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肉肉魔法肉魔法

仮面ライダーウィザード』感想・第38話

◆第38話「奪った希望」◆ (監督:石田秀範 脚本:きだつよし)
 「賢者の石が欲しいなら、新たなファントムを生み出す。それが唯一の手段という事を、忘れるな」
 前回の九官鳥オチに関しては全く触れられず、まあ、あの状況ならウィザードかビーストがエンゲージすれば基本的に解決できるので、問題なく処置できたという事なのだと思われますが、最終クールに黄色担当の幹部として九官鳥の男が出てくる可能性について、心の準備だけはしておこうと思います。
 ……実は当初、ソラは色々と引っかき回そうとするも失敗してウィザードに敗れ、ワイズマンにも切り捨てられた後、メデューサから血も凍るようなお仕置きを受けて退場するのかと思っていたのですが、どうもそういう気配では無くなってきたので、黄色担当の幹部ポジションが出てくるかどうかも微妙にはなってきましたが。
 魔法使いの宿敵ポジションになりつつあるソラは、ワイズマンからボーナス欲しければ真面目に働けと釘を刺され、真面目に働いているミサがゲートを発見。
 膝の怪我から復帰しサッカーの練習に励む青年・和也と、二人三脚でそれに付き合う恋人(?)・直美を、ファントム・バハムートが襲い、蜘蛛怪人系の頭部なのですが、バハムートといえば原典では巨大魚の事なので…………エラかヒレ? 肩アーマーは恐竜っぽいので(角の生えた魚っぽくもありますが)、ゲームで広まったドラゴンの方のイメージなのかもですが、この後の強敵ぶりを見ると、ウィザードに匹敵する「竜」のニュアンスが入っていそうな気はしないでもなく。
 使い魔の呼び出しにより二人の窮地に飛んできた緑ザードだが、鍛え抜かれた筋肉を誇るファントムは、素手で銃弾をキャッチ。
 「銃は通用しないって事か。だったら……!」
 刃物を取り出し斬りかかるウィザードだが、そんな見せかけだけの筋肉など武術家の私には通用しない、とばかりに流れるような動きで攻撃を捌かれ、苦戦。
 筋肉より魔法より筋肉より魔法より筋肉なのか?
 銃剣無効ファントムアーツに圧倒されるウィザードは、軟体無双マジカルアーツを繰り出して液状ボディからの関節技で押さえ込もうとするがそれさえも破られ……ウィザードの属性別特殊能力を生かしての戦闘スタイルそのものは好きなのですが、さすがにここまで手も足も出ずに苦戦しておいて、今度はランド(ノーマル)だ! とドラゴンさえ使わずに叩きのめされるのは、戦いの盛り上がりそのものを削いでしまいます。
 ファントムは「いい遊び相手が出来た」と強者の余裕を見せて撤収し、ウィザードは変身解除。
 「助けてくれてありがとう! あんたはいったい……」
 「希望を守る――魔法使いさ」
 背中を向けながらキザに決めて振り向いたら………………知り合いだった。
 「……晴人」
 「和也……」
 死ぬ……。
 これはもう、全身の毛穴という毛穴から魂が噴き出して床をのたうち回りながら、死ぬ。
 大変気まずい空気が流れると、面影堂で二人に事情を説明する過程で、晴人はかつて、プロを目指してサッカーをしていた事が明らかになり、ここまでほとんど触れられていなかった“魔法使いになる前”の晴人のパーソナルな部分にようやく光が当たるのですが、晴人、あまりにもサッカーやっていた感の説得力が凄くて、何故だか、最初から知っていたような気さえしてきます(笑)
 晴人の過去に興味津々ではしゃぐ仲間達だが、
 「……最っ低の人よ! その人は」
 「よせよ直美。そんな言い方……」
 厳しい視線を晴人に向けていた直美が断言すると場が静まりかえったところに、入ってくる仁藤ーーー君と出会えて良かったーーー!!
 「なにが希望を守る魔法使いよ。人の希望を奪ったあなたに、そんな資格があるとは思えないけど」
 言葉のナタを振り回す直美は晴人の護衛を拒絶し、晴人の過去に触れると共に晴人に当たりのきついゲストが登場するアクセント。
 特に因縁のない仁藤が護衛につくと、凛子・瞬平と共に、晴人と和也の間に何があったのかを聞かされ、約1年前のセレクションの際、ボールを競り合った際の晴人のスライディングがきっかけで和也が膝に大怪我を負い、懸命のリハビリからようやく再起への糸口を掴み始めた頃であった事を知る。
 「別に怪我の事が許せないんじゃない。……あいつを許せないのは、俺の前から勝手に消えて、逃げた事だ」
 ひたすら感情的な直美と違い、和也の方はスポーツ選手としての処理をしていたのはホッとしたところで、招かれざる客ながらアパートの外に佇んでいた晴人に気付いた凛子は晴人に声をかけ、一方のファントム陣営では、ソラがなにやら難しい顔で考え事をしていた。
 「ねえミサちゃん、ファントムが増えると嬉しい?」
 「当たり前でしょ。それがワイズマンの意志なのだから」
 必要な役回りではありますし、ソラとの対比にもなってはいるのですが、劇中におけるソラの比重が高まるのにつれて、ここ数話のミサはワイズマンに忠実なロボット的な描写ばかりなのは、ちょっと残念。
 せっかく大事に育ててきたキャラなので、最終クールにもう一つ跳ねるのは期待したいところです。
 「いや、そういう事じゃなくて。ミサちゃん的にさ」
 「私が? ふっ……なぜ喜ぶ必要がある」
 「そうだよね。仲間が増えるってわけじゃないもんねー。人間じゃ無いんだから」
 「何が言いたい?」
 「別に。ちょっと、今後の人生について、考えてただけだよ」
 目指せ、ハイクラス転職。
 (……本当の目的は、ファントムを増やす事じゃなくて、ファントムを、生み出す行為……なのかな)
 ファントムの性質が改めて示された上で、現状、増やそうとすればするほど減っているのに会社の方針が全く変わっていない事に対しての疑念を具体的に提示してくれたのは、良かったところ。
 凛子に気を遣われた晴人は、サバトに巻き込まれた為に和也の前から姿を消したのではなく、和也に対する罪悪感に耐えきれずにチームを辞めた後で魔法使いにされていた事を告白。
 「俺はあいつの希望になれないどころか、あいつの希望まで完全に奪っちまったんだ」
 ……だが一方の和也は、そんな晴人の気持ちも汲んだ上で、自分がまだ“終わった”わけではない事を晴人に見せようとしていた。
 「ただあいつに見せたいんだ。俺が今でも夢から逃げずに、戦ってるところを」
 これまでの描写から“私”の薄い傾向が強かった晴人ですが、「ヒーローになる事で私的な夢から切り離される」のでも「ヒーローである事と私的な夢が繋がっている」のでもなく、なぜ晴人が魔法使いとして人々を守る事に全てを注げたのかといえばそれは「私的な夢を失った事により代償行為としてのヒーローに没頭できた」からだと置かれ、今作らしい本歌取りを盛り込みつつ、ヒーロー像として面白い仕掛け。
 両親から貰った希望を胸に絶望を乗り越えつつも、サバト後の晴人は「ヒーローを演じる」事で「“私”の仮面を手に入れていた」事が明らかになり、本作における「仮面」とは、夢の残骸となった――そして和也の「夢」を背負って生かし続ける事もできなかった――その本質を覆い隠す為に操真晴人がずっと被り続けていたものであったと判明。
 そんな晴人に対し、自分はまだ“生きている”事を伝えようとする和也だが、その希望を絶とうと再びバハムートが姿を現し、ビーストもまたファントムアーツの前に完敗。
 変身した晴人は今回は初手からFDとなると増殖タイムを発動し……かつてのライバルの前で見せる技が、1人で駄目なら4人で! で、いいのか?(笑)
 だが増殖タイムも完敗し、敵に、
 「戦いは数ではないぞ」
 って言われました(笑)
 「もっと楽しませてくれ!」
 バハムートがウィザードの首根っこを掴み、ギャラクティカファントムマグナムが、そのキラキラ目障りな頭を粉々にしようとした時、和也の蹴ったサッカーボールがバハムートの動きを止め、投石から野球、そしてサッカーは地球人類の基本的な攻撃手段です。
 ウィザードを放り捨てたファントムの放った真空波が和也を切り裂き、更なる攻撃から和也を守ろうと一同が駆け寄ると(瞬平もすっかり体を張るように)盾となったウィザードがその直撃を受け……恐らく次回のクライマックスに向けて、ここまでのウィザードのフォーム総ざらえといった狙いがあるのかとは思いますが、さすがに今回は、出し惜しみによる苦戦の為の苦戦が目立ちすぎて、物語後半におけるバトルの組み立ての難しさに直撃してしまいました。
 特にウィザードは、ゲートの命が天秤に乗っている状況が多いので、目立ってしまうなと。
 鯨飲無双ファントムアーツが猛威を振るっていたその頃、面影堂を訪れたのは、コート姿で杖を突き、動く度に何やら人間離れした効果音を鳴らす中年の男。
 「あの時は随分世話になった」
 「……あんた」
 「作ってもらった指輪は、どれも惚れ惚れするような出来映えだった。改めて礼を言わせてもらう」
 「…………何しにきたんだ」
 「その腕をまた――貸してもらいたい」
 いつもの笑顔を消し、固い表情になる輪島に向けて、謎の男が紫色の巨大魔法石を取り出して、つづく。
 今作3セット目(5話目)の石田監督の登板となり、晴人の過去が明らかになる一つの節目のエピソードという事でか、おふざけ一切無し、どころかちょっとしたコミカルなシーンさえほぼ無し。
 勿論、今回の内容でおふざけを連発されても渋い顔になったとは思いますが、ここまでシリアスに終始すると逆に、過去2セットは、そんなに悪ふざけを執拗に盛り込む事が必要だと判断したの? とは思ってしまい、極端にシリアス一辺倒か、極端に悪ふざけだらけか、キャラクターのリアクションが全く異なる両極端の手札しか使ってこないのは、《平成ライダー》を主導してきた監督だけに残念。
 ……まあ、最初に参加した時点では、お笑い1セットだけのつもりが、諸事情あって後半の重要回が回ってきたとかあったのかもしれませんが、過去の4話にしても演出のアプローチ次第で、だいぶ印象の違う話になったと思いますし、もう少しトータルの演出ラインに配慮を感じさせる妙味を見せて欲しかったなと。
 加えて、前エピソードでも感じましたが、ここに来て物語の航路が乱気流に突入しており、

 「金に目の眩んだモブゲートが大騒ぎ」(監督:石田秀範 脚本:石橋大助)
 ↓
 「ソラの正体が連続殺人鬼と明らかになる」(監督:舞原賢三 脚本:きだつよし)
 ↓
 「放火事件の容疑者に対して警察がコントのような対応を取り続ける」(監督:諸田敏 脚本:石橋大助)
 ↓
 「晴人の旧友が登場しひたすらにシリアス」(監督:石田秀範 脚本:きだつよし)

 のあまりにも極端すぎる凹凸は、緩急とか起伏とかを通り越して、物語を読む為のコードの蒸発を生み、いよいよ盛り上がってきた、というよりも、ああ今回はお笑いが一つも無いんだ(欲しいかどうかではなく)……みたいな視点が出てしまいました。
 個人的には、石橋脚本よりも石田監督と諸田監督の問題が大きかったと思いますが、宇都宮Pも、この極端な落差を良しとせずに、もう少し滑らかな進行となるように差配できなかったものかなと。
 2話完結形式で前後編をコメディに寄せると、次のエピソードでいきなり平常の進行に戻るのは無理の出る感触もあり(リアルタイムで一週間空くと違うかもですが)、今作に関しては激しい転調を交えるよりも、(それがマンネリを指摘されがちだったという要因の一つであったとしても)物語のメロディラインを美しく保つ事にこだわった方が良かったのではないか、と思うところです。
 次回――魔法使いは再び最後の希望となれるのか。