『仮面ライダーアマゾン』感想・第5-6話
◆第5話「地底からきた変なヤツ!!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
ひらがな表記は文字に埋もれて困るな……と思っていた「りつ子」と「まさひこ」が、OPクレジットでカタカナ表記になったので、以後、それに準じて「リツ子」「マサヒコ」としたいと思います。
暗闇の中、宝石のごとく見立てられた十面鬼の瞳にキラキラと光が反射している演出が格好良く、血液(エネルギー)を補充した十面鬼は、モグラ獣人にアマゾン襲撃を指令。
ナレーション「何故だ、何故、こうまで、しつこく奴らは、アマゾンを狙うのだ」
腕輪に秘められた秘密を知らず、森の中に立ち尽くす大介は、警察の山狩りから逃げる猟銃を手にした男と遭遇。無惨に山鳥を撃ち殺した男に怒りを向けた大介は、飛び蹴りを入れると猟銃を折り曲げるが、その男がモグラ獣人に襲われると、今度はそこに乱入。
「やはり、十面鬼様のお見通し通り」
「この森に、アマゾンがいた」
本格的に、荒ぶる神霊の類いになりつつある大介/アマゾンは、モグラ獣人により地中にひきずりこまれそうになるが、その時、猟銃の男が……角材で大介を襲った!
そもそも連続殺人犯で警察に追われている、としてはいますが、シリーズ従来作とは全く違う流れで“人間の悪意”が真っ正面からアマゾンに突き立てられ、獣面人心の存在といえるアマゾンに対して、人面獣心の輩が跋扈する人間社会が描かれ、そういえば「十面鬼」は、「獣面」とも取れるネーミングも、いい悪役だと思うところ。
凶悪犯は警察に確保されるが、大介もまた、住所不定の不審者として警察に職務質問を受け、思った以上にストレートに、
「法治国家としては問題が山積みの存在」
である事を突きつけてきました(この点について大介は、不幸な事象が折り重なった末の、完全な被害者でありますが)。
事態を飲み込めない大介が抵抗を見せて(ただし警察官を傷つけない程度なので、“自分と同じ姿をしたもの”に対する、同族意識は明確に芽生えている模様)公務執行妨害で逮捕される一方、警官隊の姿を見て一時撤収したモグラ獣人は、警察に怯えてゲドンが務まるかこの意気地無し、と十面鬼必殺の一人圧迫面接によるリストラ宣告を受けるが、意外や従者から助け船が入って再度のチャンスを与えられ、ゲドンはひたすら社員に厳しい使い捨て路線。
留置場に放り込まれた大介の元には藤兵衛が駆けつけると身元引受人となって釈放され、エピソードの主題として、現代社会に対する“アウトサイダー”アマゾンの強調は行うも、戸籍や入国経緯などの諸問題は踏み込むと厄介になりすぎる事もあり――言ってしまえば、今作におけるアマゾンの背景は「モチーフ」であって、キャラクターの解決しようとする「問題」ではないので――、少年ライダー隊活動で培ってきた藤兵衛の謎コネクションでさくっと解決。
だがアマゾンは、不躾な新聞記者たちに囲まれると怒りと混乱のあまり警察署の窓から飛び出して夜の街を疾走し、この土地に関する不思議な郷愁と、それとは裏腹の敵意のようなでさえあるものとの間で激しく揺れ惑い、やり場の無い怒りを持て余す。
ナレーション「アマゾンは怒った。ここに住む人間たちとは、少しも心が通じ合えない。その、怒りの叫びを、大都会に向かって、叩きつけたのである」
アマゾンの疾走が主観視点のカメラ映像で描かれ、地下鉄の構内などはさすがに撮影許可を撮っていると思われますが、周囲の通行人は、本当にただの通行人ぽい雰囲気。
「嫌いだ! 人間、嫌いだッ」
大介の存在が徹底的に“社会の異物”として描かれる中、殺人犯の逮捕に一役買った事が見世物めいた新聞記事になると、マサヒコは無邪気に喜びリツ子はそれを非難し、今のところリツ子は「アマゾンに対してマサヒコと逆の態度を取る係」でしかないので、キャラクターとしては腰の据わらない言動が続きます。
「アマゾンはどこだ?!」
そんな姉弟に後のないモグラ獣人が迫り、人質としてさわらわれるマサヒコ。リツ子から藤兵衛に連絡が入り、二人は必死に大介を探すと……海を見つめて立ち尽くすアマゾンを発見する。
「アマゾン、大変なんだ! すぐ来てくれ」
「俺……帰る」
藤兵衛の呼びかけには応えるも、“人間”を好きになれず、ジャングルへの帰還を望む大介だが、マサヒコがさらわれたと聞くと表情を変え、家族を想うリツ子の涙に、それをぬぐう仕草を見せる。
「マサヒコ、ともだち……俺、ともだち、助ける」
大介は「社会」や不特定多数の「人間」の為には戦えないが、「友達」の為には迷わず戦う姿を見せ、今作コンセプトから何を描くのか、作品世界に対する勘所の掴み方が、さすがの鈴木脚本。
第3-4話では、バイクを出す・バイクに乗せる、の至上命題が優先されるあまり、万能便利キャラである藤兵衛が場をかき乱しすぎて、「仮面ライダーだから公の正義の為に戦って当然だ!」を外部から強引に注入しようとするのが、いやちょっと早すぎるのでは?! となっていたので、そもそもこの社会を守る意識を持たない――そこに所属した事が一度もなく、「公」の概念も現代社会的な意味で持たない――大介が、なんの為にならば戦えるのか? に改めて焦点を合わせ、今回はある意味、ここを描いてくれただけでも満足。
ゲドンのオートバイ部隊が現れると大介はジャングラーでその後を追い、車体のバランス悪そうで、カーブの度にちょっとドキドキします(笑)
「マサヒコーーー!!」
「ダメだアマゾン! 来ちゃダメだ!」
柱に縛り付けられたマサヒコに駆け寄る大介に、地中からモグラ獣人の不意打ち!
「ギギの腕輪をよこせ!」
ナレーション「アマゾンが、このギギの腕輪を失う時、その時こそ、アマゾン自身の、命もなくなるのだ」
ナレーションさんが突然、酷い設定をさらっと付け加えた!!
……想定される可能性としては、
1・ギギの腕輪がゲドンの手に渡るぐらいならこの世から消えた方がマシ、と腕輪が大介の体から離れた瞬間、宇宙最強のセキュリティもとい自爆装置が作動する。
2・無許可の改造人間に腕輪を護って戦うモチベーションを与える為に、腕輪の接続と生命活動が直結している。
のどちらかでしょうか。
改造手術は基本的に“死と再生のメタファー”なので、改造要素を取り除いたら、引き戻される状態は“死”となるのは当然といえば当然なのですが……今再び、視聴者の心は一つに。
闇のインカ科学、許すまじ。
『X』日本の源流は古代インカにあったのかもしれずアマゾンの前途に暗雲が漂う中、モグラ獣人の鋭い爪が大介の肌を引き裂き、激しく流血する大介は、アーマーゾーン!
崖の上に立つアマゾンを三方向からズームインで見せるとEDインストに乗っての飛び膝蹴りを放ち、アマゾンはマサヒコを救出。
砂浜での噛みつきから取っ組み合いとなり、モグライリュージョンアタックを受けるアマゾンだが、回避から背後を取って噛みつき……だいたい、乱れ童子(笑)
出血ダメージで弱ったモグラ獣人は、アマゾン回し蹴りからの連続チョップを受けると、弱々しい鳴き声をあげ、全身から黄色い血を吹き上げながら地中へと逃亡し、アマゾンも黄色い返り血を浴びているのが、徹底した描写です。
モグラ獣人を退けた大介は、助け出したマサヒコと友情のサインをかわし、モグラ獣人が口を滑らせた事により、ギギの腕輪が狙われている事を知るのであった!
次回――敵か味方かモグラ獣人!?
……今作ここまでの、怪人へのトドメが不明瞭な路線がこう使われるとは(笑)
◆第6話「インカ縄文字の謎!!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
「アマゾンライダーに負けて、おめおめ逃げ帰ってきたというのか、モグラ獣人」
「しかもこいつは」「ゲドンがギギの腕輪を」「狙っている事まで」「アマゾンにバラした」
失言も手伝って今度こそ極刑を宣告されたモグラ獣人は、モグラの弱点である天日にさらして日干し処刑にかけられる事となり、シーン変わると、バイクにくくりつけられて道路をひきずられているのが、ひ・ど・い。
それを目撃した大介は、日光責めを受けていたモグラ獣人を、アマゾンの水で救出。
「や、やめろ……き、貴様の情けなど、受けるか……!」
「黙れ。水、飲む」
……これは、追加の拷問かもしれない。
「なに? アマゾンがモグラ獣人に水を飲ませているだと?」
従者から報告を受けた十面鬼がまとめて殺せと指示を出すと、獣人ヤマアラシが焼き上がり、OPクレジットの「獣人山アマアラシ」はやはり、表記ミスでしょうか。
大介が煎じ薬でモグラ獣人を治療していると、そこに現れて友達のサインを交わすマサヒコ。さすがの少年もモグラの治療には難色を示すが、ひとしきり文句を並べた後は、「それよりさ」で流されました(笑)
大器の可能性を感じさせるマサヒコは、ゲドンが狙う腕輪について大介が何も知らない事を確認すると、ひらめキーング!
そうだ、そこに転がっているモグラを、尋問すればいいんだ。
尋問がすぐ拷問に代わろうとする気配を感じたモグラ獣人が地上に逃走すると、そこに飛んできたのは、針の弾丸・獣人ヤマアラシ!
全身の針がなかなか凝った造形の獣人ヤマアラシは、体を覆うスパイクガードにより、大介の接近を阻んで得意の噛みつき攻撃を許さない優秀さを見せ、これが80年代の戦隊ヒーローだったら、よし、飛び道具だ! と無慈悲に間合いの外から攻撃するところですが、アマゾンには射撃武器が、無かった。
噛みつき封じの恐るべき獣人ヤマアラシが大介を攻め立てると、マサヒコが長い棒を遮二無二振り回して叩きつけ、マサヒコもまた友達として大介を助けようとする描写が入ったのが手堅く、大介はマサヒコを背負って逃走。
「良かったわね、無事に逃げられて」
前回の一件を受け、大介への態度を軟化させたリツ子は、獣人から逃げる事に成功した二人をリビングに迎え入れ、すっかり、「ゲドンの襲撃」を「近所の犬に吠えられた」レベルに受け入れてしまいました(笑)
そこに顔を出した藤兵衛情報を元に、一同は城北大学の考古学研究室へと向かうが、大介が目を留めた古代インカの縄文字が獣人ヤマアラシに強奪されてしまう。
デザインと造形の良さが目を引く獣人ヤマアラシは、球体モードから通常モードへのカットの繋ぎもかなりスムーズで、再戦でもアマゾンを苦しめると、縄文字を従者へとパス。
従者部隊がバイクで逃走して追跡シーンが確保され、ジャングラーで土手を上ったりすると大変ドキドキしますが、先回りした大介は従者バイク部隊を高所を取って待ち構え……おもむろにジャングラーヘッドがぱかっと口を開けると、ジャングラーには射撃武器が、あった。
銛のようなものが飛び出してバイク部隊を殲滅するも、追いついてきたヤマアラシの攻撃を受けた大介は、噛みつき封じに苦戦。だがそこにモグラ獣人が顔を出すと、
「おまえ、ともだち」
と、いきなり態度を激変させ、穴に隠れて回転攻撃をかわすと、揃って逃走。
更に、ゲドンが回収した縄文字を洞窟に穴を開けて保管庫(天然の岩壁)から盗み出し、本拠地から遠く離れた地球の裏側までやってきて、アジトの整備もままならないのはゲドンも苦しい台所事情を感じさせます。
それはそれとして、モグラ獣人の心変わりが本当に唐突すぎるので、しばらく、ゲドン帰参をかなう手柄を立てる為にアマゾンを騙しているのではと疑っていたのですが、今回限りはそういう事が無いまま終わり、ばっさりカットでもされたのか、或いは、数話がかりで行われる薄汚い裏切りへの布石なのか。
人間でいえば火野正平がキャストされているみたいに受け止めればいいのかもしれないモグラ獣人から受け取った縄文字を大介が読み解くと、そこに記されていたのは、腕輪の秘密と、ゲドンの目的。
ナレーション「今から、100の20倍の昔、不思議な科学を持つ、インカの国があった。その、インカ科学の謎を解く鍵は、ガガと、ギギという、二つの腕輪に秘められている。この二つの腕輪が一つになった時、インカ科学が発見した、恐るべき、超エネルギーの秘密が解ける。この二つの腕輪を手に入れたものは、超エネルギーの力で、世界を自分のものにすることができるのだ」
そう、古代超力文明は、南米アマゾンにあったんだ!
はまあともかく、
「……アマゾン、ギギの腕輪、渡さぬ」
どこまで理解をしているのかはやや疑問がありますが(「国」や「世界」という概念をどう捉えているのかといった意味で)、大介の行動原理が更新され、友情を繰り返し売り込んでくるモグラ獣人だが、そこに落ちてくるヤマアラシ! の、滝をバックにした映像が迫力。
獣人ヤマアラシの連続体当たりを受け、激しい流血で川を赤く染めた大介は、アーマーゾーーン!!
前回の関係性を基盤にしつつ――「社会」の為では無く「友」の為に戦うが、友を含めた「世界」を守ろうとヒーローの行動原理が更新されたところで主題歌バトルになり、
「アマゾンライダーここにあり」
「歯には歯を」「目には目を」
「正義の為なら鬼となる」
という歌詞は、今作の主人公像をまざまざと示していて、好き。
アマゾンライダーは、どうも水が苦手なのでは感のあるヤマアラシに連続噛みつきを浴びせ、壮絶な戦いの末、回転と手首のスナップを効かせた連続チョップを受けたヤマアラシは、失血死。
明確なフィニッシュブローはまだ無いものの、ひとまず、勢いをつけ、多少は見栄えを意識した技が放たれるようになり、社員を雑に扱い続けた結果、情報漏洩・転職・不法侵入・データ盗難、のミラクルコンボを受け、怒れる十面鬼が口から火を噴いて、つづく。
立ち上がりの4話を受けて、シリーズ常連脚本家である鈴木生朗が、改めてアマゾンの立ち位置を明確に固めるといった2本でしたが、今回に関しては、前半は頑なな態度を取っていたモグラ獣人が、後半「ともだち」を名乗ってアマゾンを助けるくだりがあまりにも唐突で、そんなモグラ獣人が重要アイテムを盗み出す事で大介の目的意識に大きな転機が訪れるのは、いただけない展開となってしまいました。
第1話「人か野獣か?! 密林から来た凄い奴!」
第3話「強くてハダカで速い奴!」
第5話「地底からきた変なヤツ!!」
と今作ここまでのサブタイトルのセンスは結構好きだったのですが、次回――なんだかいつものノリ。