東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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フィーバーにほえろ!

『バトルフィーバーJ』感想・第33-34話

◆第33話「コサック愛に死す」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三
 「どうしてお兄ちゃんは、いつも竹藪から出てくるの?」
 「え……はは、それはね、お兄ちゃんが 人に言えない仕事をしているから 宇宙人だからだよ」
 少女に小粋なロシアンジョークをかます謙作がパトロール中に立ち寄った邸宅の中では……
 「白石くん、遂に完成したよ、ドリルミサイル」
 なんか、満面の笑みでヤバそうな事を言う白衣の男性が出てきて、本当に人に言えない感じだった(笑)
 ……見ている私に『仮面ライダーX』後遺症のバイアスがかかっている為もありますが、あ、これは人類にとってダメそうなやつでは感が物凄く漂います。
 国防省の援助を受けて新兵器を開発していた博士だが、その完成も束の間、ドアを開けるといきなりサロメとエゴスの戦闘員!
 博士の家にはとっくのとうに盗聴マイクが仕掛けられており、新兵器の設計図を渡す事を拒んだ博士は凶弾に倒れ、コサックの奮戦むなしく奪われる設計図。
 博士は娘マユミを抱きしめながら絶命し、BF隊が全力で設計図の行方を追う中、エゴスではドリルミサイルの製造が24時間体制で進められていた。
 エゴスの秘密工場探索の傍ら、父の死によるショックで心を閉ざしてしまったマユミの元に足繁く通う謙作は、もともと博士の護衛についていた国防省時代の先輩にして射撃のライバル、神誠(じん・まこと)の置き手紙を発見。
 今回の件でスパイの嫌疑をかけられた誠(雰囲気的には「神」と書きたいところなのですが、一般名詞としての意味が強いので、「誠」表記で)は、その潔白を証明するべく、設計図を取り戻そうと独自に動き出しており、マユミの事を謙作に託していく。
 「何も心配しなくてもいいからね。お兄ちゃんがついてるぞ」
 「帰って!」
 「今……なんて言った?」
 「人殺しは嫌いよ、帰ってよ!」
 だがマユミは、国防省もエゴスも同じ人殺しだと謙作の存在を拒絶し、抗弁虚しく言い放たれる、
 「血の臭いがするわ-」
 が、少女の絶妙にたどたどしい言い回しもはまって、超強烈。
 ショックを受けた謙作は思わず自らの手の臭いを嗅ぐと石鹸で執拗に洗い続けるが、そんな事で、これまでの人生の歩みに付きまとう真っ赤な影法師が消える筈も――ない。
 エゴスの捜索と並行して病室をそっと覗く謙作は、シャボン玉の表面に父の面影を追い求めるマユミの姿に、孤児として育った少年時代を思いだし……育ての親だった神父が、養護施設の地上げに遭って地元の暴力団に撃ち殺される、いきなりすぎる東映時空(笑)
 マユミに自らの過去を重ねる謙作は、なんとかマユミの心の傷を癒やしたいと、マサルを助っ人に駆り出して徐々に友好度を回復すると、気分転換にと二人でダム湖の見学に。
 (良かった……元気になってくれて)
 だが、事前に伝に真剣に止められたにも拘わらず、マユミの心を慮り、血の臭いの象徴といえる戦闘服を持たずに基地を出ていた謙作は、BF隊の各個撃破を狙うエゴスの標的となっており、再びマユミを人質に取られてしまう。
 フィーバーできない謙作は、なんとか少女を救出するも銃弾の雨を全身に浴び、誠の援護も戦闘服を手に駆けつけた連絡員も間に合わないまま致命傷を受け……
 「ああ……かき氷食いてえなぁ。体中が、カッカするぜ。エゴスの野郎、今度会ったら承知しねぇぞ。今度会ったら……」
 銃弾の痛みによる全身の熱を「かき氷食いてぇ」で表現するのが痺れる台詞回し。
 瀕死の謙作が死神と踊っているシーンでかかるのが、エゴスの陰謀ぽいテーマだったり、こんな場面でもBGM不足が気にかかる『バトルフィーバー』ですが、絶命した謙作の体の上に、BF隊が戦闘服を置いて敬礼を捧げると、誠がそのスーツを手にとって一人歩き出す場面は、ギターアレンジぽいBGMも違和感なくはまって格好いいシーンとなりました。
 (おまえの仇は俺が討つ……きっと俺が討つ。見てろ白石)
 ……それはそれとして、目の前で父を殺された少女の心を癒やそうとしていたたら当の本人が全く同じシチュエーションで無惨な死を遂げるトラウマの二段重ねが発生しており、もはやマユミを救う手段は、復讐の炎に身を焦がす事しか残っていないのでは。
 (そうだマユミ……優しかった父を、仲良くしてくれたお兄さんを、おまえから奪ったのは誰だ? エゴスだ! 立つのだマユミ、理不尽に奪われた命は、奪い返す事でしか取り戻せないのだ! さあ立てマユミ、君が立ち上がるのならば、我々は君に、原子力の心臓と鋼鉄の腕、そしてこのドリルエネルギーを与えよう!!)
 ……なお、事の発端となったドリルミサイルは、建造が間に合いませんでした。
 一人ジープを走らせた誠は、心当たりの工事現場にカチコミをかけるとマシンガンを斉射し、一度は騙されたエゴスの偽装工作なのですが、見た目は普通の作業員が、次々と誠の銃弾に倒れていく、とんでもない場面に(笑)
 倒れた作業員がエゴス工作員の正体を現し、そこに怪人も部隊を率いて現れると、ジャパンら4人も遅れて到着。
 「コサックの弔い合戦だ!」
 「「「おう!」」」
 「たわけぃ、4人で何ができる! 今日こそおまえらの息の根をとめてやるぞ! かかれぇ!」
 「待てぃ!!」
 戦力の欠けたBF隊などものの数ではない、と気勢を上げるここまで名前不明の怪人だが、そこに現れたのは、顔出しコサックスーツ姿の神誠。
 誠はマスクを装着すると、
 「バトルコサック!」
 を新たに名乗り、今、将軍に無断で新メンバーが誕生する!!
 ……とはいえ、このところの将軍不在は顔割れした現メンバーに代わる、新メンバー選抜の為に陰で各地を飛び回っていたのではないかとの疑いがあり(並行して、ペンタフォースとBFロボのバージョンアップも行っていた)、誠もその候補生ではあったのかもしれません。
 主題歌インストに合わせて一同名乗ると、弟ロボットがダイビング登場。
 今回もジャパンが一人でBFロボへと乗り込み、
 「行くぞ! イーグルロボ!」
 と、やっと御子の名前が呼ばれたというか……今、適当に付けた……?
 ちなみにイーグル怪人、造形の都合により、イーグルヘッドのクチバシ湾曲部の奥(開いた口の中に見える部分)にうっすらと人の顔が見えるカットが幾つかあり、実際にイーグル顔なのではなくイーグルの被り物設定だったのかもしれませんが、独特の不気味さを生んでいます。そして、視界が物凄く悪そう。
 前回に続いて一人コックピットからの、ペンタフォースver.3が放たれ、メンバー殉職回だが当人は特に何をしたわけでもないイーグル怪人は爆死。
 イーグルロボの強烈なパンチからの噛みつきにやや怯むBFロボだが、鉄山流戦場格闘術のモーションによりイーグルロボの首をクキッとひねると、唐竹割りでフィニッシュ。
 「謙作……ゆっくりと眠れよ」
 BF隊は謙作の墓に花輪と黙祷を捧げ、ダイアン帰国から半クール余りで、白石謙作、殉職。
 ナレーション「バトルコサック・白石謙作は、一人の少女の命を守る為に、壮烈な戦死を遂げたが、彼の遺志を継いで、ここに、新しい戦士が現れた。その名は、神誠。無口だが行動力のある、ニューバトルコサックである」
 ……それはつまり、協調性がない。
 なお道中、ウェスタンルックに身を固めて査問委員会から逃走中の誠に曙と京介が銃を乱射され、一切フォローの無いまま何も語らずジープで走り去る場面とかあったりしたのですが、この「銃弾が俺の名刺代わりだ」みたいな男は果たして、隙あらばスイッチをオフにしようとするBF隊に馴染む事は出来るのか?!(ちなみに、前任者の名刺代わりはパチンコ玉でした!)
 次回――さっそくチームの輪を乱す神誠。
 以前に配信があった際にこのエピソードは見ていたので事の成り行きはわかっていたのですが、改めて最初から見て辿り着くと、より劇的……というより、今作のウィークポイントであるBGMの問題が気にかかり、謙作死亡! 謙作に敬礼! 弔い合戦だ! 新コサック登場! 勿論この後バトルもあるよ! と盛り上げの必要なシーンが連続すると、圧倒的戦力不足でやり繰りが大変そうでありました。
 退場劇としては、ヒーロー物というより刑事ドラマの文脈を感じましたが(『太陽にほえろ!』パターンへの意識はあったのかなと)、今作の流れで見ると、中盤以降は多少のスタイルチェンジはあったものの、小学生とか基本的に使い勝手のいい囮扱いだったBFメンバーが、少女の心の傷と真摯に向かい合おうとすれば鋼鉄の戦士の仮面を外す他なく、しかしその時に死が待ち受けるのが、なんとも残酷。
 人には言えぬ怒りを胸に、微笑みも悲しみも仮面の下に押し隠し、戦え、バトルフィーバー!

◆第34話「地獄で笑う闇将軍」◆ (監督:広田茂穂 脚本:上原正三
 OP映像が誠バージョンに差し代わり、西部のガンマン気取りが明らかにアメリカの座を狙っているのですが、その帽子はもしかして、インターポールの秘密捜査官・荒井のものなのでしょうか。
 冒頭から、事故を起こしたトラックの運転手が警官を銃で撃ち殺すと、密造銃を巡る事件が巻き起こり、最序盤の一部にあった刑事ドラマのテイストといえますが、前回からバイオレンスな映像が続きます。
 「兵器密造は、エゴスの大事な資金源」
 もはやすっかり宗教結社の路線は捨て気味のエゴスは、一度は撤退した日本での銃密造を再開しており、謙作退場回にも出てこなかった鉄山が久々に登場すると、BF隊は2年前に国外逃亡を許した闇将軍率いる密造グループを追う事に。
 「……どちらへ」
 「……ちょっと」
 新聞に目を通していた誠は、おもむろに立ち上がると無言で基地を出て行き、ダイアンからマリアへのメンバー交代がスムーズだったのに対して、誠は一ひねりを加えた一匹狼(ロールプレイ)路線。
 闇将軍の密造ルートを潰そうとする伝ら4人が倉庫街でエゴスと銃撃戦になり、現れたセミ怪人を前に一時撤退を余儀なくされる一方、誠は偽の身分を用いて闇将軍との接触に成功。
 「闇の将軍か?」
 「世間ではそう呼んでいる。要件を聞こう」
 「――おまえを殺しに来た」
 誠の弾丸は早撃ちで闇将軍を貫いた……かに見えたが闇将軍は平然としており、一応、闇将軍の正体は何者かをサスペンス要素として展開するのですが、どう考えてもセミ怪人なので謎めかしても盛り上がりようなく、刑事ドラマテイストとヒーロー物的悪の組織のブレンドに、完全に失敗。
 車ごと海に沈められそうになった誠は九死に一生を得るが、やはり芸風が会わなかったのかBF隊からの脱退を宣言し、メンバーの誰一人として知らなかったけれど、鉄山には話を通してあるところに、国防省の深い闇を見ます(笑)
 しつこく話しかけてくる伝を無視し続ける誠には、2年前に密造組織を追うも闇将軍に殺された弟の復讐という強い目的があり、目隠しで移動中に聞こえた踏切の音を頼りにして、再び密造工場への侵入に成功。
 これが復讐のドリルだぁ!!
 と自作の弾丸を闇将軍に撃ち込むが、それさえも通用せず、セミ怪人の正体を現した闇将軍により処刑されようとしたその時、拘束された誠を助けたのは、BF隊。
 「コサック! 力を合わせてこの怪人を倒すんだ!」
 戦闘服がパスされると誠はコサックへとフィーバーし、伝ら4人が誠を見直すようなくだりもなければ、誠が一度は返却した戦闘服を再び身に纏う事への躊躇もなく、肝心要の復讐に関するスタンスの転換点も全く劇的に描かれず(身も蓋もない話としては、「一人ではバラせなかったから」なわけですが)、今作基準で見ても、ものすっごく雑。
 闇将軍改めセミキラー怪人とBF隊が例の坂で銃撃戦を繰り広げるとセミキラーロボットが出現し、自称不死身のセミ怪人は、ペンタフォースであっさり消滅(笑)
 誠が苦心していた、闇将軍を如何にして倒すのか、も必殺兵器で無造作に処理されましたが、銀色のボディで、右手に剣を握り、左手は飛び道具付き鉄の爪なセミキラー怪人のデザインは格好良かったです。
 コサックが変わっている事もあってか、今回は5人ペンタフォースから5人でBFロボに乗り込み、久方ぶりのクロス・フィーバー!
 セミキラーロボットが電光剣で一刀両断され、復讐を果たした誠は、助けてくれた4人にも何も言わずにすたすたと歩き出すと弟の墓前に手を合わせ、それを見つめる4人が、なんか、いい話に解釈した……!
 というか、
 「一度辞めていったのも、個人の復讐に、我々を巻き込みたくなかったんじゃないかって、鉄山将軍が」
 言っていたならば、我々はそれを復唱するのみであります! サー! イエス・サー!
 新メンバーの雰囲気作りもあってか、誠が闇将軍に渡りを付けようとする流れなどは完全に刑事ドラマの見せ方を組み込みつつ、二代目コサックと既存メンバーの一悶着が描かれましたが、刑事ドラマ要素の処理も、フィバー再びの見せ方もあまりにも雑で、残念な出来の一本でした。
 結局今回、「……ちょっと」以外の会話を同僚と交わさなかった誠ですが、国防相時代の付き合いがある謙作とは、割と気さくに、このミッションが完了したらトローリングに行こうぜ、とか笑顔をかわしていたので、単に、人見知りなのでは。
 次回――ちょっと雰囲気を戻して、曙&京介のもはやすっかりコメディコンビでお届け?