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休めない鬼

仮面ライダー響鬼』感想・第5-6話

◆五之巻「熔ける海」◆ (監督:坂本太郎 脚本:きだつよし/大石真司
 「さっそく再会驚いた、と」
 ヒビキと明日夢は夕刻の川縁を歩き、明日夢の同級生少女・持田ひとみについて、「少年の彼女なの?」と問いかけるヒビキさんから、迸るおじさん感(笑)
 うん、そうだね、おじさんは、そういうの凄く気になるし、確認しておかないと落ち着いて話を先に進められないから……。
 少年からは「ただのクラスメイト」と説明があり、ヒビキさんの「明石くん。今のはちょっと、オヤジくさいです」ばりのデリカシーを青春時代に捨ててきた発言でしたが、ひとまず持田ひとみが物語の中に取り込まれたのは良かったところ。
 香須実から少年のアフターケアを厳命されているヒビキは探り探り会話をかわし、志望校を聞いてみる → 大袈裟にリアクションする → よく考えてみると知らなかった、のコンボも、「ヒビキさん。今のはちょっと、オヤジくさいです」。
 思春期の男子を相手にどう話を運べばいいのか戸惑うヒビキさん(31歳)だが、明日夢の方は、ヒビキから路傍の小石のような扱いを受けていたわけではなった事を知ると胸のつかえが下りてスッキリとし、確かな繋がりを手に、それぞれの日常に戻っていく二人。
 両者の日々が交互に描かれていくと、ヒビキパートでは、関東支部シフト表なるものが画面に映り、
 ・今作における仮面ライダー=「猛士」(※ではなく、「猛士」は支援組織の名称でした)
 ・関東支部がある
 ・所属が少なくとも11人
 ・月一でシフト表が配られる
 ・裁鬼さん、画面上で確認できるだけで最低18連勤
 と、情報量が多い(笑)
 「俺の名は裁鬼! 俺は労働基準法では裁けない!」
 ……この後、魔化魍対策と担い手不足から幹部会議で「インターバルが一週間」に短縮されたと言及されるので、〔21連勤+7連休〕が、最新型猛士の基本シフトという事でありましょうか。
 どうせ仮面ライダーを複数出す事を求められるなら、最初から組織化してしまえばいいのでは、とする(前年に『ブレイド』が失敗した)切り口で、数多くの戦士とそのバックアップ組織の存在が描かれると共に、「シフト表」や「担い手問題」といった世知辛い要素が最初からが織り込まれてくるのが、“特別な個人”ではない“職業ライダー”として新味のあるアプローチ。
 ……今見ると、これはこれで感がありますが、「仮面ライダー」の意味づけへの大胆なメスの入れ方と、アクション的な見せ場の不足が悪い形で繋がっている印象はあり、基本設定でチャレンジするならば、広くフックになる要素はもっと意識的に目立たせておいて欲しかったかなと。
 それが今作独特の空気を生んでいるのも確かですが、制作サイドの自意識と、アクションエンタメとしてのバランスへの配慮不足は引き続き気にかかる面。
 なんというか、ここまでのところ、コミカルさやテンポこそ上がっていますが、『クウガ』の第8話や、同25-26話を、ひたすら繰り返しているような印象(恐らくそれこそが、高寺Pのやりたかった事の一つではあるのでしょうが)。
 ……ところで落ち着いて考えてみると、「ヒビキ」さんが「響鬼」なの出来過ぎというか、本名の最後に「き」が付いていないと鬼になれないのも困るので、「ヒビキ」は源氏名のようなものなのでしょうか、と思うと、苗字無しカタカナ表記にも納得(ついでにこれもちょっと、《ウルトラ》感を生んでいるのかもと納得)。
 入試を前に、担任教師から割とシビアな言葉をいただいた(まあ教師サイドも、自分のクラスから高校受験失敗が出るのはきついですしね……)明日夢が再び勉強に実が入らなくなっていた頃、釣り人を溶かす怪異が海に出現し、ザンキさん(名前だけ登場)、化けカニにやられて重傷。
 急遽、ヒビキがカニ退治を任される事となり、事前のブリーフィングなどはやはりどこか、《ウルトラ》的なテイストは感じます。
 31歳・自称ロンリーウルフなヒビキさんは、海へと探査用のディスクカニを動員するが、そこにカニ手の姫(ショッカー怪人感のあるデザイン)が自ら姿を現してバトルが確保され……使い魔で攪乱から鬼火とパンチのコンボにより、変身から約40秒で戦闘終了(笑)
 さすがにそれだけでは終わらず、海中から巨大な化けカニ(大体カニ)が出現すると、背中に太鼓を張り付ける響鬼だが、甲羅から噴出する酸を浴びてやむなく一時撤収する羽目に。
 一方、再び懊悩モードに入った明日夢少年は、持田の野郎、僕がヒビキさんに会うのを我慢している間に悩み相談とかしてるってどういう事だよーーー?! とジェラシーファイヤーを燃やすと、思い切ってたちばなを訪れ、つづく。
 ……あ、EDで歩いている場所が、公園から商店街に変わった(笑)
 フィクションとしては選択次第ではありますが(くしくも『ウィザード』はちょうと正反対でしたが)、人間、そうそうTPOに応じたウィットのある一言とか出てこないよね、が全体の基調になっているのは、改めて見るとちょっと面白いところ。
 そういう部分で芝居っ気を薄めるのも、作品としての狙いの一つなのかとは思われますが。

◆六之巻「叩く魂」◆ (監督:坂本太郎 脚本:きだつよし/大石真司
 「猛士」の読みは、「たけし」。
 香須実さんに花束を持ってくる伊達男・イブキがたちばなを訪れ、ヒビキの弟子だと誤解された明日夢は、イブキに連れられ、房総へ。
 前回、顔見せ登場で明日夢母と接触したイブキさん、今のところ凄く爽やかな二枚目でいい人ですが、新キャラとしてはあまりにも毒気がなさ過ぎて、これが井上脚本だったら、とんでもない裏がありそうで落ち着いて見ていられません(笑)
 「鍛え足りなきゃ、鍛えるだけだ」
 第1話でヒビキに渡されて以来、明日夢のお守りのようになっている方位磁石が、“進む道への自信を見失っている明日夢”の象徴として上手く機能し(元々そういうニュアンスはあったのでしょうが、今回やっと、意味がはまったというか)、ヒビキと言葉をかわし、自分の進む方位を見つけ直した少年が一人で帰路につくのは、いい意味で凄く“らしい”のですが……君はこれから、内房線に乗って東京まで帰るのか(多分、2時間ぐらいかかる)。
 家路につく(その途中で他の学生たちの姿を見て触発される)明日夢と、化けカニへの雪辱戦に挑む響鬼の姿が交互に描かれ、両パートを重ねながら描いて意味を共鳴させていくのも今作らしいスタイルではあるのですが、明日夢くんが毎回のように迷子になる為、劇作としては「再び前に進み出す」事の重みが徐々に失われていっており、VS化けカニ戦が“おまけ”のような扱いになってしまうのは、悩ましいところ。
 あと、化けカニあまりにもカニで、妖怪退治和風伝奇アクションというより、C級パニックホラー風味になっており、スライディングから腹部にバックルを張り付けて体当たりでひっくり返し、巨大なカニをバチで叩き殺す仮面ライダーという、まあ多分、唯一無二の画ではありますが、あまりにも、あまりにもカニ……。
 甲殻類はそのまま巨大化してもいけるのでは、という判断はわからなくもないですが、もう少し、魔化魍としての異質感をビジュアルで出して欲しかったところ。第1-2話の蜘蛛はその辺り、小屋を上手く使って見せていたのですが。
 次回――新たなる鬼。