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夢ときどきPONコツ

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第3話

◆バクアゲ3「運転屋が止まらない」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:冨岡淳広
 「あたし頑張ったよ~。ね、シャーシロウ?」
 「イシロウだ。活躍したのは大也と俺。おまえはただ、うろうろしてただけだろ」
 「そんなこと言っちゃって。あたしを仲間って認めてくれたんだよね? シャーシロウ」
 「イシロウだ。まだ認めたわけじゃ――」
 「これからブンブン爆上がってくよー、ね、イシロウ」
 「シャーシロウだ! ……ん?」
 「ん?」 「ん?」
 アバンタイトルの前回振り返りにはメインメンバーも参入し、未来の精神防御力がチタンハイグレード。
 バランスを間違えると、人の話を聞かないハイパーポジティブ型ウルトラマイペース女になってマイナス面も出てしまうのですが、対する射士郎の言い回しがだいぶきつい為、お互いのマイナス要素を綺麗に打ち消し合っている事で、お釣りの部分が愛嬌になっているのが巧妙。
 また、台詞と合わせる前回の映像の使い方も鮮やかでした(そしてこのやり取りが本編の布石になっているという四次元殺法)。
 秘密基地で大也が自らブンブンカーを整備していると、そこに未来が届け屋の仕事を受けたと顔を覗かせ、洋菓子店でバイトをしているのは、黒の警察官と、橙の遊び人風味に通じる、『ゴーオン』オマージュ要素でありましょうか(今回は衣装も黄色い)。
 「……つまり、情に流された、ってことか」
 「どーせあたしは流されやすいですよー」
 バイト先の子供が、祖母へのプレゼントに自作した手鏡を届けてみせると請け負った未来に対し、浪花節に弱かったブンブン総司令は涙を流すが、大也はクールに釘を刺し、そこから第1話で未来が陥っていた状況に繋げてくるのも巧いところ。
 請けた仕事は自分の力で、と車の貸し出しを拒否された未来だが、大也が手を回していた調達屋から自転車とヘルメット一式を受け取るとブンブン自転車でソロミッションへと走り出し、調達屋の振騎・玄蕃(ふれき・げんば)は、秘密基地まで入ってこれる間柄と判明。
 「経験値稼ぎかな~?」
 「まあ、そんなところ。期待の新人だから」
 その頃、三下トリオは第3話にして上司に平伏しており、「俺たちマッドレックス隊の出世がかかってんだァ」と、上納金要素が補強されると、完全にヤクザの下っ端なチンピラの三人は、柱時計から時計グルマーをイグニッション。
 ギャーソリンを集める為に、時計グルマーが街で暴れ出し、台詞回しはコミカル系なのですが、長針剣と短針剣の二刀流で走る車を一瞬で両断するアクションが割と格好いい。
 射士郎からもたらされた情報により大也が基地を飛び出していくと、時計グルマーに立ち向かう赤青はクルマ獣が動いているものしか襲わない事に気がつくが、そこに通りがかった不幸なお巡りさんが標的となってしまい、
 「「動くな!!」」(警察官への制止)
 「動くな!」(犯罪者への警告)
 「動くなー!」(動くものへの怒り)
 の、口に出しては全て一緒だけどみんなそれぞれ微妙に意味が違う、は面白かったです。
 中澤監督が3連投となりましたが、第1-2話とはまたちょっとタッチの違う、言葉遊びと「……」的な間が中心のユーモアが繰り広げられ、皆が静止した空間を道に迷った未来が言ったり来たりを繰り返した末、3回目にして、背後の戦闘に気付いた。
 「……あ」
 「動くなー!」
 「未来!」
 「わかった。……頑張る!」
 突き出した拳を満面の笑みと共にサムズアップに変えた未来はそのまま自転車で走り出し、一緒に戦ってくれるのかと思ったら、「ここは俺達に任せて先に行け」に解釈されて愕然とする赤青(笑)
 「え?」
 「お、おい!」
 「……そう来たか。面白くしてくれるよ、未来!」
 未来が走り去った後、警官をかばいながらの戦いで苦戦を余儀なくされる赤青は時計グルマーを逃がしてしまい、ブンブン総司令がその行方を追跡すると、大也はクルマ獣が未来を追ったに違いないと推測。
 「……あいつが囮になって、あのクルマ獣を引きつけたとでもいうのか」
 「…………俺達、あのお巡りさんをかばいながら戦ってただろ」
 「あの一瞬でそこまで判断できるとは思えない」
 「直感だよ、きっと。だから未来は期待の新人なんだ」
 現場では大也も驚いていたので、その場ですぐに未来の意図を察したわけではないとしつつも、届け屋において大也と射士郎には無いピース、としての未来の存在価値を大也が改めて高く評価するのに対して、
 「俺はまだあいつを信じちゃいないが……」
 半信半疑、というか……「未来の能力」を信じていないのではなくて、「人間全般」に対する信用がマイナスから始まっているように聞こえる、射士郎の闇がなかなか深そうでワクワクします(笑)
 「おまえの見る目は信用してるよ」
 「……わかってる」
 二人は車に乗り込んで未来もとい時計グルマーの後を追い、爆走を続ける未来、それを追う時計グルマー、ランニングネタから自転車ナパーム体験、そして、飛・ん・だ。
 地面に転がりながらも積み荷を守ろうとした未来が一刀両断寸前、飛んできた車が火を噴いてクルマ獣を吹き飛ばすと、大也と射士郎が到着。
 「あぁ~~! ありがとう、助かったーー」
 「こっちこそ。囮役、ご苦労さん」
 「……は? なに囮って」
 「……ん?」 「……ん?」
 じっと眼を見る、届け屋と情報屋。
 「「…………んん?」」
 「えっとぉ……クルマ獣は二人に任せて、届け屋の仕事に集中しろって事じゃなかったの? 大也、自分で受けた仕事なんだから、自分で届けろって言ってたじゃん」
 大也の推測は大外れで、未来は本当に「ここは俺達に任せて先に行け」だと受け止めて、(そうだよね、それ男子の憧れだもんね!)古代ローマでやりきった者に捧げるサムズアップを向けていた事が明らかになりつつ、優先順位の選択にはそもそも、冒頭の大也の言葉に原因があった、としてくるのが巧い目配り。
 「……囮じゃ、なかったらしいぞ?」
 しばし、口を半開きにして固まっていた大也は、大外れから回復すると大笑い。
 「こいっつは最高の爆上げだ。この真っ正直さも、軽さも全部、未来のいいところ」
 自分の読みを盛大に外したことは車のダッシュボードに突っ込むと、自分が選んだ未来を肯定する事により自分自身を肯定したぞ(笑)
 「俺達の予想の、斜め上だ」
 「……大也が惚れ込むわけだ」
 満足げな大也に射士郎は額を抑えて苦笑をこぼし、有能だが決して完璧なわけではなく、時には見当外れの推測を自信満々に語る姿でレッド全肯定の作劇を早くも回避しつつ、
 「ねえ? なんの話よ?」
 「君を仲間にして良かったって話!」
 そんな予想を超えてくる相手だからこそ未来は素晴らしい! と持ってくるのは気持ちよいまとめ方でした。
 時計グルマーが立ち上がると、3人は改めて横に並び、
 「ブン!」
 「ブンブン!」
 「ブンブンブーン!」
 と、アップで一人一押しする度にブンが増えていくワン・ツー・スリー、が格好良く、後それぞれチェンジャーの構え方が違うのは、《仮面ライダー》風味の輸入を感じたところ。
 「爆上戦隊!」
 「「「ブンブンジャー!!!」」」
 「名乗るなー!!」
 怪人を「○○なー!」の台詞パターンでここまで面白くしてきたのも秀逸でした(怪人はシリーズ的に割と撮影現場や声優さんのアドリブが多めのようですが、シンプルな面白さとアクションの格好良さを両立させて、良い怪人でした)。
 赤と青の以心伝心コンビネーションに、ピンクが野生の本能で割って入りつつ適度に赤にコントロールされ、赤青のダブル車輪キックからピンクが空中一刀両断。弱った怪人を一斉攻撃でフィニッシュすると、爆散したクルマ獣の気配を感じて飛んできたヤルカーがギャーソリンを食い散らかしてハイウェイ空間へと突入。
 段々と手慣れた感じでヤルカーがハイウェイから弾き出されると巨大時計グルマーが誕生し、爆上げ合体ブンブン作りタイヤ!
 「二刀流には二刀流だ」
 派手な爆発から、ネジが古くてドライバーで回せない小ネタを挟み、ブンブンクラシックが召喚されるとそのまま剣となり、二刀流ブンブンロボのアクションシーンで一部、空の色が違うのはオープンセットの撮影を混ぜたのでしょうか。
 巨大戦をどう見せるのかについては、〔割と古風な着ぐるみロボバトル×ハイウェイ空間のCG戦×日常シーンでの等身大サポート活動〕と、伝統的なスタイルと近年の蓄積のハイブリッドを狙っているようですが、今後の更なる強化展開も含めて巧く転がっていってほしい部分。
 「今はもう動かない、その時計ーィィ!」
 「ほっとけい」
 時計グルマーは9時15分に両断され、定番の末期の台詞に対して、人格を持ったロボである事を活かして駄洒落で切り返す路線……?(こちらもアドリブの可能性はありそうですが)
 未来の配達完了を先輩たちが見届けて、届け屋がお仕事コンプリートする一方、3連続でクルマ獣事件に巻き込まれた不幸体質な警察官を交番で待ち受けていたのは、見知らぬ眼鏡の女性。
 「阿久瀬錠巡査、あなたに……聞きたい事があります」
 自転車両断はまだともかく、果たして拳銃両断は始末書だけで済むのか?!
 顎をくいっとされたお巡りさんに迫り来る島流しの予感から、次回――逮捕。
 赤青桃&ブンブンが、一つのチームとして走り出す経緯を3話かけて丁寧に描いてきた『ブンブンジャー』、サブタイトルからすると次回、その新たなスタートラインとして、ブンブンジャーとは如何なるものなのか? をまず一つ見せてきてくれそうで、楽しみです。
 ……そういえば前回書き忘れたのですが、OP、レッドと車がセットで描かれると、80年代戦隊OPを思い出すなと(笑)
 後、EDがなんとなく『ターボレンジャー』のEDを思い出すのですが、ここまでの見せ方から考えると、内輪ウケにならない程度のくすぐり的なオマージュはかなり仕込んでいそうな感じでありましょうか。
 それから、射士郎がクール仏頂面にこだわらずに、序盤段階から苦笑や微笑レベルですが笑うところでは笑ったり、呆然とする時は呆然としているのは良い見せ方だなと思うところ。
 予告の雰囲気からは次回までが始動編という感じになりそうなので、この勢いでまずはスタートダッシュをブン回してくれる事に大きく期待。