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『スマイルプリキュア!』フルアクセル

 すみません、約4ヶ月ぶりとなります、ハイ。しかもリハビリで1話だけですが、いやこれが、面白かった……!

スマイルプリキュア!』感想17・スマイルがあれば大丈夫

●第36話「熱血!? あかねの初恋人生!!」
 川原の土手を歩きながらシャドーバレーをしていたアカネは、足を滑らせて転んだところを、大丈夫シャツを身につけた金髪の青年に助けられ……初恋とお好み焼きは、だいたい等価。
 交換留学生だった金髪青年・ブライアンと学校で思わぬ再会を果たしたあかねは、先生から案内係を押しつけられるが、とっても紳士で好奇心旺盛なブライアンと打ち解け、バレー部の見学などを通して親しくなっていく内に……
 「あかねちゃんさ、最近ブライアンの話しかしないよね?」
 「え? そう?」
 ある日の秘密基地にて、じーーーっと椅子の背後から視線を向けてくるやよいの顔と囁くような声が、変な面白さ(笑)
 「あかねちゃんさ、もしかして……」
 「なに?」
 「ブライアンのこと好きなの?」
 そして爆弾が投下されると、一斉に立ち上がって壁際にあかねを追い詰める4人(笑)
 ……そうか、君たちのアクセルは今回、そっち方向に踏まれるのか。
 挙動不審になるあかねの反応に勢い込んだ外野の4人(特にはるかとやよい)が盛り上がると告白を強要し、数ヶ月ぶりに見たけど、君たちのアクセルの踏み方はホント、3回に2回ぐらい最低だな……!
 シンデレラ作戦・正面突貫・マンガ・手紙……それぞれのロマンを押しつけてくる4人に遂に爆発するあかねだが、帰り道で日本料理を食べられる店を探すブライアンと出会うとお好み焼きに誘い、外野4人が暴走する一方、あかねとブライアンの描き方は丁寧で、そのギャップでしっとり感じさせる見せ方が巧み。
 ブライアンは変Tシャツの一発ネタだけ印象づけに使うと、シャツのセンス以外は凄く普通にいい奴、というのも好感を持てて良いところで、癖を付けすぎない二枚目として、柿原徹也さんも好キャスティング。
 ……季節イベントがリアルカレンダー方式の今作で、一体どれぐらい時間が経ったのかはちょっと気になりましたが、と思ったら、3週間、経過していた(まあ、前後編で日付が進まない回などもあるので、むしろ帳尻はあった気もしますし、一週間だと風情がなさ過ぎるので、きっちり時間を経過させたのはとても良かったと思います)。
 かくしてブライアンの帰国の日、笑顔でそれを見送れず、らしくない後ろ向きさを見せるあかねに対し、はるからが前を向かせようとする事で前半の暴走との帳尻を合わせる上手い構成で、これが出来るのは成田良美さんか……逆に成田脚本で無かったらそれはそれで見事だけど、と思ったらやはり成田脚本でしたが、つくづく基礎体力のレベルが高い。
 なんというか、毎日ジョギングと筋トレを黙々と欠かさないところから出てくる脚本、みたいなイメージがあります。
 手品もアクロバットも無いけど、体幹が強い。
 飛行機の時間が迫る中、人間界の恋愛ドラマに不満たらたらの狼さんが現れると、カップル2人分のバッドエンドでピエロ様の針が進み、愛のネックレスアカンベェを融合召喚
 友達も居ないのに恋人が居るわけがない、なんかモテない男の僻みパワーみたいな攻撃に対し、綺麗事以上の反論ができずに追い詰められていくスマイルプリキュアだが、たとえ別れが待っているのだとしても共に過ごした時間が無駄な筈が無い、とピースの言葉を受けて自身の気持ちと向かい合ったサニーが立ち上がると(今回の演出は田中裕太さんですが、後の『プリンセスプリキュア』のテーゼに繋がる部分あり)、殺意を高め続けるキャンディのサポートを受けて、太陽剣唐竹割りからレインボーバースト
 狼さんが撤収し、あかねが空港へ向かって駆け出すと、ダッシュでバスを呼び止めるなお・財布を貸すれいか、バスが渋滞に巻き込まれると、追いかけてきて自転車を貸すはるか・近道を記した自作の地図を渡すやよい、とそれぞれの色を出しながら4人がパスを繋げるのが大変美しい。
 なんとか空港の見えるところまで辿り着いたあかねは転倒して自転車を駄目にしてしまうが、(ここは私に任せて先にいけ!)と自転車から迸るパトスを感じ取ると空港に向けてダッシュし、普段は後ろで結んでいる髪がゆるんでほどけて、いつもと違う表情を見せる髪型のチェンジから、ブライアンに留学の終わりを告げられた日と、ダッシュの背景を“あかね色の空”で繋げるのはパーフェクトといってよく、お見事。
 なんとか空港に辿り着くも、ブライアンを乗せた飛行機は既に飛びだった後で、涙をこぼすあかねに手を差し伸べたのは……あかねを待っていたブライアン。
 「なあ、ブライアン……その……えっと……なんちゅうか…………」
 「おおきに」
 「え?」
 「学校、楽しかった。お好み焼き、おいしかった。他にもいろんなこと、たくさん、たくさん……全部、あかねが教えてくれたんです。あかねが居たから、僕、この国が、とても好きになりました。だから……おおきに」
 「……うちも、うちも、めっちゃ楽しかった。英語教えてくれたり、手ぇ貸してくれたり、だからブライアン……こっちこそ……Thank you」
 2人は互いに満面の笑みを浮かべ、中盤のやり取りと繋げる事で“まだ名前のついていない気持ち”を貫きながら鮮やかに着地させ、青春の一コマ、出会いと別れとちょっぴり前へと進む一歩を描き、良い話でした!
 サブタイトルがセルフパロディ風味だし、主題は興味の範囲では無さそうだし、視聴と感想も約4ヶ月ぶりになってしまったのでリハビリがてら嘘あらすじとか書こうかぐらいの姿勢で、あまり期待せずに油断して見ていたら、前半に今作らしい暴走要素を押さえつつ後半でしっかりとバランスを取る構成と、あかねとブライアンの過ごす“時間”への抑制の効いた描写が冴えて戦闘後のクライマックスに美しく持ち込まれ、嘘あらすじどころではなくなる、良いものを見せていただきました。
 〔脚本:成田良美 演出:田中裕太〕の力量に唸らされた一本。
 次回――いい話が続くと思ったか? 残念これは『スマイルプリキュア』だ! と身内から裏切り者が出そうな予感。