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爆上げは加速し損ねる

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第7話

◆バクアゲ7「調達屋のブレーキ」◆ (監督:加藤弘之 脚本:森地夏美)
 「ひょっとして……恋?」
 「…………うん」
 ブンブン総司令の爆弾発言に大也はレバー操作を誤ってつんのめり、以前にも触れましたが、大也にしろ射士郎にしろ、キザで飄々としたポーズを取り続けたり、クールな鉄面皮を維持し続けるよりも、序盤から不意打ちに割と崩れるのが、上手い具合に隙と愛嬌になっています(これが無いと多分二人とも、“出来過ぎ”になってしまいそう)。
 ブンブンの恋した相手……それは、タイヤと化け提灯を組み合わせたような、ゆる(?)キャラ、ニマイジタイヤの、べろーらー。
 奇抜なデザインに男衆が困惑を見せるも、これは推し活だ! ともしかすると今しか通じない解釈を発動した未来が、ブンブン総司令をイベント会場まで「届け」よう! と張り切り、大也と射士郎が顔を見合わせる中、阿久瀬も同行を申し出て、未来・阿久瀬・ブンブンの3人組は街へと繰り出していく事に。
 機械生命体である事を強引にコートとカツラで隠し、不審者丸出しのブンブン総司令がコミカルに描かれるのに続いて、調達屋さんの普段のお仕事に場面は切り替わり、笑顔も言い回しも胡散臭いのに、割と現場からの好感度が高かった(笑)
 「君専用に作ったんだ」
 そこに大也と射士郎が現れると、取り出したケースの中に収められていたのはブンブンチェンジアックスで…………君……専用……?
 「前も言ったろ。共に戦う気は無い。私は調達屋。君たちを補い進歩させ見届ける。それが私の仕事であり、喜びなのだ」
 「……そうだな。確かに君は、誰より有能なサポーターだ。君を、特等席に招待しようと思ってさ」
 冒頭、
 〔カレーをかき回しながら繰り返し溜息をつくブンブン → 悩みがあるのでは? → 老後の事とか考え出すと不安と言い出す阿久瀬 → それを完全無視する未来〕
 のくだりが特に面白く感じなかったところで、おや? となったのですが、ここも「君を」の前に、「そんな」とか「だから」があった方が自然な気がして、掴みで乗り損ねた影響で、細かい言い回しの違和感や欠落が妙に気になってしまいました。
 アバンのやり取りに関しては、間合いとか台詞の掛け合いとか、笑いにする――笑いに変換しないと、阿久瀬も未来もキャラの魅力に繋がらない――のは演出の領域かとは思うのですが、開始早々にそこの組み立てが巧くはまっていない、演出と脚本のギアが噛み合っていない印象が立て続けに重なって、エピソード全体への不信感に繋がる事に。
 「特等席?」
 「俺達の一番近くで、爆上げの瞬間を見届けられる特等席だ。まあ無理にとは言わない。でも、俺達はこれからも爆上がってく。ついてこられるかな?」
 サポートポジションとかに満足してると置いてくぜ、と調達屋を挑発した大也は、両手で抱える大きさの鞄を押しつけると車で走り去り……超・迷・惑。
 斧については、玄蕃用にチューニングしてあるから「君専用」でも通らない事はないですが、既にブラックが振り回して大暴れしている武器を「君専用」と取り出すのは見せ方として劇的なところがまるでなく、更に斧に付いている金色チェンジャーは第4話で既に玄蕃が手にしていた筈なので、上述した不信感も合わさって、どう受け止めればいいのかだいぶ困惑。
 このシーンが“第1話以前の出来事”なら、まだ筋が通るようには思うのですが(玄蕃が秘密基地に出入りできるのも、受け取ったチェンジャーが通行証になっているからなど)、この後これといって時制の入れ替えが明らかになる事もなければ、今回範囲で有効に機能する事もない為、時制を入れ替えていたとしたら面白さに繋がっていないし、時制を入れ替えていないのならばここまでの描写とちぐはぐだしで、首をひねる展開に。
 ……見間違いの可能性もあるので確認したところ、やはり第4話時点で玄蕃が金チェンジャーを持っているので、ここは過去シーンだと考えるのが妥当っぽいのですが、大也と射士郎の別行動で「一方その頃……」にも見える時制のトリックの意図があったならば、特に劇的な効果を発揮しないので無駄な混乱を発生させただけにしか思えず、これなら明確な回想シーンの形で挿入した方が遙かに良かったような。
 逆に過去シーンではなくあくまで現在だとしたら、二本目の斧になんの劇的さも無い為に全く面白いシーンになっておらず、どちらに転んでも玄蕃のスタンスを強引にねじ込んだだけの、不可解とさえいえる内容(ところで、なぜ斧なのか……「アックス」と「アクセル」をかけていたのか! は今回やっと気付きました)。
 ブンブン一行が向かっていたイベント会場にはブロック塀グルマーが出現し、未来と阿久瀬はブンブンチェンジ。
 「そこのクルマ獣、止まりなさい!」
 突撃をかける桃と黒だが、クルマ獣のブロック能力に足止めを受けて、袋小路でアクセル停止。
 「お困りの……」
 そこに玄蕃がトランポリンと請求書を投げ込もうとすると、一手早く赤と青が外からの暴力でブロック塀を破壊して二人を助けるのは面白かったですが、戦闘中に横で待機して、苦戦を見てからこんな事もあろうかと用意していた物品を投げ込もうとする調達屋の玄蕃、一気に片足が根本までギャグの世界に(笑)
 4人揃ったブンブンジャーは怒濤の連続必殺技でクルマ獣を倒そうとするが、そこにマッドレックス乱入。
 「ブンブンジャー、エンジンあっためて待ってたぜぇ」
 ドリルミサイルとブロック反射のコンボ攻撃に苦戦するブンブンジャーの姿に、カーブミラーを投げ込もうとする玄蕃だが、またまたそれよりも一手早く、ブンブンジャーはフォーメーションを組んで反撃に成功し、その爆上がりぶりを感じ取る玄蕃。
 「大也……よくわかったよ。確かに、今の私では君たちに追いつけない」
 一歩引いた調達屋の立ち位置から、取引相手に万全のサポートをするのがプライド故にブンブンジャーへの参加を断った玄蕃が、同じそのプライド故に進化を速めるブンブンジャーに万全のサポートをするべく参加を決意する流れそのものは悪くなかったのですが、過去と思われる場面の入れ方などが巧く行かなかった感。
 「ブーンレッド、やはりおまえの率いるゾクは面白ぇ。だが次こそ、スクラップにしてやらぁ!!」
 「ぱらりらぱらりら~」
 一度は劣勢を覆すブンブンジャーであったが、走り屋の魂を乗せた、ドリル更にドリル、を受け、劇中初となるダメージによる変身解除。
 「……お困りのようだね」
 絶体絶命の危機に、これまで裏方に徹していた玄蕃が物陰から姿を現し、決め台詞、やっと、言えた……!
 「君たちの進化は凄まじい。だが、あと一歩足りないなぁ」
 「……調達屋、今日はなにを持ってきたんだ」
 「――私だ。私が君たちを加速させよう。共にブンブンジャーというハンドルを握って」
 いっそここで回想を挟むぐらいでも良かったのではと思いますが、状況がそれどころではないにしても、玄蕃が既にチェンジャーと斧を持っている事に対して未来あたりから驚きの反応も特に無い(入れる隙間が無い)など、今作ここまでの目配りの良さからすると不足が目立ち、若干の危惧はありましたが、前回の次回予告の「私が君たちを加速させよう」がピークに(笑)
 玄蕃が斧からチェンジャーを外すと、一同揃って立ち上がり、5人並んで
 「「「「「ブンブンチェンジ!!」」」」」
 敢えて揃えず、みんなちがってみんないい変身ポーズですが、予告でも見せていた玄蕃の膝ブンブンは面白い。
 「ブーーンレッド!」 「ブーーンブルー!」 「ブーーンピンク!」 「ブーーンブラック!」 「ブーーンオレンジ!」
 「気分ブンブン! ブン回せ!!」
 「「「「「爆上戦隊! ブンブンジャー!!!」」」」」
 満を持してのオレンジ参戦回に加えて、前回が非常に良かった為に、上がりまくっていたハードルに対しては物足りない出来でしたが、ここで主題歌バトルに突入してくれると、ある程度の事は水に流せます(笑)
 「5人目のブンブンジャー! 爆速! 爆走! 爆上げだぜぇ!!」
 総司令が基地へと走って戻り、仕切り直しの集団戦が始まると、兵隊たちの突撃と激突の後ろで、お互いのヘッドが直立したまま睨み合う、のは格好いい映像でした。
 「ブーーーンレッドぉ!!」
 「はぁぁぁぁぁ!!」
 青桃黒が戦闘員を蹴散らしていき、回転を制するには回転だ! と赤が螺旋のエネルギーでマッドレックスに傷を負わせ、ブロック塀は橙がアックスドライブで華麗に撃破。
 「俺様自慢のボディに傷をつけるとは……ふふふふ……おのれェ、ブーンレッドォ!!」
 狂ったように笑うマッドレックスが撤収すると、ブロック塀のギャーソリンを回収して、ヤルカータイム。
 「今日こそ逃げ切るのよ、ヤルちゃん!」
 デコトラとイターシャはハイウェイ空間へと声援を送り、そういえば、この点まだ言及が特に無かったと思いますが、逃げ切ると、ギャーソリンを上納できるのか……?
 だが勿論逃げ切れるわけもなく、新ブンブンカーのドーザーが障害物を蹴散らし、同じくショベルがぽいっと掴んであっさり放り捨て、巨大ブロック塀グルマーが出現。
 対して、右腕に強化アームを装着して巨大なハンマーを握ったブンブンジャーロボビルダーが誕生し、ゴンゴン砕きタイヤー!
 ……Bロボの強化形態、今のところどれも、人相が悪い(笑)
 「硬いものみんな持ってこーい! 叩き壊してやる!」
 言動も荒々しいBロボ親方は、巨大ブロック塀に苦戦するもサーチ能力で脆い箇所を見つけ出すとハンマー連打で粉々に打ち砕いてから爆上げフィニッシュを決め、人相の悪さと右半身のごつさにより、パワー系ロボとして面白くまとまったデザインになりました。割と好きかも。
 「575だけど、季語が無いわ」
 「むきー! 覚えておけ! ブンブンジャー!」
 三下トリオは遠吠えし、謎の映像受信機になっているデコトラの杖が、マイク+スピーカー@バイクのマフラー風味アレンジ、な事にようやく気がつきました。
 そしていつの間にか、俳句の知識を得ているイターシャ。
 前回今回の描写から、地球の食物で栄養を確保できるようですし、これはもう本格的に、末はパチンコ屋なのか焼き肉屋なのか……今作の「○○屋」遊びにも合致してしまう……!
 ……まあイターシャに関しては、水面下でアイドル回のプロットが偉い人に送り届けられている可能性が否定できませんが、声優さんもばっちり歌える方ですし、いつかあるのかアイドル回。
 その時は、べろーらーちゃんと共演だ。
 「よろしくね、調達屋さん」
 「立ち止まるようなら、置いていくからな」
 「勿論、アクセル全開。やりたい事も出来たしなぁ……」
 「やりたい事?」
 「……まだ内緒だ」
 しれっと、僕はじめての秘密基地、みたいな顔で合流した玄蕃は、思わせぶりな事を呟いて、ちょっと色づけ。
 結局、推しに会えなかったブンブン総司令が悲嘆に暮れると、未来がいつの間にやら確保していたぬいぐるみをプレゼントして大喜びとなり、それを見た玄蕃だけがブンブンに強く共感を見せ、ちょっと玄蕃はセンスが変かもしれない、と愛嬌をつけて、つづく。
 ……まあ、後から参加しての人間関係を円滑にする為に、道化を装っている疑惑もちょっと浮かびますが(笑)
 またまたシリーズ初参加にして、個人的に初見の脚本家でしたが、今作ここまででは初めて、ちょっと“しっくり来ない”感があり、脚本ベースの問題だけでは無かったと思いますが、続けて参加されるようなら、今回の印象を払拭してくれる事を期待。
 次回――OPの5人が揃ったところで、強敵との戦い、大也の掘り下げ、は手堅い展開なので、改めて爆上がっていってほしい。