらの変則ブンブンチェンジを行い、アクションを交え、敵の体などを利用してのチェンジは格好良かったですが、ここで一気に4パターンも使ってしまうと、この先大丈夫か、ちょっと心配になります(笑)
 「気分ブンブン、ブン回せ!」
 「「「「爆上戦隊! ブンブンジャー!!」」」」
 アンテナグルマー出現をブンブン総司令から伝えられた大也は、緊急の要件を片付けてから依頼をこなす、と内藤に連絡し、
 「君の事だ。誰かの悲鳴を聞いたんだろう」
 は格好良かったのですが、なんだか、身内に甘えて筋を通す事を怠りがちなリーダーが、過去を知っているゲストに持ち上げられてメタ的なフォローを入れられている感じに加え、立ち上がり、勝手に期待していたものとのギャップが大きくなってきた事で消化に手間取っている部分が大きくはあるのですが、大也すっかり絹ごし豆腐のように真っ白な男になってきていて、個人的にはもう少し、陰影や凹凸があった方が好きだなと(笑)
 青桃黒橙がアンテナの破壊に成功して人々は解放されるが、いつの間にやらキャノンボーグの魔改造を受けていたアンテナグルマーは、再起動するとパワーアップ。
 感電攻撃と飛び道具返しからのアンテナ乱れ打ちにより、青桃黒がアンテナを取り付けられると、即興でアンテナ戦隊バリバリジャーが結成され、残った橙が集中攻撃を受けてピンチになったところに、大也が到着。
 すぐさま変身するも背後の身内から銃撃を受け、何が夢に繋がっているのかちゃんと説明しろやコラー! ハシリヤンについて他に知っている事があるんじゃないのかコラー! 結局ブンブンジャーに加えた理由はなんだコラー!と集中砲火を浴び、じゃなかった、心ならずもアンテナに操られる青桃黒に追われ、身内バトルのアクションは見応え充分でした。
 ……個人的には、橙を残すよりも青を残して、赤青vs桃黒橙で見たかったのはありますが、恐らく玩具の都合でしょうか。
 戦闘中、ブンブンチェンジャーがアンテナの電波に干渉する事がわかると、妨害電波の連打により、洗脳アンテナの破壊に成功。5人揃ってハンドリングドライブでフィニッシュすると、ハイウェイ空間に入ったヤルカーは、脇見運転で自爆。
 巨大アンテナグルマーは、ショベル&パトカーの弾幕から、ブンブンジャーロボナイトのまんまる斬りで通信終了し、改造隊長キャノンボーグは、三下トリオに落第を告げるのであった。
 「あなた達のやり方、ノンノンノン。これからは、私めが仕切ります。お覚悟を」
 ……まあ、容赦なく戦闘生物に改造してしまっても、良いのではないでしょうか(笑)
 いや、メタ的には困りますが。
 大也は、ブンレッドの姿で、ブンレッド人形を病院の少年へと届け、戦闘シーンで行わなかったブンレッドの名乗りをここでは上手かったですが、メインライターによる大也の掘り下げ回としては、物足りない出来でした。
 うーん……最初に提示された骨組みは見事だったと思うのですが、いざそこに肉付けしていくストーリーの組み立て段階になって妙に稚拙というか噛み合わないというか、腕のパーツを前後逆にはめたり、足首の先に手がついていたり、途中でいきなりデカールを貼り始めたり、みたいなちぐはぐ感。
 なんとか立て直してほしいところですが、次回――BANG BANG うるさい奴がやってくる?!