『仮面ライダーX』感想・第29-30話
◆第29話「死闘!! Xライダー対Xライダー!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:鈴木生朗)
変幻自在の怪盗ファントマの化身・カメレオンファントマ(プロレスラー体型)がAB通信東京支局長に入れ替わり、西ドイツから帰国したバレリーナに接触する一方、マーキュリー回路を増設した敬介の身には、とてつもない異変が起こっていた。
「待てぃ!」
本人のあずかり知らぬ内にRS装置を巡る国際的暗闘に巻き込まれていたバレリーナが、Kファントマに脅かされている所に雄々しく助けに入った敬介……敬介……敬……介……が、仁王立ちで格好良く決めているシーンなのに、頭部の盛り上がりが気になって……まともに、見られない……!
本郷猛や風見志郎と違う、さらさらヘアーがトレードマークだった敬介、今回から髪にパーマがかかってイメチェンが施されており、これは、風見先輩からの、輸血、輸血の作用なの……?!
それとも、マーキュリーパワーの副作用なの……?!
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……ぜぇ、はぁ……すみません、落ち着くまで、時間を要しました。
色々なところが新生した敬介は、戦闘員を蹴散らすもKファントマの伸びる舌攻撃を受け、放り投げられるとニヤリと笑って大変身。
……臓器移植だか大量の輸血だかを受けた結果、人格が提供元の犯罪者に乗っ取られていくサスペンスなりホラーなりみたいなのがあったような記憶。
改造人間の運命に翻弄される敬介をフレンチ忍法・身代わりの術で翻弄したKファントマはアジトに一時撤収するとお叱りを受け、キングダークの辞書に、「愚か者」の語彙が加わった!
藤兵衛がバレリーナ・菊池明子を運び込んだ病院に向かった敬介は、西ドイツでの公演の後、ファンだと言って楽屋を訪れた某科学者に明子がプレゼントされたペンダントの中に設計図の断片が隠されている事を突き止め、南原一党がまた、無関係の人を力強く巻き込んでいるな……!
西ドイツの某科学者と連絡を取り合い、明子から設計図を入手する筈だった敬介だが、ペンダントを手にした藤兵衛が突如として豹変するとKファントマの変装だった事が明らかになり、藤兵衛のイメージの蓄積もありますが、小林昭二さんは、人の良さそうな中年男が実はシリアルキラーだった、みたいな表情させると、滅茶苦茶上手い(笑)
「このペンダントは貰っていくぞ……今度は俺の勝ちらしいな。かーっかっかっかっかかか……!」
高笑いしながら姿を消したKファントマは、ミッション成功をキングダークに方向するが……
「さすがは、名だたる怪盗の化身、カメレオンファントマだ。よく手に入れた……と褒めてやりたいが、愚か者め!」
上げてから叩きつけるキングダーク本日二回目の雷が落ち、段々と説教芸が細かくなって参りました。
本物の設計図は、病院へ向かう途中で明子の話を聞いた藤兵衛が既に抜き取っており、
ナレーション「ここにある一枚は、西ドイツのある科学者が、菊池明子のペンダントに忍ばせ、神敬介に、送り届けたものである!」
見事してやったり! 正義の勝利だ! みたいな雰囲気で語られていますが、全く知らない間に機密文書の運び屋にされいた菊池明子さんは法的手段に訴えていいと思います。
喫茶店で祝杯をあげる敬介一味(もはや一味……)だが、キングダークの叱責を受けて屈辱に震えるKファントマは明子をさらい、公演直前、更なるとばっちりを受ける事となるバレリーナ。
・1話1枚、“南原の仲間”に届けられた設計図の争奪戦を素直に行うと、ゲストの属性が偏りすぎる →
・なんらかの事情を加えて受け取った当人以外のキャラをエピソードに絡めたい →
・身内だとやはりパターンに限度があるので更に範囲を広げたい →
・結果、ゴッドより先に、南原一党が無関係の人間を巻き込む →
・時によって敬介たちもそれに積極的に関わるので、諸共に倫理観が問われると同時に好感度が下がる
……RS装置編、悪夢のドミノ倒しが極まってきた感がありますが、場の勢いで9枚は千切りすぎたという他なく、ライディング大変身からクルーザージャンプで後を追った敬介は、Kファントマの要求に応じ、設計図と明子の身柄を交換。
「さあ、みんながあなたの舞台を待っている。早く行きなさい」
何やら格好いいヒーロー感を出していますが、全く無関係の人間を巻き込んだ末に敵組織に恥を掻かせて祝杯とかあげていた末のマッチポンプであり、素直に人質を帰したKファントマの方がいっそ紳士的に見えて困ります(こちらはこちらで勿論、冒頭で支局長を殺しており、ゴッドの姿勢は徹底的に“悪”ではありますが)。
「Xライダー、あなたはもしや……」
「行け! クルーザー!」
バレリーナをクルーザーの自動操縦に任せたXは、これからは殺し合いだ! と戦闘開始。Kファントマの透明化をXアイで見破ると、怪人はXライダーの姿を写し取って開始約19分40秒でようやくサブタイトルが回収され、激突するXとX。
「俺がXライダーだ」
「俺がXライダーだ」
……横で混乱してくれるギャラリーが居ないと、ただ同じ顔で殴る蹴るするだけではあり、BGMもまったりめの取っ組み合いがおよそ1分続くと、変化の術が解けたカメレオンに対し、高い所に立って間合いを取り直したXの背後で、爆発!
「真空――地獄車!」
前回も謎だった派手な爆発はどうやらマーキュリーパワー発動の余波らしく、戦い続ければ続けるほど、君の髪にはパーマがかかっていくのだ神敬介!
組み付きから回転が始まるとナレーションが被さって技の詳細を説明し、脳への打撃! 打撃! 打撃! から、朦朧とした敵を宙に放り上げ、背中に向けてトドメのXキック! が打ち込まれ、戦士としての尊厳を挽肉のようにすり潰されたカメレオンファントマは大爆死。
設計図はXが回収し、バレエの公演シーンが割とたっぷり入って、つづく。
◆第30話「血がほしい――しびと沼のヒル怪人!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:鈴木生朗)
「死ね~、死ね~、人間どもよ~」
呪詛の言葉を呟きながら護摩を焚く老婆と、白骨に蛇、そして巨大ヒルの映像で始まる、戻ってきた怪奇路線……なのですが、老婆の正体である怪人ヒルドラキュラが、タツノオトシゴのゆるキャラみたいな姿なのは、何故。
ヒルドラキュラは巨大ヒルに血を吸わせた人間を吸血人間へと変えて支配し、吸血人間に血を吸われた者は更なる吸血人間となって増殖していく頻出パターンとなり、ホラー演出の一貫ではあるのですが、血の気の失せた不気味な風貌の吸血看護師のアップがひたすら繰り返されるのが、映像としてはちょっと辛い。
前回も後半のバトルで尺を稼いでいる雰囲気がありましたが、吸血看護師の襲撃や、ドラキュラ老婆のおどろおどろしい喋りの繰り返しが露骨に多く、足の怪我で入院していたチコを巻き込んで起伏をつけようとする工夫はあるものの、基本、出涸らしの素材をただただ水で薄く引き延ばしたような出来。
「んーーー、ヒルドラキュラよ、作戦は、進んでいるか」
「はい。細工はりゅうりゅう。これからが見物でございます」
アイキャッチ直前にようやくキングダークが出てくると、吸血鬼騒動は周到な作戦だった事になり、ラジオに続きTVの電波をジャックしたヒルドラキュラは、吸血鬼の増殖を止めたければ設計図と引き替えだ、とXに取引を持ちかける。
病院で吸血看護師の襲撃を受けたのに、のほほんと喫茶店に戻ってくる敬介や、チコ救出の為に単独で病院へ送り込まれる藤兵衛など、四方八方ガタガタで、取引に応じた敬介は設計図をドラキュラ老婆へ渡すも底なし沼に落とされ、どこかで手持ちの設計図の危機は必要ではありますが、こんな作戦で本当に良かったのでしょうか(笑)
チコを助けに向かった藤兵衛も危機に陥るが、追い詰められた部屋で迫り来る吸血看護師に向けて食塩を投げつけると、吸血ヒルの魔力が失われて看護師たちは正気に返り……どこかで手持ちの設計図の危機は必要ではありますが、こんな作戦で本当に良かったのでしょうか!
ゴッドに奪われた設計図は一定の時間で消える特殊インクで書かれており、前回今回と、悪玉が善玉に一杯食わされるコミカルなシーンの意図で描いているようですが、キングダークの 「馬鹿め!」が炸裂。
怒りのヒルドラキュラが沼の確認に向かうと、響き渡る笑い声に続いて、大爆発と共に沼の底から飛翔した敬介が大変身を決め、背後の水柱が、10メートル以上は噴き上がっていて凄い(笑)
挿入歌に乗せてヒーロー反撃のターンとなり、飛んでくるヒルをライドルで切り裂く……事もなく平然と受け止めてみせると、「立場藤兵衛の届けた塩」によりヒルは次々と溶けて地面に落ち…………ええとつまりこれは、
沼に落とされる → 沼から這い上がる → 藤兵衛が塩を届けに来る → 全身に塩を塗り込んで沼の底で待機 → ははははははははは!!
……輸血の影響は深刻です。
これが、これこそが仮面ライダー! とXライダーは滝壺でヒルドラキュラと死闘を繰り広げた末に真空地獄車を発動し、足下が川だと前転運動はしにくそうだな……と思ったら、ひたすら空中で回転して怪人の三半規管を狂わせてから、投げ捨てたその背中に「地獄車キック!」を叩き込む、俺の地獄車パート2により、ヒルドラキュラは弾け飛ぶのであった。
客演からのパワーアップを受けて、映像は派手さを増した一方、2話続けてエピソードの出来は悪く、設計図を巡る攻防で面白さを作るのに限界が来ているというか、「南原 破りすぎ」とサジェストされる状況に陥ってきましたが、次回――Xライダー、馬に乗る。