東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

金色の獅子は絶望を喰らう

仮面ライダーウィザード』感想・第49話

◆第49話「サバトの幕開け」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし)
 笛木への協力を躊躇う晴人の前に山ザードが現れ、やむを得ずウィザードに変身する晴人だが、白Pにより魔参流古武術の達人として鍛えあげられた山ザードのマッスルニーキックからマッスル尻尾アタックに苦戦し、窓から顔を出したコヨミに気を取られたところをエクスプロージョンされて、敢えなくノックダウン。
 「これで全て揃った……」
 笛木が求める札を全て手に入れる一方、賢者の石の獲得に情熱を燃やすソラは、クライマックスから蚊帳の外に放り出されはしまいと、庭の隅からこんにちは。
 「……参ったな。晴人くんまでワイズマンの手に、落ちちゃうとは」
 ステルス能力を活かして本日も事態をピーピングするソラ、なんだか、最後の希望みたいになっていた(笑)

 ――魔法の指輪・ウィザードリング。今を生きる魔法使いは、その輝きを両手に宿し、絶望を、希望に変える。

 果たして、魔法使いが書き換える“絶望”とは何で、守るべき“希望”とは何か。
 譲ザードに敗北した仁藤は、夢の中でキマイラに咆えかかられると面影堂で目を覚まし、笛木の家に向かった晴人と連絡が付かなくなった事を知る。
 その晴人は真由と共に白Pの結界内で目を覚まし、そこに現れる笛木とその人形の魔法使いたち。
 「もう時間が無い。どんな形であれ、再びサバトを開く」
 笛木は、4人の魔法使いはサバトの為の人柱であると告げて立ち去り、これまでの何もかもが笛木プロデュースによる人形芝居に過ぎなかった事を知った晴人は、自己の存在意義を見失ったどん底モードに突入。
 「……こんな自分でも、役に立てる事がまだあるって事なんだろう。俺が魔法使いになったのはさ、ずっと人を守る為だと思ってた。自分の力で、誰かの希望になれるならって、そう思って……今まで頑張ってきたつもりだった……だけど……。ま、俺が人柱になってコヨミを救えるなら、これはこれでありかもしれないけどな」
 誰かの希望を守る為の戦いそのものが、笛木の仕組んだ放火事件におけるポンプ役でしなかった事に衝撃を覚え、「怪物」になる代わりに「空洞」に陥る晴人ですが、笛木の操り人形であった事は確かにショックだったろうとはいえ、ここまで来てまだ、“自分が積み重ねてきた事”より“その背後に他人の思惑があった事”の方を重く受け止めるのは、正直ちょっとくどくなった印象。
 たとえばウィザードの存在が無ければ、恐らくもっとボコボコとファントムが生まれていたわけですし……まあこれは今後のもう一回転に使われそうではありますし、きださんの意図としては恐らく、舞台のカラクリを告げられてウィザードから主演の仮面が引きはがされた時に、“サバト前の晴人”の精神状態まで戻ったという事なのでしょうが……そう考えると、サッカー回からここまでの間に、晴人について香村さんが手を入れすぎてしまったともいえそうでしょうか。
 そして、ダブルメインライターの間にあるズレを、作品として調整しきれなかった感じ。
 根本的なところでは、終盤に黒幕が出てきて「全て私の計画通りだったのだ! ふははははは!」とやる話法は色々と難しいと思うのですが、最終回目前にもなって、まんまとそれで落ち込む主人公はあまり見たくなかったというか、ここまで来たらもう「それがどうした!」で突き通してくれる主人公を見たかったなと(笑)
 晴人が一旦、実質的に絶望する話を描くのならば、ちゃぶ台返しをもう少し早めに持ってきても良かったような気はします。
 「賢者の石に膨大な魔力を注ぐ、それがサバトの本当の目的だ」
 一年半前――サバトにより生贄としたゲートから魔力を引き出し、コヨミの再生を試みるも不完全に終わった笛木だが、奇蹟的に絶望を乗り越え人である事を保った一人の青年が居た……その名を、操真晴人。
 晴人の生存により、ただのゲートよりも強大な魔力を持った魔法使いを人柱に使う事を思いついた笛木は、白Pとして晴人にコヨミと指輪を預ける一方、ワイズマンとしてファントム(この時に生まれたファントムは、ソラ曰く「ただのおまけ」)を手足として、人為的な魔法使いのクリエイトを目的としたダイバーシティ溢れる「絶望を希望に変えるイノベーション計画」を開始し……サバトの実行者として上位命令コードなどが発生していたのかとは思われますが、割とその場の勢いで誕生していた、株式会社ワイズマン。
 ……晴人を一度がらんどうにするのだったら、ここまで明かして、「晴人が生き残ってしまった(それは、晴人のアイデンティティそのものである)」事が笛木の計画を加速させたと突きつけた後なら、まだ説得力が出たかなと思うところ。
 笛木から舞台の裏を聞かされながら捨て鉢気味の晴人だが、人柱の魔法使いはあくまでもサバトを起動する為のキーに過ぎず、その魔力を利用した超広域儀式魔術によって東京都全体を魔方陣に取り込み、東京中から大量の魔力を無作為に集める事こそが笛木の計画であると教えられると、その規模に愕然。
 このサバトが実行されれば、都内全域においてゲートであった者はファントムとなり、ゲートでなかった者は死亡する……一千万都市の壊滅を平然と口にする笛木の姿に、こいつ本当にヤバい、と事ここに至って激昂するのですが、以前のサバトを主導していた時点で紛う事なき大量殺人犯なので、正直、諦めの境地で捕まっている場合では無かったと思うんですよね……。
 「やめろ! 犠牲になるのは俺だけで充分だ! 俺はどうなったって構わない! だから……! 他の人を巻き込むな」
 ……いや今、現在進行形で、他の人が巻き込まれている真っ最中だと思うのですが。
 山ザードに殴り倒されて以降、笛木のプロデュースにより生まれた、“コヨミの為の魔法使い”の終着点として、自分は犠牲になっても構わないモードの続く晴人さん、人柱にされれば自身が犠牲になるという事は当然、残り3人の魔法使いも犠牲になると認識はしているようなのに、他の3人についてどう考えているのか、肝心の部分が欠落しっぱなしなのは、率直に理解に苦しむ部分。
 今作これまで、ここまでの大穴は空いた事が無かったのですが、サバトの幕開け以前の段階で、誘拐や洗脳により「巻き込まれた他の人」が、人間としての自由と尊厳を奪われている――シリーズの本歌取りを多数盛り込んでいる今作なら特に、まさにこれこそが立ち向かうべき大いなる悪である――のに、晴人がそれについて見ないふりを続けている(ようにしか見えない)のは、心臓が抜かれるレベルの致命傷。
 「全てはコヨミの為だ」
 「だからって……無茶苦茶だろそんなの!」
 「死んだ娘を取り戻したいと思うのは、親ならば当然だ。コヨミは――私の希望だ」
 ヒーローのキーワードを逆転させて、歪んだ執着の象徴にする仕掛けとかは嫌いではないのですが、晴人に絶望を突きつけた笛木は、人形であるコヨミに心を取り戻すと告げると、白い魔法使いへと変身。
 「時は来た……」
 紫の月の指輪を用いるとエクリプスによって天体の摂理さえ越えた日食が引き起こされ……結局やらかしたな輪島さん……。
 「まさかサバトが!」
 「笛木の野郎……」
 闇に包まれた世界で白Pが笛を吹き始めると、強制的に変身した魔法使い達から魔力が抜き取られ、東京に広がっていくサバトの赤い輝き。ソラの推論により大体同じ舞台裏の事情を聞かされた仁藤らは、天に向けて立つ4つの光の柱を目にするがサバトの渦に呑み込まれていき、身動きできない凛子と瞬平に促された仁藤は、白Pを止める為、4つの光の中心へ(凛子と瞬平の台詞格差が酷い(笑))。
 「わかった。絶対にサバトを止めてみんなを助ける」
 儀式魔術の宿命、真ん中がわかりやすいにより、決意を胸にした古の魔力を宿す男は、最大のピンチを乗り越える為に白い魔法使いと対峙する。
 「サバトを止めに来てやったぜ」
 「サバトを止めればコヨミは助からんぞ」
 「いや、コヨミちゃんも助ける」
 「なに?」
 「凛子ちゃんと約束したんだ。みんなを助けるって」
 うわーなんか、仁藤が滅茶苦茶格好いいぞ……!
 こういう、ごく普通の言い回しに、しっかりとした意味を上乗せしてくるのは、とても好み。
 「今すぐ方法は思いつかねぇが……コヨミちゃんも絶対に」
 ここでは勿論、綺麗事の一面はあるのですが、それでも、今起きている事は決して許してはならないものだ、と立ち向かう姿で仁藤のヒーロー度がインフィニティに到達し、暗闇の中で金色の光が輝く渾身の変身も決まって、L・I・O・N!
 だが、白Pの圧倒的筋力を前にビーストの装甲は火花を噴き、ハイパー化して放った動物大集合も防がれると、白い魔法使いソードDXの前に、敢えなく完敗――?
 「――仁藤攻介。さすがのおまえも今度こそ終わりのようだな」
 朦朧とする意識の中、インナースペースでキマイラの声を聞いた仁藤は、むしろそれを歓迎すると、最後の大博打として、自らベルトを破壊する事で、キマイラを解放。
 「……行け、キマイラ。ランチタイムだ……」
 変身の解けた仁藤は仰向けにひっくり返るが、解き放たれたキマイラはサバトによって都内に溢れかえる魔力を食い散らかしてゆき、それによって儀式のバランスが崩れたサバトが強制中断。
 日食が終わると人柱とされていた魔法使いたちも解放され、闇に閉ざされていた世界から抜けるような青空への転換は、劇的な映像となりました。
 「俺を食い殺すなら遠慮はいらねぇぞ」
 「どこまでも面白い奴だ。いいだろう。おまえをしもべから解放してやる」
 「は?」
 「おまえは今日から自由だ、仁藤攻介」
 ランチタイムを終え、仁藤のところに舞い戻る帰りがけの駄賃に白Pを蹴り飛ばしたキマイラは満足して飛び去っていき、仁藤の餓死問題はこれにて解決。
 「……あんがとよ、キマイラ」
 野放しにしていい存在なのかはちょっと迷いますが(能力の大きさからも、もはやファントムというより神霊に近い存在なのでしょうが)、仁藤が壊れたベルトを撫でる様子はしんみりとさせ、リスクは大きいがチャンスでもあった私的な夢の一部を砕いてでも、みんなを助けようとした姿で、仁藤は一つの着地。
 「まさか……アーキタイプごときに……」
 「フ……これがピンチはチャンスってやつさ」
 「……貴様ぁ……よくも私の希望を……許さんぞ、絶対に……恐怖に怯えながら、絶望して死ぬがいい」
 「――絶望なんかしねぇよ。まだ希望はある」
 仁藤に剣を向ける白Pだが、不敵に笑った仁藤の視線の先に居たのは……ようやく甦った最後の希望。
 「……操真晴人」
 「……俺が――最後の希望だ」
 ……果たして晴人は、ストップ安の株価を取り戻す事が出来るのか? そしてコヨミの運命やいかに?!