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Xからの刺客!

仮面ライダーアマゾン』感想・第7-8話

◆第7話「とける! とける! 恐怖のヘビ獣人!?」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 ナレーション「この、大都会では、大勢の人間が平和に暮らしている。その、渦の中に置かれた、一人の男・アマゾン。あの、南米アマゾンのジャングルの中で、ただ一人、平和に暮らしていたアマゾンだが、今は違う。この、平和を守る為には、ゲドンと戦わなければならないのだ。と、アマゾンは思った」
 『X』最終回以来となる伊上先生の登板となり、冒頭ナレーションにおける「今は違う」の文言が、「平和に暮らしていたアマゾン」だけではなく「ジャングルの中で、ただ一人」にまでかかっているのかどうかでニュアンスが変わってくるのですが、「ジャングルの中でただ一人、平和に暮らしていたアマゾンだが今は違う。この(大勢の人間の)平和を守る為には、ゲドンと戦わなければならないのだ」となると、主人公にとっての重大な意識改革がさらっと処理済みにされていないか、ちょっと心配になります(笑)
 今後どう転がってもいいように、意図的に文意をどちらとでも取れるようにして保険をかけた可能性もありますが。
 「……はぁぁ、俺は一体どうすればいいのだ~。いつの間にかあいつの味方になっちまった~」
 一方、モグラ獣人の前回の「ともだち」発言は、場の勢いだった。
 ……或いは、咄嗟に足を引っ張ってやりたいほどに、獣人ヤマアラシの事が嫌いだった。
 好意的にはこれは、命を助けられた恩義に加えて、土壇場でつい味方をしたくなるような愛嬌が大介にはあり、姿は獣ながらモグラ獣人にはそれを介する“心”があれば、大介もまた姿形よりも“心”を重視し、種族の枠を越えられる存在である――同時に、人と獣の境界的存在である――事をまとめて示していると取れますが、特異な生まれ育ちを背負った異常児であり、共同体の外側から海を越えてやってきた無縁の者であり、二つの異なる世界(大都会/ジャングル、獣/人、生/死)の媒介者たるトリックスターである大介は、シリーズ従来の主人公以上に、徹底して神話的英雄の性質が与えられているのが見て取れます。
 以前にも別のところで引用したかもれませんが、民俗学者小松和彦先生の一文、


 英雄とその敵である怪物は、同じ根から生まれた異なる枝、相対立する同族といえるであろう。私が、頼光一党は彼らの同族である酒呑童子たちを退治している、と述べたのは、このような意味からである。英雄は、彼の出自、彼の過去、もう一つの彼の否定として、鬼などの怪物を退治する。退治することによって社会に迎えられ、英雄となるのである。

(『神々の精神史』)

 は読んだ時から、ずばり「仮面ライダー」だなと思っているのですが、アマゾンはまさにそのものといえる描かれ方。
 とはいえ大介が「社会に迎えられ、英雄となる」事を求めているかはわかりませんが……樹上のその姿を見つめながら煩悶するモグラ獣人には、いっそ腕輪を奪ってゲドン復帰を目指すかと独白させることで再裏切りルートは潰し、大介からの友達認識を向けられると受け入れてしまったモグラ獣人は、生きるべきか死ぬべきか、悩みながら再び土中へ(笑)
 マサヒコの友達の少女・ヒロミを紹介され友情のインカサインをかわす大介だが、ヒロミの父が生物学者の有馬博士だと知った十面鬼は、それを利用してアマゾンを捕らえようと画策。
 ゲドンで一番悪知恵の働くヘビ獣人が召喚されると、「ハールマゲドン」みたいなゲドン挨拶が皆で唱和され、組織感を強めようとしたのかもですが、なんと言っているのかは聞き取れず。
 コブラの頭部にそのまま足と尻尾をつけたような見た目のインパクト抜群なヘビ獣人は、有馬博士の助手を丸呑みにする事でゾンビのように操ると大介を研究材料にするようにそそのかし、ヒロミに案内された大介が研究所を訪れると、博士と助手は目配せかわして壁のボタンをぽちっとな。
 そう、こんな事もあろうかとリフォームの際に施工済みだった、
 檻が! 天井から! 落ちてきた!!
 「アマゾンはね、パパの研究に大いに役に立つんだよ」
 深刻なショックを受ける娘に向けて弁解の素振りも見せずに言ってのけ、当たり前のように天井から檻が降ってくるこの日本は、やはり一度ゴッド機関によって滅ぼさねばならないのかもしれません。
 ……何が凄いって、目の前に餌をちらつかせれば当然誘いに乗ってくるものとゲドンに認識されているのが凄いですし、どう考えてもこの檻、ゲドンと関係なく設置されていたのが凄い(笑)
 「いいザマだな、アマゾン」
 役割を終えた助手がドロドロに溶け去るとヘビ獣人が研究所に姿を見せ、悪知恵の凄さを示す為か大介の前でも普通に喋るが、そこへ鳴り響くチャイムの音。
 ヘビ獣人に脅されたヒロミは、研究所を訪れた藤兵衛とマサヒコを追い返すが、マサヒコとこっそりハンドサインをかわしており……あれなんかもう普通に、少年ライダー隊教育を受けてる?
 藤兵衛が攪乱している間に檻から解放された大介はヘビ獣人と激突して撤退に追い込むが、その戦いを見守っている間にマサヒコ・ヒロミがゲドンにさらわれてしまい、全く気付かない藤兵衛の、配線の焼き切れ具合が不安です。
 「頼む! アマゾン!」
 「……マサヒコ、ヒロミ、友達」
 さすがに反省した有馬博士は大介に泣きついて娘の救出を頼み、己の欲望の為に他者の自由と尊厳を踏みにじる存在(『仮面ライダー』冒頭に繋がる、初期シリーズにおける絶対悪)を目の当たりにしながらも、友と決めた者の為に走り出す大介はジャングラーでゲドンを追跡。
 富士急ハイランドに誘い込まれた大介は、東映ヒーローの歴史上でも他の例が少なそうな半裸アトラクションを決め、見た事もない機械とその動きに右往左往。
 「思った通りだ。アマゾン! おまえには初めて見る機械だ。散々に驚かしてやる」
 ヘビ獣人が悪知恵の働くところを見せ、定番といえる遊園地バトルが大介にとってはかつてない謎に満ちたものになる事で、視聴者にとっても新鮮なものとなるのは面白い趣向。
 ゲドン戦闘員は大介を引っかき回し、ジェットコースターに轢かれそうになったりスリラーハウスでお化けに翻弄される大介だが、作り物に紛れての奇襲、には中途半端な攻撃を回避すると、大介の消耗を狙うヘビ獣人と再び激突し、アーマーゾーン!!
 迫力というより見ていてちょっと怖いウォータースライダーバトルの後、ヘビ獣人は尻尾をものすごーーーく長く伸ばし、叩き付けから締め付け、そしてアマゾンを丸呑みにせんと迫り来る巨大なアギト。
 対するアマゾンは、ヘビ獣人の頭部に執拗なチョップを叩き込んで昏倒させると尻尾を振りほどき、痛烈な回し蹴りがクリティカルヒット。そこから連続チョップを叩き込むと獣人の顔が真っ二つに裂け、真っ赤血を噴き出しながら倒れる、これまでのライダー怪人でもトップクラスに惨い最期を遂げるのであった。
 大介は救出したマサヒコとヒロミと共に、屋外スケートリンク富士急ハイランドの冬季施設でしょうか)を見つめ……寒い、寒そうすぎる……!
 さすがにその内、上着ぐらい羽織るのだろうな、と思っていたらギギの腕輪事件が起こってしまい、パンツ以外の防寒具を身にまとえないまま、気がつけば、冬。果たして南米ジャングル育ちの大介、日本の冬に耐えきる事が出来るのか!
 次回――も丸呑み路線からの、再び逮捕?!
 ……留置場の中は、森より暖かいかもしれない。

◆第8話「学校を襲ったワニ獣人!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:村山庄三)
 河原でハーモニカを吹く少年が草笛を吹く大介と接触し、前回から割と露骨に大介が子供と触れ合い始めておりますが、まちょっと色々覚悟はしておけ。
 その頃、マサヒコの通う城南小学校にワニ獣人が出現し、特に目撃シーンも描かれずにいきなり食い殺される用務員のおじさんが悲惨な扱い。
 事前に怪しいワニの剥製を目にしていたマサヒコは、ゲドンの仕業に違いない、と学校を抜け出してアマゾンの名を呼ぶが、友情センサーの感度が悪く、探し回って疲れている内に、河川敷を這いつくばって蠢き回る完全な不審者――こと立花藤兵衛と遭遇。
 当の大介はハーモニカ少年と遊んでいたところ、少年の母親に120%不審者だと認識され、前回-今回と、行動理念の更新と共に共同体に歩み寄りを見せる大介に対し、共同体の側からの排除の視線(子供を除く)が向けられるのですが、正直ここまでの今作世界は半裸男性に優しすぎたと思うので、子供を持つ母親としては真っ当な反応に見えるところはあります(笑)
 今作はこの辺り、「アマゾンというキャラクター」よりも「アマゾンというモチーフ」に対するリアクションが描かれがちな傾向はあるのですが(普段は誰も気にしないが、忌避感を示す役なので忌避感を示す、みたいな)、映像としては上手く、“守るべき者の為に戦う意思と力を持った純粋なる男”に落とし込まれているのは、大介を演じる岡崎徹さんの好演が光ります。
 藤兵衛とマサヒコがやってくると、場のフォロー一切無しで学校の変事を伝えるが、小学校では既にワニ獣人が大暴れの真っ最中(ほぼほぼ、二足歩行する巨大なワニそのもので、姿勢が低くて中の人が大変そう)。
 ゲドンの従者が鬼ごっこのようなノリで学校関係者を捕まえる中、緊急時の予備回路が一瞬だけ繋がり、飛び蹴りとか決めてしまう藤兵衛に、襲ったゲドンの側も多分ちょっとビックリです。
 大介はアマゾンに変身し、ワニ獣人を蹴散らすが、
 「みんなゲドンにさらわれちゃった!」
 の一大事件に発展。
 「あれだけの子供が居れば、当分の間、食糧には不自由しない」
 「燻製工場で、蒸し焼きの準備をしております」
 ゲドンでは血液エネルギーどころか直球の人肉食が語られ、この後の会話からゲドン従者も人間を食糧とするようで、闇のインカ科学を狙う悪の組織から、人類の天敵へと飛躍。
 今夜はちょっといいボトルを開けちゃおうかな、と機嫌のいい十面鬼だったが、ギギの腕輪の回収失敗を知り「でかした」から一転「ばかもん!」が炸裂すると、十面鬼円卓会議で審議が始まってワニ獣人にもう一度だけチャンスを与える事が決定し、「「「ぅおんごるぞー」」」(※あえて言えば、こう聞こえる)。
 ゲドン燻製工場では捕らえた子供たち(&藤兵衛&先生)を材料に3分クッキングが始まり……数話前の感想の突発的なネタと重なったのは、純然たる事故です。
 あと30分もすれば、新鮮な小学生をふんだんに使った闇のインカ蒸し焼き~中年男性を添えて~が完成しようとする中、マサヒコと共にゲドンの行方を追おうとしていた大介は、大量誘拐犯と誤解されて縄を掛けられ、逮捕は以前やったという事もあってか、今回は連れ去られなかった教師たちによる私刑でした。
 ナレーション「アマゾンは悲しかった。人々の為に戦っている自分が恨まれる、それがたまらなく悲しかった」
 教師たちに囲まれ無抵抗で縛り上げられた大介の姿に“世間の理解を得られないヒーロー”が強調されるのですが、現時点で「人々の為に戦っている」意識があるとするのは少々勇み足のように思えるものの、ナレーションで大介の心情を確定していく作風なので、一気にそこまで進めてしまうのかどうか。
 そこにワニ獣人が現れると、身動きできない大介に噛みつくが、縄が噛み千切られた拍子にアーマーゾーン!
 痛めつけられたワニが逃走すると、モグラ獣人が現れて子供達の居場所を伝え、オフロードでのジャングラー激走シーンに尺が割かれると、工場、の前に徒歩で逃げていたワニを発見(笑)
 割と急に主題歌が流れ始めてアマゾンは宙を舞い、爪が唸るぞ目には目を。
 激しい噛みつき合いの果て、垂直アマゾンチョップに頭部を切り裂さかれると、更なるラッシュ攻撃を受けて川に転落したワニ獣人が、水面に真っ赤な血を広げながら流れていく惨殺死体と化すのは前回以上に惨い死に様で、『イナズマン』『イナズマンF』で良くも悪くも暴れ回っていた塚田監督が、徹底して血なまぐさい獣の戦いを突きつけてきます。
 アマゾンはモグラ獣人の助けで燻製工場へ突入すると闇のインカ蒸し寸前だった子供たちを無事に救出し、ゲドン3分クッキングの完成を阻止。……タイムリミットサスペンスの常道をそのまま持ち込んだら、「時限爆弾」ではなくて「蒸し焼き」なので、タイマーが0にならなければ良いというものではないのでは? とはなりましたが、組織としてのゲドンの邪悪を打ち出す作戦とはなりました。
 ちょっといいボトルを開け損ねた十面鬼の遠吠えタイム、荒野を走る大介の姿で、つづく。
 ……なお今回のリツ子さんは、濡れ衣で吊し上げられようとした大介を弁護しようとするも話を聞いて貰えず、いまいち年齢不詳なのですが(高校生ぐらいに見えない事もないですが、大学生ぐらい……?)、アマゾン陣営としては、マサヒコに毛が生えた程度の社会的信用度と説得スキルなのは、辛いところ。