『仮面ライダーX』感想・第21話
◆第21話「アポロガイスト最後の総攻撃!!」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝)
漆黒のウェスタンルックに身を包み、アポロン宮殿で日課の射撃訓練に励むアポロガイスト室長、スローモーションで回転しながらの曲撃ちが滅茶苦茶格好良く、今回はもう、ここだけで120点。
帽子を投げ捨てながら、スタイリッシュショットを華麗に決める室長だが……
(しまった……外れた)
自らの僅かなミスに大ショック。
「…………警備隊長、この一週間の俺の、標的データを持ってこい」
データを確認した室長は、三日前から一発ずつ射撃のミスが増えている事を確認し、指先の感覚に狂いが生じている事を自覚。
かつて再生強化手術を担当した宮本博士の元へ向かうと、再生後の活動には一ヶ月のタイムリミットがあった事を知る。
「まず、指が痺れだし……次に、足の自由がきかくなる。そして……脳波が止まって死ぬ」
「なに?! ……その最後はいつだ」
「三日前に指が痺れたのだったら、早くて今日いっぱい。遅くても明日」
急ピッチだった(笑)
ゴッドとしては、自棄になってネットで内部告発でもされたら困る、という判断も理解はできるものの、事前に教えていなかった為に、あたら有能な人材が本番前の練習に明け暮れている内に突然死を迎えてしまうところでしたが、負けの込んできた幹部が落ち目の末に詰め腹を切らされるのではなしに、自発的に最後の戦いに挑む流れとしては、上手い動機付け。
延命の為の再手術を求めるアポロガイストだが、宮本と共に手術を行ったハヤタ博士の力が無ければ不可能だと拒否され、過去にカッとなって執行した処刑が巡り巡って自らの首を絞める悪の因果応報も絶妙なスパイス。
……ちなみに、該当エピソードでは問題の人物は「カワカミ博士」と明言されていたのですが…………「川上・逸太」博士とかなら、辻褄は合いますね!
宮本を脅しつけたアポロガイストは、Xライダーのパーフェクターがあれば延命処置を施せるかもしれないと情報を聞き出し、地味な扱いの変身アイテムにフォーカスするのも上手く、冒頭から室長にスポットライトを当てながら、大技小技を駆使してサブタイトル倒れにならないテンポの良い盛り上がり。
「ふっふっふふふふ……いよいよ、否が応でもXライダーを殺さなければならないか。…………宮本博士、礼を言うぞ」
ゴッド秘密警察の第一室長として、天井張り付きはしても礼節は忘れないアポロガイストは、
「――用が済んだ奴は死ねぇ!」
と、期待に応えるマシンガン裁きで宮本博士を葬り去り、狙っていた可能性もありそうですが、今作ここまで屈指の名場面「アーム爆弾で一緒に死ねぇ!」も彷彿とさせて素晴らしかったです(笑)
ゴッドの優秀な協力者を独断で消していいのかどうかは悩ましいところですが、この博士、視聴者目線ではしれっと生きているのも大問題だったので、室長に始末させるのは、巧い決着。
「……早くて今日、遅くとも、明日いっぱいの命か」
時間切れの迫るアポロガイストは、宮本博士の姿をしたメッセージ爆弾を敬介に送りつけると、チコとマコを人質に取り、アポロン第二宮殿で待つ、と最後の挑戦を挑む。
「Xライダー、アポロガイストは楽しみに待っているぞ」
チコとマコを助けようと喫茶店へと急ぐ敬介だが、店内は既に荒らされており、カウンターの上に乗せられていた、アポロガイストモデルの総司令人形から響く声。
「アポロガイストは、やるといったら必ずやる。12時間以内に、アポロン第二宮殿まで来る事だ」
「待てアポロガイスト! 俺はアポロン第二宮殿に行く道を知らない」
そこ、ちゃんとしていて良かった(笑)
「勿論、アポロン第二宮殿への地図は君に渡す」
室長も、ちゃんとしていて良かった(笑)
人形が消滅すると後には地図が残され、それを手に取った敬介が、アポロガイストの告げた「無事に辿り着けるかどうか」の言葉に首をひねると突如としてがしっと足首を掴まれ、店内に倒れていた客は全て、再生怪人トリオの変装だったのはまんまと驚かされ、立花コーヒーショップがまたも惨劇の舞台になる事は回避されました。
袋だたきにされる敬介は、なんとか外へ飛び出すと、セットアップ!
見得を切ったところでアイキャッチに繋がるのも大変格好良く、物語の節目となるアポロガイスト退場編で、演出もキレキレ。
Xライダーは、ライドルホイップを突き刺してのライダー電気ショックでユリシーズを葬り……相変わらず、ホイップで怪人を刺しに行く時の構えが明らかにヤクザで、神啓太郎は何を参考に幼い敬介を鍛えていたのか気になります。
続けて、スティックによるライダー脳天割りでプロメテスが両断され、相手が再生怪人なのをいい事に、ライドル大暴れ。
立て続けの惨劇に俊足を活かして逃げだそうとしたアキレスにはライドルロープが絡みつき、このまま、ライダー縛り首! が炸裂してアキレスがぶらぶらと風に揺れてしまうのかとドキドキしましたが、凄い勢いで藤兵衛が走ってきた事で回避され、アトラスを押さえこんだまま合流。
正直なところアポロガイストにイラッとした事があるだろ? と甘言を弄してアキレスを裏切らせたXが捕まったフリをして第二宮殿へと向かう一方、荒らされた店内を片付けながらゴッドに愚痴る藤兵衛の前に、ポンと降ってくる札束。
「はははははっ、それだけあれば、店の修理に足りるかな?」
いい声を響かせる事で時空と視聴者の認識を歪め、カウンターの奥から現れたのは、アポロガイスト室長その人。
……つまり、先程の総司令人形からのメッセージはカウンターの下に隠れていた室長の肉声だったの?! Xが適度に弱ったところで出て行ってトドメだけ刺そうとしたら外へ逃げられたので、仕方なくじっと座り込んでいたの?!
「神敬介の香典だ。たとえ敵にでもいい印象を残しておきたいからな」
ゴッド秘密警察の第一室長として、不法侵入はしても冠婚葬祭には気を遣うアポロガイストは、殴りかかってきた藤兵衛を気絶させて真ヒロインの身柄を確保し、敬介がアキレスを裏切らせる若干無理のある展開に足下をすくわれずに、もう一手を打ってきたのはホッとしました(笑)
敬介がアキレスと共にアポロン第二宮殿に辿り着くと、待ち構えていたアポロガイストは、カウンターの下で待機中に裏切りを察知していたアキレスをあっさり射殺。
どうせアキレスが手にしているのはフェイクだろうと思い込んでいたのか、アポロガイストがパーフェクターの確保に失敗すると、警備隊を蹴散らしながらマコとチコを探す敬介の前には更なる再生怪人軍団が大盤振る舞いされて、セットアップ!
再生怪人を次々と屠り、初めての名前付き投げ技・ライダーハンマーシュートでフィニッシュを決めたXは、いよいよアポロガイストとの一騎打ちの場に辿り着くも人質を突きつけられるが、アポロガイスト迂闊! 藤兵衛の真ヒロインパワーが発動!!
ギロチンにかけられた藤兵衛の危機に、即座にXが呼び出したクルーザーのオート体当たりにより、死刑執行役だったメドウサの首が逆に落ちると、藤兵衛はチコとマコの救出に向かい……人質に取ればヒーローの力を引き上げるし、放置しようものなら独力でマコとチコを救出しかねないし、その場で始末しようとした日にはカウンターの下から高笑いと共に風見先輩が出てくる可能性が充分以上にあり、立花藤兵衛、悪の組織にとってなんという厄介な存在。
「ゆくぞ!」
「来い!」
改めての主題歌インストバトルとなり、ゴッド工作員を蹴散らした藤兵衛がマコ&チコを救出すると、激闘の火花を散らす赤と黒。
ライドルが唸り、サーベルが閃き、鋼と鋼がぶつかり合い、シールドが宙を舞った末、アポロガイスト必殺の銃弾は、Xライダーの遙か後方で爆炎をあげる。
「聞け、Xライダー。俺はまもなく死ぬ。この運命からは逃がれられない」
「死ぬ? おまえがか」
「だが一人では死なぬ。Xライダー、貴様も道連れに地獄の旅立ちだ!」
戦場での決定的な射撃のミスに、肉体の限界を受け入れたアポロガイストは、「ゴッドよさらば」と一声叫ぶと、捨て身のアポロン火の玉アタックを放つがXキックによって跳ね返され……約1クールに渡り死闘を繰り広げてきた幹部との決着だけに、X二段キック(何故かアキレス戦の一度しか使われていない)ぐらい使ってほしかったところで通常技なのは残念でしたが、ゴッド秘密警察第一室長・アポロガイスト、ここに大爆死。
「ゴッドの偉大なる好敵手、アポロガイストの最期だ……」
Xは「アポロガイストへの弔意だ。たとえ敵にでもいい印象を残しておきたいからな」とその強敵ぶりを讃えるが、そこに響く、謎の声。
「俺の名は、キングダーク。いずれ貴様と戦う事になろう。Xライダー、会う日を楽しみにしているぞ」
幹部キャラが爆死すると、どこからともなく次の幹部の到来が予告されるのはデストロン首領仕草として著名ですが、果たして、キングダークとは何者なのか。
さすがに『X』において視聴前から存在を知っている要素の一つでしたが、一人称「俺」にビックリです。後、第2話ぐらいから後ろの方に居るキャラだとばかり思っていましたよ!(笑)
第8話で先行顔見せすると続く第9話から本格登場し、長坂さん降板後の『X』に新たな面白さを提供して物語のテンションを維持するのに大きな役割を果たすと、爆死休みを挟んでの再生復活により、約1クールの間、Xライダーの宿敵として互いを「さすが……」「さすが……」と持ち上げあった名悪役、ゴッド秘密警察第一室長アポロガイスト、今度こそ(多分)、完全退場。
復活後はXライダーに執着しすぎる姿勢が、内部監査の男ポジションで見せていた面白さを削いだり、脚本陣に戸惑いも感じられたホラーシリーズ突入の煽りを受けて知力の低下を感じさせたりもしましたが、元より期間限定の強化復活ならば、打倒Xライダーに意識が向くように脳に調整を施されていた可能性は高く、ゴッド側のメリットとデメリットを計算した調整としては納得の範囲。
元より、仕事への熱意はあっても戦士としての美学とかあまり無い人だけに、万全に戦える可能性も低い自身のタイムリミットを知ると、「誇りを賭けた一騎打ち」には全くこだわらず、「何がなんでもXを倒す為に、秘密警察第一分室の予算を全て投入しての総攻撃」で人質から数を頼みの消耗戦を展開したのも、らしくて良かったです(笑)
それだけに、復活直後に無駄な美学を発揮してXを捕らえるに留め、カワカミ・ハヤタ博士殺害の原因も作ったくだりが話の都合丸出しだったのは惜しまれますが、脳改造に用いたデータの中に、余計なサンプルが入っていたのかもしれません。
役者さんの美声が強烈な破壊力で、あらゆる台詞を3割増しほど面白くするブーストもありましたが、人間体・怪人体ともにビジュアル面での完成度も素晴らしく、格をなるべく落とさない形での最終決戦への突入から、最後まで組織に忠誠を尽くして(ちょっと身勝手な処刑はデフォルト)の爆死でフィナーレを飾り、職務に生き、職務に散り、己の役目を貫いた、いい悪役でした!!
エピソードしても、脚本・演出ともに鮮やかにまとまり、アポロガイスト退場にふさわしい見事な一編で大満足。