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ゲドン獣人クッキング

 (※次作『ストロンガー』における立花藤兵衛の扱いについて、ほんのり触れますので、ご留意下さい)

仮面ライダーアマゾン』感想・第3話

◆第3話「強くてハダカで速い奴!」◆ (監督:山田稔 脚本:大門勲)
 「アマゾンに死を! ギギの腕輪を奪え!」
 てれれってててて♪ てれれってててて♪ てれれってててて てってて♪
 愛は食卓にある、ゲドン3分クッキングの時間です。
 本日準備するものは、素体となる人間!
 それから、活きの良いカマキリを5匹ほど!
 これにゲドン秘伝のスパイスを適量加え、耐熱皿の上に乗せ十面鬼の口の中に放り込んだらじっくりことこと弱火で15分!(この間、呪文の詠唱を忘れずに!)
 今日はこちらに、既に出来上がり寸前まで火を加えた十面鬼さんを用意しましたが、完成の際に大量の泡が出るので、気になる方は後でしっかり水洗いをして下さい。
 最後にパセリと忠誠回路を添えれば、カマキリ獣人の完成です!
 「奴は必ずやってくる」「おまえが人間を襲えば」「我々の目的を知る為に(※声がヨロイ元帥)」「アマゾンは必ず現れる」「カマキリ獣人よ、アマゾンを倒せ」
 十面鬼オーブンの巨大な開口部から白い泡が吐き出され、その中からカマキリ獣人が誕生すると、今回からオール赤塗りとなった十面鬼の顔が次々と言葉を重ね、ひとまずゲドンの活動は、アマゾンを誘き出す為の無差別攻撃と設定。
 父親の事をほとんど覚えていないまさひこが、大介に父性を感じている事を知ったりつ子は、まさひこが大介に会いに行く事を許し、野山を駆け、川で魚をつかみ取りし、日本の自然環境にも既に順応したアマゾンは、バイクのオフロードレースを目の当たりにする。
 けたたましい轟音をあげる金属の物体に恐怖を感じる大介だが、奇しくもカマキリ怪人がレース会場を襲撃。レースに参加していた藤兵衛が窮地に陥ると、助けを求める悲鳴が、先輩たち……じゃなかった、大介に届く!
 今回も激しい噛みつきバトルを挟み、ゲドン戦闘員(仮面+ジュディ・オング風ヒラヒラで「従者」と呼称)に藤兵衛が捕らえられると、アーマーゾーン!
 「変身だ」
 現在日本でただ一人の、仮面ライダー資格認定士である藤兵衛はそれを「変身」と受け止めるが、直後に二人は揃って滝壺に落下。
 「君は一体何者なんだ。……いや、それより、どうして変身できるんだ?」
 「ぁ……アマゾン」
 「アマゾン?」
 そこにまさひこが合流すると、藤兵衛とコウサカ教授は友人関係で、“あの男”についても聞き及んでいた事が明らかになり、なにぶん大介とは言語によるコミュニケーションが難しい為、藤兵衛の方が一定の情報を既に得ていた事に。
 「アマゾンライダー……仮面ライダー!」
 組長がその存在を公認すると、大介のベルトが大写しとなってアピールされ、手早く話を進めた代償として、ほんの2週間ほど(?)前に友人が不可解な死を遂げた割には、藤兵衛がその事をあまり気にしていないように見える事故が発生しましたが……つまるところコウサカ教授は少年ライダー隊の協力者の一人であり、少年ライダー隊は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり――貴様らも永遠である!
 という事なのでしょう。
 そう、つまり、まさひこくん、君はもう既に少年ライダー隊にカウントされている!
 一同は、大介が根城にしている廃屋に移動すると、アマゾン印の薬で藤兵衛を治療。家から持ってきた父の上着を大介に着せようとするまさひこだが、ギギの腕輪の突起部分が引っかかって袖を通す事さえ出来ず……バ、バゴーーーーーーー!!
 悪のインカ科学、滅ぼすべし。
 今、視聴者の心が一つになった!
 ……とはいえ、袖のある衣服を身に纏う事を許されないアマゾンを安易に「野生/未開」と受け止めるのは、西欧視点のいわゆる文化進化主義に陥る危険性を孕んでもおり(その被征服側である古代インカに超科学が存在していたのがアンチテーゼともいえますが……これも、逆の意味で「未開」文脈を孕んではいますし)、広い視点では慎重に扱うべき要素ではありますが、少なくとも1970年代日本社会に受け入れられる為の簡便なコードの一つである「衣服」に拒絶されるのは、アマゾンの孤独――現代日本社会に対する異物――感の表現として、痛切。
 山野に響き渡る悲鳴に駆け出す大介だが、そこではカマキリ獣人の犠牲者がまた一人。
 犯人と誤解された大介は、被害者の仲間達から武器を持って追われ……殺人犯かもしれない半裸の不審者に対して全く怖じ気づくことなく積極的に襲いかかるこの人たち、休日に渓流釣りに来たヤクザとかでしょうか。
 アウトサイダーがいわれなき迫害を受けるちょっと悲しい場面の筈なのに、アグレッシブすぎる70年代一般(?)市民の暴力行為によって、ちょっと面白いシーンになってしまいました(笑)
 場を逃げ出した大介の心情は全てナレーションさんによって説明され、悲しみを破壊衝動に変えて住み処にしていた小屋を破壊すると、そこに顔を出す藤兵衛とまさひこ。
 「……アマゾン、辛いだろうが耐えていこうじゃないか。君はライダーだ。頑張ろう」
 何故か既に事情を把握している上、男達の乱暴狼藉は川にぽいっと捨てて、異形の存在としての仮面ライダーは世間の理解を得られないものなのだ、と物凄い論理の飛躍が発生し、これ幸いと強引に「仮面ライダー」の心構えを叩き込もうとする藤兵衛が、だいぶ鬼畜。
 「……馬鹿野郎」
 恐らくは生まれて初めて、他の“人間”から浴びせられた悪意の罵声を繰り返し呟く大介の姿に、
 「そうだアマゾン! その気持ちだ! ……よーし、俺にもファイトが湧いてきたぞ」
 それを負けん気と曲解した立花藤兵衛の魂に再び火が点った!
 本郷猛、一文字隼人、風見志郎に続き、神敬介にも逃げられた藤兵衛は、助けてもらったお礼と称して大介にオートバイをプレゼントし、日本で一番、悪の組織と戦い慣れた男にかかれば国の法律なんて些細な事に過ぎなかった。
 だがバイクの姿や排気音に激しく嫌悪感を示す大介は、バイクを海へと投擲。
 「こりゃ今までのライダーとは相当違うわい。このへそ曲がりめ……! こうなったら、意地でも、乗せてみせるからな」
 ……これまでも、船乗りを夢にしていた敬介をレーサーにジョブチェンジさせようとするなど、こと「レース」が絡むと身勝手さの増す傾向はあった藤兵衛ですが、バイクをプレゼントしたら大介は喜んで乗り回す筈だと頭から決めてかかると、嫌がる大介の反応を完全無視し、予備のバイクを持ち出して一方的な運転講習を始め……どうやら、次作『ストロンガー』で顕在化する、戦いに次ぐ戦いの日々がもたらした精神と脳の一部への深刻なダメージは、この頃から症状が出始めていた模様。
 「どうだアマゾン?! 乗りたいと思わんか! 悔しかったら追いついてみろ!」
 藤兵衛は大介への嫌がらせを繰り返して挑発し、砂浜を走るバイクを全力疾走で追いかける半裸の男、という曰く言い難い画が生まれると、大介は渾身のダッシュからバイクに必殺の噛みつき攻撃!
 大アマゾン仕込みの白い歯はオートバイの車体を易々と切り裂き、エンジンとガソリンタンクを破壊! ……ああ! 壊れたタンクからこぼれ出したガソリンに引火した!! ちゅどーーーん!!
 ……の大介&藤兵衛バイク心中エンドには幸いならず、大介を煽るだけ煽り、千切り捨てる事でオートバイの力を見せつけた藤兵衛だが、調子に乗って波打ち際に突っ込んで派手に転倒し、やはりこの時期、回路の焼き切れがかなり進み出していた模様です。
 そこにまさひこが現れて、焚き火で服を乾かす藤兵衛が大介に負けじと半裸を披露すると、結果的にそれが裸の付き合いを生んで大介に笑顔をもたらす事になり、ちょっと打ち解けたところで、まさひこを襲うゲドンの従者。
 トモダチを助ける為、大介はあれほど嫌がっていたバイクに咄嗟にまたがり、
 ナレーション「アマゾンは乗った」
 は劇的な流れ。
 ナレーション「まさひこの危険を知った野生児アマゾンは、恐ろしいもの、いや、敵としか受け取れなかったオートバイに、我知らず乗っていた」
 その後、全部ナレーションで説明するのは良し悪しですが、第1話の導入を考えても、ヒーロー物の先祖の一つとしての講談スタイルへの意識はあるのかと思われます。
 バイクを駆った大介は、ゲドン従者の前に回り込むと、その場にバイクを倒す形ではじめての停車にも成功し、女性戦闘員にも、容赦ない噛みつき攻撃!
 まさひこの手を引いて逃げるアマゾンの前にカマキリ獣人が姿を見せ、野獣の牙を剥き出しにする大介は、アマゾン変身。今回もヒーローと怪人が互いに奇声をあげながら肉食み骨打つ動物的なバトルが展開し、なんか適当に何度か殴っていたら、カマキリ獣人が泡を吐いて溶けて死んだ(え)
 3話連続お仕置きフィニッシュはどうかと思ったのかもですが、あまりにも呆気なく盛り上がりに欠ける決着となり、早急に必殺技の修得が求められます(笑)
 カマキリ獣人に勝利したアマゾンは、藤兵衛とまさひこに出迎えられて、孤独な戦いから人との繋がりの一歩を踏み出すも、多分、殺人事件の指名手配犯として、そろそろ街にモンタージュが出回ってるかもしれない……!
 負けるなアマゾン! 戦え、仮面ライダーアマゾン!!