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ガンマジン、翔ぶ

超力戦隊オーレンジャー』感想・第41-42話

◆第41話「危険なふたり!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 地球と宇宙、別々の場所に居るマルチーワと新生ブルドントの笑い声が重なるのは良い導入で、ガンマジンさえ地面に転がす圧倒的攻撃力を見せたマルチーワは、前回に続いて完全にニューヒーローな見せ方で飛び蹴りを連発し、演出サイドに若干のやけっぱちを感じます(ここでマルチーワをヒーロー演出で見せる意味は全く感じられないので……)。
 超力戦隊+キング先輩+ガンマジンを蹂躙し、力の差を見せつけたマルチーワはその矛先を月面に逃げ帰ったボンバーへと向け、ヒステリアの命で未来の皇妃になる為に眠っていたが、その力を注がれて覚醒するとボンバーの始末を任された事を明かす。
 「つまりあなたは、もうおしまいってこと。おほほほほほ!」
 更にそこに現れる、最強の戦士としてフルモデルチェンジしたブルドント。
 「どうしたボンバー・ザ・グレート? それでバラノイア帝国の皇帝といえるのかい?」
 コメディリリーフから最強の敵へ、関智一さんの芸幅も活かしたブルドントのバージョンアップには成る程感がありますが、ブルドントとマルチーワがラブラブアタックでボンバーのミサイルアタックを跳ね返し、何故この流れで、パロディめいた技をギャグみたいなエフェクトで入れるのか……。
 完敗を認めたボンバーは惨めな敗残者ムーヴで生き残りを図るが、首ちょんぱされたブルドントの恨みを誤魔化せる筈もなく容赦のない制裁を受け、ブルドントとマルチーワがそれぞれボンバーの両手首を切り落とす事で、苛烈な酷薄さをアピール。
 調子のいい悪党であるボンバーは、自分のことを棚にあげて二人の残酷さを罵るが、地球侵略の道具として強制的に改造を施されると正気さえも奪われ、バッカスフンドと入れ替わりで登場するも即格下宣言が飛び出した時はどうなる事かと思いましたが、“繋ぎ”の強敵にして、最終的には新生バラノイア夫婦の邪悪さを示す踏み台になるのは、上手く使い切られました。
 なんといっても檜山さんの味が、格は低いが嫌いになりきれないキャラへと短期間で成長させ、後々の“ヤンキー声の達人”ぶりを見せてきましたが、悪役サイドを、着ぐるみ×ベテラン声優の組み合わせで始めた今作が、着ぐるみ路線はそのまま、当時売りだし中だった関智一vs檜山修之の構図をもって終盤へのスプリングボードに至ったのは、面白いところ。
 ……メタ的な穿った視点としては、今作そのものが、《スーパー戦隊》における体制変更の、一つ節目の作品でもあったりしますが。
 狂ったように笑い声をあげ続ける改造ボンバーが地球を攻撃し、
 「ときどき正気に戻るようにしておいたんだ」
 は、今回のハイライト。
 狂気と正気の間を行き来しながら暴れ回るマッドボンバーにオーブロッカーが苦戦するとキングPが参戦。続けて、もう出番がないのではと心配していたタックルボーイが、呼ばれてホッとしました(笑)
 超力ボウリングアタックがボンバーに大ダメージを与えると隊長がバトルフォーメーションを宣言し…………な、中身は?!
 …………て、オーブロッカー……入ったーーー!!
 入ったら面白いなとは思っていましたが、まさかそのまま入るとは(笑)
 ……まあ、あまりにも突発的すぎて、メタ的な驚きはあっても物語敵な盛り上がりは特に発生しないのですが(笑)
 「とうとう、やられちまったぜ……バラノイアの皇帝になろうなんて思ったのがいけなかったんだ。しょせん俺は一匹狼だったんだ……。がぁぁっ! アディオス……オーレンジャー……!」
 超伝説ビームの直撃を受けながらも、歯を食いしばって末期の台詞を遺したボンバーは倒れ、大爆発……するかと思いきや、ブルドントの謀略により、その素体であったミサイルが背中から機動すると、太陽へと向かって発射される!
 ブルドントはボンバー・ザ・グレートを用いた二段構えの作戦として、太陽爆破による地球寒冷化作戦を仕込んでおり…………えー……その場合、月面基地は大丈夫なのでしょうか。
 「一刻も早く阻止しないと……我が地球は」
 まさかの太陽へのミサイル攻撃に、参謀長が思わず本音をこぼし、やはり貴方は、地球は我がものだと思っていましたね。
 「行けグレートミサイル! 太陽を木っ葉微塵にしてしまえ!」
 ブルドントが快哉を叫び、少なくとも赤ブロッカーは単独での大気圏突破能力があるにも拘わらず、これといって策を練るでも足掻きを見せるでもなくオーブロッカーを下りたオーレンジャー一同がミサイルを見上げる中、前回からご主人様継続中の八百屋の少年の願いを聞いたガンマジンが巨大化するとミサイルを追って勇躍飛翔していき、
 「頼むぞ、ガンマジン」
 ……で真剣にいいのでしょうか、オーレンジャーの立ち位置は。
 歴史が繰り返される主役剥奪に軽く絶望しつつ、予告でもアバンタイトルでも強調されていたガンマジンによる太陽爆破阻止がクライマックスとして描かれ、宇宙空間でグレートミサイルをキャッチしたガンマジンは特にこれといった危機に陥る事なく太陽突入コースを外れると、大宇宙の虚空にミサイルをぽいっと投げ捨て、あっさりとターン(笑)
 これがそもそもの主役クラスだったら、あまりのトンデモぶりに面白く感じていたかもしれませんが、数話前に突然出てきた謎の超存在なので、心に響いてくるものがこれといってないまま、茫漠とした真空の闇に全てが呑み込まれていきます。
 「オーレンジャー、ガンマジンは、死んじゃったの?」
 「心配するな。ガンマジンは生きている、必ず」
 確かにまあ、地球からはガンマジンがどうなったのかはわからないにしても、直前の映像でこれ以上なく無傷を描いているので、無意味にお約束を持ち込んだ空疎極まりないやり取りとなり、いくら視聴者と劇中人物の持っている情報が違うとしても、これでは悪ふざけのようになってしまいました。
 月面基地では新皇帝ブルドントと皇妃マルチーワの結婚式が執り行われ、超力基地に送りつけられてくるその映像(笑)
 全エネルギーをマルチーワに託し、真っ白になって杖を突くヒステリアが姿を見せると、新バラノイア帝国の誕生を宣言し、ここにブルドントはカイザーブルドントへとクラスチェンジ。
 道化を貫くアチャとコチャはお家騒動の荒海をまんまと泳ぎ切り、さすが、一度は実質的な叛乱を起こしながら(バラプリンター回)、不問に付されたマシン獣(笑)
 バラノイアの世代交代に物凄い尺が割かれた後、オーレンジャー5人が月面を見上げて手を重ねる、第2話ラストのセルオマージュにより最終章開幕が告げれる場面は格好良く、悪役サイドの強化を皇位継承の形で描くアイデアも嫌いではないのですが、その継承において、バラノイア帝国とは如何なる「悪」なのか、というテーゼの掘り下げが無いに等しかった事と、物語の中心からオーレンジャーがすっかり外れてしまっている点が、とにかく残念。
 次回――主役剥奪の先に待ち受けるもの、それは当然、は・り・つ・け。

◆第42話「戦隊公開処刑!!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 罠だとわかっていても出ていかないといけないのが正義の味方の辛いところ……とはいっても余りにも安直なトラップで誘い出されたオーレンジャーは、いきなり皇帝夫婦の強襲を受け、(何故か)ドリンが物陰から見守る中、バラハンターの攻撃により一網打尽にされてしまう。
 超力ブレスを無惨に破壊され囚われの身となったオーレンジャーの姿はバラノイアによって全世界(宇宙?)中継され、
 「みんなよく聞け。あと一人、オーレッドを捕らえたらただちに処刑を実行する」
 ……あ、普通に隊長だけ、逃げ延びていた(笑)
 個人的には、第1話で隊長に魂を鷲掴みにされたので許容していますが、前作におけるサスケ以上の偏ったフォーカスぶりは作劇を狭めると共に澱みを生んでおり、さすがに最終クールに入っても全く同じパターンを繰り返すのは、厳しいところ。
 その隊長にしても、キング先輩とガンマジンの登場で引き立て役への後退を余儀なくされた現在では「現代人最強」ぐらいのポジションになっていますし……とにかくギミックの量に振り回されて、物語として芯が行方不明になってしまった上で誰も捜しにいっている余裕が無いのが、辛い。
 壊れたブレスを拾って基地へと駆け込んできたドリンは、バラハンターに怯えて5人を助けられなかった事を悔やむのですが、昨今の戦力比を見るに、あそこでドリンが声を掛けようが掛けまいが、どのみちオーレンジャーは壊滅していたので気に病む必要は無いと思います!
 そもそも、ここ数話チラリとも出てこなかったドリンが、急に戦場の近くに居たのが物凄く不自然でしたしね!
 逃げる隊長と追うバラハンターのスペクタクルから、隊長をかばおうとしたドリンをかばってキング先輩が負傷し、二人を逃がした隊長は囚われの身に。
 (……そうだ、こうなったらもうあれしかない)
 強い自責の念にかられるドリンはピラミッダーの奥へと階段を登っていき、辿り着いたのは、いかめしい扉に封じられた禁断の間。
 禁忌を破り戦う力を得ようとするドリンと、それを懸命に止めるリキは二人まとめて内部に吸い込まれると黄金の剣を目にし、もみあっている内に、リキの腹に剣がーーー……じゃなかった、まとめて銃殺寸前だったオーレンジャーの元へと転位。
 ドリンを戦いから遠ざけようとするリキが剣を握ると、顔面白塗りの暴走状態になって皇帝夫婦らを蹴散らし、劇中ヒエラルキーの超電磁スピンぶりが大変な事になっていますが、禁断の力を使った者はしかし、死ぬまで戦いをやめられない狂戦士と化してしまうのだった!
 一応、オーレンジャーを助ける気があったらしい三浦が、修復した超力ブレスを手に姿を見せると状況を解説し、平和を願うドリンの祈りにより、剣は消滅。
 「ドリン、僕はドリンを守る為に戦う。この世から戦いが無くなる日まで」
 禁断の力から開放されて正気を取り戻したリキは、“決して戦わない事で平和の使いとなる者”ドリンと、“それを守る為に戦う超力戦士”の関係性を確認すると、オーレンジャーと共に戦いに赴き、超古代、バラノイアに目の敵にされたドリンとは如何なる存在なのか? を超高速で1話に詰め込んだのですが、出てくる要素が全体的にあまりにも唐突。
 最終決戦を前にリキとドリンにスポットを当てるのは必要といえば必要でしたが、なにぶん、寝ている間にバッカスフンドが真っ二つになった件が致命傷すぎて、既に処置が手遅れ。
 また、二人の見た目が子供なので、未来の象徴、二人の為にも平和な世界を……と、オーレンジャーの守るべき庇護対象のように使うのも無理が大きく、とにかくひたすら、上手く要素を使えないばかりの追加キャラになってしまいました。
 曽田×長石の80年代黄金タッグが、なんとか作品にあるピースを既存のセオリーに組み込んで活用を図るも、かえって迷走を呼んでいるのも、辛い。
 「戦隊公開処刑」のサブタイトルから、リキ×ドリン話に転がっていったのも困惑しましたし、そんな二人の痴話喧嘩の前振り扱いで、変身装備を破壊されて全員捕縛という劇中最大レベルの危機に陥るオーレンジャーへの仕打ちは、あまりにあまり。
 その状況をマッハで片付けたのも危機レベルと解決のバランスが大変悪くなり、作品全体が怒濤の勢いで宇宙の暗黒物質に呑み込まれていきますが、次回――「二度ある事は三度ある」がギリギリで拾われて、まさかのコスプレ回。