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タンクトップか縞々シャツか

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第6話

◆バクアゲ6「シロとクロ」◆ (監督:加藤弘之 脚本:樋口達人
 ISAの手駒として、ブンブンジャーとの繋ぎ役にして監視役にしてブンブラックとなった阿久瀬錠、てっきり交番勤務は外れたのかと思ったら普通に継続しており、キャラのアイコンとして捨てるには勿体ない要素だと思ったのかもですが、


 「校長先生に頼み込んでね、放課後と日曜日、君をUGMに借りる許可をやっともらったところだ」
 「は?」
 「これからはね、UGMと学校、二ヶ所で一生懸命頼むよ」

(『ウルトラマン80』第1話「ウルトラマン先生」(監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶))

 みたいな事になっているのですが、大丈夫?!
 作品としては、大也を除き、ブンブンジャー(届け屋)としての顔と本業を別に持っているのがメンバーの共通項、という狙いもありそうですが、21連勤から膝に限界が来て突然の引退の不安が高まる中、退勤した阿久瀬の後をつける二つの影。
 「真面目すぎるほど真面目な警察屋など、俺は信じない」
 「射士郎、自分で言ったんじゃん」
 ISAに色々と押しつけようとする損得勘定はありそうながら、前回やけにすんなり阿久瀬を受け入れていた射士郎ですが、全面的に信用していたわけではなく身辺を探り始めるのは実に情報屋らしく、それはそれとして未来の時に較べるとこれといって強硬に反対しなかったのは……なにか、女性スパイに嫌な思い出でもあるのでしょーか(笑)
 「ヤツの裏の顔、必ず暴く」
 ツッコミを完全スルーされた未来が面白がって同行する一方、大也はISAに ブンブンの調整した観測プログラムを「届け」ており、ISAの衛星監視網にそれを組み込むと早速検知される、地球に近づく不自然な動きの隕石。
 マンションの屋上で食事をしていた三下トリオは、その流れ星に手を合わせ、
 「ギャーソリンがガッポリ手に入りますように……ギャーソリンがガッポリ手に入りますように……ギャーソリンがガッポリ手に入りますように!」
 「その願い、自分でなんとかしやがれェーーー!!」
 は、流れ星からのいいツッコミでした(笑)
 「騒音はお手のもの、暴走は、俺のもの。ハシリヤン切り込み隊長ぉ!」
 「「「ぎゃぁ、マッドレックス様ぁぁぁ~~~!!」」」
 「BRRRRR!!」
 V8エンジンを響かせて、隕石もといマッドレックス様が地球へと飛来し、真っ赤な革ジャケット風味のボディにチェッカーフラッグ模様のマフラーを巻き、顔の一部に焼けただれたような傷跡がついているのが目を引いて、割と普通に格好いい系のデザイン。
 OPは今回から4人バージョンとなり、初期バージョンの敬礼シーンをそのまま利用して、阿久瀬の足下にブンブン免許証が落ちる、というのは面白い演出でした。お陰で個人的に好きな、コーラスに合わせて色々回るカットが残って嬉しい。
 そして改めて前回は、実力は相応にあるが心構えに不足の見える弟子(阿久瀬)が、師匠(大也)から免許皆伝を許されるフォーマットの亜流だったのかなと(笑)
 商店街を歩く阿久瀬は、通り過ぎる人々から笑顔で声をかけられると、玄関を直したり草野球での活躍のお礼にと次々差し入れを渡されるほど地域に親しまれており……うん、これは、射士郎でなくても、裏があるに違いないと勘ぐりたくなりますね!
 それから、ウルトラマングレートも参加していた事でお馴染みタンクトップ同盟員とマッチョな筋トレ談義に花を咲かせ……白い方の人はもしかして、スカード工房の妖精さんことヤスノブ隊員でしょうか。
 「……大人気じゃん」
 「俺は信じない」
 阿久瀬よりもむしろ、射士郎への好感度がメキメキ上がりますね!!
 尾行は続き、500円玉を拾って周囲を見回す阿久瀬の姿に、「さあ、どうする?」と幟の陰から唇の端を歪める射士郎……への好感度がメキメキ上がりますね!!
 阿久瀬は当然のように交番に遺失物として届け出、500円1枚の為に書類を書くことになった先輩からの好感度は微妙に下がったかもしれません!
 「はぁ~、真面目すぎるほど真面目な警察屋……だけど……」
 「…………俺は信じない」
 射士郎が瞳に昏い情熱の炎を宿していた頃、ハシリヤン一味はマッドレックス様の膝から生えている黄色い犬の導きに従い(これも何か映画ネタでしょうか……《マッドマックス》シリーズは、『怒りのデスロード』しか見た事がなく)、洋式便所をイグニッションし、トイレグルマーが誕生。
 ギャーソリンの噴出を目撃し、いちはやく駆けつけた大也がブンブンチェンジすると、マッドレックスが顔を出して「こいつは俺の獲物だ」とさっそく因縁の取っかかりを構築。
 「はるばるこんな星までやって来たんだ。タノシませてもらおうじゃねぇか……“スピードの向こう側”までよォ」
 レース物のストレートなパロディですが、ヒーローVS怪人の状況と、奇声に近い高音から低く落とす台詞周りの妙味もあって、やたらとツボに入ってしまいました。
 「汚い建前洗い流し、綺麗な本音を、垂れ流せー!」
 赤とレックスが激突する一方、トイレグルマーの水洗シャワーを浴びた商店街の人々は、普段は隠している本音を口々にさらけ出し……天ぷらとコロッケのどちらが偉大か、最も美しい筋肉は腹筋か上腕二頭筋か、きのこの山たけのこの里で美味しいのはどちらかよろしい決闘だ! と掴み合いに罵り合いで揉めてギャーソリンを放出し、類例の多い一種の人格反転ネタを、トイレモチーフ怪人と絡めたのは、秀逸なアイデア
 「どうやらヤツの水を浴びると、本音が隠せなくなるようだな」
 「なにそれ困る!」
 阿久瀬に続いて、射士郎と未来もこれを目撃し、あ、ちゃんと、隠したい本音はあるんだ、と安心しました(笑)
 マッドレックスにホームランされた赤は個別の交戦中で、青桃黒の3人でブンブンチェンジ。
 「気分ブンブン、ブン回せ!」
 ……なんだかんだちゃんと、迷わずキャッチコピーを担当してくれるブンブルー(笑)
 「「「爆上戦隊! ブンブンジャー!!!」」」
 (……本音を隠せなくなる。使えるな)
 ……だがちょっと、悪いことを考えていた(笑)
 リーダー不在のブンブンジャーがクルマ獣に立ち向かっていた頃、赤はレックスのドリル攻撃に防戦一方となっており、強烈な一撃による叩きつけダメージをタイヤホバリングでなんとか回避。
 「ほぅ、やるじゃねぇか」
 対して、ドリルにパワーを溜めたマッドレックスが頭部のエンジンから激しく炎を噴き出すと、周囲の小石が電荷を帯びて浮き上がり……早くも直接対決となった切り込み隊長ですが、ここの画面エフェクトが格好良くて、“最初の強敵”感がきっちり出たのは良かったところ。
 その戦いを物陰から玄蕃が見つめる中、トイレグルマー組では、桃をかばった黒が水洗シャワーを浴びてしまうが……
 「街の人も……ブンブンジャーも…………俺が守る!!」
 その言行は以前と全く変わらず、真面目すぎるほどに真面目な警察屋は、仕事をさぼってパチンコに繰り出したり、ディスコで踊り狂ったり、交番の中でサンマを焼いたりはしていないのだ!
 ……しかしまだ、西部のガンマン気取りで自宅はコスプレグッズで一杯の可能性もある、と様子を窺う青だが、人を呪わば穴二つ、水洗シャワーを真っ正面から浴びてしまうと、
 「……疑って…………悪かったぁぁぁ!!」
 突如、絶叫、からクルマ獣へと飛び蹴り。
 「裏と表で出来ている世の中で、熱く、真っ直ぐで、真面目すぎるほど真面目な警察屋! 世界で一番、真っ白なブラックだったぁぁ!!」
 そうだ自宅に『吼えるペン』名言日めくりカレンダーが大切に飾ってあるのはこの俺だぁぁぁぁ、と黒にすがりつかんばかりの勢いで青が謝罪してサブタイトルが拾われ、今回のサブタイトル、パトカーの色であり、警察の隠語であり、裏と表であり……と意味の掛け方が秀逸でありました。
 「……あ、ハイ」
 「最っ高に爆上げだ阿久瀬錠! 尾行などした俺を、許してくれぇぇぇ」
 アップダウンの激しい人となった青が地面に倒れ込んで嗚咽すると、黒が正座して敬礼するのは、性格が出て細かく良かったポイント。
 「ハイ! 自分は、なんの問題もありません!」
 「よし! 一緒に地球の平和を守るぞ!」
 立ち上がった青と黒が熱く手を取り合うと、ピアノソロのBGMからOPインストに切り替わるのも格好良くはまり、青と黒は怒濤の連携攻撃。
 「なーんだ、本当は射士郎も熱血なんじゃん」
 冷静沈着で自分にも他人にもバリケードの多い射士郎ですが、そもそも大也の「爆上げだな」に共鳴する部分を持っていた筈なので充分に納得はでき……現時点で明らかになっている劇中情報からのなんとなくですが、裏と表の混沌が色濃い業界に身を置いているからこそ射士郎は、真っ白な輝きに内心で憧れを抱くところがあったのかもしれない、と思ってみたり……それを見せてくれたのが一つには大也であり、射士郎にとってのブンブン活動の位置づけなのかもな、と。
 微笑ましく見つめていた桃も加わると、青桃黒でのハンドリングドライブが炸裂し、トイレは使用禁止。
 ブンブントラック一番星には桃が乗り込む変化球でハイウェイ空間に突入すると、前回同様、バーチャルトラップを用いてヤルカーを排除。巨大トイレグルマーとブンブンロボの戦闘が始まる一方、ブンレッドはマッドレックスの必殺攻撃の前に逆境だ!
 「燃えろ! 怒りのデスロッド!」
 幹部名の元タイトルネタは、早々に真っ正面から放り込んできてくれて清々しかったです(笑)
 あわやブンレッド串刺し寸前、事態の推移を窺っていた調達屋の投擲したマンホールの蓋を手にした赤は、咄嗟にそれにタイヤエネルギー的なものを注ぎ込んで魂のシールドにすると怒りのドリルミサイルを弾き返す事に成功し、スーツのタイヤも割となんでもありの挙動を見せますが、赤が物質強化的なエネルギーを放出して逆境をしのいだのは、この場限りの解決法にせずに、しっかり今後の物語の中に収めてほしい要素。
 「お困りのようだったのでね」
 「……いい仕事だ!」
 ……いったい、幾らの請求書が届くのか。
 巨大戦にカメラが戻ると、トイレットペーパー攻撃で拘束されたブンブンロボだが、ヘッドパーツを分離して拘束を切り裂き、公務執行妨害によりデリート執行。
 トイレグルマーが、ビルの上を便座に見立てて座り込んだまま爆死する画はちょっと面白く、水洗シャワーの被害者たちが正気に戻る一方、急造ブンブンシールドのエネルギー放出で疲弊した赤にはレックスが迫るが、黄色い犬が散歩の時間を告げると、余裕を見せて戦闘終了。
 「このマッドレックス様と走って、事故らねぇヤツが居るとはなぁ……てめぇ! 名前は?」
 「ブーーンレッド!」
 赤は力強く名乗りを上げ……「名乗り」とは何かといえば、それは世界と向き合う己という存在の宣言なのであり、荒い息をつきながらも強敵に立ち向かう意志をそこに集約(ここで赤が消耗を見せているのも、敵味方の株を同時に上げて良い演出でした)。
 「ブーンレッド……ふっ、次のコースで会おうぜ」
 ……ちょっと名前を間違えて覚えられた気はしますが、分割戦闘にしつつ、“赤は赤で個別に名乗る事”に、メタ的なこだわりだけではない物語の中での意味をしっかりと持たせ、《スーパー戦隊》の劇作における「名乗り」とは何かについて、分解再構築も加えつつ凄く前向きに扱ってくれているのは、今作の嬉しいところ。
 パロディも交えつつ、台詞をレースに絡めるマッドレックスも面白くなり、一騎打ちにおいてその“強さ”を示す事で、魅力ある障害としての悪役を打ち出してきたのも、作品への好感度が上がります。
 「……マッドレックス」
 協力はしたが加勢はしなかった玄蕃は意味ありげに呟き、大也が基地に帰ると、水洗シャワーの影響を脱した射士郎が、虚ろな表情で某ロマンチック冒険者ばりに床に崩れ落ちていた。
 「……裏の顔を暴くつもりが、逆に暴かれたのか」
 いわゆるクール系を崩すのは、わかりやすい上にウケが取りやすいので、ついついやり過ぎになりがちですが、今回は射士郎自身が怪人の能力を利用して阿久瀬の本性を暴こうと悪巧みしていたので、ちょっとした因果応報としてバランスが取れている上、大也の台詞でそれを厭味なく補強する事によりラストシーンを気持ちよく見ることが出来たのは、今回の特に良かったポイント。
 またまたシリーズ初参戦の脚本家(個人的に初見でしたが、アニメ畑で活躍されており、やはり冨岡さんと同じ作品に参加した経験もあるとの事)と、ローテ三番手職人として風格も出てきた加藤監督とのコンビでしたが、定番のアイデアを軸にしつつ定番の落とし穴を綺麗に回避して、面白かったです!
 4人になった直後に3:1で分割する思い切った組み立ては好みの分かれるところでしょうが、個人的には増員を上手く利用して怪人バトルを添え物にせず、同時に幹部キャラの存在感に重みを出してくれて良かったなと。
 「大也が居なくても戦えるって、証明できたね、私たち」
 「お二人がいてくれたお陰です。未熟者ですが、これからもよろしくお願いします、ミラ先輩。シロ先輩」
 後輩が出来たーと未来がテンション爆上げになる一方、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする、と身を起こす射士郎。
 「待て。シロ先輩とはなんだ……」
 「え、だって……シャー・シロウ、さん、ですよね?」
 未来のせいで、射士郎は、赤い彗星みたいな人にされていた。
 「……俺のフルネームは鳴田射士郎だ」
 「じゃあ……シロ先輩ですね」
 笑顔で返された射士郎は反撃する気力も無いままうなだれ……隊内ヒエラルキーが劇的に暴落した気がするけど、立て! 負けるな射士郎!
 「や……こっちも……大変だったんだけど」
 和気藹々と盛り上がる三人を横目に、“現場に居なかった人”扱いにされた大也がぼそっと呟くのが大変面白く、ブンブン組長からカレーで励まされて、つづく。
 上記したように、シリーズ新規かつ個人的に初見の脚本家でしたが、笑いの為にキャラクターを必要以上に貶めない目配りが見えたのが特に良かったところかつ、既に回収されていたと思っていたサブタイトル「シロとクロ」を、ラストシーンでもう一回引っ張り出してみせたのは、唸らされました。
 《スーパー戦隊》としてはだいぶ珍しい、6話にして3人の脚本家投入となりましたが、ここまでのところ、アベレージ高い!
 また、第5話では第4話における「ヒーローを呼ぶ声」の要素を繋げ、今回は前回から「真面目すぎるほど真面目な警察屋」の部分を拾って広げ、別々の脚本家で一話完結させつつも、エピソードの主題となる要素に前の回からの連続性を作る事で、物語の雰囲気に一体感を持たせているのが、上手い作り。
 やはりメインライターの冨岡さんが本数を書くというよりも、複数脚本家で繋ぎながら諸要素の調整に手を入れて全体を統御していくような作りになるの、かも(プロデューサーが大変いい仕事をしている可能性も当然あり)。
 次回――恋するブンブン? そして、オレンジ参戦。
 ここまでタメてきた現場の玄蕃がいよいよ前線に躍り出るようですが、予告の「私が君たちを加速させよう」の言い回しがやたら格好良かったので、期待。そして今作こだわりの変身ポーズにおける膝ブンブンも面白く、ハードルの上がる予告がピークにならないかがちょっと心配(笑)