東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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神を貫くVとV

仮面ライダーX』感想・最終話

◆第35話「さらばXライダー」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝
 最終回にしてまさかの、サソリジェロニモ・ジュニアがクレジットされ、「火忍・チャンカンフーの息子」と同じ様式が、既にこの時代にあったとは(笑)
 !マークの一つもつかない微妙に切なげなサブタイトルから、キングダークを探し回る、神敬介と立花ライダー隊。
 「それにしても、一文字や風見はどこいっちまったのかな」
 「いや、彼等は彼等で、違う活動をしてるんでしょう。人のことをあてにしちゃ駄目ですよ」
 さすがに最終回まで客演の先輩に持って行かれるわけにはいかないという事でか、二人の先輩は、キングダークが動き出したのを目の当たりしてから何も言わずに姿を消した扱いを受け、まあ、人類への脅威度としては、〔RS装置 > キングダーク〕の評価であっている気はします!
 「そうよ。あたし達がここに居るじゃない」
 「そうよそうよ」
 マコとチコが存在を主張し、敬介と分かれた藤兵衛一行だが、道に飛び出してきた老人に助けを求められると、あからさまに胡散臭い廃屋に誘い込まれ、そこに現れるサソリジェロニモ・ジュニア……の胸に輝くJR(笑)
 1987年の国鉄民営化以前ではありますが、現在から見ると違う意味が乗ってしまって、変な面白さに。
 藤兵衛ら3人はさくっと人質にされ、設計図との交換を要求された敬介は多摩丘陵へと向かい、最終回にして逆さ吊りにされる藤兵衛とマコ。……チコが逆さづりを免れたのは、ロングヘアーだからでしょうか。
 「俺は、ゴッドとは違う。約束は守った」
 頭に羽根飾りをつけたジェロニモバイク部隊に囲まれる敬介は、設計図の断片を渡すと3人を救出しようとするが、父親の復讐に燃えるサソリジュニアの攻撃を受け、バイク軍団によって車裂きにされそうになるもこらえると大変身。
 多摩丘陵を舞台にバイクアクションが展開し、クルーザー大回転!
 そして、クルーザーを持ち上げ……く、クルーザー?! と思ったら、倒れた敵のバイクでホッとしました(笑)
 最終回のテンションで、クルーザー投げで殉職せずに本当に良かった。
 バイクを投げつけたXは、工作員の槍を奪っての立ち回りを挟んで、再びクルーザーにまたがると、サソリジュニアと激突。
 「ジェロニモジュニアの腕も凄い。まるで馬に乗るようにマシンを扱ってる」
 それを見つめる藤兵衛の、胸のエンジンに火が付いた!
 (俺の夢は、この手でグランプリレーサーを育てる事だ。本郷猛、一文字隼人、風見志郎、神敬介、そして、サソリジェロニモジュニア……俺はとうとう、最高の逸材を見つけたのかもしれない)
 胸のときめきが止まらない藤兵衛、
 「そうか。奴にはインディアンの血が流れていたのか」
 と、やや場違いな感じもある怪人へのフィーチャーを挟んでから、こっちのバイクは飛べるんだぜーーーと卑劣な空中攻撃を仕掛けようとするXだが、逆に投げ槍で撃墜されると、バイクと共に大爆発?!
 再び囚われの身となる藤兵衛らだが、ゴッドのアジト目前まで運ばれたところで、敬介復活。
 「オヤジさん、心配かけてすまない。死んだとみせかけて、後をつけるより他に、キングダークのアジトを探す方法がなかった」
 ……まあそんな事だろうとは思いましたが、藤兵衛らがその場で惨殺される可能性も充分にあったので、主人公自ら
 「少年ライダー隊は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり――貴様らも永遠である!」
 を実践していて、マーキュリー回路の影響が怖い(笑)
 敬介はサソリジュニアを追ってトンネルの奥へと走ると、巨大な鉄扉の向こうへ突入するが閉じ込められてしまい、既にアジトから起動していたキングダークが地上に出現。
 「死ねェ、神・敬介ェ……」
 足踏みによって引き起こされる落盤によって生き埋めの危機に陥る敬介だが、大変身すると大脱出。宙返りで地上に復活すると顔をぺかーっと輝かせ……それでも、ライドルは抜かない。
 「俺が貴様を倒す!」
 「そのちっぽけな体で、このキングダーク様と、戦えるとでも思っているのか。破壊光線!」
 ビーム攻撃にフィンガーランチャーと、如何にも巨大ロボット感溢れる攻撃を受けたXは、クルーザージャンプで体当たりを仕掛けるがぺちっとはたき落とされ、仮面ライダーにとっては一種のパワードアーマーといえるバイクさえ打ち払われる事により、シリーズとしては挑戦となったスケールの全く違う巨大な敵との戦いにそれらしさが出たのは、上手かったところ。
 「駄目か……キングダークの急所はどこなんだ」
 「はっはっははは、キングダークは無敵なのだ。不死身の巨人なのだ」
 藤兵衛らもプチッと潰される危機に陥る中、頭部に張り付いての目つぶしパンチも通用せず、口から吐き出すブレスに翻弄されるXライダー……ところでサソリジェロニモジュニアはどこへ行ったのか?! 今、アジトの工房でRS装置を超高速で製造中なの?!
 物語後半を引っ張ってきた要素がなんだか忘れ去られそうになっている気がする中、捨て身のクルーザージャンプによりXライダーはキングダークの体内への突入に成功し……普通に、中で暮らしていたぞ戦闘員(笑)
 ……まあ、普通に考えれば巨大ロボットなのですが、どう転がってもいいようにも含めてキングダーク、これまで人格のある大幹部個人のように振る舞い描かれていたので、内部でキングダーク番をやっていた工作員たちの気持ちと存在にちょっと困惑もしつつ、このセンスはやはり、「あの島は、私自身だ」に通じる気がしてなりません。
 Xを呑み込んだキングダークが市街地へと歩き出す中、内部の隔壁やトラップを突破しながら突き進んでいくXライダー……啓太郎ブレインとの対面まであと30秒!
 (コントロール室はどこなんだ!)
 次々と襲ってくる工作員を蹴散らしたXは、いよいよキングダークの中枢部へと突入し、そこで待ち受けていたのは――肥大した脳のような頭部が強調されたマスクで、全身真っ白、ただし目の周りと口元だけが赤い不気味な怪人物で、いやこれ本当に、啓太郎ブレインなのでは?!
 「おまえは?!」
 「Xライダー、わしの名はノロイ博士で、そしておまえの父親」
 ?!
 「の親友」
 「親父の親友?! 聞いた事がある。悪魔の天才ノロイ博士の名は」
 ……なにぶん、話をまとめる為に最終回で無から出現した人物なので、啓太郎が親友の事を「悪魔の天才」と呼んでいたのか、啓太郎と関係なく敬介が噂話を聞いていたのか、ギル→光明寺のようにノロイ博士からの一方的な親友扱いだったのかは判然としませんが、個人的に一番しっくり来る解釈は、神啓太郎の裏アカウントです!
 これは、「友達が言ってたんだけどさ……」みたいな論法なのでは。
 ……真相はさておき、ここで長らく劇中から消え去っていた神啓太郎の存在に触れてくれたのは良かったところですが、啓太郎がノロイ博士(都合良く、素顔不明)そのものかどうかはともかく、ゴッドの創設に関与していた疑惑は深くなり、歴史に名を残す人物の遺伝情報から培養した生命体にカイゾーグ手術を行い、更に人為的な天才化処置を施す事で神の現し身を作り出そうとする、神人類計画X――ぐらいは進めていたとしても違和感が全くありません。
 「そして儂が、ゴッドであり、キングダークは儂の体の、一部分なのだ。はははははは!」
 ノロイ博士は自分こそゴッド総司令であると明かし、どうやら米ソ……じゃなかった、「世界の対立する大国同士」から出資を引き出してゴッド機関を運営していたようですが、名前や口調からすると日本人に思えるので、つまり『X』の物語は、日本生まれのマッドサイエンティスト達が相争う純国産の悪夢であった事が明らかになり、過去2作と繋げてしまおうと思えば繋げられたとは思うのですが、あくまで個別の悪としてややタッチの違う着地。
 「地球はとうとう……儂のものだぁ!!」
 「そうはさせん!」
 キングダークの制御装置とコードで繋がったノロイ博士を止めようとするXだがその時、忘れられそうになっていたサソリジュニアが背後から現れると、その槍がXの体を貫く!
 Xを貫通して血に濡れた槍の穂先と、とにかく気持ち悪いノロイ博士が強烈な画で、深手を負ったXは、槍の柄をチョップでへしおって体の自由を取り戻すと、背中から突き出したままの穂先をサソリジュニアに突き刺す捨て身の体当たりで形勢を逆転。
 そして――
 「ライドル……!」
 抜いたーーーーー!
 「ゴッドの最後だ!!」
 「儂を殺せば、キングダークは爆発する! おまえも死ぬぞ!」
 ノロイ博士の脅しに対するXライダーの返答は……背中に爆発!
 「覚悟の上だ。二人とも死ねーーー!」
 豪速球を放り投げたXは、前に立つサソリジェロニモジュニアごとライドルホイップでノロイ博士の体を刺し貫き、前半からXライダーの刺突アクションはヤクザの鉄砲玉ぽくて気になっていたのですが、物語のフィナーレを飾るフィニッシュ技、まさかのライドルドスアタック。
 「馬鹿な……! …………今一歩のところで……ヌぅぅ……成功したものを…………ぅぅゥ…………貴様も道連れだぁぁぁ!!」
 X・オヤジの仇じゃぁぁぁを受けたノロイ博士が強引にコードを引き抜くと、緊急時のセキュリティが発動したキングダークは内部から弾け飛び、黒髭危機一髪ばりに頭がぽーんと吹き飛ぶと、残る胴体もしばらくよろめいた末に崩れ落ち、大巨人にふさわしい景気の良い大爆発で、最期を遂げるのであった。
 かくして最終的に地球の支配を目論んでいた事になったゴッド機関の野望は費え、災厄を撒き散らしたRS装置の設計図も多分キングダークと共に炎に消えたが、Xライダーもまた帰還せず…………敬介の死を嘆き悲しみながら立花ライダー隊が喫茶店に戻ると、カウンターには藤兵衛宛の封書が一つ。
 「神敬介の香典だ。たとえ敵にでもいい印象を残しておきたいからな」
 ……じゃなかった、それは、藤兵衛、マコ、チコへ向けた敬介からの手紙であり、敬介は先輩ライダー達に倣い、新しい戦いの為の旅に出ると3人に決意を記す。
 笑顔でバイクを走らせる敬介の姿から、主題歌をバックにXライダーの歩みを振り返る名場面集となり、何故か最初が、藤兵衛との特訓シーン(笑)
 そして、まるで藤兵衛が撃ったかのように繋げられる銃殺シーン(笑)
 改造からセットアップ!
 鼻吹き矢とアポロガイスト登場に、Xキックとクルーザー大回転!
 真空・地獄車! からライドルホイップのX字で締める納得感の高いチョイスで、夕陽を浴びながら走り去る敬介の――今見ると《仮面ライダー》のイメージの煮込みのような――姿に、
 「――いつの日か、必ずまた戻ってきます。それまで……それまでさようなら!」
 で、おわり。
 ……この時代の作劇としても、迫る最終決戦感が今ひとつなまま(当初は「新幹部」の触れ込みだったキングダークが途中で修正されないまま中に総司令が居た事にされたり)ドタバタ気味に突入した最終回でしたが、神啓太郎の名前を出す事でなんとなく最初から最後までの物語が繋がり、思ったよりまとまった着地で今回は楽しかったです(「面白かった」というよりは「楽しかった」感)。
 結局、全ては日本発(多分)のマッドサイエンティストが生んだ悪夢であったのは『X』的に納得度が高かったですし、ラスト、
 「ライドル……!」
 「や、やめろぉ!」
 「ゴッドの最後だ!!」
 「儂を殺せば、キングダークは爆発する! おまえも死ぬぞ!」
 「覚悟の上だ。二人とも死ねーーー!」
 のくだりが格好良かったので、大幅加点(笑)
 特に、「ゴッドの最後だ!!」が敬介の一番格好いい時の声音だったのと、風見先輩のチェックが入って以降、ベルトに刺さりっぱなしだったライドルが、最後の最後で決め技となったのが大変嬉しかったです。
 メインライターに抜擢した長坂秀佳の早々の降板に始まり、小刻みなテコ入れで乱気流に揉まれっぱなしといった感のある作品でしたが、その落ち着きの無さが物語のテンション保持に繋がった面もあるのに加え、東映ヒーロー史上でも屈指の極道親父・神啓太郎や、前半戦を引っ張ってくれたアポロガイスト室長の存在感は大変素晴らしかった他、路線修正により序盤の要素が消えていく事で逆に、あの要素が生きていればどうだったか……といった妄想の隙間を数多く持つ“未完成の魅力”も生まれた作品であったなと。
 その上で、最後に出てきたノロイ博士が個人的与太の方向性をあまり阻害しない存在だったのが、とても良かったです(笑)
 終盤の失速が惜しまれますが、ライドルによる殺陣の魅力の引き上げや、強化の流れはともかくインパクト絶大な新必殺技となった真空地獄車などアクションも光り、東映マッドサイエンティスト濃度の高い、70年代の渦巻く狂気が破壊力抜群の一作でした。
 一番好きな台詞は、
 「アーム爆弾で一緒に死ねぇ!」
 一番好きなシーンは、
 実の息子に自らの亡骸を抹殺させ、爆発により発生した水柱に重ねられる、神啓太郎のやりきった笑顔です。
 「泣くな敬介。私はここに居る。このJINステーションが私自身なのだ! 行け、Xライダー! 悪の組織ゴッドを倒せ! ゆけ! Xライダー!!」
 簡易的な構成分析などは、また別項で書きたいと思いますが、以上ひとまず、『仮面ライダーX』感想、お付き合いありがとうございました。