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虎になれ

『バトルフィーバーJ』感想・第16話

◆第16話「格闘技! 闇の女王」◆ (監督:竹本弘一 脚本:江連卓)
 ここ数話、掴みやすくなってきた……と思っていたところに、どう消化すればいいのか目が白黒する話がジャンピングニードロップ!
 謎の網タイツ軍団にプロの格闘家が闇討ちを受ける事件が相次ぐ中、スナックケニヤで働くケイコの元にどういうわけか闇の女王決定戦のチケットが届き、その話を聞かされた京介とダイアンは、チケットを奪って試合会場である悪魔館へ。
 ケイコは以前の目玉焼き作戦の際にエゴス会員登録をしている可能性があるので、会員特典が当たったのかもしれませんが……あまりにも導入が雑すぎて、これが潜入捜査なのかさえ不明瞭なまま、始まる闇の女王決定戦(女子プロレス)。
 盛装に仮面をつけた男女が勝敗に金を賭けて大騒ぎする、摘発しなくていいのかな空気の中、戦いに勝利を収めたブラックタイガーマリー(演じるのは『ジャッカー電撃隊』でカレン水木役だったミッチー・ラブさん)が新たな闇の女王の座に就き…………あ、あれ? なんか、普通にスポーツ新聞の記事になっている。
 えーと……レフリーの人が「この試合は、時間無制限、反則お構いなし。相手が死ぬか、完全にギブアップするまで、戦います」と正真正銘のデスマッチルールを宣言した上に、血しぶきこそないものの、如何にもな退廃的で違法な闇の格闘技大会、といった描写で進行していたのですが…………私これまでずっと、BF隊の倫理観にちょっと問題があるのだとばかり思っていたのですけれど、狂っていたのは世界の方だったの?!
 ここは、ゴッド機関が滅ぼし損ねた『X』日本の未来の姿なの?!
 一同、バナナを頬張りながら、試合から感じたエゴスの気配について云々し、曙の口からは「闇試合」という言葉も出ているのですが、会話内容と小道具の新聞記事が全く噛み合っておらず……もしかして、これまでも伝が情報収集に読んでいた新聞は、地上では一般流通していない、裏社会スポーツだったのでしょうか。
 それはそれとして、子供達に人気の格闘家が次々と狙われている事態に、次に狙われるのはボクシングのチャンピオン・沖山に違いないと踏んだBF隊は、最近出番の少なかった伝が丹下段平コスプレでトレーナーに変装して護衛に付くが、チャンピオンも、練習の合間に裏社会スポーツを読んでいた。
 ど、どこで買えるんだ、裏社会スポーツ!!
 一方エゴスでは、新たな御子・格闘技怪人が誕生し、ただでさえ世界観の足場が揺るがされているところに、鋼鉄の襦袢アーマーをまとった素面の巨漢が登場し(後の『超電子バイオマン』のモンスターを彷彿とさせる見た目)、どんどん消化が難しくなっていきます(笑)
 過去の素面怪人だったバラリンカも江連脚本だったので、この辺りどういう経緯だったのだろうと戦隊怪人デザイン大鑑『百化繚乱』を確認してみたところ、デザイナーの久保宗雄さんコメント(※あくまで約30年前の仕事に対するコメントである事はご留意下さい)によると、
 バラリンカは
 「演じる潤真理子さんのスタイルを活かした衣装的なデザインにした」
 格闘技怪人は
 「これはまったく描いた覚えがない」「おそらく現場の造形か美術側でまとめたデザインだと思います」
 との事で、またデザイン画には「顔をプロレスラーの覆面マスクにする」と記入されているものの実際にはなっておらず、前者はデザインありき、後者は現場の紆余曲折の末に素面の怪人となった模様。
 バラリンカの時はまだ神秘的な雰囲気がありましたが、今回は結果的にただの悪漢レスラーが誕生して何を口にしているのかどんどんわからなくなっていく中、わざわざヘッダー自らが出向いてきて沖山を格闘技怪人の対戦相手に指命すると伝は当然これに反対。
 だが、ブラックタイガーマリーを名乗る女は行方不明となっていた沖山の妹であり、裏社会スポーツ紙面でその消息を知った沖山は、妹を取り戻す為、格闘技怪人との戦いに臨む事に。
 両親を早くに亡くし、貧苦の中で拳一つで成り上がろうとした兄妹の内、兄を想うあまり闇へと道を踏み外した妹の悲劇が物語の軸といえば軸なのですが、その部分が“なんとなく伝わるだろう”というメタ的な文脈頼りな上、闇の格闘女王マリーと、エゴスの格闘家闇討ち事件の間には特に繋がりが描かれずに、エゴスの目的(本来はこれがエピソードの導線)が不明瞭なまま「マリーの生き別れの兄が標的に選ばれた」事で強引に接続を図る為に、しっちゃかめっちゃか。
 エゴス網タイツ部隊の闇討ちによって集めたデータを元に格闘技怪人が誕生し、子供達のカリスマに取って代わろうとした……みたいな妄想でスキップされた空間を埋められない事は無いですが、あまりにも隙間が多すぎますし、沖山が襲撃を受けた際に網タイツ部隊にマリーが居て互いに気付く、ぐらいの接点は事前に欲しかったところ。
 概ねミッチー・ラブさんコスプレ回(浴衣にセーラー服にレスリングコスチューム)なので、話の筋は二の次でインパクト重視の闇の格闘大会だったのかもですが、そのミッキー・ラブ演じるブラックタイガーマリーはマリーで、一人だけ『タイガーマスク』の世界に生きているので、軸が行方不明な物語が糸の切れた凧のように、歪む時空の中を彷徨っています。
 ここはもしかして今、山の怪異が常識な水沢又三郎(※翌年、『ウルトラマン80』に参加した際の江連さんの別名義)ユニバースなのか。
 このままでは兄が殺されてしまう、とエゴスを裏切り兄を助け出したマリーは格闘技怪人に挑みかかり、見た目はただの悪漢レスラーですが実態はエゴス怪人なので当然といえば当然ですが、2、3発蹴られたら、凄くあっさり死亡して呆然。
 マリーの亡骸を抱きしめ、怒りの沖山が格闘技怪人に挑もうとしたところで、伝から連絡を受けていたBF隊が揃い踏みし、悲劇性を強調しようとするあまりに、ヒーロー登場としてはあまりにも感じの悪いタイミング。
 格闘技ロボットが大暴れする中、5人がかかりで格闘技怪人に組み付くも投げ飛ばされたBFは、改めてスクラムからペンタフォース大車輪を放ち、棒立ちで待ち受ける怪人の姿にアーマーの一部アップ画像が重なるので、鍛え上げた筋肉で弾き返したりするかと思ったら、全くそんな事はなくあっさり爆死しました。
 何故か巨大ブーメランを投げて襲ってくる格闘技ロボットは、前回同様にバトルシャークに足を引っかけられると、BFロボが地上に降り立ち、ジェットオン。
 前回の今回で、ビーム攻撃で刀を落としたBFロボだが、バトルマサカリで反撃すると目を輝かせ、いつもと違う正面からのモーションでクロスフィーバー! 改めて電光剣を引き抜くと唐竹割りでフィニッシュし、前回とは違う残心を決めるのであった。
 そしてマリーの死体はリングの中央に寝かされると、弔いのゴングが鳴り響き……邪悪なエゴスにも、人間の心から愛と希望は消せないんだ、とナレーションさんがまとめるのですが、雑すぎる導入・世界観をカオスに叩き込む新聞&ゲスト&怪人・エゴスの目的を描かずに別棟の悲劇と強引に接続の全てが折り重なって消化困難な迷宮を生み出すに至り、胃がただれそうなエピソードでありました。