東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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アーーーマーーーゾーーーン!!

仮面ライダーアマゾン』感想・第1-2話

◆第1話「人か野獣か?! 密林から来た凄い奴!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:大門勲)
 ナレーション「この、文明の今日でも、まだ人の足を踏み入れたことがないという、大アマゾンの奥地――」
 タイトルの後、主題歌ではなく本編が始まり、広大なアマゾン川流域の映像から転じて、その上空に浮かぶ巨大な真っ赤な顔面が強烈な画。
 ナレーション「そこに起こった、恐怖十面鬼の叛乱。狙うは、長老バゴーの護る、強大なインカ科学の鍵、ギギの腕輪。十面鬼に追われた、長老バゴーは、これを伝える、一族も無い今、野生の日本人青年にその腕輪を移植し、改造人間に仕立てて、これを護ろうとしていた」
 講談調のナレーションに乗せて、開幕から、とんでもない人が出てきた(笑)
 意識の無い青年の腕をがっつりと切り開いて、ギギの腕輪とやらを接合しているのですが、同意は?! 手術に同意は得ているの?!
 ナレーション「その、手術の成功を見届けたバゴーは、不思議な暗示を残して、息を引き取った」
 「日本にゆけー……コウサカに会うんだ……」
 そして一方的に死ぬ、愛と信頼の東映暗黒駄メンター……!
 ナレーション「ヤマモト・ダイスケ、日本人、23歳。生まれて間もなく、両親とアマゾンで遭難。野獣の中で育ち、言葉も知らない。インカの守護人・バゴーによって改造され、その秘宝の鍵、ギギの腕輪を託された。なんの為に襲われるのか、なにも知らぬ彼は、バゴーの催眠暗示に従って、ただ走った」
 酷い、なにもかも酷すぎる……。
 下敷きはストレートに『ターザン』と『ジャングル・ブック』でしょうが、左腕に金属質の腕輪、腰にベルトを身につけた半裸の青年が咆哮と共に森の中を駆け、開幕約4分、主人公の自由意志はほぼゼロ。
 「その腕輪を奪って、我がゲドンは」
 「この十面鬼の力で」
 「世界を、支配するのだぁ」
 その頭上に迫る名は体を表す十面鬼、巨大なダルマのような顔面を胴体部分とし、全身真っ赤な小鬼のごとき怪人の上半身がそこから突き出すと、胴体部分にはグルリと円周上に人の顔が並んでいるのが、物凄い気持ちの悪さ。
 ……メタ的には、胴体の中に収まっている人たちが大変そう。
 少々ダイナミックプロ感のあるデザインは今ならCGで処理されそうですが、普通に人間の顔が並んでいる(多少、個別の化粧あり)、のが独特の気持ち悪さを醸し出しており、新たな物語の開幕を告げるニューエネミー登場、としてのインパクトは絶大。
 十面鬼の胴体部分から吐き出された真紅の液体により、密林に炎が広がっていく映像に合わせてイントロが流れ出し、アバンタイトル形式を用いた初回OPの入りは凄まじく格好良く、巨大な蜘蛛獣人の気配が迫る中、炎に巻かれた青年は暗示の赴くままに海へと飛び込み、舞台は日本へ――。
 東京では既にゲドンの暗躍が始まっており、かつてアマゾンの地でバゴーと出会い、ゲドンの存在について知った男・コウサカは、日本を守る為に現れるバゴーからの使者を待ちわびており……なんかもう既に、当人の預かり知らぬところで一方的に示し合わされていた。
 大人って、大人って……!
 一方、密航から密入国に成功した青年・山本大介(初回クレジット表記は実質名無しの「アマゾン」なのですが、変身後との表記分けがややこしくなるので、以下「大介」で)に蜘蛛獣人が襲いかかり、主人公最初の攻撃は、噛みつき。
 その光景を目撃し、青年の腕輪に目を留めたコウサカは謎のハンドサインを送り……言葉もわからない大介とどうコミュニケーションを取るのかと思ったら、インカサインによって意思疎通を図るのは、それ自体がバゴーとの繋がりも確かに示して、成る程。
 「味方だ。これは味方の印だ」
 だが一同が逃げ込んだ倉庫には蜘蛛の巣が張り巡らされており、コウサカ助手は蜘蛛糸による犠牲者となって、そんな役回りだとは思いましたよ!
 コウサカ自身も怪我を負うと、病院から姪?・りつ子と甥?・まさひこ(「おじさん」と呼ばれているが、実際の血縁関係があるのかは不明)に連絡を取り、大介と出会った事を語る。
 「間違いない。アマゾンから来たあの男に会えたんだよ。アマゾンで死んだ山本教授に似ていた。きっと山本くんの息子だよ」
 コウサカは大介の両親とも面識があると点と点が繋げられていき、病室の窓から目にした半裸の男を追いかけていったまさひこ少年は大介とインカサインで通じ合い、右も左もわからぬ土地で法にも社会にも縛られない野獣のように振る舞うが、弱い存在を守ろうとする心を持つと示される大介。
 「そう、まさひことアマゾンは友達」
 「アマゾン、まさひこ」
 だがそこに蜘蛛獣人が忍び寄り、血まみれになりながら白い歯を剥く大介は、怪人の体を噛み千切る凄まじい攻撃から、ベルトのバックルに収納されたロープを伸ばしてターザンキックを放ち、シミュラクラ現象も手伝って長らく顔みたいだな……と思っていたアマゾンのベルト、そんなギミックが仕込まれていたとは。
 倉庫内での激闘は続き、蜘蛛獣人の攻撃に闘志を昂ぶらせたその時、
 「アーーマーーゾーーン!!」
 の叫びと共に、大介の姿は異形に転じ、
 「ライダー! 仮面ライダーみたいだ」
 先輩たちからはちょっと抗議が来そうですが、少年の目にはそう見えました!
 背びれをぴくぴく動かすアマゾンライダーは、前傾姿勢のアクションから蜘蛛獣人の腕を食いちぎるが、蜘蛛獣人は糸を伸ばして逃走。
 まさひこは大介を教授で探検家のおじさんの元に案内すると手を引き、大介も「コウサカ」の名を知る事になるが、蜘蛛獣人の襲撃により、コウサカ教授は死亡。
 慟哭する大介は、りつ子とまさひこが蜘蛛獣人の犠牲になりかけているのを目撃すると、再び、アーーマーーゾーーン!!
 取っ組み合いから連続で腕をもいでいく残虐ファイトを見せると、獣人の体液がドクドクと流れ出すスプラッター路線で、たまらず十面鬼の元(……どこ?)まで逃走する蜘蛛獣人だが、奇声以外の言葉を発したのも束の間、十面鬼ファイヤーで焼き尽くされ、第1話の敵を主人公が倒しきれずにボスキャラが焼却する変化球。
 未だ追われる理由も戦う目的もわからないまま、夕陽に吠えるアマゾンの姿でつづき、EDはシルエット路線。
 ヒーローアクションのカタルシス的に、怪人は倒しても良かったのでは、とは思いましたが(自身の能力を使いこなせていないとか、確固たる戦う意思を持っているわけではない、といった意図もありそうですが)、とにかく、インパクトの物凄い第1話。
 前作は、東映ヒーロー屈指の極道親父・神啓太郎が第1話を通して大暴れしましたが、今作は冒頭5分の破壊力が物凄く、野生の日本人青年を改造人間に仕立てて暗示をかけて日本へ送り込む長老バゴーの振る舞いに戦慄を禁じ得ません(しかも十面鬼は元々、身内みたいですし……)。
 正直、見る前はちょっと色物のイメージがあったのですが、V3やXが、視聴者の慣れやシリーズの積み重ねにより、当人たちの自意識ほどには異形性を感じられなくなっていたのに対し(だからどうしても台詞の上だけになちがちだし、その点に触れようとすると台詞もくどくなりがち)、変身者そのものを文明社会から切り離され名前さえ必要としなかった野獣のような男とすると、噛みつきアクションや敢えて美しく立たせないなど変身後の姿もシリーズ従来作とは大きく変えた描写を行う事により「異形の怪物」性を取り戻そうとした上で、
 「自分は何者なのか」
 「守るべき存在とはなにか」
 をアマゾンの立ち位置を通して問いかけ、今一度《仮面ライダー》を客観視しよう、という意識も見える、かなり意欲的な作りのスタートでありました。
 脚本の「大門勲」は、長石多可男・平山公夫・平山亨、の共同名義との事で、うろ覚えですが昔なにかの雑誌で読んだ長石監督のインタビュー記事(『宇宙船』か『東映ヒーローMAX』か……)によると、平山Pは脚本上で事細かく「アマゾンは右を向いた」とか「斜め左前方に飛んだ」とか書かせようとするので、(それは監督の領分なのに……)と難儀したとか。

◆第2話「十面鬼!神か?悪魔か?」◆ (監督:塚田正煕 脚本:大門勲)
 主人公の顔面大写しから、タイトルコールに合わせて目玉が動いて始まるOPは、第1話の映像+アマゾンライダーで構成され、
 ナレーション「アマゾンの体は、巨大トカゲの化身に変身した」
 ……半魚人ではなかった。
 ナレーション「なぜ狙われるのか。なぜこのような体に変わるのか」
 全部、バゴーのせいですね!
 ナレーション「この腕輪は、いったいなんなのか。アマゾンは何も知らない」
 ……何が酷いって、大介と生前のバゴーに面識あったのか全くわからない上に(あったら、言語を教える努力ぐらいはされていそうなわけですが)、大介が瀕死の重傷を負うくだりとかも存在しないので、話の筋を見る限りでは丁度いい素体扱いなのが酷い。
 暗示によってわけもわからず日本の市街地へと放り込まれ、右も左も把握できないまま闇夜を走る大介、その洒落にならない不審者具合そのものが、アウトサイダーの持つ英雄性の体現になっているわけですが、夜道で出会った女性に怪我の手当を受けた大介は、ゲドンの刺客・吸血コウモリの襲撃を受ける。
 ゲドンとは、全世界の征服を目指す悪の組織であり、その為に、古代インカ科学が密かに開発していた超エネルギーを求めていると判明。そのエネルギーが眠る秘密の扉を開く二つの鍵こそ、ガガの腕輪とギギの腕輪であり、その一つが大介の腕に、もう一つが十面鬼の腕に埋め込まれている事で、対にして同質の関係性を示唆。
 「この二つの腕輪が揃った時、はじめてその秘密の扉が開かれるのだ。それを開くのは、この十面鬼! アマゾンを殺せ!! ギギの腕輪を、奪うのだ! そして、世界は、ゲドンが支配するのだ!」
 凄く、上の人の腹の部分から銃弾が飛び出しそうな十面鬼、ガガの腕輪が右手に埋め込まれているという事は、この人も改造実験の被害者なのでしょうか……
 ナレーション「十面鬼とは、巨大な岩石に組み込まれた、改造人間。そして、悪の組織・ゲドンの首領である」
 と思ったら、第1話に続いてナレーションさんがどんどん説明していくスタイルで、よりによって、岩石と合成されていた。
 類例の多い怪人という事でか、背中に広げた巨大な両翼が個性として迫力のある吸血コウモリを退けるアマゾンであったが、怪我の手当をしてくれた女性が戦いのさなかに吸血コウモリの攻撃を受け、酷い毒に冒されてしまう。
 女性はりつ子の友人であり、まさひこ姉弟と再会する大介であったが、大介を招き入れようとするまさひこに対して、友人が苦しんでいる責任は大介にあると、りつ子は激しい拒絶の姿勢を見せ、大介に対する姉弟の意識差を盛り込んでくるのが手堅い作りですが、蜘蛛 → コウモリの怪人モチーフを考えると、初代『仮面ライダー』の緑川博士問題を取り込んだセルフオマージュでもありましょうか(さすがに、コウサカ教授殺害犯とは誤解させませんでしたが)。
 言語による意思疎通は苦手なものの、他者の感情を受け止める事は出来る大介は、野草からアマゾン特製の解毒剤を調合すると、それを密かにまさひこへ。
 「アマゾン、ゲドン、やっつける」
 そして悲しみをもたらすものとの戦いへと駆け出し、吸血コウモリと激突すると、鋭利な翼に肌を切り裂かれながらも、噛みつきによる反撃から、アーーマーーゾーーン!!
 前作に続いて「変身」コールを敢えて外し、感情の昂ぶりや闘志の高まりと共に変身するアマゾンライダー、OPのタイトルコールに用いられている事もあり、この叫びはかなり印象的。
 ひたすら続く噛みつき攻撃で弱った怪人に腕輪カッターを叩き込むと、洞穴へと逃げ込んだコウモリは十面鬼によって処刑され、まだ必殺技が無いと共に、悪の組織の凄惨な仕置きを見せていく路線。
 大介のもたらした薬によって、りつ子友人は快復。その理解者が徐々に増えていく気配を見せるが、大介はまだ孤独に、海に吠えるのであった!
 シリーズ過去作が、改造手術という「擬似的な死」によって本質的に「社会」から切り離されながら(タイムリーなところで、後の『ウィザード』が積極的な本歌取りを行った要素)、その人間社会(公)ないしはそれを構成する人類の自由と平和を守る為に戦う事を自明の理としてきた――すなわち、社会性から切り離されながら社会を守ろうとする不均衡を抱えていたのに対して、そもそも「人間社会の内側に存在していなかった山本大介」が、「守るべき社会(との繋がり)」を見つけていく事になるのではと思わせる導入は、シリーズを続けて見てくると、成る程のコンセプト。
 果たして密林から来た凄い奴は、人の世に何を見出すのか……次回――そこに現れる立花藤兵衛!
 ……良くも悪くも、藤兵衛ならこの状況をなんとかしてくれそうな安心感(笑)