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魔法使いと怪物

仮面ライダーウィザード』感想・第47-48話

◆第47話「ワイズマンの真実」◆ (監督:舞原賢三 脚本:香村純子)
 「だから俺は、自分の信念を貫く。みんなの希望を守る魔法使いであり続ける。……自分の大事な人の為にも……なんちって」
 ここまで長らく、どこか孤独な虚勢の「仮面」の内側に脆い部分を秘め隠しながら、魔法使いという名のヒーローを演じていた部分のあった晴人が、様々な出会いや苦悩や再起を経て、自らのありたい姿を言葉にし……「みんなの……」以降で横を向くところが、恐らく、晴人の素だろうな、と(笑)
 そしてここでは、“素”を見せながら口にする事が重要なので、舞原監督の汲み取りも冴えました。
 同時にコヨミは、あの運命のサバトの日から晴人にとって、“格好つけ続けると決めた相手”として置かれ、不特定多数の“公”ではなしに、側に居る“個”に対する意識を土台に置きながら、しかしその“個”に対して“格好つけ続ける”というのが晴人において「みんなの希望を守る」事なのだと、シリーズが『クウガ』以降に重視してきた現代的なヒーロー性の再構築に接続。
 また、“格好つけ続けると決めた相手”がどういう関係性を示しているのかは、視聴者の想像と解釈に委ねます、としているのが小技です(笑)
 だがそのコヨミは今、存在の危機に陥り……
 「あいつは! …………笛木は……コヨミの父親なんだ」
 コヨミを連れ戻せないまま、面影堂に戻ってきた晴人は、居合わせた面々にコヨミと笛木の関係について明かし、飲み込めないけど信じたい、そんなせめぎ合いの中で声を絞り出すような表情と台詞回しは大変良く、そこに即座に仁藤が食ってかかると、晴人が怒鳴り返す感情のぶつけ合いも、両者の心情が出て良かったです。
 「だからってほっといていいのかよ!?」
 「でも俺たちには! …………なんもしてやれねぇだろ……」
 面影堂に保護される事となり、身重の妻に連絡を取ろうとしていたら背後で怒鳴り合いが始まってしまったゲートを守る事を晴人は自分に言い聞かせるが、ゲートの妻には電話が通じず……不穏な空気の募る中、ミサはアラクネに絶望指南中。
 ……ここまでがアバンタイトルなのですが、OPのクレジットに熊谷先生と酒井親子の名前があり、どうもゲストのクレジット表記を間違えたようですが、そのまま修正されずに公式配信されてしまうものなのか。
 一方、笛木に連れ去られたコヨミはマジカル謎空間で目を覚まし、あくまで白Pとして顔を出す笛木だが……好感度が、滅茶苦茶低かった(笑)
 「またゆっくり話をしよう。……おまえは……――私の希望だ」
 「…………私が……希望……?」
 晴人たちは手分けしてゲート・山本の妻を探し、その過程で、ファントムと戦い続ける晴人の想いを知って涙をこらえる真由は、目の前で女子に泣かれて動揺しまくる晴人(素)に対し、白Pの指示を受けてインフィニティの指輪を奪おうとしていた事を告白。
 ――「これは彼自身の為でもある。あの指輪は、彼が自ら生み出したもの。大きすぎる力は、自らを滅ぼす」
 いきなり湧いて出てきたインフィニティの指輪に関して、遅まきながら白Pより多少の補強(と恐らく最後の切り札としての布石)が入り……諦めない事を選び続けた晴人が、自ら掴み取った希望の力、といった位置づけでありましょうか。
 真由の事情を聞いた晴人は、自らインフィニティの指輪を真由に預け、ちょっと真由に甘過ぎでは……と思いましたが、真由の信念を尊重すると共に、
 (信じるぞ……笛木)
 と、色々と胡散臭いし未成年略取も行っているけど、コヨミの為に行動する笛木を信じたい気持ちを内心の呟きで加えて、心情としては納得できる範囲に。
 「僕は父親になるんだ……妻と娘は、守らなけりゃならないんだ。その為にはなんだってする。僕はどうなったっていい! ……僕は……父親なんだ」
 「……そんな気持ちなのかね。白い魔法使いも」
 熊谷回に続いて、「父子」の物語をゲストに組み込んで、白い魔法使いの行動原理を視聴者に伝わりやすくすると、山本妻を探し回る仁藤たちはアラクネの強襲は阻むが、グール軍団と共にミサも出現。
 「さあ、じっくり見るがいい……おまえの希望が木っ葉微塵になる瞬間を」
 相変わらず生身の方が強そうなミサは巨大な光弾を放ち、妊娠の象徴としての柑橘系果物が焼け焦げて地面を転がる演出がえぐみが強く、その光景にくずおれた山本の体に走り始める紫色の亀裂。
 株式会社ワイズマン怒濤の攻勢の前に絶望ミッションが達成されるかと思われたその時、間一髪で山本妻を守り抜いていたウィザードが登場。
 「待たせたな。俺が――最後の希望だ」
 ……実際ちょっと待たせすぎたというか、前々回の今回でこれはどうなの感はあるのですが、物語を動かす為には押し迫った話数の中で「誰かを魔法使いにしなければならない」のは、終盤の作劇を苦しくしてしまったなと。
 かくして、妻子殺しは避けつつ、映像のショックでゲートがひび割れを始める苦肉の策から、生きてたから頑張れ、と周囲がエールを贈ると山本は自らの意思で絶望を克服し、家族と共に生きる未来を守れ……るのかどうか、その鍵を握る白Pは、真由からインフィニティの指輪を受け取ると、打倒メデューサの為の力を持つ指輪と交換。
 「おのれ魔法使いども……またしてもワイズマンの意思を阻みおって。許さん!!」
 怒りのミサは、髪をかきあげメデューサ変身し、W魔法使いはグール軍団を相手の大立ち回りとなり、そこに参戦する真由。
 「……仁藤!」
 「皆まで言うな」
 が、すっかり二人の息が合って格好良く、W魔法使いがアラクネを相手取って引き離すと、真由はメデューサと対峙して変身。
 「さあ――終わりの時よ」
 ……あ、尻尾ついていた。
 事に今ようやく気付きました(笑)
 「来い! 場所を変えるか」
 メデューサは一同まとめて地下空間(ロケ地としては、デート商法回でノームと戦った場所でしょうか……?)へと引きずり込み、開放的だったショッピングモール前から場所を変えての、仕切り直し。そしてこの戦闘ロケーションの変更は、今回のクライマックスで一つの効果を上げる事に。
 黄色と黄色で揃えたウィザード&ビーストは、同時にフォームを強化。再び擬態で逃げようとするアラクネをランドハンドでつまみあげると、ダブルイエローストライクで、ごっつぁんです。
 一方、真由ザードとメデューサも激闘を繰り広げ、追い込まれる真由ザードだが、起死回生の飛び蹴りから、新たな指輪を発動。眩い光の波動が指輪から放たれてメデューサの光弾と激突し――父よ・母よ・双子の姉よ!
 復讐はヒーローを育てる最高の果実、と風の唸りに血が叫び、真由の信念はメデューサに大ダメージを与える、が……
 「まだよ……こんなところで死ぬわけにいかないの。私はワイズマンと共にある。私の全てを、ワイズマンに捧げるのよ!」
 それでも執念で立ち上がるメデューサ、を背後からぐっさり貫いたのは、まあ、そうなりそうな感じでしたが、そのワイズマン。
 「……ワイズマン……どうして……」
 「そこの魔法使いが必要なのだよ」
 忠臣メデューサを切り捨てたワイズマンは晴人たちに視線を向け、深手を負ったメデューサはミサの姿に。
 「……なぜ?! 私を……必要だと…………私を……! お側に、置いて下さると!」
 「そう。ゲートを探せるのはおまえだけだ。しかし、今ここに、4人目の魔法使いとなる人物が……誕生した」
 一同の前でワイズマンは笛木へと姿を変え、衝撃……というか、ようやくの正体判明となりましたが、まあ、「ワイズマン」というあまりにも直球の示唆を本当にそのまま「魔法使い」と同一人物にしたという事が、衝撃といえば衝撃(笑)
 「……もう、おまえは必要ない」
 かくして、ワイズマン=白い魔法使いが必要としていたのは、ファントムではなく魔法使いだったと、なにかと不可解だった株式会社ワイズマンの社員獲得大作戦の真相が明らかにされて、悪の組織の首領でもあった笛木は改めて白Pへと変身。
 「ワイズマンが、魔法使い……?! ……では、私はずっとたぶらかされて……嫌……嘘だと言って下さい!」
 「今までご苦労だったな、メデューサ
 「……ワイズマン……」
 致命傷を受け息も絶え絶えのミサが、すがりつくように白Pに手を伸ばすと、パイプ(ないし天井)から落ちる水滴を涙になぞらえる演出も決まり、これまで数多くの人間を絶望に落とそうとしてきたメデューサ/ミサは、絶望のどん底で灰となって因果の巡る消滅。
 メデューサが最後にミサの姿となるのは、断末魔の芝居も含めて退場サービスといった面もあるのでしょうが、ワイズマン=白Pという、ここまで来るとあまり驚きのない真実の公開を、散っていくメデューサの慟哭と絡める事で劇的にしたのは、お見事。
 ワイズマン自体、魔法使い達の前に繰り返し立ちはだかる因縁の敵というわけでもなく、晴人らに驚愕のリアクションをさせても真に迫れなかったとも思うので、晴人らが事態を呑み込みきれずに呆然とする中、側に仕えてきたメデューサがショックを受けるというのも良い配置になり、1年通して、作品貢献度の高い悪役幹部でありました。
 作品テーゼの掘り下げの部分では前編で期待したほど跳ねませんでしたが、最終決戦に向けた要素の消化が優先される以上、これはまあ仕方なかったとはいった感で……「声が古川登志夫になる指輪」を用いて一人二役で暗躍し、多くの人間の運命を翻弄する嘘まみれの舞台をプロデュースしていた白い魔法使いの真実を前に、一同、どうしようこいつ……となって、つづく。

◆第48話「賢者の石」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし)
 「白い魔法使いが、ワイズマン……」
 白PはテレポートでW魔法使いのZOCを無効化すると、山本くん君に決めた、と一方的に運命を感じるスカウトにより拘束。止めようとした仁藤らもあっさりと蹴散らされるとテレポートで姿を消し、それから五日――瞬平に声を荒げるほどに晴人が焦れる中、コヨミの手の甲の傷(文字……?)は広がっていき、ワイズマンを探るサイコ探偵ソラにより、真由と仁藤の前に現れるグール。
 白い魔法使いを釣り出す為に真由を拉致しようとするソラだがウィザードに阻まれ、悩める晴人は、もうこの際、髪フェチのシリアルキラー野郎でもいいか、と改めての接触を試みるが、凛子さんに見られてウルトラ気まずい。
 ソラは姿を消し、晴人は凛子にたしなめられ、凛子が独り立ちしつつある成長もありますが、ファントム以前に連続殺人鬼であるソラに対しては、人間としてこいつは絶対ダメな奴、という肌感覚が凛子さんの方がリアルなのは貫かれているポイント。
 「魔法使いのくせに……肝心な時になんにも出来ないなんて。最後の希望が聞いてあきれるよな」
 白Pに辿り着く手がかりが見つからず、八方塞がりで落ち込む晴人だがその時、木崎が意識を取り戻したと凛子に連絡が入り……
 「晴人くん、希望ならまだあるわ」
 は、凛子の歩みを象徴するような台詞となりました。
 見知らぬ洋館(どこか、時の止まったドールハウス風味)で目を覚ましたコヨミは笛木と一緒に写った写真を見つけ、晴人は病室で木崎が掴んだ情報を聞かされ、白い魔法使いにしてワイズマンでもあった男の正体は、医学や化学にも精通し、いわば現代版“万能の天才”であった物理学者・笛木奏と判明。
 妻を早くに亡くし、不治の病を患う娘コヨミの治療手段をあらゆる方法で探していた笛木だが、その甲斐なく、コヨミは死去し、二つの場面を行き来しながら、明らかになっていく真実。
 「認めたくはないが、魔法使いに太刀打ちできるのは、魔法使いだけだ。託せるのはおまえしかいない」
 「……ありがとう、木崎」
 果たして、今のコヨミは何者なのか?
 木崎は笛木の住所を晴人へと渡し、凛子の同行を断った晴人が笛木邸に向かう一方、仁藤の前にはどこか虚ろな表情の――まるで人形のような譲が姿を現す。
 「迎えに来ました、真由さん。ワイズマンがお待ちです」
 譲は青い宝石頭のメイジに変身すると、白Pの下で魔法使いで居る事に迷いを見せる真由を拘束、瞬平を躊躇なく殴り飛ばすと、ビーストも蹴散らして転位し、現代物理学の粋を集めたマジカルプロティン効果で夏の視線を独り占め☆
 その事実をまだ知らない晴人は笛木邸へと辿り着き……
 「……おまえは、コヨミの父親が生み出したファントムなのか」
 成る程、まだそういう解釈が可能でしたか。
 希望的観測や、メタ的な視点の有無もありますが、晴人の、「人間」に対する前向きな視点も貫かれ、しかしそれを一笑に付す笛木。
 「ハハハハハハ……私は人間だ。このカーバンクルは、私が作り出った人造ファントムだ」
 「人造ファントム?」
 「魔法使いになるには、体にファントムを宿す必要がある。私は科学の力で生み出したこいつを、自分の体に埋め込んだのだよ」
 ワイズマンの姿とは人造ファントム・カーバンクルの力を発動した状態であり、笛木はつまり、(現代における)改造魔法人間第一号なのであった!
 ――笛木奏は改造人間である。不治の病によって娘コヨミを失ったが、失われた魔法の研究の末に自らに改造手術を施し、白い魔法使いとして立ち上がった。
 「そんな事が……」
 「私は科学と魔法の融合に成功した。そして手に入れたのだ。人でありながら、魔法を意のままに操るすべを」
 遡れば第1話冒頭のナレーションで「かつて魔法は科学と並ぶ学問であった。しかし文明の進歩と共に、魔法はいつしか忘れ去られた……」と述べられ、ダイバーファントム回の「お、お、それだけ?!」案件の時も「古の魔法使い――かつて魔法が科学と並ぶ学問だった頃」と言及されており、ビーストという証拠品も合わせて、「魔法」とは、かつてこの世界に体系的に実在していたもの、を改めて回収。
 ついでにいうと、デストロンだったりブラックサタンだったり、昭和の悪の組織は割とオカルト寄りなので、本歌取りとして取り込む形になっているといえるのかも(笑)
 「コヨミは……賢者の石を宿した人形だ」
 科学とオカルトの融合した秘密結社の頂点に立ち、自らを改造していた男・笛木は、賢者の石は生と死を裏返す究極の魔法石であると語り、サバトを開く為に魔力を温存する都合により、賢者の石を維持する為の外付けバッテリーとして晴人にコヨミを預けていた事を明かす。
 「おまえの為にどれだけの人が絶望させられ、苦しい思いをしたのかわかってんのか?!」
 「娘を失った私の苦しみに較べれば、そんな苦しみは小さなものにすぎない」
 それでもまだ、一人娘の命をなんとか取り戻したかった男として情状酌量の余地は残っていた笛木ですが、ここで形相を変えると、自らの希望の為には他者を絶望に落としてもなんら構わないと考え実行してきた、完全なる“悪”であると位置づけ。
 「コヨミは私の希望だ。その希望を取り戻す為なら、私はどんな犠牲も厭わない!」
 「…………全てはコヨミの為に…………でも他に何か方法が!」
 「他に方法は無い。おまえが協力せねば、コヨミは死ぬ。それでもいいのか?」
 これまで“守るべき善”として作品の軸になっていた「希望」が、“他者を踏みにじる悪の動機”として裏返ると、コヨミを脅迫材料にする笛木に対して返答に詰まる晴人。
 ならば筋肉にものをいわせよう、と笛木が呼び出したのは、科学と魔法の融合によるマジカルリングフィットアドベンチャーにより、5日間で筋肉を促成栽培された、4人目の魔法使い・山本さん(緑担当)で、つづく。
 シリーズ旧作の本歌取りを散りばめつつ、「ヒーロー/魔法使い」と同時に、そのネガである「怪人/ファントム」の描写にこだわってきた今作ですが、全ては一人の男の妄執であり、ファントムを率いてきた存在=現代に甦った最初の魔法使い(改造人間)、とする事で、希望を守ろうとするヒーローと絶望を生み出そうとする怪人が表裏一体となる構造を徹底。
 そして白い魔法使いとは、運命と戦い続けた末、第45話で晴人が陥りかけた奈落へと堕ちて既に怪物となったものと置かれ、では、英雄と怪物を“分けるもの”は何か――。
 それは一つには、自らの希望の為になら他者の希望を絶望に変える事を良しと出来るかどうかであり、また晴人と笛木の背景を考え合わせると、失ったものに執着するよりも、失ったものの為にどう生きるのか、を選べるか否かであろうかとは思われますが……操真晴人が笛木奏(怪物)から生みだされたものであるとの同時に、笛木奏(怪物)は操真晴人の陰でもあるとされて、果たして晴人は、何をもって“格好つけ続ける”事だと選ぶのか……次回――さよならビースト?
 ……物語の大枠としては、シリーズ某作品にかなり似てきましたが、2010年前後における《平成ライダー》が、シリーズ初期作や、遡って《昭和ライダー》への意識が強めに感じられる事を考えるとと、『龍騎』『ファイズ』辺りに対する一種のアンサーソングをやりたい意識は割とあったのかなーと思うところです。