東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

ヒーロー・カタストロフ

超力戦隊オーレンジャー』感想・第43-44話

◆第43話「切り札は七変化」◆ (監督:田崎竜太 脚本:上原正三
 女装昌平の大写しから始まる悪夢のようなアバンタイトルで、地球を救えるのは、君たちしかいない!
 バラハングリー襲来、バラ蛇口ダイエット作戦、に登場した一家が三度目の登場となり、『男はつらいよ』パロディの胡散臭いテキ屋の男から、若返りの願いをかなえるという水晶玉を購入したお母さん。ところが水晶玉が光り輝くと、容姿はそのまま、意識だけが若返ってしまい、息子を邪険に扱うと、学生服姿で外へと出て行ってしまう。
 パトロール中、母親を探す少年を見かけた隊長らが事情を聞いていると、そそくさと姿を消す怪しげなテキ屋の男。
 「……見ろ。この足跡の深さ。人間ものではない」
 洞察力を見せるとシリアスに呟く隊長の芝居は格好いいので、なんとかこの路線を貫けなかったものかと思うのですが……飛ばした草履でブロック塀を破壊すると身軽な動きを見せるテキ屋の男は、隊長の飛び蹴りさえヒラリとかわすと打撃戦でも圧倒し、その正体はバラペテン。
 超力変身する赤青桃だが、謎の水晶玉空間に閉じ込められて大ピンチを緑と黄に救出されると、バラペテンは逃走。
 改めて少年に話を聞きにいくと、父と姉も水晶玉の影響で意識だけが若返っており、小学生のつもりの父、赤ちゃんになってしまったお姉さん……と、面白いを通り越して、ちょっときつい映像が続きます。
 水晶玉のスイッチを切るとあっさり元に戻り、基地で三浦が分析すると、水晶玉の正体は意識だけを若返らせる一種の催眠装置と判明。
 このままでは日本の家族が危ない、と水晶玉を売り歩くバラペテンの捜索を命じた三浦が取り出したのは……超力コスプレセット(どうして)。
 かくして黒も白になる上官命令により、樹里と裕司はペアルックの夫婦に扮し、昌平は和服で女装、桃は加藤茶風ハゲ親父、隊長は古式ゆかしいヤンキー、リキは女子テニス部員となり、作戦に物申す桃に対して、真面目な顔でカツラを被り直させる隊長は面白かったです。
 「……全開バリバリだぜぇ!!」
 「もう! ……桃ちゃんペ」
 一方、バラペテンは二度あることは三度ある一家に乗り込むと、強化した水晶玉のパワーでその欲望を解放。お父さんはカンフーを始め、お母さんはど派手に着飾り、お姉さんはギターをかき鳴らし、唯一、少年だけが正気を保つ姿をもって、純粋な少年の心が悪の誘惑に打ち勝つ象徴とするのですが、子供にとっては最小単位の極めて重要な「世界」とはいえ、敵サイドもアップグレードされた第43話において、一家族の崩壊に焦点を絞ってシリアスに描かれても正直、今そこ? 感は否めません。
 さすがに難を感じたのか、バラノイア視点から、両親に見捨てられた子供達が大量に発生している悲劇的状況が挟み込まれはするのですが、話のテンポとしてもタイミングとしてもやたら強引で、後から撮り足した? ぐらいの無理矢理感。
 ゲスト一家への焦点はハングリー回を意識してはいたのでしょうし、2クールほど前なら作戦規模としても許容範囲で、上手く運べばオーレンジャーのヒーロー性向上にも繋げられたと思うのですが、実際には、外で無意味にコスプレしている間に少年宅がバラペテンに乗っ取られている大失態。
 コスプレ回としてちゃんとコスプレに意味があるのならまだ良かったのですが、コスプレさせるだけさせてコスプレにはなんの意味も無かった(しかもその間に少年が悲惨な目に遭っていた)のはあまりにあまりで、幾らなんでもオーレンジャーが報われません。
 とにかくやたらと強いバラペテンだが、キングビクトリーフラッシュからオーレバズーカのコンボでファイヤーされ、巨大戦では使用3回目のダイナマイトタックルで木っ葉微塵。
 洗脳された一家が大暴れしていた事で家屋は崩れ去るが、家は無くとも家族は元気、一から出直しです、と明るく振る舞うゲスト一家の旅立ちをオーレン一同が笑顔で見送り……まあ少年からの情報が無ければ超力戦隊はいつまでも無駄に外を走り回っていた事になるので、後日、謎のお金が三浦参謀長の私的なダミー会社名義で振り込まれる予定です。

◆第44話「地上最強の美女」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 見所は、ローキックでマルチーワを蹴り転がす三浦参謀長。
 「楽しみだなぁ……オーレンジャーが何をプレゼントするか」
 迷子の犬を利用した罠により、マルチーワの化けた謎の美女に男衆が洗脳を受け、それぞれの一番大切なものをプレゼントさせる事で、きっと巨大ロボが手に入るに違いない……と考えるバラノイア上層部だが、一番手の隊長が持ってきたのは、「日本一長い母の手紙」。
 ……確か「日本一短い……」が話題になった時期があった筈なので、そのパロディだとは思われますが、この最終盤に来てまた妙に緩い空気が持ち込まれて、この期に及んでも作品の味付けが迷子。
 長石監督もどうも作品を掴みきれていない感が強くて演出ラインが安定せず、ヒーロー作品へのブランクや、参加タイミングの悪さもあったかとは思いますが、翌年の『超光戦士シャンゼリオン』では既に切れ味を取り戻しているところを見ると、作品との相性も良くは無かったのだろうなと。
 続けて昌平と裕司が持ってきたのは、ラーメンの無料サービス券と、預金通常残高3,982円で、これが序盤の内だったら、キャラの愛嬌に繋がるくすぐりや、鋼鉄の軍人である超力戦隊メンバーにも「公」と「私」を切り分ける精神がある事の表現に繋がると共に、そんな「公」「私」の違いを理解できないマシンが作戦に失敗する……といった面白みも出たと思うのですが、なにぶん第44話なのが、遅きに失した感。
 ダメだこの連中、と謎の美女がマルチーワの正体を現すとブルドントも物陰から登場。樹里と桃もやってきて5人が超力変身すると、犬はバラガードの正体を現し、まあ別に今更マシン獣が増えようが増えまいが、凄い勢いで変身解除まで追い詰められる5人の姿に、もう乾いた笑いしか浮かびません。
 戦隊ヒーローが苦戦したり罠にはまる事そのものは珍しくありませんが、オーレンジャーの場合、終盤に行くほどに揃ってぽんこつになっているのが辛い。
 危うしオーレンジャーのその時、飛び込んできたのはキング先輩……ではなく、太陽爆破を阻止し、地球へ帰還したガンマジンの像。
 「こうなったらガンマジンに頼むしかないわ」
 呪文を唱え鍵を回した桃が、もうオーレンジャーは駄目だ、とガンマジンに戦士の紹介を頼むと、ガンマジンは「強いだけではない、いい男でござる」と自ら立候補し、ここに結成される新たなユニット、ふたりはガンピン。
 「もはや、お主たちの出る幕はござらぬよ」
 洒落にならない発言と共にガンマジンとオーピンクがバラノイアに挑むと、余った4人は腕組みしてそれを見つめ……曽田先生にしても、『カーレン』のサブ参加回は割と面白かったので、なんかもう、何がどうしてこうなったのやらですが、オーレンジャー』という作品そのものが壊れ気味(メインライターの酷使を始めとした制作体制の限界×大量の商品投入が巻き起こした負のカタストロフと思う他なく)。
 皇帝夫婦のラブラブアタックさえ跳ね返すガンピンだが、バラガードの奇襲に怯んだ隙にマルチーワが高みの見物を決め込んでいた4人に襲いかかり、またもさっくり洗脳されてしまう野郎トリオ。
 ここで、あっさり洗脳されてしまった男3人ではなく、洗脳したマルチーワの方に怒りを燃や樹里は基本いい人なのですが、中盤に何度かフォローが入ったものの、跳ねきれず仕舞いだったのは惜しかったところ。
 隊長が好きすぎるのはさておき、実は約30年ぶりに見て、ここにキャラクターとしての鉱脈があったのではないかと一番思ったのは樹里で、姉御肌で割と懐が広いモデル系美人というのは、後に一派をなす高ヒエラルキー系ピンクへの開き損ねた芽みたいなものは感じました。
 その樹里の危機に、樹里を助けてくれと頼むピンクだがガンマジンはあくまで「桃を守るのが契約」と拒み、「一緒に戦う」の意味を独自に解釈すると、ピンクが樹里を助けに行く事さえ阻む、頑固というより呪いのアイテムぶりを発揮。
 ピンクはガンマジンに平手打ちを決めると樹里を救うが、洗脳された男3人とバラノイアに囲まれてガンマジンも危機に陥り、前作のニンジャマンに愛嬌をつけていったのと同様、ここで少し、ガンマジンにも己が己であろうとする為に曲げられぬものがある姿を可愛いげとして見せようとする意図はわかるのですが、その為に踏みつけにされるのが既存の主人公ヒーロー達なのがとにかく飲み込みにくく、当たり前に守ってほしい要素が、むしろいの一番に踏みにじられるのが、辛い。
 そして大体、『ブルースワット』第46話「GP(ゴールドプラチナム)戦闘不能!」(監督:石田秀範 脚本:浅香晶)と似たような事をしているなと(意識してなっているというより、類似の構造から結果的に重なっているというか)。
 「逃げたら拙者は、ガンマジンでなくなるのでござる」
 人々の願いを叶える存在であり続ける為には、桃との約束を破るわけにはいかない、とダメージを負いながらもガンマジンは立ち上がり……まあ一応、マルチーワ初登場回において無敵の戦闘力の持ち主ではないと描かれているのですが、出だしあまりにも規格外の存在として描いてしまった為に、ダメージを受けている事に説得力が薄いのも困ります(笑)
 「馬鹿笑いもそこまでだ」
 洗脳トリオがバラノイアの戦力に加わり、マルチーワ美女が高笑いを上げると、そこに、とうっとばかりに三浦が登場。ガンマジンを超越的存在から引き下げようとしているまっただ中に、前世の記憶を取り戻した三浦が風見志郎ムーヴを決めてひきつった笑いしか出ませんが、マルチーワ美女の催眠ウインクを、三浦は謎のポーズで無効化。
 「なぜかからん?!」
 「はは、私ほどの古狸になると、どんな美しい女にも、心を奪われる事はない!」
 若い頃に風○で暮らした苦い思い出でもあったのか、取りようによっては悲しい言葉と共に三浦が催眠を打ち破ると隊長たちも正気を取り戻し、《スーパー戦隊》名物のトンデモ長官作劇ではあるのですが、あまりにも唐突すぎて、五枚目の白牌が出てきて大三元を宣言されたような気持ち。
 ……まあ、三浦がイカサマ雀士ぽいといえば、ちょっとぽいですが(笑)
 経緯はともかく五人並んだオーレンジャーは、改めて超力変身から主題歌バトルでヒーローのターン……の流れだったが、この不始末のケジメを付けさせてくれ、とガンマジンが懇願。
 「ガンマジンは、どんな願いもかなえねばならんのだ。人々は拙者に、最後の願いを託しているのだ。その人々の信頼を、裏切るわけにはいかん。拙者は、人々の夢と希望であり続けなければならんのだ」
 ガンマジンとは如何なる存在なのかが語られ、オーレンジャーの到達点になってもいいヒーロー像を、7話前に発登場したキャラが持っていくのですが、作品としてのヒーロー性が、積み重ねられていくのではなく、横に滑りながら上書きされていく『オーレン』スタイル。
 おどれら死にさらせぇぇぇとバラノイアに突っ込んでいったガンマジンが銃火に倒れると、結局オーレンジャーが割って入ってラブラブアタックを跳ね返し、超力ダイナマイトアタックでバラガードを粉砕。
 ……ガンマジンの姿と言葉にヒーローの炎が再び点ったとかそういう事なのかもしれませんが、根本的なところで物語の主体がオーレンジャーに無いのでこれといって劇的にならず、傍観と洗脳から急にマシン獣の撃破だけ持っていったオーレンジャーも、結局勝利を得ていないガンマジンも、どちらもさして得をせず、話の焦点が往左往。
 これなら、先のガンマジンの言葉に続いて、オーレンジャーが人々の願いの為に一緒に戦おう的な事を言ってガンマジンも少し歩み寄りを見せ、ヒーロー像を共有しながら横並びになる……とかで良かったように思うのですが、重ねて、曽田×長石で、これが出てくるのがショック。
 巨大化したバラガードに対し、オーブロッカーが二刀流で槍と盾を切り裂くと、タックルボーイを召喚。ダイナマイトタックルで瀕死となったバラガードのトドメをガンマジンに任せる接待バトルでマシン獣を葬ってガンマジンはアイデンティティの喪失を回避し……某ゲント隊長にも、アースガロンにこのぐらいの配慮が欲しいですね!
 「やはり、オーレンジャーのチームワークに優るものは、ないのでござるなぁ」
 ……え。
 「俺達こそ、約束を守り通すという事の大切さを、ガンマジンに教えてもらった」
 ……まあその約束へのこだわり、災厄と表裏一体ですが。
 う、うーん…………前作における“三神将などの超越的存在も含めてチーム:カクレンジャー?”と同じように、ガンマジンも共に戦う仲間として物語に落とし込みたいのだろうとは思うのですが、太陽帰りの消耗もあったのかちょっと弱っているところに手を貸しはしたものの、別にガンマジン側から現生人類の理屈に歩み寄りを見せているわけでもなければ、ガンマジンが認めるオーレンジャーのチームワークとやらが劇的に描かれて一目置く事に説得力が生まれているわけでもなく、人外の理屈で動く存在とちょっと理解し合ったような気持ちになって、後で手痛いしっぺ返しを受けるパターンなのでは、これ……?
 こう見ると次作『カーレン』では、“異質の正義”を掲げてやってきたシグナルマンが、地球人の倫理と歩み寄る為の回路として市太郎が機能していた(配置されていた)のだな、と納得。
 次回――本格的に物語の軸が行方不明なまま、とうとう基地も壊滅。