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お金で買えるもの

仮面ライダーX』感想・第26話

◆第26話「地獄の独裁者 ヒトデヒットラー!!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
 設計図の4枚目を送りつけられた、南原博士の教え子・エガワ博士がアメリカから帰国し、その身柄をさらうゴッドのヒトデヒットラー
 マスクほぼそのままだし、部下に「総統」と呼ばれているしで、その豪速球ぶりから『X』怪人としては、キングダーク、アポロガイストに次ぐ(勝る?)知名度かと思われ、当時の他作品の例を見るに(『イナズマン』新人類帝国、『ジャッカー電撃隊』クロコダイル総統、『快傑ズバットナチスジャガー、など)、割と露骨なナチスドイツモチーフの悪は現代より遙かに平然と登場するのですが、ヒトデヒットラーの場合、ナチスドイツ云々よりも、およそ30年前まで存命していた人物をヒトデとくっつけた怪人にしていいものなのか、とはちょっと考えさせられます。
 「さすがは悪の独裁者ヒトデヒットラー、見事な腕前と、褒めてやりたいが、馬鹿者!」
 キングダークのばかーーーが炸裂し、揺れる洞穴。
 Hヒットラーの連れ帰った2人は真っ赤な偽物であり、本物のエガワ博士夫妻は、ヒッピー風に変装して、既に藤兵衛一党に保護されていたのであった。
 「敬介さんの考えた身代わり作戦、これでどうやら成功ってわけねマスター」
 「ああ、そうだな。博士も奥さんもお疲れになったでしょう」
 「いいえ。ちょっとスリルがあって」
 人間2人を犠牲にした割に、お気楽。
 「しかし……身代わりになってくれた二人は、大丈夫かな」
 そうですね!
 博士には幾ばくかの良心が残っていてホッとしましたが、身代わりは電気ショックの拷問を受けており、当然、大丈夫では、なかった。
 金をもらって影武者となった2人は、「偽物だとわかったら逃がしてくれるだろう」と大変甘い見立てで「お金に目が眩んで引き受けた」と仲間割れを始め…………わー、思った以上に、金に物を言わせて抱き込んだ、頭の軽い赤の他人だったぞーーー。
 RS編開始時、設計図を9分割して災厄の種をばらまいた南原博士の緊急処置の悪印象を和らげる為に“8人の仲間”を強調し、事件に巻き込まれるのは全く無関係ではなく、そもそも志を同じくしていた人々である、と示していたのですが、結果として、南原博士を含むこの「仲間」たちの人間性のアベレージが激しく不安になる事に(笑)
 そして結局毎回、遺児・近所の子供・身代わりにされた二人、と無関係の人が巻き込まれている(最初の姉弟は自主的に守ろうとした血縁にしても)のはもはや悪意を感じるレベルですが、今、『X』世界で最も人間性を信用できない肩書きは、「高名な物理学者」。
 作戦考案者の責任を取り、身代わりになった二人を救出に向かう敬介だが、ヒトデ使い魔の吸盤攻撃を受け、合体して現れたのはヒトデヒットラー
 「ヒトデ・ヒットラー!」
 「出たな、ゴッドの怪人め」
 「如何にも。吾輩は、ゴッド悪人軍団の一人、地獄の独裁者、ヒトデヒットラー!」
 わざわざいつもと違う軍服スタイルの工作員が機関銃を掃射すると、敬介は高いところに飛び上がってセットアップ!
 一当たりの後、おまえの相手をしている暇はない、とHヒットラーは姿を消し、周囲を探ったXライダーはアジトに繋がる隠し扉を発見。狭い通路でトラップによる銃撃を浴びるが、基本、対人用の鉛玉とか効かないので、そのまま突撃していって、蓋を閉めた(笑)
 奥へ進むと、衝撃の身代わり吊るし首!
 ……かと思われたそれはマネキンであり、仕掛けられたメッセージを読んでいる内に時限爆弾の爆発にXが呑み込まれた頃、藤兵衛一行は海岸で遊んでいる観光客のフリをしながら敬介を待っていたが、そこに迫るヒトデ部隊の潜水艦。
 さすがにヒーローの失態として後味が悪すぎるので身代わり死亡とはなりませんでしたが、殺されても仕方のない状況と不手際とそもそも雑な安全対策であり、至近距離での爆破ダメージにより左腕をギブスで吊った敬介が遅れて合流してくると、身代わりの二人は救出に成功したが重体で病院へ運び込み、命だけは取り留めたと言及して処理。
 そんな身代わり二人の安否がわかるまで食事も喉を通らない……なんて事は一切ないエガワ夫妻がホテルの部屋でくつろいでいたところ、活け作りの中からヒトデヒットラー
 エガワ夫人が図面を隠していたブレスレットはあっさり奪われ、撤収しようとしたヒトデ部隊だが、廊下でばったり敬介とご対面。
 ダメージの残る敬介は工作員にも苦戦して敵を逃がしてしまうと、藤兵衛の制止を振り切って追撃し、敬介を心配するあまり藤兵衛が同行を申し出る為、誰もエガワ夫妻の安否を確認しようとせず、どうも今回、全体的に人間の扱いが雑。
 この後の藤兵衛にはゴッド工作員との肉食み骨打つ立ち回りが待っているのですが、メタ的にいうと〔話の整合性 < 藤兵衛の立ち回り〕となっており、確かに最近ちょっと大人しかったのですが、そんなに求められていたのでしょうか、藤兵衛アクション(笑)
 幾らカイゾーグでも痛いもんは痛いんだぜ親父ィーーーと、引き続きヒトデ親衛隊に苦戦する敬介だが、そろそろオイルが温まってきた気がする、とセットアップ。
 高いところでポーズを決めると、足下に炸裂するヒトデロケットの爆発が結構派手で驚かされ、格闘アクションでヒトデ親衛隊を蹴散らしたXは、Hヒットラーと激突。ライドルホイップとヒトデスティックがぶつかり合い、使い魔を投げつけて電流を流すヒトデショック攻撃に苦しむXは、竜巻地獄で海中に引きずり込まれるが…………ありがとう親父! V3先輩と違って、俺の水中適性はAだ!!
 「Xライダー! 負けるな! 負けないでくれ……!」
 海中から飛び出し、真ヒロインの声援を受けたXは、空中でひねりをいれてHヒットラーを投げ飛ばすと、ここがベストの間合いだ! とXキック!
 直撃を受けたHヒットラーは、設計図の断片もろとも爆死を図り……え、いや、それは一番駄目では……?!
 Xライダーの手に渡る分には、まだまとめて取り返せる可能性がある(だからこそ争奪戦が機能している)わけで、RS装置を積極的に欲しい側であるキングダークが地下洞穴の奥で冷や汗を垂らす中、Hヒットラーに組み付いたXはなんとか図面を回収すると、風見先輩ばりの不死身の男ぶりを見せてリザレクトに成功し、これで残る設計図は後6枚……!
 今回は、8番勝負次なる敵は……のくだりはなくナレーションでまとめて終了し、次回――番外編?
 少々一人歩きする形で登場怪人が著名な印象ですが、中身の方は「金で雇った身代わりがヒーローの判断の甘さから重体になる」結構な問題作で、設計図を道連れに爆死しようとするHヒットラーも含めて、だいぶがたつきが多いのですが、その建て付けの悪い部分を、「影武者を金で雇ってゴッドが引っかかると、ホテルでくつろいで海鮮活け作りをいただこうとするエガワ博士夫妻」が呑み込んでいき、『X』的には面白いという、困った一本でした(笑)
 RS装置は、人類を救う天使からの贈り物なのか、はたまた命を平然と踏みにじる悪魔の兵器なのか。
 金で人生は買えるのか? 技術の発展は未来に何をもたらすのか? 幸せの為には犠牲が必要なのか?
 戦え! 考えろ! 仮面ライダーX!!